シニアの人達には、さまざまな福祉サービスが、行政からに提供されるようになりました。その提供により、自治体の財政的負担が増えています。この負担が、重荷になっている自治体も多くなりました。そこで、財政的負担を減らし、なおかつシニアの満足度を高める仕組みがあれば、ハッピーです。満足の一つに、健康寿命を伸ばすことがあります。高齢者の社会参加が、健康寿命を延ばすことを明らかにする研究が増えてきています。食事・運動・社会参加の三つの要素を考慮しない高齢者の死亡率を100とします。食事・運動に気をつけて、よい習慣を持っている高齢者の死亡率は68に減るというのです。この食事と運動に社会参加を加えると、死亡率は49にまで低下するのです。社会参加を加えると、健康寿命が延びると言うわけです。この数字は、社会参加の意義がいかに高いかを示す指標になります。社会参加という行為は、人から認められているという強い肯定感をもたらすことが分かってきました。この肯定感は、コミュニティにおいて生まれるものです。人々がコミュニティで助けあう姿や行為を通して、財政的負担が軽減するケースが生まれます。21世紀における福祉のスキルは、他者と協働して新しい仕組みをつくりだすことが基本になるようです。今回は、地域を豊かにする社会参加について、学童保育や子ども食堂の視点から考えてみました。
待機している学童の児童数が、1万1686人になっています。この数字は、過去最高だった2019年に次ぐ高水準なのです。子どもが小学校に進学すると、親が預け先に困る現象を、「小1の壁」と呼ばれています。共働きの方は、子どもの預け先の確保に苦労している実態がうかがえます。公的学童には、2つのパターンがあります。1つは、公設公営、公費で賄い、公設民営は国や自治体が補助するものです。もう1つは、自治体が設置し運営を民間に委託する「公設民営」になります。困ったことは、公的な学童保育施設を希望しても入れない待機児童が増えていることなのです。このような流れの中で、民間の学童保育に注目が集まっています。共働き家庭の間で放課後の小学生を預かる民間の学童保育への関心が高まっているのです。公的施設に比べ、利用時間が柔軟で習い事などの選択肢が幅広いためになります。民間学童は、企業が児童福祉/法に基づく届け出を市区町村に出さずに運営をします。民間学童は、児童福祉法の枠外で実施することも可能です。順守基準がない代わりに、行政から補助金も受けない運営になります。
民間学童は、一般的に企業が児童福祉法に基づく届け出を市区町村に出さずに運営するわけです。そこに、メリットも生じています。そのメリットは、預かり時間などの利便性が高く、就業と育児を両立させたい共働きのニ一ズに合っていることです。民間の学童保育は、延長保育や送迎の付加サービスでも事業者によって違いがあることも多いのです。保護者のニーズや子どもの希望などが、公的学童よりかなえやすいケースも増えます。たとえば、「キッズベースキャンプ」は、最長午後10時まで頂かり、急な残業の場合にも対応しています。一般に、多くの民間学童は午後7時または7時半までを、基本料金でカバーしているようです。そこからの延長料金は、午後9~10時までなら30分1540円と割高になっています。民間学童は、民間企業のノウハウや強みを生かした習い事やプログラムを提供しています。キッズデュオは、学習塾大手のやる気スイッチグループが手掛ける民間学童になります。ここでは、いろいろな習い事を準備しています。習い事には、語学やプログラミング、スポーツなどをオプションとして用意しています。民間学童の料金体系は、「子の預かり」、「習い事」、「送迎」の3つが主な費用になるようです。保護者の立場からすると、民間は料金が高く、公営のほうが料金的には良いのです。でも、子どもの成長や親の自由度という面からは民間学童が良いわけです。料金の相場は、公営が週5日利用で月3000~1万円程度と安くなります。民間学童の月基本料金は、3万~10万円程度と高くなります。この二者択一だけではなく、第三の選択肢があると、世の中は楽しくなります。その担い手が、シニアとなれば、より楽しくなります。
もう一方の課題は、シニアの生きがいになります。福祉の理想を求めて、ヨーロッパの近代福祉制度は試行錯誤を繰り返してきました。その福祉制度の変遷は、経済力や福祉政策だけでは幸福に到達しないことを示してきたともいえます。以前は、医療や栄養が行き届いていれば、良い福祉施設と認められていました。でも、それだけでは、人々は満足しない時代になりつつあります。時代の流れは、そこに適度な運動が加わります。さらに、現在の良い施設は、医療、運動、栄養、社会参加を適度に組みあわせて運営をするようになりました。社会参加において行われるコミュニケーションが重要になり、運動や栄養だけに気を配ることに比べの満足度が高いという評価があります。たとえば、フランスのパリの下宿屋では、高齢者の家主が大学生を優先的に下宿に入れるケースがあります。この同居で重要な点は、若者とのコミュニケーションを大事にしていることなのです。もちろん、高齢者と大学生の同居は、治安と介護の役割を果たすことになります。
年金生活者のAさんは、定年退職を迎えた当時、どうやって時間をつぶそうかと悩んでいました。年金受給者であれば、経済的に基礎部分は保障され、ある程度余裕ある生活ができます。社会的に見て高度な仕事であっても、彼らの中には、低い賃金で働くことを厭わない方もいます。彼らの中には、社会的に見て高度な仕事であっても無料のボランティアで行うこともあります。自分の知識と経験を活かし、誰かの役に立つことはシニアには、やりがいや楽しみの一つになります。このやりがいの一つに、シニア世代が中心になって行う「おもちゃドクター」がありました。大事なオモチャが壊れてしまい、メーカーにも修理を断られてしまい、子どもが困っています。そんな不運に見舞われた子どもたちを救うボランティア活動をしている人達が、おもちゃドクターです。オモチャが直ったときの子どもの笑顔が見たい一心で、日々の研さんを積んでいるといいます。壊れた宝物を直したとき、子どもの笑顔で感謝されることが本当の楽しみだということです。オモチャに限らず、絵画、陶芸、園芸、茶道、生け花、書道、パソコン、川柳、短歌、墨絵、人形造りなど多くの趣味があります。これらの活動の中で、子ども達への良い影響を与える活動に参加できた時、さらに充実感が得られるシニアも多いようです。
シニアのやりがいという点では、子ども食堂の運営もあるようです。日本では、十分に食料の買えない家庭が一人親の世帯で32%にも及んでいます。経済的理由から、必要な食料を買えない家庭が増えているのです。経済的に、学習に従事できない子ども達もいます。でも嬉しいことに、日本にはその悲惨な実情を見過ごすことのできない人達もいるのです。彼らは民間団体を立ち上げて、無料で安価な食事を提供する「子ども食堂」の担い手になっています。子供の貧困問題への関心の高まりなどから、団体数は2017年の80から2019年には120に増加しています。このようなフードバンクの流れは、先進国を中心に広がっています。日本にも、この流れが押し寄せています。ローソンと三菱食品などの企業は、フ-ドバンクへの寄付を始めています。日本でもフードバンクへの食品寄付を巡り、法人税の控除対象になるようになりました。税務上、廃棄と同じように扱えるため「寄付のハードル」は下がっているのです。フードバンクは食品を無料で受け取り、食品を必要としている家庭や施設などに提供しています。ここで取り扱う食品量は、2015年時点で3800トンでしたが、2022年には、10,449トンにまで増えています。最も、企業が廃棄する食品は300万トンですので、0.1%強がフードバンクに回されていることになります。子ども食堂で、子どもの笑顔に接することは、シニアには心地よい社会参加になります。この子ども食堂に供給される食べ物は、1万トンどころか、300万トンもあるということになります。蛇足ですが、コメ騒動で備蓄米が大きな話題になっています。この制度は、1993年の「平成のコメ騒動」を機に1995年に始まりました。政府は毎年約20万トンのコメを買い入れ、100万トンを目安に備蓄しています。そして、5年たつと、古い米は家畜用に払い下げていきます。この20万トンを、子ども食堂に提供する仕組みを作ることも、楽しい工夫になります。シニアが、3000万人います。3000万人が、選挙でこの仕組みを実現する候補や政党に投票すれば良いのです。ほぼ、実現することになるでしょう。
最後になりますが、これからの若者は、グローバルビジネスに要求される能力や,技術を磨くことが求められます。これらの能力や技術を身につけるためには、小さい頃からの積み重ねが必要になります。準備を継続的に行っていないと、その育成はかなり困難ということになります。学童保育は、継続的学習の場として、重要な位置を占めています。でも、現状では、公営にしても民間にしても、「帯に短し、たすきに長し」という状況です。公営学童は、あずかることが主になっています。民間学童は、費用が高いと言う難点があります。日本の子どもすべてが、グローバルな能力を身に付けて、未来の日本を豊かにしてもらいたいと誰もが望んでいます。そんな役割を、シニアが担えればやりがいが出てきます。子ども食堂が、食事をし、学習をする場として成立する環境は整いつつあります。企業は、次世代の高度人材を求めています。工夫次第では、子ども食堂が知的訓練の場になります。遠隔操作による教育を、子ども食堂で行うことが可能になれば、経済格差による教育格差は是正されるかもしれません。シニアが培ってきた経験や知識などの知的資産を、次世代の子どもたちに移転していくことは環境が整えば、格安に実現できます。事業には、人材(仲間)、場所(公共施設、民間施設、空き家)、知恵(工夫)が必要です。人材は、人生経験の豊富なシニアになります。場所は、統廃合された後に残った校舎などになります。知恵は、地域の工夫になります。仲間と語らう場所があると、活動がスムーズに行くようです。その候補が、統廃合される小中学校になります。たとえば、2022年度、福島県内における市町村立小中学校は595校になります。1969年度には1070校があり、2022年度の595校と比較すると6割ほどになっていることがわかります。この使わなくなった校舎や体育館、給食施設などは、子ども食堂にも、学習の場にもその活用が考えられます。