東京23区は、地方が人口減少になっているにも関わらず、人口が増えて経済繁栄を謳歌しています。そんな東京23区にも心配事があるようです。この23区のゴミを埋めるために、処分場を東京湾に広げてきた経緯があります。心配事は、可燃ごみの焼却灰や不燃ごみ、粗大ごみを埋め立てる処分場の残りスペースが減っていることです。東京湾には、船の航路確保のため拡張余地がなく、現在の処分場で最後となっています。都民の努力で、10年前から14%減ったのですが、今のペースが続けば、2046年度には満杯になるのです。更なる、ゴミの減量に努め、現在の処分場の延命が「現実的な対策だ」となっているようです。ゴミの減量対策には、希望もあります。都の推計では23区の人口は2035年まで増え、2050年時点も現在並みになるということです。ゴミの減量に都民が、努めて頂ければ、少しの希望が出てきています。もっとも、処分場が満杯になれば、他地域にゴミを運ばざるをえず、東京と地方の押しつけ合いになりかねません。余力が残る他地域にゴミを運べば、経費増加でごみ袋の有料化や値上げにつながる可能性もでてきます。人口が1億人を割る2050年にかけて、ごみの排出量が全国的に減る可能性は高くなります。人口が減る地方では土地に余裕ができ、処分場を造りやすくなります。東京のゴミを有料で引き取り、さらにそのゴミのリサイクルで、利益を上げる地方の自治体も現れるかもしれません。今回は、ゴミ問題について考えてみました。
日本の年間のごみ総排出量は、2024年3月時点で4,034万トンになります。この10年は毎年減少を続け、 2013年度と比較すると466万トン以上減っているのです。ゴミの処理事業経費は、2兆1290億円になっています。これを国民1人当たりに換算すると、1日のごみ排出量は901グラムとなります。国民1人当たり、毎年1万6000円を超えるゴミ処理費用を負担していることになります。ゴミの処理には、ゴミの収集運搬、焼却処理、資源化、最終処分等の過程で多額の費用がかかるのです。特に、燃えにくい生ゴミが4割を超えて、その処理に多くの費用をかけているようです。私の住む福島市で行っている広報では、生ごみの水切りの徹底、食品ロスの削減、分別の徹底、堆肥化の徹底を謳っています。福島のゴミは、生ゴミが40%、次いで紙類20%、草枝類15%となっており、この3つのゴミを減らすことが重要だと訴えています。ゴミの量が多ければ、家庭から出すゴミを減らせば良いわけです。ゴミを減らせば、ゴミ焼却に使う燃料が減ります。そして、より燃焼効率を高めるには、ゴミの水分を減らせば良いわけです。日本では、生ゴミを焼却します。ゴミの成分は、水、可燃分、灰分になります。ここで燃えるゴミは、可燃分で炭素と水素の割合が多いほど発生熱量が大きくなります。焼却する際には、水分と灰分を除いた方がよいことになります。水分と灰分は発熱量を低下させ、灰分は灰となって残るので、焼却にとっては邪魔者です。たとえば、水分と灰分の合計が90%だとすると、残り可燃分の発熱量は10分の1になってしまいます。水分は蒸発する際に、熱を奪うので発熱量はさらに小さくなります。家庭での分別の目的は、処理しにくい邪魔なものを除いて処理効率を高めることもあるのです。
ゴミの量が多ければ、家庭から出すゴミを減らせば良いわけです。ゴミを減らせば、ゴミ焼却に使う燃料が減ります。そして、より燃焼効率を高めるには、ゴミの水分を減らせば良いわけです。コンポストによる生ゴミの減量に、挑戦している知人がいます。コンポストとは「堆肥(compost)」や「堆肥をつくる容器(composter)」のことになります。彼は、コンポストによるゴミの減量に挑戦しています。家族7人分の生ゴミを、毎日コンポストに食べ残したご飯や麺、肉、魚、野菜などを入れています。この生ごみを、微生物を活用して発酵と分解させていました。分解されたゴミは、堆肥になり、家庭菜園や花の栽培に活用できるはずでした。面白いことに、2022年9月から2023年9月の1年間、朝と夜に生ごみを130リットルのコンポストに入れても、容器はまだ余裕があるのです。でも、困ったことがおきました。コンポストの下の方の生ごみは堆肥になっているのですが、取り出すことが難しいのです。上から取ろうとすると、まだ分解されていない生ゴミを取り出すことになります。そこで、知人は2つ目のコンポストを購入することになりました。片方のコンポストが完全に堆肥になるまで、1年間の余裕を持つことにしたわけです。この一家のように、生ごみを出さない家庭が増えれば、燃えにくいゴミが減るために、焼却処理に使われる燃料が節約でき、二酸化炭素の排出量が削減され、地域の環境も地球の環境も改善されるという流れになります。コンポストの活用は、身近な自分の暮らしの工夫により環境の改善への小さな1歩になるというわけです。
コンポストを使わずに、生ゴミを減らす方法もいくつか工夫されるようになりました。このことを実現するには、再利用やリメークに注意を向けることになります。食べ残してゴミとして捨ててしまっていたものも、翌日にリメークして食べることも一つの方法です。たとえば、捨ててしまっていた大根やニンジンの皮も、捨てずに食べるようにします。カレーとして煮込んでしまえば、食物繊維質が豊富に摂取できて、胃腸にやさしい食べものになります。野菜にもよりますが、多くの場合、皮や芯などにも栄養が豊富に含まれています。捨てていたものを、翌日にリメークして食べるなどすれば、食費も節約できるわけです。家から出るゴミを可能な限り少なくするように意識することが、節約につながり、健康状態を良好に保ち、結果として、燃料を節約し、市の財政を助け、環境に貢献するわけです。近年は、このような生活様式を支援する企業も現れています。その一つに、東京大学発のべンチャー企業、fabula (ファブラ、東京・大田)があります。この企業は、コーヒーの抽出かすやミカンの皮を建材や雑貨に変える技術を開発しました。fabulaは、コーヒーの抽出かすやミカンの皮を建材や雑貨に生まれ変わらせています。また、丸ごと食べられてゴミが出ない野菜や果物の開発に取り組む起業も出てきています。さらには、焼却灰をセメント原料などに再生する手法が拡大しています。東京湾の処分場ではなく、建物や道路に分散している流れもあるようです。
環境意識の高まりや人口減少にともなって、排出量は、2030年度に3700万トンと2015年度比16%減る見込みになっています。その減少するゴミの中で、確実に増えるものが紙おむつといわれています。この廃棄量は2030年度に250万万トンと2015年度比で3割程度増えると予想されています。紙おむつの処分量は2030年に2015年比で3割増え、一般廃棄物に占める量は7%まで拡大するとされています。排出量全体に占める紙おむつの割合は7.5%と2015年度の4.5%から高まる見込みなります。今後は高齢化で、特に大人用紙おむつの使用がさらに増えることが予想されるわけです。乳児用と大人用を合わせた国内生産枚数は、2019年に229億枚と2011年から6割増えています。水分の多い紙おむつは大半が焼却処理され、二酸化炭素の排出や焼却コストが課題となっているのです。この問題解決にユニ・チャームや花王、そしてメタウォーターが取り組み始めました。ユニ・チャームなどはおむつの生産を手がける企業ですが、メタウォーターは、水道向けのオゾン処理設備で約3割の国内シェアを握る企業でもあります。取り組む手法は、浄水場で使うオゾン処理により使用済み紙おむつの汚れや臭いをとる仕組みを作ることです。砕いた使用済みの紙おむつを、水に入れてオゾンを吹きかける手法を取ります。オゾン処理は、強い酸化力を持つオゾンを当てて、臭いや色のもとになる有機物を分解するわけです。ユニ・チャームや花王、そしてメタウォーターとタッグを組んで、メタウォーターが取り出したパルプや樹脂を再利用する仕組みにしました。おむつメーカーは、殺菌や漂白処理して、パルプなどの素材別に分けた後、紙おむつに再生する道を選んだわけです。ユニ・チャームや花王も、紙おむつの再利用に着手しています。また、P&Gは、日本で使用済み紙おむつの再利用を始めると発表しました。日本国内の紙おむつのシェアは、この3社で7割を占めています。もし、すべての使用済み紙おむつを回収できれば、メーカーには再利用で材料費を減らすことができます。これらのメーカーが想定していることは、おむつから材料の5割を占めるパルプを取り出し、オゾンで滅菌して再利用することになります。
現在、ゴミの減量やリサイクルの重要性が高まっています。でも、リサイクル製品には難しさがあります。安定した量の確保が難しく、回収のコストがかかります。異物混入のため再資源化のコストがかかり、純度が低いので製品の質が劣ります。質が劣ると、市場の競争力が低くなります。このようなことを防ぐには、リサイクルの時点での品質の維持が求められます。このようなことに、挑戦した自治体があります。鹿児島県大崎町は、処分場の延命のため1998年に分別の強化を始めました。大崎町の分別は、紙おむつなど28品目に上り、リサイクル率は22年度で84%と全国で最も高い評価を受けています。東京23区のリサイクル率は、2022年度で17%と全国平(19.6%)を下回っています。現在は、リサイクル事業がスムーズにいっていますが、苦労もありました。当時の住民説明会では「ビンや缶を洗うのは面倒だと職員が怒られた」場面も多々あったようです。450回以上に及んだ説明会で根気強く訴えた結果、ビンや缶を洗う分別が定着したとのことです。技術革新も必要ですが、一人ひとりのゴミ減量とリサイクルに向き合う姿勢が大切になるようです。