しのぶもちずりと歌枕に読まれた地方にも、太陽光パネルがあちこちに設置されるようになりました。私の家の近くにも、いくつかの太陽光パネルが発電を行っています。その中には、太陽光パネルの下草をきれいに刈った小さな再生可能エネルギーの発電所もあります。一方、パネルを設置して、その後は除草剤を蒔いて、放置したような発電所もあります。除草剤は、かなり強力なようで、雑草を寄せ付けない光景が見られます。でも、景観はよくありません。再生可能エネルギーの必要性は、理解できます。でも、景観が損なわれることには、疑問もあります。この疑問は、以前のここにあった農村風景の記憶があるのかもしれません。この地域は、田風景が広がっていました。夜になれば、蛍が飛び交う光景もありました。カエルのうるさい鳴き声が、今は懐かしいものなりました。2つの対照的な太陽光パネルを散歩する道すがら見ながら、再生エネの必要性とパネル設置による景観(環境破壊)の共生を考えていたところでした。そこにタイミングよく、福島市が再生可能エネルギーの発電施設を規制する条例が発表になりました。
発表の内容は、新聞報道によると以下のようなものでした。福島市は、2024年11月7日7日、2025年4月に施行する再生可能エネルギーの発電施設を規制する条例について、施行時点で設置済みや工事中の既存施設も規制の対象にすると発表しました。既存施設でも豪雨などで災害が発生する恐れがある場合は、市が立ち入り調査や改善を事業者に求めるというものです。施行する条例は、太陽光発電と風力発電が規制の対象になります。工事中も含めて太陽光施設26件、風力発電所1件が対象となるようです。市は、年内にパブリックコメントを募集しています。その意見を反映したうえで、2025年3月の市議会に条例案を提出することになります。福島市の太陽光発電施設には、景観の悪化や災害の危険性に不安の声がでています。その声に対する市の対策が、求められているというものでした。メガソーラーによる環境被害や景観の齟齬が、表面化してきていることに問題があるわけです。
日本政府は、2050年に温暖化ガス排出ゼロの目標を掲げています。そのために、環境価値を希望する企業は増えています。環境価値は、排出を減らした企業や組織を優遇するものといえます。再生エネルギーを生産すれば、利益が得られる仕組みです。この仕組みでは、新設の太陽光は高い環境価値を得やすくなっています。東京都は、不動産大手などの施工物件で、新築住宅に太陽光の設置を義務化する方針です。都では2030年までに、新築住宅で70万kwの太陽光エネルギーが新たに導入されると見込んでいます。東京都だけでなく、川崎市は2025年から不動産大手などの施工物件で、太陽光の設置を義務化する方針です。さらに、電力会社主導で家庭に太陽光発電の新設を進める動きもあります。10社と提携し、住宅に太陽光設備の初期費用を無料で装置できるサービスを提供するものです。東京電力(東電)は、住友不動産や野村不動産など約10社と提携しています。家で使い切れなかった電気を、東京電力エナジーパーナーが購入するサービスになります。居住者は東電側に毎月の利用料を払い、太陽光パネルで発電した電気を自家消費することになります。九州電力も、同様のサービスで地元戸建てメーカーと提携しました。メガソーラーを使わず、戸建ての家を対象にした太陽光の導入も最近の流れになっています。
この流れの先端を行っている都市が、川崎市になるかもしれません。川崎市は2025年度から、戸建て住宅に太陽光発電設備の設置を義務付ける方針を決めました。戸建て住宅などには、太陽光発電設備の設置を義務付ける条例改正案を市議会で採決したのです。もっとも、すべての電力を再エネでまかなうのは厳しいことです。でも、地域内でできることはやるのが責任だという問題意識を持ったわけです。2020年の市内の戸建て住宅は、建築受注件数が3400件になります。さまざまな設備を組み合わせたものを「太陽光発電システム」といいます。太陽光発電を導入するためには、ソーラーパネル以外にもさまざまな設備を組み合わせる必要があります。2021年における住宅用の太陽光発電システムの設置費用は、3kWが 84万円で、5kW が140万円になります。川崎市の他にも、義務化をする自治体が出てきています。たとえば、京都府は2022年4月から延べ床面積300㎡以上の新築・増築時に、再エネ設備の設置を義務づけています。これからは、環境を重視する自治体が家庭の排出量削減に相次いでカジを切っていくことが予想されます。
日本の進歩的自治体以外にも、太陽光発電装置を推奨している国があります。その海外に目を向けると、ニューヨーク市やカリフオルニア州も、新築住宅などへの太陽光発電設置を義務化していることがわかります。さらに、ドイツのベルリン市も、新築する家庭や屋根の改修などの際には太陽光パネルの設置を義務化しています。この世界における太陽光発電設置を義務化は、二酸化炭素の排出削減だけでなく、安全保障の観点から進められている政策なのです。ロシアのプーチン大統領は、天然ガスに依存する欧州を人質にするエネルギー貿易政策を強行しています。このロシアの圧力を抑止する対策が、自前で電気を作る太陽光発電みなります。ウクライナに対するロシアの攻撃を見ると、大規模発電所や変電所の攻撃が顕著でした。国民の士気を一気に気弱化させる戦術のようです。でも、各家庭に自家発電施設があれば、分散効果がでてきます。少ないエネルギーでも、ないよりはあったほうが、人々は生きていくことができます日本が第二次世界大戦後は、焼け野原になりました。でも、生きていれば、奇跡の復興も可能になるのです。
それでは、日本の人々はどのような対策を取ればよいのでしょうか。この対策には、私の知人の事例が参考になるかもしれません。彼は、オール電化の家を建てるときに、3kW太陽光発電を屋根に設置しました。一時は、この太陽光発電だけで、東北電力に払う光熱費が無料という月もあったそうです。でも、原子力発電の停止が相次ぎ、夜間電力の特典がなくなり、売電の買い取り制度がなくなったころから、事情は悪化しました。彼はそれでもめげずに、節約の道を探りあました。蛇足ですが、1世帯が1年間に消費したエネルギーは、全国平均で電気が4,322kWh、都市ガスが204㎥、LPガスが30 ㎥、灯油が172㍑となっています。彼の家は、オール電化ですから都市ガスや灯油を使いません。電気の使用量を減らせば、良いわけでした。彼には、十分な時間がありました。この時間を、有効利用したのです。売電は1kWh当たり約10円です。電気を買うと以前は1kWh当たり20円でしたが、2022年の12月から約50円になりました。彼は太陽光発電が働いている時に、調理を行ったのです。IH機器は、電気使用量を多くします。太陽の日差しが強い9時から14時ごろに、1~2日分の料理を作ってしまうのです。年間の電気使用量は、みるみる減りました。
福島市は、2011年3月の原発事故が発生した当時、ガソリンが枯渇しました。放射能の報道が大きくされたために、ガソリンを運ぶトラックのドライバーが、福島行きを拒否したことも一つの原因でした。このような災害や事故が、いつ起こらないとも限りません。福島市には、100名山の吾妻山やその近くには智恵子抄で知られている安達太良山があります。この活火山は、いつ爆発してもおかしくはないわけです。その対策には、個々の家がエネルギーを確保する術を持っていることです。太陽光発電は、その格好のツールになります。災害を乗り切るためには、自助、共助、そして公助があります。自助では、太陽光発電でご飯を炊いて、飢えをしのぐことができます。3家族の公助では、できることが増えます。一つの家で、ご飯を作ります。もう一つの家では、ご飯のおかずを作ります。もう一つの家では、電気自動車に充電し、必要な物を買い出しにいくことができます。おそらく、72時間後には、公助として行政が、適切な支援をすることになります。
最後になりますが、福島市の住宅総数は、2018年時点で約14万戸でした。この時点での福島市における太陽光発電機器の設置率は、6.2%でした。約9千戸が太陽光発電システムを備えていたことになります。これを10万戸にして、自助と共助を組み合わせれば、災害に備えることができます。さらに、メガソーラーに多くを頼らずに、市民生活は円滑に流れるようになります。それでは、10万戸に太陽光発電システムをどのように導入すれば良いのでしょうか。資金に余裕のある方は、100万円ほどで3kwの太陽光発電システムを導入することは可能です。資金に不安のある方には、初期投資ゼロで、太陽光パネルを設置できる仕組みもあります。
山形県南部の置賜地方では、発電した再生エネを地元で消費することを目指す「おきたま新電力」が設立されました。この電力は、初期投資ゼロで、太陽光パネルを設置できる仕組みも導入しています。おきたま新電力が費用を負担して、企業や個人宅にパネルを設置するのです。そして、契約期間終了後はパネルが無償譲渡される特典があります。太陽光パネルを設置した企業や個人は、持続的に電力を発電し、それを享受できることになります。また、オムロン傘下のオムロンソーシアルソリューションズ(東京・港)は、戸建て住宅向けに初期費用ゼロで太陽光発電システムを導入できるサービスを始めました。太陽光発電システムの設備費や工事費はかからず、設備に不具合があった場合もオムロンソーシアルソリューションズが修理費を負担することになります。15年の契約満了後は、設備は無償で譲渡する条件のようです。地域で作った電力は、地域で使うことが最も効率的です。再エネの地産地消を進めることは、循環型脱炭素社会の構築につなげることにもなります。