シニアを元気にする世俗的仕掛け  アイデア広場 その1466

はじめに

 厚生労働省によると、2022年の日本人の平均寿命は男性が81.47歳、女性が87.57歳になります。健康上の問題に制限されずに日常生活を送れる期間を示す健康寿命は、2019年時点で男性が72.68歳、女性が75.38歳でした。健康寿命と平均寿命の差は、男性で約9年、女性で約12年とされています。ある意味で、余生を男性が9年、女性が12年の不自由な生活を暮らすことになります。できれば、この9年から12年の不自由な生活を経ることなく、健康寿命と資産寿命を享受したいものです。シニアは定年なり、そこで仕事人生が、終わるわけではありません。定年になってから、自分の得意なスキルを活かした第二の人生を始める選択肢もあります。年金という制度は十分ではありません。でも、一定の生活が保障されています。十分でない生活を、切り詰めて生活をしていく生き方もあります。欲張りな方には、少しだけ働いて、年金プラス仕事の収入という選択もあります。「人生100年」に近づきつつある時代では、「健康寿命」と「資産寿命」をいかに延ばすかが課題になります。今回は、この課題解決に挑んでみました。

1,ウオーキングが健康寿命を伸ばす

 歩ける方は、健康と言っても良いでしょう。1日に8千歩以上を歩くと、死亡率が下がることはこれまでの研究で分かっていました。でも、週にどれくらいの頻度で歩けば、効果があるかよく分かっていなかった面があったのです。そこで、京都大の井上浩輔助教らのチームが、その効果について調べました。研究費が十分でなかったようで、米国で2005~06年に実施された3千人余りを対象にした健康調査の歩行データを分析したのです。チームによると、1日当たりの平均歩数は男性が約6700歩、女性が約5800歩になったそうです。この対象から、週に1日も8千歩以上を歩かない人と比べ、週1~2日歩く人は10年後の死亡率が14.9%低下したという結果を得ました。一方、週3~7日歩く人は16.5%の低下という結果でした。分析の結果は、1日8千歩以上を週1~2日歩く人と週3~7日歩く人と同程度死亡リスクが減少するというものでした。運動する時間が毎日取れなくても、週の中で数日だけ8千歩以上の運動することにより、健康が維持できるという推測が成り立ちました。

 ウオーキングは、軽い有酸素運動になります。このウオーキングは、末梢で循環する血液の量が増加し、疾患予防の効果があります。確かに、血液には、各器官に酸素や各種栄養素を運び供給する働きがあります。日本では、ウオーキングが1日7000~8000歩の歩行が有効とされています。欲をいえば、1日8千歩程度の運動で、その運動の中に中強度の運動5分程度入れるとより効果があがります。この中強度の運動を5分間以上すると、うつ病の発症率は10分の1以下になるという報告もあります。ちなみに、中程度の運動とは、歩きながら仲間と話がちょっときついかなという程度の運動になります。もっとアバウトな考え方は、65歳以上のシニアが歩いている分には健康だという見方もあるようです。そして、65歳以上はどんな動きでも良いので、身体連動を毎日40分程度すれば良いという意見に落ち着くようです。

2,ウオーキングの効用

 2023年版の「過労死等防止対策白書」では、うつ病についての言及がありました。人間の感情には、喜び、高揚、幸感、快感、悲しみ、落胆、恐怖、不安、怒りなどがあります。これらの中で不安などの負の感情が多くなれば、「うつ」の状態になりやすくなります。一方、これらの負の感情を適度に発散することを行えば、より良い状態が保てることになります。この発散法の一つに、ウオーキングなどの運動があるわけです。もちろん、運動だけでなく、趣味などの楽しいことも発散の選択肢になります。ある実験で、運動の重要性が明らかになりました。うつ病の患者に、薬のグループと運動処方のグループに分けて実験を4ヶ月間行ったのです。うつ病の患者は、ドーパミン、セロトニン、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質が減少しています。これを、薬のグループは抗うつ剤で補うことにしました。この結果は、どちらもグループにも同程度の幸福感をもたらすという有意義な結果をもたらしました。この幸福度の改善は、運動が抗うつ剤と同じだけの効果があることを証明したわけです。さらに時間が過ぎるにつれて、運動の効果の優位性が浮かび上がってきました。抗うつ剤を飲んだグループは、6ヶ月後38%が再びうつ状態に戻っていたのです。運動療法をしたグループは、6ヶ月後の再発率はわずか9%でした。運動療法は、「うつ」の状態から90%以上を解放したことになります。

 ここに、面白い調査があります。アシックスは、運動が人間の精神に及ぼす影響を可視化するシステムを開発しています。運動が精神に及ぼす影響を可視化するシステムは、「マインドアップリフター」というアプリになります。この実証実験では、運動時間と精神をポジティブする状態を分析しました。世界中の参加者が実際に行ったこの実験では、精神をポジティブする運動時間が15分9秒となりました。一定の運動が、精神にポジティブな影響をもたらすのは間違いないようです。運動が脳に刺激を与えたり、血流を増進させたりすることも分かっています。次の課題は、各個人にあった運動を把握し、それをスムーズに実践する方向に、どのように持っていくかになるようです。

3,資産寿命と健康寿命を伸ばす優待株

 桐谷広人さんは、優待株の投資家として有名です。彼は、優待株への投資だけで4億円の資産を築いています。桐谷さんは信用取引をしないで、現物株取引のみで優待株投資が中心になります。極意は、優待品を活用して支出を抑え、余裕資金を投資回すことです。金で払うのは、家賃や光光熱費、電話代などだけのようです。楽しいことに、ほとんど現金を使わず優待品や優待券で生活しているのです。身に着けるもの、食べるもののほとんどは優待で賄っています。株価が安い銘柄の目安は、配当と優待を合わせた総合利回りが4%以上であることにしています。このような運用の中に、資産寿命を伸ばすヒントがあるようです。

 「健康寿命」と「資産寿命」伸ばすヒントは、「ウオーキング」と「優待株」になります。金融庁が推奨する2000万円は難しくとも、1000万円の資金は、国民の半分程度の方が持っています。この資金を、桐谷さんのように優待株の形式で保有します。1000万円すべて株で保有するには、リスクが伴います。300万円ほど優待株で保有することになります。そこで桐谷の登場です。桐谷さんが推奨する優待株は、300万円程度で20銘柄(100株)ほど購入できます。この20銘柄の優待+配当の平均は、5.1%になりました。さらに配当のみでは、3.4%でした。単純に考えて、年間10万円程度の配当金を得て、6万円ほどの商品やサービス券を受け取れることになります。これはこれで、お小遣いになります。もう一つの特典は、20銘柄の配当を郵便局で受け取る仕組みにすることです。この仕組みを採用すると、年間40日、郵便局に通うことになります。この時、8000歩以上歩くコースを作っておきます。この郵便局通いは、1週間に1度程度を8000歩以上あるく機会を得ることになります。少ないながらも、株の配当を得ながら、健康寿命と資産寿命を享受できる仕組みができるというわけです。「ウオーキング」と「優待株」に不満があれば、600万円の資金で40銘柄を購入し、80日のウオーキングと年間20万円程度の配当金と、12万円ほどの商品やサービス券を受け取る工夫をすることになります。株の銘柄を増やしたり減らしたりしながら、健康寿命と資産寿命を調節することも、楽しい老後になるかもしれません。

4,豊かな生活を求める

 豊かさは、金額の多さだけでないようです。ある新聞専売店のご主人が高齢者になり、この専売店を替わってくれと頼まれた若者がいます。若者は、専売店の権利を借金して、300万円ほどで買ったのです。この専門店では、配達の収入の他に、広告の折り込み料やその他で収入を合わせると毎月50万円ほどになったそうです。300万円の借金も、半年で返せてしまいました。彼の面白いところは、この50万円の仕事を近隣のみんなに分けることにしたのです。いちばん少ない仕事は、3部の新聞を配達する隣のおばあちゃんになりました。おばあちゃんは、毎朝4時頃新聞を3部取りに来て、両隣に配って一日100円ほどの賃金をもらうのです。一日100円が1カ月になると、3000円ほどになります。このおばあちゃんは、3000円を使ってお孫さんにお菓子を買ってやるのが楽しみなのです。新聞配達をするようになって、隣の人に喜ばれたのは、朝刊が毎朝来るようになったことだといいます。そして、毎日のウオーキングが、このおばあちゃんの健康を守っているようです。

 お隣の韓国でも、これに似たようなお話があります。ソウルの宅配事業団では朝から高齢者が、宅配依頼が入るのを待機室で待ちかまえています。軽量の荷物や書類を届ける宅配事業団では、朝から高齢者が宅配依頼の入るのを待っているのです。65歳以上の高齢者は、ソウルの地下鉄が無料で利用できます。地下鉄を利用できるために、宅配を安く請け負うことができるわけです。安くて、確実であれば、依頼は多くなります。宅配歴6年の73歳の老人は、スマホの地図アプリを使いこなして配達しています。1日の稼ぎはおよそ2万ウォン(約1700円)で、月に50万~60万ウオンを稼ぐといいます。年金制度が十分に確立していない韓国では、月に50万~60万ウオンは年金を上回る収入だと言うことです。彼は、歩くのは健康に良いし、毎日決まって出かけるところがあって幸せだといっています。別の同僚は、「顔見知りと昼から安酒でだけで満足で幸せな気持ちになる」と話しています。ここでも、ウオーキングを毎日行いながら、健康と小遣いを稼ぐシニアの姿がります。

 障害者も働いて、生活のための収入を稼ぐ仕事をしなければならない時代になりつつあります。ある試算によると、障害者が地方で自立した生活を送るためには最低月11万円は必要になります。そこで、鹿児島のあるリーダーは試行錯誤を重ねながら、この稼ぐ仕組みを作り出したのです。障害者年金の7万円程度になります。そして、障害者が働いて4万円を、獲得出来る仕組みを作ったわけです。障害者の自立を支援する職員には、20万円の給料が国から入ってきます。この職員が自分の給料20万円を、5人の障害者に4万円ずつ分けると11万円になります。そして、職員と5人の障害者が一緒になって20万円を稼げばよいと考えたのです。びっくりするような発想です。このリーダー兼の職員と障害者5人の6人がワンチームとなって、農業で一緒に月20万円の収益を目指していく仕組みを発展させました。これは、職員1人で5人の障害者を自立させる仕組みでもあったのです。障害者は、覚えるまでに時間はかかります。でも、覚えてしまえば、一定の判断を必要とする作業もできるようになります。農産物を生育状況に合わせ、自主的にまたは求めに応じて作業ができるのです。もちろん、農業技術を健常者の指導の下で、作業を覚えながら、スキルを向上させていくことになります。スキルが向上すれば、1時間当たりの収入も当然増えていきます。結果として、グループ全体の収入が増えることになるわけです。このような仕組みを、シニアのグループに導入すれば、面白いビジネスに発展するかもしれません。

5,生きるためのスキルを身に付ける

 生活の中では、「おもしろいな、わくわくする」「やっていて楽しい」「幸せ」という感情が大切になります。会社勤めをしていた時には、労働時間が8時間、生理的時間が8時間、余暇が8時間という3区分でした。1年間で働く労働時間は、2080時間になります。でも、高齢者の余暇時間は、1日16時間になり、1年では5840時間になります。この5840時間を、楽しく過ごすことがシニアの義務でもあり、権利にもなります。1つの技能を伸ばすための時間は、1000時間といわれています。もっとも、より専門的な知識と技術の場合は1万時間ともいわれています。シニアは、元気に楽しく生きるだけで、社会に貢献できる恵まれた立場になります。その立場を利用し、さらに自分にも地域にも役立つスキルを身に付ければ、さらに豊かで充実した生活を享受できます。シニアは、楽しく長く生きるためにも、スキルを身に付けたいものです。

 優待株の勉強なども、その一つになるかもしれません。意外と大切なスキルに、良い姿勢での歩き方があります。理想的な歩行は、足指から押し出す力が、ふくらはぎ、ひざ、そして太ももへと伝わることになります。足指から押し出す力が、ふくらはぎへ動きが円滑に伝わらないと、正しい歩行ができないのです。足のアーチで体重を受けとめる歩き方は、蹴り出す力を生み出すことで効率よく歩けることに繋がります。足の指に体重がかかった状態で歩くと姿勢がよくなって歩行がきれいにみえます。正しい歩行は、血栓症なの症状から身体を守ることになります。このようなウオーキングを、年間1000時間かけてマスターすれば、楽しい老後を送れるというわけです。歩くことが苦にならなければ、活動範囲が広がります。活動範囲が広がれば、身体にも精神にも、そして社会的に良い影響を与えます。

 免疫細胞が正常に機能しているときは、ガン細胞は休眠状態になり悪化ないという知見があります。健康の状態が悪化した場合に、ガン細胞が活動を始めるようになります。ガン細胞の活動を抑制するものには、笑いがあります。この笑いのスキルを得るには、どうすれば良いのでしょうか。これも、1000時間の学習が解決してくれます。笑いをいつでも身の回り準備し、笑いを享受できる仕組みを作ることです。常に聞くためには、落語のコンテンツを身の回りから取り出せるようにしておくことです。NHKの落語ラジオ番組1年間を録音すれば、落語のコンテンツを完成させることができます。ウオーキングにより活動を広め、笑いと共に生活することです。もちろん、ウオーキング中に、落語を聞くことも、当然考えられます。それができれば、自分も社会も明るくなります。

おわりに

 歩くことに関しては、国土交通省も面白いデータを出しています。国土交通省のスマートシティ構想によると、1000歩の歩行が60円の医療費抑制につながるといいます。6000人の人口の町全体で、1日、6000人の方が1000歩ウオーキングすると、36万円の医療費を抑制していることになります。町民の皆さんは歩いて健康になり、健康になれば医療費が抑制され、町の医療予算は節約されるという好循環が生まれます。たとえば、節約された36万円を、抽選で毎日1人の方が貰えるとなれば、町民の方のモティベーションは上がることになるかもしれません。さらに、歩くことにより町内で消費される商圏の導線は、距離的にも時間的にも長くなり、町内の消費が増え、購買力が増加することになります。ウーキングは、シニア健康寿命にも、資産寿命に良い影響を与えるようです。さらに、元気なシニアが増えれば、地域経済にも寄与することになれば、みなさんがパッピーになります。

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