人の接触を避ける状況を強いられたコロナ禍の時期には、オンライン飲み会やオンラインの勉強会が普通に行われるようになりました。ある大学の先生は、地方で活動している人たちとの勉強会を開くようになりました。勉強会が、ずいぶん簡単にできる雰囲気ができたのです。オンラインで集まれるようになり、飲み会も勉強会も楽になったものです。でも、彼はなぜか心身に疲労がたまるようになったそうです。コロナ禍の始まりのころ、1日かけてオンラインで講義をした頃のことです。最初は快調でしたが、話をしているうちにだんだんと疲れがたまってきたというのです。講演会や勉強会も、1~2時間ほどであればまだ良いのですが、がそれ以上になると疲れてくるのです。1日の終わり近くになると、体中が疲れでいっぱいになったような不思議な感覚になったそうです。オンラインというデジタルのやり取りだけでは、何か物足りなさを感じるようになったのです。息を吐き、息を吸う、そうしたやりとりを通してお互いがつながりあう体験が懐かしくなったそうです。人と交流している時、私たちは単に言葉をやりとりしているだけでないようです。今回は、コミュニケーションがオンラインや「face to face」の状況で、どのように効果をもたらすのかを考えてみました。
コミュニケーションは、話し手と聞き手の二者間でのやりとりが基本になります。人は会話しているときには、目の動きや表情しぐさなどで、言語外のメッセージを伝えることがあります。言語外のメッセージを、ノンバーバル(非言語)なメッセージといいます。人は、声の抑揚や姿勢、その場の雰囲気など、言語外の情報を重視することあります。相手のノンバーバルなメジセージを読み取ることで、誤解を少なくすることができます。ノンバーバルなメッセージを読み取ることは、言葉によるコミュニケーションのみにおける誤解を少なくすることが可能になります。メールでのコミュニケーションは、ノンバーバルなイメージがなくなります。そのために、メールでのコミュニケーョンは、誤解が生じるケースも出てきます。オンラインの発達した現代は、ノンバーバル(非言語)を理解する能力も求められる時代になっているのです。
グローバル化社会で、多様な文化や人々とうまくやっていくために必要な力が3つあるようです。その一つが、コミュニケーション力です。これは、周りの人と情報や意見を上手にやりとりする力になります。二つ目が、コラボレーション力になります。これは、周りの人とうまく協力しながら課題や問題に取り組む力になります。最後が、異文化を理解する力です。自分の国の文化を理解しながら他国や異文化の価値観や世界観もオープンに受け入れる力になります。私たちは、これらの考える力を強化していくことが求められています。もっともこれの前提には、以前に、考えるという心の営みがあります。この心の営みに欠かせないことは、目の前にある情報を適切に把握できることになります。心の営みに欠かせないことを簡単に言えば、「理解すること」や相手の話や文章の内容や意味がわかることです。人は、対象を理解することなしに考えることはできないものです。人は、感情と理性の動物でもあります。感情と脳の理性を無視し、もう片方を効率化したりすることはできない動物でもあります。感情と脳の認知のメカニズムは、複雑に絡み合っています。この複雑な認知のメカニズムを使いながら、対象を理解していくわけです。現在の社会では、大量の情報が流れています。人は大量に流れている情報の中から、新たな価値や知識を生み出すための力が求められているわけです。
女性の潜在能力の高さが、注目を集めています。女性の潜在的能力には、優れたものがあります。女性脳は、「右脳で感じて左脳で考え言葉にする」という行為を男性脳の数十倍の効率で行います。脳は、右脳と呼ばれる右半球と、左脳と呼ばれる左半球に分かれています。左脳は、決断や判断、選択をする顕在意識と直結して言葉や数字、記号を扱う機能を司っています。右脳は、視覚・聴覚・唄覚・味覚・触覚の五感から入ってくる情報をイメージに変える機能を持ちます。左右の脳をつなぐ情報の束は「脳梁」と呼ばれ、女性 の方が男性より20%も太いのです。脳梁が太いということは、左右の脳の連係の良さにつながります。女性脳は共感能力も豊富で、感じたことをしゃべり合えばすぐにコミュニケーションが通じていくわけです。残念ながら男性脳は女性脳ほど、感じたことを言葉にすることができないのです。多様な消費者のニーズを把握する能力、それを言葉にする能力は、商品やサービスの開発や販売に重要な力を発揮します。AIが活躍するようになっても、デザイナーや小学校の教員、そして芸術家や映画監督などの仕事は依然として残ると言われています。AIやロボットは、他の人の意を汲みながら英知を集めて、何かをつくり上げていく仕事が苦手です。代替可能性が低い仕事の共通項は、創造性と協働性、そしてコミュニケーション能力が求められる仕事になります。これらの能力を持つ人たちが、女性なのです。女性が活躍できる環境を整備することが、これからの社会の繁栄を築くことになるようです。
これからの社会において、働く人々に望まれるものは、コミュニケーション能力に加えて、複雑な問題解決能力、創造力になるようです。さらに、これらの能力は、異質集団の中で高められるということもわかってきました。いわゆる異質の人材を集めたチームによる付加価値の高い生産性が、注目を集めているわけです。でも、せっかく優秀な人材を集めて編成したチームが、思うような成績を上げないケースも見られます。その中で、生産性を上げているチームは、メンバーが互いの考えを尊重する気風があることが分かっています。間違いを認めたり、リスクを冒してチャレンジしたりできる安心感が、チーム内にあるというのです。この場合ある面で、コミュニケーション環境が、整っているともいえるようです。話し合いが、すぐに通じる関係が成立していのです。相手が間違っていても、すぐに修正して、次の段階に移行できる体制が出来ているのです。相手を陥れ、忖度を求めることもない職場とも言えます。心理的安全性のレベルが高いチームは、生産性において高い評価を得ることが多くなります。これらの心理的に安全な職場やチームで働くことが、必要な能力を高めていくことができるようです。
余談ですが、私たちにとって、他人は自分と違う人間ですから、意見が合わないケースが起きてきます。コミュニケーションは、話し手と聞き手の間でのやり取りが基本になります。AさんとBさんの会話で、お互い意思疎通がうまくいき、お互いが納得すれば、ハッピーになります。でも、AさんとBさんの会話で、Aさんの話す内容をBさんが間違って理解すると問題が起きます。分かりやすい事例では、先生が子どもに算数の問題を出して子どもが間違った場合、先生は子どもに間違いを指摘することになります。職場では、間違いを起きないような仕組みがあります。それでも、ミスが起きます。3番目は、意図的なウソが入る場合です。Aさんが詐欺師で、Bさんを言葉巧みに騙します。Bさんは、Aさんの言葉をそのまま素直に信じてしまう場合になります。ここに、最近はやりのオレオレ詐欺が発生します。4番目は、「本音」と「建て前」を前提に話し合いをするケースです。Aさんは、本音と違うメッセージをBさんに発信します。Bさんも心得ていますとAさんの本音を見抜いて、笑顔で応対しているケースです。いわゆる、「狐と狸の化かし合い」を見抜いた応対になります。政治家がお金を不足しているときに、業者が補填するときなどに使われる手法かもしれません。言葉のやり取りの中には、いくつかの理解するレベルがあります。レベルに応じた対応が、コミュニケーション能力ということになるのかもしれません。
最後は、コミュニケーションの深化というお話になります。教育学では、正統的周辺参加という学習理論があります。これは、「学び」を個人の中に蓄積される知識や能力として捉えない特異な教育理論でもあります。この正統的周辺参加とは、周辺から次第に中心へと参加していく過程を学習と捉える学習論になります。職人の工房を想像すると、イメージがつかみやすいかもしれません。職人は、知識を教科書で学んで一人前になるわけではありません。見習いの職人は、兄弟子たちの仕事を見ながら学んでいきます。身体の動きを見て、学んでいくという過程を取るわけです。正統的周辺参加で重要な点は、学習が単に個人だけの成長ではないということです。見習いの職人は成長しながら、次第に重要な仕事の技術を磨いていきます。工房に所属し、そこで職人の一員として仕事に従事することで、次第に技術を蓄積し成長していきます。見習いが成長することによって、工房も発展していきます。見習い職人が兄弟子や親方に教えられながら成長することで、職場全体が良くなるという捉え方をするわけです。あるコミュニティへの参加する過程と、その過程で生じるコミュニティの変化全体を向上と捉える思考形式になります。システム全体を、教え教えられる学習として捉えるところに、正統的周辺参加という考え方の特徴があります。チームの生産性が向上し、企業が向上し、地域が豊かかになる仕組みは、単なる言葉のやり取りで実現するものではないようです。自己も、他人も、理解し合い、心理的安全地帯で働き、その働きが、自己も他人をも豊かにする仕組みの実現に、コミュニケーションが働いているようです。そんなコミュニケーション能力を身に付けたいものです。