消費者の買い物行動をしっかりと理解しないと、小売業やサービス業は時代を乗り切れないようです。各小売業やサービス業が、他社との競争ではなく顧客のニーズと向き合うことが求められる時代になったようです。ふつう、弁当といえば数パターンの中から選んでもらうものでした。ひとつひとつ違う弁当を作っていたら、コストがかかりすぎて採算がとれません。でも、この壁を乗り越えた人がありました。彼は、サンフランシスコでランチボックスのデリバリーサービスをやり始めました。このランチボックスの中には、ひとつひとつみんな違う具材が入っていたのです。コンピュータとクラウドソーシングは、ひとつひとつ違う弁当を可能にしたのです。集めたビッグデータを分析すると、多種多様なランチボックスを無駄なく作る食材を教えてくれました。無駄なく作る食材を教えられるために、何をどれぐらい入れればよいのかを計算できるようになりました。食事にしても、買い物行動にしても、時代とともに変化していきます。生きていくために、買い物をするという行動はなくなりません。でも、個人のニーズは多種多様になっています。変わりゆく消費者の買い物行動をしっかりと理解して捉えておく必要が、各企業にあります。顧客に選ばれるための小売りづくりやサービス作り出すことが、激動の時代を生き残るためのカギになります。今回は、生き残るための小売りやサービスについて考えてみました。
日本では、「ぬいぐるみ」と外出したり、着飾らせたりする(「ぬい活をする)人が増えています。ぬいぐるみとー緒に撮った写真をSNSに投稿して楽しむ人もいます。このぬいぐるみを、ペットと同じように清潔にすることも、一つの流れになっているようです。流れができれば、これに応じるサービスが生れます。ぬいぐるみを縫い直したり、洗浄したりする専門サービスを提供する事業者が登場しています。このサービスは、単に、年月を経たぬいぐるみを新品同様の姿にするだけではありません。ヨンマルサンは、山梨県富士河口湖町で宅配のクリーングサイトを運営しています。2022年は月50件ほどだった修繕が、2025年にはぬいぐるみの洗浄や修繕依頼を月に約800件引き受けるまでになりました。ヨンマルサンでは、生地の種類や汚れ具合に応じて25種類以上の洗いの工程を使い分けています。シミ抜き剤で前処理を施したうえで、入稔に調整された水温や洗剤で洗い上げていきます。 持ち主がぬいぐるみに触れてできた個性や思い出を残す工夫がいたるところにあるようです。需要が増えたきっかけは、作業の舞台裏の様子をSNSで発信し始めたことのようです。今では、日本国内だけでなく訪日外国人からも毎月10件程度注文が入るまでになっています。
ペットによる癒しの効果は、幸福ホルモンとも言われるオキシトシン分泌から理解されるようになりました。いつもふれあうぬいぐるみが、ペットと同じように癒しの効果をもたらしているのかもしれません。このぬいぐるみを癒しと共に、コミュニケーションの欲求を満たすツールと使う方もいるようです。「ウナギトラベル」とし旅行会社があります。この旅行会社が、旅行に連れて行くのは「ぬいぐるみ」になります。お客さんから預かったぬいぐるみをカバン詰めて、国内外の観光地に行きます。観光地で、ぬいぐるみの記念写真を何枚も撮ります。この観光地でぬいぐるみの記念写真のために、お客さんはお金を払うのです。自分のぬいぐるみが、海外旅 行をしている写真を撮ってもらい、その写真をフェイスブックにでも載せるのです。自分がいけなくとも、ぬいぐるみが行ったことで、一体感が得られるのかもしれません。忙しい人や病気で自ら旅行できない人には、観光地での写真を見るどけですごく満たされた気分になるようです。さらに、フェイスブックに載せれば、そのかわいさに山ほど「いいね」がついて幸せな気分になれるというわけです。ウナギのビジネスが面白いのは、利用者がSNSを通じてコミュニケーションを求めていることです。このサービスは、利用者がコミュニケーションを求めていることを助けるものになります。お客は、コミュニケーション消費と癒しの消費の二つを同時に行って、二つの満足を得ているのかもしれません。
自己の満足だけなく、社会への貢献を目指したサービスもあります。もちろん、このサービスから、利益を上げることは必然の狙いでもあります。「プロジェクト・ダニエル」という事業がありましたこのプロジェクトは、IT技術を使っていろいろな医療問題を解決するものでした。激しい内戦の続くスーダンで、両腕を失ったダニエルという少年と出会いが始まりです。プロジェクト・ダニエルは、ロボットハンドの開発者や神経学者などがチームを組みます。3Dプリンターを使って、義手を作るプロジェクが始まりました。彼らの工夫で、プラチック製の義手をわずか100ドルで作れるようになりました。このプロジェクト以前では、どの国でもこれほど安価に義手を作ることはできませんでした。「なぜ先人はできなかったのか」といえば、安価な3Dプリンターがなかったことと、その利用方法を熟知していなかったことでした。でも、プロジェクト・ダニエルの事業は、安価な義手の販売ではありませんでした。このプロジェクトは、いくつかの企業から支援を受けています。プロジェクトは義手の販売ではなく、企業の宣伝などに使うことで、収益を生むようになっていたのです。義手を作るという小さな問題を解決することが、企業を巻き込んで、創造的な事業を生む事例になります。
誰も幸せにしない、かつ消費者がいない製品やサービスには何の価値もありません。人のニーズを満たす事業を生むには、まずはそのニーズを発見することが大事になります。そのニーズを見つける場所は、SNSの中に無限に見出されます。誰もがつぶやけるSNSは、今では社会参加のインフラになっています。スマホにミカンやマスク、そして喉のいがらっぽさなどの言葉が出てくると、インフルエンザの流行が予測されます。予測されれば、それに備えるニーズが生まれ、ニーズを満たす製品の生産、出荷、店頭販売の準備が行われますインターネットで注文した商品を届けてくれるのは、宅配便のドライバーの方です。ドライバーの方は、届けるために工夫します。どのようなルートで荷物を届けていけば、ガソリン消費量を少なくできるのか、荷物を最速で配り終えるルートをどのように選択するのかなどを悩みます。ドライバーが1日に回るポイントが5カ所あるとすると、ルートの組み合わせは120通りになります。回るポイントが10カ所だとすると、すべての組み合わせは、驚くことに約360万通りになるのです。この配達の最適解を求めるのは、かなりの難問です。さらに、宅配トラックのスペースに荷物を積む順序、降ろす順序、積み荷を増やす方法などの組合せは、ルートの組合せよりさらに複雑になります。もし、人々のニーズを把握し、製品の生産、出荷、店頭販売、宅配がスムーズに行くようになれば、企業も、働く人も、消費者もハッピーになれます。
余談になりますが、現代は、速さや安さを求める流れと、ゆとりや癒しを求める流れがあるようです。宅配の配送組み合わせは、多くなればなるほど複雑になります。でも、宅配の仕組みを止めれば、この複雑な課題は解決します。そんな課題に挑戦している企業が、衣料品大手のワークマンになります。ワークマンは、5年以内に電子商取引(EC)での宅配を全廃し、店頭受け取りのみにする計画を進めています。速く安くの配達競争に背を向け、店舗網を生かした宅配なきECに踏み込むわけです。店頭受け取りに一本化すれば、EC向けの設備や人員が不要になります。EC専用の物流センターを運用する場合の経費は、宅配のコストが店頭への配送のおよそ10倍になっていました。ワークマンでは、各店舗の商品を補充するために、トラックが1日1回1台あたり約10店を巡回しています。トラックの荷台の隙間に、ECの商品を載せれば良いという合理的工夫です。飲食料品のような「すぐに必要」という商材ではないことも背景にあります。ECに要するコストをカットすることで、低価格高機能な,製品を提供し続けられるとあえて、便利とされるECを廃止したわけです。変化する社会では、商品分野や生活スタイルによって、消費者の求める入手方法は大きく変わります。生物の世界では、多様性を確保しておかないと生物が滅びてしまいます多様化した社会には、ゆとりを入れても生産性を下げない方法はいくらでもあります。
AIやインターネットのある環境が人間にとって「自然」になりつつあります。「自然環境」を客観的に観察し、人間全体とAIの最適化を考えることがこれからの企業と消費者には大切なことになります。グーグルで検索しても答えは出てきませんが、ヒントになる情報は無限にあります。ヒントになる情報から自分の考えをまとめ、起業のアイデアを創ることは可能です。ぬいぐるみを海外旅行させる人は、圧倒的な少数派になります。圧倒的な少数派を対象にする場合、日本人だけを相手にしてもビジネスは成り立ちません。日本を越えて、世界の70憶人を相手にすれば、少数派でもビジネスチャンスになることもあります。たとえば、ウナギトラベルは圧倒的な少数派です。この起業は、価値ある「オンリーワン」で、かつ「ナンバーワン」になれる可能性を持っています。もっとも、アイデアだけでは、長続きしません。ウナギトラバルのサービスを始めた女性は、証券会社出身の方になります。彼女は、旅行やふいぐるみ、そして経理に関する知識をしっかり持っている方になります。ある種の人々のニーズを見つけ、そのニーズを実現することを支援するスキルを身に付け、事業を発展させてくことは楽しいことになるようです。
