レッドオーシャンのペット保険を勝ち抜く戦略  アイデア広場 その1539

 国内では、犬と猫が推計で1600万匹飼育されています。ペットを飼う人が増えたこともあり、ペットを飼っている世帯は2019年と比較すると、約4%増えています。ペットが家族の一員となり、食事と居住環境が整うとともに寿命が延びてきています。ペットにも人間と同じように平均寿命だけでなく、健康寿命が求められるようになってきたようです。ペット市場は、2017年度の1兆5193億円から緩やかな上昇が続いています。そして、2024年度には1兆9000億円に拡大するようになりました。支出が増える要因に、ペット医療への支出増加があるようです。さらに、医療への支出増加に付随するように、ペット保険も急増するようになりました。ペット産業側にも、人間向けと変わらぬサービスをペット向けに展開する企業が増えつつあるようです。

 飼い犬や猫などにかけるペット保険の市場が、右肩上がりの成長を続けています。国内のペット保険市場は、2008年に開業しました。2014年度に約300億円だった市場規模は、2023年度には4倍の約1250億円に成長しています。このペット保険市場は、今後も堅調な成長が見込まれています。少子化が進む中で、日常生活の癒しを求めてペットを飼う動きが、衰える兆しがありません。この流れを受けて、各社がペット保険を有望視しているわけです。ペット市場が、拡大する余地が大きいと見ているのです。NTTデータ経営研究所によると、日本のペット保険の加入率は2022年時点で9.4%にとどまっています。ペット保険の発祥地といわれるスウェーデンは65%であり、英国は25%になります。これらの国々比べても、ペット保険の加入率が低いレベルになっています。当然、成長市場とみられているのです。もっとも、各社は中長期的に持続可能な保険料を設定することが求められています。安定した経営状態が保てなくなると、ペット保険会社は撤退や破綻に追い込まれます。今回は、ペット保険の未来に挑戦してみました。

 アマゾンジャパンがあいおいニッセイと提携し、代理吉として保険販売に参入しました。2023年11月、アマゾンジヤパンがあいおいニッセイ同和損害保険と提携したのです。アマゾンは2020年から、ペットに合わせた商品情報を受け取れるサービスを提供していました。アマゾンのような異業種にとっても、ペット市場は魅力的に映っていたようです。アマゾンは、業界最安クラスの生涯保険料と業界最高クラスの手厚い補償を打ち出しました。この他にも、いろいろな手法を用いています。アマゾンは犬や猫などペット情報を登録するだけで割引券を受け取れるサービスを提供していいます。ペット保険に加入した顧客にはペットフードの販売価格が5%割引になるクーポンを配布しているのです。アマゾンは、ペット保険への加入が期待できる顧客層を最初から持っている点が強みになります。この強みの上に、さらなるサービスを加えているわけです。アマゾンのペット保険は、相乗効果は高く、売り上げを急速に伸ばしているようです。アマゾンをはじめペット保険への参入が相次ぐのですが、同時に撤退も増えつつあるようです。

 甘い蜜のある所には、人もお金も集まってくるものです。ペット保険市場にも、その波が押し寄せてきています。むしろ、今や日本のペット保険市場はレッドオーシャンになっているとも言われるようになりました。撤退する企業も、増えています。米系のアフラックは2024年10月、傘下のアフラックペット少額短期保険の売却を決めています。また、フランス系のアクサ損害保険は、2024年夏、新規引き受けの停止を発表しています。一方、第一生命は2023年に、業界2位のアイペットホールディングスの買収を行っています。撤退や破綻に追い込まれる懸念が生じて、有望な市場においても淘汰の事例が出始めているのです。収支に見合わない保険料設定が続くと、中長期的に安定した経営状態が保てなくなります。一方で、ペット保険の将来性を評価する要素もあります。その一つが、ペット保険が「ドアノック」商品としての性格を持っていることです。ヒトを対象とする生命保険は、販売する際の「ドアノック」商品としての性格を有効に利用してきました。生命保険に、介護保険や学資保険などを組み合わせて、各家庭に適したサービスを提供してきた経緯があります。ペット保険には、この利用方法があると言うわけです。保険料が手ごろなペット保険の勧誘を通じて、飼い主やその家族との接点を増やす戦略になります。飼い主やその家族との接点を増やした上で、生命保険の契約につなげるわけです。一方で、リスクもあります。ペット保険のシェア拡大には、多くの営業資源を投入する必要があるのです。ペット保険を充実させるためには、全国の動物病院とネットークを結ぶことが不可欠です。これには、資金も人材も投入することが必要になるのです。リスクに見合う利益が得られるかどうか、各企業の力量ということになるようです。

 余談ですが、生命保険会社がM&A(合弁・買収)を行うことにより、新しい複合的サービスが生まれることが予想されるようになりました。日本生命保険(日生)は介護と保育サービス、アメリカは予防医療で会員の健康増進、住友生命はウェルビーイング、第一生命はデジタルビジネスとなります。ある意味で、誕生から死亡するまでの健康と幸せの保険というコンセプトが浮かび上がります。保育サービス中に、幼児期の病気を予防し健康を維持増進する保険サービスは今でも可能です。ここに、教育面のサービスを入れる企業も現れました。たとえば、日生は、株式会社ニチイホールディングス(ニチイHD)とM&A (合弁・買収)を行いました。日生は、従来の生保ビジネスだけでは収益が先細りしていく懸念を抱えていました。ある意味、従来型生保ビジネスの成長に陰りが見えたわけです。日生は、事業の幅を広げる挑戦をする第一歩としてニチイの買収を決断したということになります。ニチイHDの傘下に、介護最大手のニチイ学館や介護付き老人ホームを展関するニチイケアパレス、そして介護や保育サービスを手がけるニチイ学館を抱えています。この2つの会社は、まったく関係がないわけではありませんでした。日生とニチイHDは、1999年から子育てや介護などのライフケア領域で業務提携関係にありました。ニチイ学館の有資格者が、日生の保険契約者の認知症や介護に関する相談のサービスを提供していたのです。日生は、子育てや介護、そしてㇸルスケアなど保険の周辺領域での新規事業創出に力を入れてきた経緯があります。今回は、ニチイが持つ顧客基盤を生かして生命保険事業との相乗効果を狙いとするM&Aのようです。これからの需要が増える介護を起点として、顧客への介護関連の保険付帯サービスの充実と本業との相乗効果を目的にしているわけです。この延長線上に、各企業のペット保険の進出があるようです。

 高齢化社会は、シニア向けという新たな市場を生みだしました。人間に限らず、ペット市場においても、ペットの老後が長くなる状況になってきました。その老後を支える一因に、動物医療があります。ペット市場の拡大の背景には、動物医療の発達などによるペットの長寿命化があるわけです。長寿命化を受けて、ペットの健康に着目した商品やサービスが注目を集めることになります。そして昨今、ペット市場では、健康や介護に着目した商品やービスが続々と誕生しています。特に、この傾向は欧米で顕著になっています。米ポープと米小売り大手ウォルマートが、提携したことが話題になりました。ウォルマートは、特別会員を対象にポープの遠隔診療サービスを提供するようになりました。ポープとウォルマートが提携は、ペットの遠隔診療が盛んになることを示唆しているようです。ウォルマートの他にも、診察と処方箋の発行、そしてペット保険とを、組み合わせたサービスを提供する企業も出ています。

 最後になりますが、最近、ペットにお金や時間をかけることを、惜しまない愛好家が増えてきました。国内では、犬と猫が推計で1600万匹飼育されています。ペットを飼っている世帯は、2019年と比較すると、約4%も増えています。ペットが家族の一員となり、食事と居住環境が整うとともに寿命が延びてきています。たとえば、犬の平均寿命は1991年の調査では8.6歳でした。それが、2010年の13.9歳となり、2022年には14.8歳に延びています。猫も、2010年の14.4歳から15.6歳となっています。ペットにも人間と同じように平均寿命だけでなく、健康寿命が求められるようになってきたようです。犬や猫の平均寿命は、人間の約6分の1の寿命です。飼い主は、ペットの老齢化が進行する姿を見ながら過ごすことになります。長年一緒に暮らしてきたペットの最後を、看取ることは悲しいことです。飼い主が看取りに関わる時間が長くなれば、精神的に落ち込む状態に陥ることになります。ペットを飼っている人は、そうでない人に比べ、うつ病になる方が1.9倍も多いという統計もあるようです。ここから出てくる未来のペット保険は、ペットの平均寿命が延びること、そして飼い主のうつ状態を予防する仕組みを保険に組み込むことになるのかもしれません。

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