仕事をやり始めるとすぐに邪魔が入り、仕事の能率が落ちることを「のこぎりの歯現象」といいます。仕事を始めて調子が良くなったころ、電話の取次をします。すると残念なことに、再度始める時は、最初に調子の良くなる前から始まることになります。いわゆる活性エネルギーの無駄使いになります。仕事の実を上げるためには、誰からも邪魔をされない時間が大切になります。
仕事では、「のこぎりの歯現象」を起こさない工夫が求められます。午前中は、能率的に仕事ができる時間帯です。この時間帯には、電話の取次や会議を入れないことです。そんなことは無理だという意見もあります。でも、野放しにこれを放置すれば、仕事の能率は低下し、長期的には会社の損失になるのです。次善の策として、2時間は仕事に集中できる時間にします。二人がバディーになり、片方が2時間集中の実りある仕事をして、電話はもう片方だけが受けるというものです。すでに、重要な部署には、電話を繋がないという企業も増えています。時間泥棒対策は、個人のレベルでも会社のレベルでも進んでいるようです。
バディーのお話を深めますと、お得意様の電話応対には、同程度のスキルが求められます。このスキルがないと、電話の応対がちぐはぐになり、かえって時間泥棒になる可能性があります。これを解決するヒントが、ある中小企業にありました。この会社では、1人のベテラン社員が1週間休んだとき、生産ラインが止まったことがありました。熟練者にコワーの業務を頼っていたため、その作業の代役を果たす社員がいなかったのです。その反省を踏まえて、数年かけて業務別の手順書を一つずつ作成し、生産などの現場作業は動画を共有しました。作業におけるカンやコツと呼ばれるポイントを、なるべく数値化してみんなが分かるようにしたのです。社員が互いの仕事をカバーしあえる職場に改めたわけです。このような工夫で、みんながスキルを獲得し、誰が休んでも、作業が継続できる職場にしました。
余談になりますが、この会社は、半導体、医療、精密機器などの分野で使われるフッ素樹脂製品を製造しています。この会社の離職率は、単純計算で6.9%になります。過去26年間で、新卒採用で入った社員の離職がたった2人なのです。近年、離職率が30%を超える企業が珍しくない中で、働きやすい会社になっています。この企業は、1999~2025年に大学卒や高卒を中心に29人を新卒採用しました。そのうち、現在も27人が働いています。さらに、この会社は良い方向に向かうようになりました。誰かが休んでも、みんが代役を行うことで、作業工程がスムーズに回るようになったのです。この会社の社員は、社員が自分の望む時期に気兼ねなく休めるようになりました。有給休暇や育児休暇の取得率は90%を超えています。そんな企業に、就職したいものです。
