人は、気温が15℃以下の場合、外出を控え、屋内で過ごす人が増えます。15℃を超えると、低温による羅患のリスクが低くなるために、屋外に出て活発に活動するようになります。日本人にとって桜見物は欠かせないものです。東京の場合、桜が開花する3月下旬から4月上旬までの平年の最高気温は、14~17℃になります。この時期の最高気温が高い場合、満開までの期間は短くなります。反対にこれより低ければ、満開までの期間が長くなります。つまり寒ければ、桜見物に来る人々は途絶えることなく、長い期間にわたってビジネスが成立することになります。高温になれば、桜見の期間は、短くなり、売上げは減ることになります。寒いときの花見において売れ筋の商品は、おでん・揚げ物、焼酎・日本酒、そして肉まん・あんまんなどです。反対に温かいときは、焼き肉・寿司、ビール・発泡酒、そして漬け物・清涼飲料水などになります。これらを過去のデータと天気予報によって、もろもろの準備しておくことになります。食材の仕入れ、店舗の開設、バイトの確保など短期間で集中的に仕事を行うことになります。上手くいけば、短期間で多くの収入を得ることができます。ここで難しい点は、天気予報になります。春の天気予報は、精度が低いと言われていました。この時期は、三寒四温とか春一番とかが突然やってきます。3月から4月にかけての天候は、予測が難しいといえます。もちろん、予想が的中すれば、短期間で通常より多くの利益を獲得できます。今回は、今話題のお天気アプリについて考えてみました。
気象庁は、これまでもホームページ上で、アメダス(地域気象観測システム)と使って詳細なデータを公開してきました。アメダスは、気象庁が1974年から運用を始めました。アメダスは、現在はおよそ17km間隔で全国約1300地点に設置されています。この間隔での気象情報は、利用できるわけです。でも、もっと詳しい情報を欲しがる人達もいます。その要望に超ええるために、「デジタルアメダス」が登場しました。これは、気象情報を組み合わせて、1km四方の範囲まで気温や降水量、日照時間などを算出できるという優れものです。「デジタルアメダス」の活用は、今年4月から提供範囲を全国に拡大しています。いわゆるスマホアプリ「デジタルアメダス」が、利用エリアを全国に拡大したのです。これを使えば、ユーザーはピンポイントで地域を指定し、データを確認できるようになります。この「デジタルアメダス」」は、農林水産業をはじめ幅広い分野での利活用が見込まれています。
気象庁は、情報提供が適していると判断したわけです。その上で、さらに実証実験を重ね、2024年度から北海道で先行公開しました。2024年度から北海道で先行公開すると、ダウンロード数は1年間で7万件を超えたのです。利用者には、農業関係者が多かったようです。北海道の帯広市川西農業協同組合(JA帯広かわにし) は、昨夏から利用を呼びかけていました。JA帯広かわにしは、昨年の夏から、「デジタルアメダス」の利用を呼びかけました。それは、この地区で栽培している長芋に必要な情報があったからです。長芋は降水量が少ない状態で追肥すると、土中に残った肥料で育ちすぎて「規格外品」になりやすいのです。「デジタルアメダス」のアプリを利用した農家から「肥料を追加するかどうかの判断をしやすくなった」との声が多く寄せられました。このアプリは、1km四方の地点の気温や降水量などを見ることができます。「デジタルアメダス」は、以前の17km間隔の情報では得られなかった有用な情報が入ってきたわけです。JA帯広かわにしは、農業にこの気象データは不可欠と言っています。JA帯広かわにしは、ほかの作物でも効果的に使えるのではとその可能性を膨らませているようです。
気候変動が、ビジネスに与える影響は年々高まっています。気象庁などが提供する気象データに対して、そのデータを有用化する解説や加工を担える人材が求められています。気象庁は、2019年に、国内企業し2059社を対象に調査を実施しました。この調査によると、事業が気象の影響を受けていると考える企業が6割超を占めていました。でも、実際に気象データを収集し分析して活用していると回答したのは1割にとどまっていました。気象の影響を受けていても、その対策には及び腰だったのです。問題があれば、解決を提示する組織もあります。気象庁は、ビジネス創出を念頭に「気象ビジネス推進コンソーシアム (WXBC)」を2017年に設立しました。さらに、WXBCは2021年に「気象データアナリリスト」の認定制度を創設したのです。「気象デーアナリスト」は、気象情報をビジネス分野に生かせる人材になります。この養成講座には、コンサルタント会社や建設業などから応募がありました。これまで、約140人が修了し、各分野で活躍しているとのことです。「デジタルアメダス」の活用には、データを適切に分析できる人材の育成が欠かせないようです。
虫刺され薬「ムヒ」を製販売する「池田模範堂」は、気象情報をビジネスに役立てています。予報データを照らし合わせることで、生産量や広告のタイミングを見極めています。気象情報は、かねてマーケティングや需要予測などでも役立てられてきました。気象庁は「観光施設の集客見込みや飲食店の仕入れ量の判断にも役立てられる」と話します。WXBCの会員は民間気象予報会社や製造業、小売業など1500社を超えました。今後は、データをもとに需要予測などを行えるAIを使ったシステムの開発が進められていくようです。蛇足ですが、一般に、AIの技術者には、3つのレベルが必要とされています。AIエンジニアには、レベル1からレベル3が必要になります。レベル1は、AIの得意や不得意、そして実際のAIの使い方になります。具体的には、パソコンの内部を理解することではなく、マイクロソフトのワード、エクセルを使いこなせるレベルになります。レベル2がAIアルゴリズムの使い方で、レベル3がAIアルゴリズムの作り方になります。レベル2やレベル3になると、難易度が高くなります。このレベルの人材を養成することが、これからの課題になるようです。気象情報を生かすには、顧客ニーズに特化し分析できる広範な知識と対応力が欠かせません。AIの活用も、その一つになることは間違いないようです。
余談になりますが、サバクトビバッタの大量発生のきっかけは、2018年5月のサイクロンでした。このバッタは、アフリカと中東の乾燥した地域に生息しています。大型のサイクロンは、アラビア半島南部の広大なルブアルハリ砂漠に雨を降らせたのです。サイクロンの雨は、砂丘の間に多くの一時的な湖を出現させました。サバクトビバッタは、大雨が降って植物が繁茂すると大発生するのです。バッタの大発生が3度起こり、アラビア半島に生息するバッタは8000倍に増えました。アラビア半島でのバッタの繁殖は、異例ともいえる2つのサイクロンの発生によってもたらされたものでした。インド洋の海面温度の上昇は、サイクロンのエネルギーを高め、今回のバッタの被害(蝗害)を引き起こしたのです。このバッタが、2019年と2020年にわたって東アフリカに拡散してきたのです。東アフリカでバッタの大量発生による被害が広がり、数千万人の食料供給が脅かされる状況が続いています。バッタの群れは、ものの数時間ですべてを食い尽くしてしまいます。数億匹のバッタは、ケニアをはじめとする国々に移動して農地に壊滅的な被害を及ぼしています。バッタの群れが、作物や牧草地に襲いかかります。その跡は、何もない農地や牧草跡になってしまうのです。ジブチ、エリトリア、エチオピア、ケニア、ソマリアの数千万人が、深刻な食料不に陥る状況があります。バッタの大量発生が、東アフリカの7カ国に拡大したのは最近にはないことでした。2020年の1月にはケニアでは、過去70年で最悪の規模の蝗害が発生しています。バッタの初期発生の段階で根絶する殺虫剤は、各国に準備されています。でも、発生が拡大した場合、準備しただけの殺虫剤で抑えることが難しいのです。発生を素早く見極める人材の育成が求められているようです。
最後になりますが、雷が鳴る前に、急に頭痛や腹痛を訴える人がいることはよく知られています。天気予報で今日は雷が鳴ると予報がでていれば、先に頭痛薬を飲むと良いわけです。ぜんそくの場合などでは、最低気温が15度の気温が5時間以内で3度下がると発作が出ることが多くなります。気象が人体に及ぼす影響は、個人差が大きいものです。でも、ある一定の条件が整うと、確実に病状がでることも多いのです。個人を超えて、集団で備えることも必要になります。温暖化は、高い気温が苦手な作物を栽培しにくくなります。気候の変化によっては、それまでになかった病虫害が発生したりします。気温や海水温が上昇すると病害虫が増え、穀物生産が減り食糧難を招く恐れがあるわけです。企業は、精度の高い長期予報、特定地点の情報、情報端末から気象情報を引き出すことを求めています。これらの情報を提供できる企業が、未来のビジネスを有利に展開できるようになります。