インドは、巨大市場と世界の工場としても、発展する可能性を持っています。日本の企業は、国内市場だけでなく、海外にも目を向けなければなりません。そのターゲットの一つにインドがあります。先日の新聞では、日立物流がインドで企続業向けの物流網を構築しているとの記事がありました。インド最大都市のムンバイなど4地域に、同規模の倉庫を複数設ける計画をしているとのことです。受注体制はまだ十分に整っていない自動車部品などを念頭に、2019年度から倉庫を複数築き、在庫管理とその受託を広げるようです。インドは、中国に迫る人口規模を持つことなどから、その市場の高い潜在力を誰しもが認めるところです。でも、中国のように生産や流通インフラ、そして人材育成の組織化が不十分です。この点を補強をしながら、経済成長を目指していくことになるでしょう。
そこで、インドのこれからの課題になる人材育成について考えてみました。インド政府は、海外企業がインドに投資しやすくなる条件を整備し始めました。全国一律の物品サービス税が17年に導入されて、税の簡素化が進んでいます。州ごとに間接税が異なり、州をまたぐ取引や物流を進めにくかったのです。その障害がなくなり、税の簡素化が進み、海外の多くの企業がサプライチェーンを見直すようになりました。州をまたぐ物流の活発化が進むとみているわけです。日立物流が、インドに物流網を構築する流れは、この延長線上にあるようです。海外企業が、投資をする条件が整い始めているのです。蛇足ですが、バラ色のインドがあるわけではありません。中国の大気汚染の酷さや自動車事故死の多さは、話題になります。でも、インドは、中国よりも大気汚染が進み、交通事故死も多いのです。ムンバイの国鉄近郊線は、世界でもっとも混雑した鉄道綱の一つです。駅に近づくと、電車が止まる前から車内の乗客がホームに飛び降り始めます。結果として、ムンバイでは年間で3500人の乗客が鉄道事故で死亡しています。その多くは転落死なのです。
すでに、インドの可能性を信じて、この国に進出している企業があります。インドに進出して30年を超えるスズキは、社会貢献の意味も兼ねインドの教育を支援しています。130の職業訓練校の自動車関連育成部門に、実習用車両や機材を寄贈しています。この教育支援をした学校から、スズキの訓練工員の採用を行う戦略をとっているのです。教育と雇用の確保を行っているわけです。スズキ系列のディーラー網を含めて、半数近くを支援先の職業訓練校から採用しているのです。遅れて進出したトヨタは、別の戦略を取っています。この会社は、工業技術学校を設立し、日本の製造現場で基本となることから教え始めます。工業技術学校では、集合時間の厳守や整列、安全確認動作、あいさつを日本式で教えています。カイゼンや品質管理里など日本の生産方式を教え、自社で採用できるレべルにまで鍛えるのです。この学校では、業務の共通言語となっている英語も教えています。蛇足ですが、インドでは英語を話せる人材が、上の階層に登ることができます。エリートになるためには、英語は不可欠なのです。ちなみに、インドで英語が話せる人口は、5000万人です。インドの人口が13億人とされますから、その人数を多いと考えるか、少ないと考えるか、意見の分かれるところです。
インドで企業が成功するためには、技能工の育成や獲得だけでは十分ではありません。それは、技能工以上の専門家である技術者の獲得が求められます。インドでは、どんなカーストに生まれても実力だけで伸びていける人材がいます。今は、I Tの人材が注目を集めています。でも、教育を受けられないまま、地方に暮らす多数の貧しい人びとの中にダイヤモンドが数多く存在します。I T業界には、被差別カースト層からも優秀な若者が続々と進出していることからも、このこと分かるようです。このように這い上がってきた大学生に対して、ある企業は学生個人に奨学金を支給しています。また、大学の3~4年生向けに、インターンシップの場を提供している場合もあります。インドの学生は、プライドが高いものがあります。能力は高いのですが、職場になじめない場合もあるのです。結果として、「くたびれ儲け」とか「骨折り損」なることもあります。採用にかける費用と努力が、採用後に無になるということです。自分の会社に適応できる人材を、入社前から育成するという考え方も大切になるようです。
当然、高度人材の獲得を、各社とも工夫することになります。ここからが、提案になります。大学で必要なことを学んでから、入社することが大学生にとっても会社にとっても良いことです。入社時点で、最低限身に付けておくべきことは、大学時代に学び、すぐに使える人材を育成しておくことが理想の採用人事になります。ある企業はカスタムメイドで、大学2~4年生向けのカリキユラムを作っていいます。このカリキュラムを、大学で行っても貰うのです。カリキュラムに係わる大学教授には、研究費を助成などの便宜を図るわけです。企業がこの研究室と産学協力プロジェクトを立ち上げることも可能でしょう。学生には、奨学金を出すことも当然でしょう。大学において、入社した時に役立つ勉強をしてもらうわけです。不幸にして入社しない場合、奨学金を返還してもらうことになります。