軍事用のドローンは、種類も用途も多様になっています。偵察、攻撃、兵器運搬など、多岐にわたる用途で活用さています。ロシアが飛ばしたとみられるドローンが、ウクライナ周辺のEU加盟国にも飛来するようになりました。2025年9月には、ロシアのドローンがポーランドやルーマニアの領空を侵犯しています。ロシアのドローンがポーランドに侵入した際には、北大西洋条約機構(NATO)が素早く動きました。ポーランドの戦闘機とともにオランダの戦闘機が緊急発進し、侵入したドローンを撃墜し、NATOの即応能力を示しました。でも、この撃墜という成果には、課題もあるのです。戦闘機のスクランブルにかかる費用は、1回のスクランブルあたり約800万円になります。ロシア製ドローンは約10万円の撃墜に、800万円を使っていては、防御側の負担が多すぎるのです。課題があれば、それを解決する人たちが現れます。中国航天科工集団は、飛行妨害電波を出すドローンガンやミサイル、高射砲など複数の攻撃機能を一括で搭載し、飛来するドローンを機動的に迎撃するシステムを開発しました。高出力レーザー砲システムは、ドローンの撃墜コストを1発あたり200円程度に抑えられるようです。数秒の照射でドローンを破壊し、すぐに次の射出に移行する。すでに中東などへ輸出していると言われています。
その中東では、 2019年9月、サウジアラビアの石油施設が攻撃されました。この攻撃は、イエメンの武装組織フーシがドローン10機を使って行わったものです。この攻撃では、サウジの生産量のおよそ60%に相当する日量570万バレルが停止、世界への供給不安から原油価格が一時急騰しました。もちろん、サウジアラビアも無策であったわけではありません。この裕福な国は、米独仏の高度な対空防衛システムをもっていました。でも、この高度な対空防衛システムが、ローテクの小型ドローンによって破られたのです。さらに、ドローンとその使用方法は、進化していきます。ウクライナ軍は、2025年6月1日にロシア空軍基地への大規模なドローンを攻撃しました。この「クモの巣」と名付けた作戦には計117機のドローンが投入されました。「クモの巣」作戦は、ロシア国内の4カ所の軍用飛行場を同時に攻撃したのです。117機の製造費用は、計2億円程度にとどまり、ロシア側に与えた損害はその5000倍に上る1兆円との推計があります。ロシアが保有する戦略爆機の3分の1が、この作戦で失われたのです。作戦では、大型トラックの荷台に攻撃ドローンを隠し、各地の空軍基地近くに配置しました。そこからの攻撃になりました。
ドローンの利用は、従来の戦争の概念を大きく変えつつあります。ドローンの先進国は、中国になります。その中国のドローン企業では、DJI社が有名です。このDJI製の価格が約8万円のマビック・エアー2が、どのような部品で作られているのか調べてみた会社があります。約230種類ある部品のうち、8割が一般電化製品の部品を使っていたのです。ドローンで使われている1枚の基板には、制御や通信半導体やセンサーなど大小10個の半導体部品が高密度で実装されています。今回、分解した機種のマビック・エアー2には、この基板に多くのアメリカ製部品が使われていました。このドローンの部品価格の原価は、14000円で、原価率は20%でした。1000円を超える高価な部品もバッテリーとカメラくらいにとどめているのです。一般的に軍事技術は、すでにある技術に一つの工夫を加えながら使用されています。ウクライナも中国のDJI社と同様に、ドローンや関連部品の内製化を一気に進めました。ウクライナでは、ドローンを通じて兵器をネット通販のように調達するシステムを導入しています。ロシアも、いくつかの国と協力し、技術を導入、生産数を増加させています。ドローンの普及に対抗するため、各国はドローン防衛技術の開発を進めています。このドローン技術の開発と並行して、その脅威に対抗するための防衛戦略も進化させています。その防衛戦略には、ドローンのサプライチェーンに関することがあります。有事の際に敵国に部品供給を止められれば、戦闘の継続自体が難しくなります。ドローンの盾と矛の関連で、部品の供給にくさびを打ち込む工夫を国と企業が手を携えて行うことも重要になるようです。
一方、部品の供給にも、工夫が求められます。その事例が、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの戦闘員が持っていたポケベルが、一斉に爆発を起こしたのです。爆発は、2024年9月17日でした。この爆発で、約40人が死亡し、3000人規模の負傷者がでました。この布石は、米国の無差別監視に端を発します。9.11のテロが起きた後、全世界の人々に対する無差別監視が始まりました。スノーデンの暴露により通信傍受の実態が、明らかにされました。アメリカだけでなく、ロシアも中国も、そしてイスラエルも無差別監視や通信の傍受を行っています。一時期、アメリカ企業が暗号化のソフトを開発するとき、NASAは企業と協力して、ハードとソフトにセキュリティホールを埋め込みました。IT企業がソフトを開発するとき、NASAは暗号にトラップドアを仕込みました。トラップドアからは、暗号が容易に引きだせるようにしたわけです。このような技術を、ヒズボラは恐れて、ポケベルを利用したのです。イスラエルは、その上をいったことになります。この爆発は、イスラエルの対外特務機関モサドが指揮したと欧州メディアは伝えています。またヒズボラは、イスラエルが、特定の通信による遠隔操作で爆発させたとみています。ここからドローン攻撃に対する防御法のヒントが出てきます。民生用のドローンの部品に、セキュリティホールを施すわけです。これから、ドローン対策として高出力レーザー砲システムの開発は必然的に進化していきます。レーザー照射が少しでもあった場合、ドローンの機能が停止するような部品を、サプライチェーンを通して複数入れておくことになります。レーザーの性能にだけ頼るのではなく、部品に安全弁を入れておく知恵になります。
