最近、ペットにお金や時間をかけることを、惜しまない愛好家が増えてきました。そんな愛好家は、ペットの健康や病気にもお金を使うようになっています。増えれば、そこにビジネスチャンスが生まれます。米国では、ペットビズネスの新しいサービスにオンライン医療が登場しています。遠隔診療サービスの出現には、理由があります。それは、家畜だけでなくペットの獣医が不足していることです。従来の動物病院が活発な需要についていけず、遠隔診療がその不足を埋めているためなのです。ペット関連市場の活況を受けて、犬や猫などのオンライン診療を手掛ける起業が増えていいます。台頭しつつある起業は、さらに広範なペット向け医療サービスを提供しようと事業を拡大しています。ペット用品のネット通販を手掛ける米チューイーは、オンライン薬局に進出しています。このチューイーは、独自の遠隔診療サービスやペット保険も手掛けています。ペット関連の小売業は、事業を拡大するため、既存のペット向け遠隔診療プラットフォームとの提携や買収に目を向けています。ペットの遠隔診療プラットフォームから得られるデータを活用しながら、健康関連の商品やサービスを展開する企業が増えつつあるようです。
現在、ペット産業で急成長を期待される国は中国になるようです。中国では、若者やシニアの間でペットを飼う人が増えています。上海の工業地帯を再開発した西岸地区では、最近では犬や猫を連れた人の姿が目立つようになりました。この西岸には、「ペット友好店」が集まっています。このお店は、ペット連れを受け入れるだけでなく、ペット用の食器や水を出すなどのサービスを行っています。入り口に、体重が4kg以下の小型犬であればペット用の椅子を提供するなどのサービスもあります。30代のご夫婦は、西岸の川沿いにあるカフェでコーヒーを飲んでいます。このご夫婦は、銀色の靴を履いた白いマルチーズのフエラーリくんの髪をセットしながら話しを楽しんでいます。ご夫婦は、「食事などで出かるときは必ずこの子と一緒で、ペットに友好的な店を選ぶ」と話してくれました。現在の中国において、若い世代の間では、学業や就職といった様々な場面で過当競争などによるプレッシャーあります。様々な場面で、過当競争などによるプレッシャーが高まり、ペットに癒しを求める人も多くなっているようです。
ペットによる癒しの効果は、経験則から分かっていました。その事例は、認知症の患者が愛犬と触れ合うことで良くなることが多数報告されていたことです。近年はその理由が、明確になりつつあります。その理由は、犬と触れ合うことでオキシトシンの分泌量が増えることが主な原因でした。犬と触れ合うことが、認知症の患者さんや一部の精神疾患患者さんにプラスになっていたのです。犬を飼って触れ合うことは、社会関係力を向上させるうえで大きな意味があるようです。このホルモンは、幸福ホルモンとも言われ、この分泌量が高いほど、良好な社会関係を保てるようになります。オキシトシンは、親しい人と触れ合うことでも分泌されるように、ペットと仲良く過ごすことでもオキシトンンが分泌されます。オキシトンンが分泌されることで、幸福感が享受され、癒しの効果が得られるという流れになります。競争社会やストレス社会において、この幸福ホルモンは良い効果をもたらします。この効果を求める流れが、日本でも、中国でも急速に進んでいるわけです。
ペットビジネスの未来は、中国に大きな可能性があるようです。ペットブームが続くなか、家族の一員として一緒に出かけたいという需要を取り込む動きあります。でも、レストランがペット連れを受け入れるだけではなく、そこに付加価値を見出す工夫も求められます。中国では、不動産不況の影響で節約志向が続いています。その中で、ペット関連事業は、消費者の財布の紐が緩みやすい数少ない分野の1になっています。中国で飼われている犬と猫は、2024年に1億2411万匹で2019年と比べて25%も増えています。ペット用品やサービスなどの関連市場は、2024年に3000億元(約6兆5000億円) を越えているのです。たとえば、「ペット友好」をうたうカフェは、ペット連れでも利用できます。その中でも人気のあるお店は、サービスとしてペット用の食器や水を提供するところです。ペットとの外出需要を取り込もうとするのは、外食業界だけではありません。米マリオット・インターナショナルは、中国の一部の系列ホテルでペットプランを発表しています。ペットと一緒に泊まれるサービスを行います。ペット業界では、ペットと飼い主の心を捉える新たなサービス開発競争が今後も続きそうです。
ファミリーレストランなどでは、お子さまをお待たせしないことがとても大事なこといなります。お金を支払う大人を大切にすることが、当たり前のように思ってしまいます。でも、お子さまが笑っていれば、大人たちも食事を楽しむことができるのです。この流れは、家族の一員になったペットに言えることかもしれません。ペットがお店で、くつろぐ姿や美味しそうに料理を食べる姿は、飼い主に安らぎを与えることになります。食事は、栄養を取るだけの場ではありません。話し合い、笑顔で交流することが、家族の活力を高めます。乳児の無邪気な笑いは、大人たちを和ませます。同じようにペットの安らぐ姿は、飼い主に満足感をもたらします。ビジネスの分野では、ランチェスターの法則が有名です。この法則は、もともとは軍事戦略の中で研究されてきたものです。敵をすべてまとめて狙うのではなく、うまく部分に分割し、一つの部分だけ狙う戦略です。ランチェスターの法則は、一つの部分を集中して狙う方が、有利に戦えるというものです。この理論を、ペットの同伴者に利用するわけです。家族連れの場合、お子さんに狙いを絞ったほうが、お客様の満足度が上がり、お店の評価も高くなるというわけです。同じように、ペットの満足が、同伴者の満足になります。
余談になりますが、ペット産業側にも、人間向けと変わらぬサービスをペット向けに展開する企業が増えつつあるようです。あるペット企業は、人が多く集まる地下街に、「ペットのケアができるアンテナショップ」を開店しました。今までのペットショップは路面店が多く、地下街への出店は異例といわれています。でも、お客の評判は良いようです。ペットの食欲不振を心配した飼い主が、駆け込んで来る光景があります。「うちの子がペットフードを食べてくれないんですよ」と不安な表情で話します。それに対して、「10~15分ほど食べない場合はいったん下げて、時間を置いてから出してあげるといいですよ。」とベテラン店員の冷静な対応。相談に随時応じることで、信頼を得て、さらにサービスを強化する良いサイクルを作っています。経験豊かな店員は、飼い主に有益なそうアドバイスし、時には新しいフードを薦めることもあるようです。このベテランの方に言わせると、「高齢になったペットの健康に気を遣う飼い主が増えている」ということになります。そのアンテナショップには、動物用の酸素カプセルも設置してありました。他にも、老犬向けに車椅子の試乗や貸し出しを行っていました。ペットへの健康意識は、社会全体で高まっています。むしろ、日本や中国は欧米に比べるとやや遅れ気味という状況です。遅れたペット市場状況の中には、新しい課題解決型のビジネスチャンスが数多く見出せるかもしれません。高齢化社会は、シニア向けという新たな市場を生みだしました。人間に限らず、ペット市場においても、ペットの老後が長くなっている状況に応じたサービスが求められているようです。
犬や猫の平均寿命は、人間の約6分の1の寿命です。飼い主は、ペットの老齢化が進行する姿を見ながら過ごすことになります。長年一緒に暮らしてきたペットの最後を、看取ることは悲しいことです。飼い主が看取りに関わる時間が長くなれば、精神的に落ち込む状態に陥ることになります。ペットを飼っている人は、そうでない人に比べ、うつ病になる方が1.9倍も多いとう統計もあるようです。ペットとの別れは悲しいものです。でも、この悲しい別れを別の形で阻止できるケースが生まれています。そのケースは、クローンのビジネスになります。中国企業のシノジーンは、2013年にペットのクローンのビジネスを考えつきました。研究開発の当初は、中国農業大学の小さい部屋を間借りしたのが始まりです。創業メンバーや投資家にクローンの専門家らを招き、2015年に研究開発に着手しました。2017年に最初のクローン「竜竜」が誕生し、2018年からクローン犬を作るビジネスを開始したのです。シノジーンの従業員は、約300人で、約半分が研究開発などの技術者になります。顧客のなかにはペットが死ぬ前に皮膚組織を採取しておき、死亡後にクローンを注文するようです。愛するペットが死んでも「再会」できるということで、国内外から注文が相次ぐ状況です。この研究室を訪れると、来客を迎えるように、10匹以上の子犬たちが元気な鳴声をあげました。お互いに抱きついたりかみあったり、じゃれ合う2匹のプードル犬は、クローン犬です。この部屋ではプードルやアラスカンマラミュートなどのべアが育てられています。飼い主の中には、クローン犬をスペアとして、2匹求める方も多いようです。クローンの価格は、犬が5万ドル(約700万円)で、猫は4万ドルになります。すでに500匹近くが誕生しています。このなかで、犬が全体の3分の2以上を占めています。誕生から約3カ月後に、顧客に引き渡す仕組みです。このようなビジネスも、ペットの増加と共に新たに出現しているようです。
