日本の企業も、働き方を柔軟に評価するようになりつつあるようです。一定の業績を上げれば、沖縄でテレワークをしても、北海道でテレワークをしてもよいという企業もあるようです。今の時代には、クリエイティブと生産性を高めることが求められます。クリエイティブな仕事をしている人にとって、旅をしながらの仕事はプラスに働きます。これらの人にとって、海外に住むことは刺激となり、仕事にもプラスに働くこともあるようです。いくつかのリゾート地をめぐりながら、仕事を行うことも可能になります。もっとも、リゾート地に住みながら働くことが目的ではありません。良い仕事をするためには、一番良いところに住むべきだという価値観になっていくということです。副業を巡る潮流はここ数年で大きく変わり、副業を持つ人は珍しくなくなりつつあります。最近は、多くの仕事を並行して手掛ける「マルチワーカー」が活躍しています。マルチワークをうまく機能させれば、リスク分散の効果も大きくなります。収入増やスキル向上のほか、リスク分散の効果も見込めるというわけです。関連性のない別々のスキルを組み合わせることで、新たな価値が生まれることは経験則として知られています。今回は、自由な働き方で、成果を上げている仕事術を見てみました。
世界のどんな場所でも、生活ができ、仕事ができ、そして幸福を求められる環境が、テレワークによって整いつつあります。ネットビジネスの経営者の方で、旅をしながら仕事をする人も増えています。ある事例では、シンガポールとバリ島にそれぞれ家を持って、行ったり来たりしなから二重生活をしている方がいます。シンガポールに住んでいる期間は、バリの家をエアビーアンドビーに提供しています。もちろん、バリ島にいるときには、シンガポールの家を貸すというわけです。シェアリングエコノミーは、これから浸透していきます。いろいろな面で、利益を上げる手法が出てくるようです。また、愛知県に住むあるウェブクリエーターの方は、軽自動車で旅をしながら生活と仕事をしています。この方は、以前は東京で観光プロモーションを手掛ける会社員として国内外を行き来していました。現在は、地元の愛知県に戻って、以前から興味のあったバンライフを始めたのです。ちなみに、車を拠点に生活するライフスタイルのことを、バンライフといいます。バンライフを始めるため、約100万円かけて軽自動車を購入し、車内を整備したそうです。車には布団や机、ポータブルバッテリーなどを積み込み、車中泊にもテレワークにも対応できるようにしたのです。地方で仕事の依頼があれば、自宅を出て愛車の軽自動車で1週間程度ゆっくり過ごす優雅な生活と仕事を満喫しているとのことです。
さらに、家族で楽しい生活を実践する方もいます。Aさんは、妻と息子と、年50日は旅に出ることを人生のポリシーにしています。日々のスケジュールは、家族を中心にそえて、仕事を決めていきます。Aさんは、大学卒業後に電子機器大手に入社し、休日出勤もいとわず「モーレツ」に働く日々を過ごしていました。売るためにどうすれば人を動かすことができるのかを、先輩や同僚から学んで営業を実践していました。若くとも営業成績次第で高収入を得られることが魅力だったそうです。数年たつと社内でもトプレベルの営業成績を上げるようになっていました。そんな余裕を持った時、周囲には給料は低くても、幸せそうな表情の人がたくさんいることに気が付きました。「このままの働き方でいいのか」という迷いが出たそうです。Aさんは、一度、会社を辞めようと決/心し、全く畑違いのウェディング会社へと転職しました。新しい職場では、相手の気持ちをくんだ結婚式をつくり上げ、喜んでもらう日々は充実感に満たされました。給料は、前の職場の4分の1まで落ちましたが、生活は落ち着いたものになりました。ウェディング会社は、「感情は切り捨てて、ロジックがすべて」という働き方とは異なっていました。顧客に寄り添う結婚式が評判を呼び、ウェディング会社への新規注文が急増しました。
ところが、思わぬ落とし穴がありました。「禍福は糾える縄の如し」ということわざがあります。急増に対応するために、2カ月問休みなく毎日20時間の勤務を続けた結果、心身のバランスを崩してしまったのです。それを契機に、ウェディング会社を退職し、フィンテック企業や飲食店の運営会社などを渡り歩くことになります。Aさんは、自分にとっての最適な働き方はなんなのか、様々な会社を試してみることにしました。正社員をしながら、副業で12社を掛け持ちしたこともあったようです。多様な業種を経て、気づいたことがありました。会社勤めでいる限り、仕事の時間や量は決められないという現実に気づいたわけです。どの会社でも、最終的な判断は自分ではなく上司が決定するということです。Aさんは、人生の主導権を会社から自分に取り戻し、ライフスタイルを大切にする生き方にたどり着くことになったわけです。お金は必要だが、家族や健康は何ものにも代えられません。それならば、独立する道が良いという決断でした。今年も、8月は家族で南アフリカ、ナミビア、タンザニアを1カ月かけて旅行し、ポリシーを実践しています。
都会の生活から離れて、家賃や生活費を抑えられる地方の生活を試みる人たちも出てきています。ネット環境が整い、必要な生活物資や仕事関係のツールも、通販で容易に手に入るようになりました。IT (情報技術)エンジニアの山本暁子さん(42)の仕事場は、鳥取市内の自宅リビングになります。ご夫婦でUターンし、在宅でソフトウェアのプログラミングなどの仕事を行っています。山本さんのもう一つの顔は、地元猟友会に所属する猟師になります。彼女は、シカやイノシシなど年間100頭前後を捕獲する凄腕の猟師なのです。午前中は、ワナの設置や見回りなどにあて、午後は在宅ワークという生活です。ITの仕事に必要なネット環境も整っていたので、仕事や生活に支障のない鳥取に夫婦で2018年に移住したそうです。副業を行う中で、山本さんには最近は猟に関する雑誌への執筆依頼などの仕事も増えているようです。近年、クマが人間の居住する地域に侵入し、人を傷つける事件がいくつか起き始めています。また、シカやイノシシなどによる農作物被害は、全国的に深刻な課題になっています。そのような中で、猟師に期待されることが増えています。この期待に応えることができれば、充実感を味わうことができます。作物の被害を防ぎ、その肉はジビエとして売り出すこともできます。捕獲すれば、自治体から補助金も出る制度もあります。山本さんは、自分のペースで計画を立てられることが魅力だと言います。
Aさんや近藤さんの生き方は、まだまだ少数派です。でも、地方では、マルチワークのスキルを持つ人材には需要があります。日本では長く終身雇用が定着し、厚待遇で外部人材を獲得するケースは少ない状況です。終身雇用が定着し、企業が社員の教育訓練に投資してきた経緯があります。でも、企業の教育力が衰えてきていることは、誰しも認めざるを得ないようです。政府もこのリスキングに危機感を持ち、教育訓練休暇制度を立ち上げました。でも、教育訓練休暇制度を導入している企業は7.5%とわずかです。また、導入を予定している企業は9.1%です。導入予定はないと答えた企業が83.4%を占めています。欧米では、企業は専門能力に応じた高い報酬で人材を獲得する慣習があります。ジョブ型雇用が主流の欧米では、労働者が自ら投資して能力向上に取り組む姿勢があります。この姿勢が、日本が30年にわたって所得が上がらない情況と反対に、欧米の所得向上が上がっている理由のようです。日本の学生も、就職でキャリア形成の機会の有無を重視する学生なども増えてきました。欧米の例も見るまでもなく、リスキリングは、企業に人材の高度化と生産性の向上につながるメリットがあります。残念なことですが、日本の企業はリスキリングで従業員が離職するといったことに目が向きがちです。スキルアップを支援しても、転職してしまうのではないかと懸念する企業もあります。離職防止のためには、従業員のスキルが、異動や待遇に適正に反映される制度に構築することです。
最後に、再度Aさんの話に戻ります。「禍福は糾える縄の如し」中で、いろいろなスキルと身に付けたAさんは、沖縄に住んでいます。彼の収入源は、宿泊事業、投資や賃貸業などになります。ネット環境があれば、仕事はどこでもできる状況が生まれています。ネットで会議にも参加でき、旅を楽しみながら仕事をこなせます。旅好きの奥様からも、この働き方のスタイルは好評のようです。マルチワークをしていれば、いずれかの収入が減ったとしても、ほかで埋め合わせ、生計を安定させることができます。家族を大切にし、仕事に達成感をもって生活を目標にしたいものです。ベストな働き方を、自分自身でデザインし、続けることのできる環境を持つことです。そのためには、いくつかのスキルを身に付ける行動様式を、小さいうちから継続して獲得することも求められるようです。
