日本の犯罪は、減少傾向にあります。2023年における刑法犯の認知件数は70万件、検挙件数は27万件であり、刑法犯の検挙人員の罪名別構成比は、窃盗が全体の46.7%を占めています。ちなみに、2017年が92万件、2018年が82万件となっています。2002年の285万件をピークに減少してきています。少なくなればなったなりに、犯罪はもっと減った方が良いと思うのが人情です。そこで、犯罪を減少させる仕組みについて考えてみました。刑務所の受刑者で、1番多いのが窃盗になります。2番目が覚醒剤などの薬物依者になり、3番目が詐欺になります。少し前になりますが、車好きの知人との話の中で、「私の車は、一番盗難になっている車の車種だ」といっていたことが印象に残っています。新聞など読んでいると、「CAN (キャン) インベーダー」の被害が増えている記事が目にとまりました。CAN インベーダーは、モバイルバッテリーのような形の手のひら大の機器になります。捜査関係者によると、操作は容易で車を傷付けず数分で盗んでしまうことができると言います。これを販売しているという海外サイトは、複数確認でき、ロシアやブルガリアが拠点になっているようです。盗難車は首都圏近郊にある「ヤード」と呼ばれる解体所に運ばれ、改装後、タイやアラプ首長国連邦(UAE)などに密輸される流れということでした。
もちろん、企業側も対策に乗り出しました。カー用品大手は、CANインベーダーなどを悪用した盗唯を防ぐのに役立つ商品を発売しています。自動車メーカーも、CANインベーダーが流す不正な信号を遮断できる後付けの部品を販売するようになりました。車に専用の部品を取り付け、スマホのアプリで操作しエンジンをかけられない設定にし、勝手にドアが解錠された場合も利用者にメールで通知される仕掛けです。このような仕掛けの元祖に、コマツのコムトラックスというシステムがあります。建設ブームわく新興国では、建設機械の需要が旺盛です。建機の場合、稼働する場所がいろいろな建設現場になります。建機が故障した場合、予定した工事が止まることになります。建機は日常的に故障をしないように建機の予防的メンテナンスしておくことが大切になるわけです。それができる建機の企業が、利益を上げることになります。これを実現した企業が、コマツになります。コマツは、GPSや通信機能、ヱプロセッサを利用したコムトラックスというシステムを開発しました。コムトラックスの付加機能として運転内容、稼働時間を知るシステムを次々と実装しました。運転内容や稼働時間の情報が蓄積されるとトラブルの未然防止や故障の迅速対応が可能になりました。コムトラックスは1台1台の状況が確認できるために予防保全の部品交換ができます。盗難された場合、通信機器をつかってリモートでエンジンがかからないようにすることも可能です。このような機能を使って、盗難防止を図ることを可能にしていました。
日本では、人口も減少していますが、犯罪も驚くほど減少しています。でも、犯罪に走る人は無くなりません。たとえば、刑務所に一番多く収容される窃盗犯は、戦略と戦術を持って窃盗を行っているのです。窃盗犯は、最初に場所もしくは地域を選びます。彼らは、戦略的に地域や場所を選びます。窃盗犯はその戦略を元に、特定の人、特定の家、特定の車を戦術的にねらってきます。たとえば、住宅の侵入に5分以上かかる場合、7割が諦めます。10分以上かかる場合、9割が諦めるようです。彼らは、盗む行為を見られる時間が増えることを分単位で避けるわけです。このような高度なスキルを持った窃盗犯に、私たちはどのように対処すれば良いのでしょうか。ヒントは、疫学にあります。無くすことは無理でも、減らすことは可能です。それは、戦後の犯罪が減少している事実からも明らかです。無くすことはできないが、減らすことのヒントは、疫学にあります。たとえば、感染が成立するには「病原体」「感染経路」「宿主」の3つの要因がそろう必要があります。これらのどれかひとつでも取り除くことができれば、感染症を予防できます。病原体とは、感染症を引き起こす細菌やウイルスになります。これをなくせば、病気は起こりません。また、細菌やウイルスを弱くすれば、軽い症状に抑えることができます。感染経路は、病原体が新たに感染を起こす経路になります。これは、マスクや手洗いをすることで、ある程度防げます。また、感染の予想される場所に行かないことなどになります。宿主は、病原体が増殖する人や動物のことになります。人が免疫力を高めておけば、病気にはならないということになります。
「病原体=窃盗犯」「感染経路=治安の悪さ」「宿主=窃盗に合う人」と置き換えると、防犯の対策が見えてきます。一番良いことは、窃盗犯の方がいなくなることになります。でも、これは難しいことを歴史は証明しています。一般にみんなの暮らしが良くなれば、窃盗が減ることは経験則として知られています。次に、治安が良くなれば、犯罪全般が減少することが分かっています。ニューヨークなどでは、落書きをなくすことで、犯罪を減少させたことが実証されました。「宿主=窃盗に合う人」の対策としては、防犯の基本は、家に侵入するのに5分以上時間がかかるような窓やドアを防犯仕様にしておくことになります。2重ロックにすると、カギを外す時間が延びます。この延びる時間を犯人は嫌うのです。盗む行為を見られる時間が増えることを避けるわけです。彼らは、監視カメラや人の目に付く場所での犯行は避ける傾向があります。「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」という孫子の言葉をかみしめて、窃盗犯の手口を知り、それに備える知恵も必要になるようです。
