先日、東京に知人を訪ねて一杯やってきました。面白いことに彼は、愛犬を連れてきたのです。「1人(匹)にしておくと淋しがるから」ということで、飲むことのできる店に案内されました。3時間ほど楽しい時間を過ごして、福島に帰ったわけです。東京では、愛犬といつでも過ごせる場が用意されていることに驚いた次第です。ペットビジネスは、日本でも拡大しています。日本以上に、中国のペットフード市場は急拡大しています。2022年の犬猫飼育数は、1億1655万頭と2018年比で約3割増えたが、ペットビジネスの競争環境は厳しいようです。中国都市部のペット数は、犬5119万頭、猫6536万頭)になっています。ちなみに、日本のペット数は2023年の調査によると、犬が約684万頭、猫が約907万頭で、合計すると約1,591万頭とされています。中国には、日本の10倍以上のペットビジネスの潜在力があるようです。中国では、かつてペットは番犬が中心でした。でも、所得向上や新型コロナウイルス禍を経て「癒やし」の存在に変わってきています。ペットを家族ととらえる意識が、広がりを見せています。
犬と触れ合うことは、認知症の患者さんにプラスであることが経験則から分かっていました。近年はその理由が、明確になりつつあります。その理由は、犬と触れ合うことでオキシトシンの分泌量が増えることが主な原因だったのです。犬と触れ合うことが、認知症の患者さんや一部の精神疾患患者さんにプラスになっていたのです。このプラス要因が、オキシトシンの分泌だったわけです。犬を飼って触れ合うことは、社会関係力を向上させるうえで大きな意味があるようです。このホルモンは、幸福ホルモンとも言われ、この分泌量が高いほど、良好な社会関係を保てるようになります。オキシトシンは、親しい人と触れ合うことでも分泌されるように、ペットと仲良く過ごすことでもオキシトンンが分泌されます。オキシトンンが分泌されることで、幸福感が享受され、癒しの効果が得られるという流れになります。この流れが、日本でも、中国でも急速に進んでいるわけです。蛇足ですが、日本も中国も、少子化の流れが急速に起きています。この対策には、結婚の増加が不可欠です。男女が出会いで、お互いにコミュニケーションがスムーズに行けるようになれば、関係を近づける環境が整います。脳内ホルモンの中で、社会関係に最も深く関係するホルモンがオキシトンンです。恋愛期間中、オキシトシンの分泌が増えれば、恋愛もうまくいき結婚できる可能性も高くなるようです。付き合い始めて親しみを感じた時に、このオキシトシンの分泌量は一気に増えて、ゴールに向かうことが1つのパターンになります。ゴールへの成功率を高める方法は、オキシトシンの分泌を高めておくことになります。オキシトシンの分泌を促す方法はいくつかあります。その中の1つに、犬と触れ合うことがあります。結婚する前の恋愛期間中に、犬を飼うということも一つの選択肢になるのかもしれません。
2024年、中国のペットケア市場は、2020年に比べて約4割増の933億元(約1兆9000億円)と日本の2倍以上の規模になります。この市場は、2029年には1068億元に達する見通しです。現在この市場を、米マース、スイスのネスレ、中国のギャンボルーペットの3社でシェア2割ほど占有しています。将来性のある市場には、各社が参入するものです。ユニ・チャームは、1%未満にとどまっていますが、秘策があるようです。日本の2倍の市場規模を持つ中国で、次の成長を狙っています。2024年12月期の連結売上高は前年比7%増の1486億円となり、全体の15%を占めました。これは、生理用品や紙おむつなど主力のパーソナルケア事業の増収率(5%)を上回る成績です。ユニ・チャームは、ペットだけでなく、飼い主のQOL(生活の質)を意識した展開を行っています。ペットの食べやすさに加え、飼い主の与えやすさにも配慮しています。この配慮には、消化しやすい粒で吐き戻しを抑えたりするなど機能性を高めています。さらに、食物繊維によって排せつを助けたりするなど工夫をしています。他者と異なる独自の商品特性から、価格は通常品の1.5~2倍と高めに設定しています。この設定で、売り上げは順調に伸びているようです。
ユニ・チャームは、2010年に中国市場に参入しました。その当時は、ペットフードは現地企業への委託による小規模生産が中心で、機動的な対応が難しい状況が続きました。2025年からは、中国のペットフード市場の拡大を見て、工場を本格稼働させることにしました。4割超を出資する現地ペットフードの大手と共同で、江蘇省に新工場を建設しました。この新工場建設にあったって、ユニ・チャームは総工費の約半分にあたる100億円以上を負担しています。100億円は、中国のペットフード2兆円の市場開拓への投資になります。日本の2倍以上の巨大市場で、ペットフード生産に深く関与して供給体制を再構築することになりました。新工場ではユニ・チャーム製品の生産量を、需要に柔軟に対応していくことになります。現地生産を本格化させて、安定供給や迅速な販売、コスト削減につなげていく狙いです。ここで大切なことは、現地企業との連携です。生産分野の提携強化を契機に、ライブコマースなど中国特有の販売ノウハウも取り入れることになります。
ペットを家族の一員とすることは、食事も旅行も一緒に過ごしたいと願うものです。中国では猫や犬を飼う消費者が増えている流れを受けて、ペット連れで旅行したいとの声があがってきています。日本では、ペット同伴のホテルなど少し割高になりますが、ホテルや旅館の受け入れが一般化しています。中国の鉄道会社は、高速鉄道で有料のペット預かりサービスを始めると発表しました。有料のペット預かり、北京と上海などを結一部路線で試験的に始めています。予約サイトによると、6時間前後かかる北京一上海間では定価が658元(約1万3000円)になります。これには、配慮もなされています。ペットが苦手な利用客にも配慮して、ペットの入った専用箱は乗客から離れた場所に置いてあります。騒音やにおいを防ぐために、乗客の座席とは離れた場所に保管して運ぶことになります。ペットを入れる箱は、酸素含有量や温度・湿度をー定の水準に保つ機能を備えた優れものです。列車の運行中に、飼い主がペットを預けた場所に入ることはできません。でも、少なくとも2時間に1回は係員が水やりを代行するサービスがあります。北京一上海間の料金は、乗客1人が二等車に乗るのに相当する価格に設定したようです。
余談になりますが、アマゾンジャパンがあいおいニッセイと提携し、代理吉として保険販売に参入しました。2023年11月、アマゾンジヤパンがあいおいニッセイ同和損害保険と提携したのです。アマゾンは2020年から、ペットに合わせた商品情報を受け取れるサービスを提供していました。アマゾンのような異業種にとっても、ペット市場は魅力的に映っていたようです。アマゾンは、業界最安クラスの生涯保険料と業界最高クラスの手厚い補償を打ち出しました。この他にも、いろいろな手法を用いています。アマゾンは犬や猫などペット情報を登録するだけで割引券を受け取れるサービスを提供していいます。ペット保険に加入した顧客にはペットフードの販売価格が5%割引になるクーポンを配布しているのです。アマゾンは、ペット保険への加入が期待できる顧客層を最初から持っている点が強みになります。この強みの上に、さらなるサービスを加えているわけです。アマゾンのペット保険は、相乗効果は高く、売り上げを急速に伸ばしているようです。NTTデータ経営研究所によると、日本のペット保険の加入率は2022年時点で9.4%にとどまっています。ペット保険の発祥地といわれるスウェーデンは65%であり、英国は25%になります。これらの国々と比べても、中国のペット保険の加入率が低いレベルになっています。当然、成長市場とみられているのです。
最後になりますが、これからは海外にビジネスチャンスを求めて、打って出る姿勢も必要です。2022年に日本人と中国人が、Sake RD (サケアールデ、東京・港)を共同創業しました。このSake RDは、日本留学経験のある劉柳氏と共同で創業したわけです。劉氏は、中国子会社の副総経理も務める人物です。Sake RDは今田酒造本店(東広島市)と共同で、四川料理に合う日本酒「と」を開発しました。上海で、若者や中華料理店オーナーなど100人超を対象に「と」の試飲会の市場調査を実施しました。9割が「おいしい」と回答し、「口の中の辛みを消すと食が進む」などの好意的な意見が出ました。これらの意見を参考に、純米酒の甘みだけでなく料理の辛さを打ち消して口の中をすっきりさせる酸味も持たせて、中国に進出をしています。中国は、日本酒の有望な市場になります。2022年の日本酒の輸出総額は、前年比18%増の474億円でした。国や地域別では、中国が141億円と首位で、38%も伸びています。日本酒は、若者や富裕層から人気を集めています。今後、中国でも健康志向が高まり、アルコール度数の低い飲み物のニーズが求められる傾向が出てきています。現地に詳しい人材を活用して、現地の好みにあった商品開発や市場開拓の迅速化につなげる構想になります。この流れのビジネスに、ペットフードやその保険なども、現地の知恵が必要になるのかもしれません。