日本の正社員の共働き世帯の3割が、十分な育児と家事(食事)など、そして余暇の時間をとれない状況に陥っています。特に、母親に負担がかかってくることになります。このような問題があれば、その解決策を出してくる個人や企業があります。今回は、この解決策を食事の作り方の工夫から探ってみました。日本の共働きの場合、どうしても負担が女性に傾きがちです。食事作りは、まだ女性が担っていることが多いのです。結果として、ジェンダー指数が146か国中116位という順位になってしまうわけです。冷凍食品は、このジェンダーギャップを軽減するツールになるかもしれません。これならば、共働き夫婦でも、労力を使わずどちらでも、レンジでチンをすれば、調理はできます。問題は、「レンジでチン」で十分な栄養が摂取できるかどうかになります。
この課題に挑戦した企業に、「ほっかほっか亭」があります。野菜などの原材料が安いときに大量調達して、総菜に加工した上で冷凍保存し、原価を下げようとしています。私たちが定番として食べるのり弁当は、460円になります。これを一気に、250円にするとのことです。この企業に先立ち、冷凍食品宅配のグリーンスプーンや1月に冷凍弁当宅配に参入した味の素が活動を始めています。消費者の流れは、共働きの増加や個食の拡大で格安弁当の需要が高まっています。買い置きができる冷凍弁当は、通常の弁当より利便性が高いと評価されています。以前は、冷凍食品は美味しくないというイメージがついて回っていました。でも、冷凍チャーハンを見るまでもなく、自分で作って食べるチャーハンよりも美味しいという評価が一般的になっています。
この冷凍弁当に挑戦する企業には、Delights(ディライツ、東京・目黒)もあります。田上真貴さんは、Delights(ディライツ、東京・目黒) の代表を務めています。Delightsは、手作りの冷凍離乳食力児食ブランドmom’s (マムズ)の製造・販売を手掛けます。彼女が、マムズの販売にたどり着くには幾多の岐路があったようです。まず、市場ニーズを探るために、家事代行サービスに登録しました。田上さんは、乳児を育てる共働き家庭を見て、起業を決意した。家事代行サービスを通じて、離乳食作りのニーズがあることを確認したのです。子育て家庭の忙しさを目の当たりにし、離乳食作りを手掛ける会社の設立を決意したわけです。共稼ぎの場合、食事が一つの高いハードルになります。彼女は、子どもの食事に、注意を払ったのです。訪問先では子どもの口の動きを観察し、月齢別に軟らかさや味つけを工夫していきました。弁当販売などを経て、2021年に無添加冷凍離乳食「mom’s」をスタートしました。スタートする前に、自治体の起業相談会に出向いたそうです。相談員からは、「アイデアはいいがリスクが大きすぎる」と反対されたと言います。でも今は、地元の食材を使った離乳食mom’sは高松市のふるさと納税返礼品にもなっています。
Delightsの出発点は、自宅の料理教室になります。田上は、専業主婦時代に始めた料理教室を皮切りに、瞬発力の高さでキャリアを切り開いてきた方です。夫の転勤で静岡や広島などを転々としながら2人の息子を育てました。子育てしながら自宅で開く料理教室や調味料のワークショップが評判となったのです。香りを感じながら、みんなで作る時間がとても楽しかったそうです。料理を教えながらふと「自分で調味料を作ったら面白いかも」と思いついた。思い立ったが吉日と、親戚のすし職人にポン酢の作り方を教わりました。ポン酢の作り方を教わり、それに工夫を加え、ユズの時期に自家製ポン酢のワークショップを始めました。梅の時期には、白干し梅など季節に合わせて調味料を作りました。自分好みの調味料があることで、料理はもっと楽しくなりました。楽しみながら、自宅で料理教室を始めたことがキャリアの出発点になったのです。
出発点から、紆余曲折を経ているようです。自宅の料理教室が転機となったのは、2019年の瀬戸内国際芸術祭になります。弁当の作り手を探していると聞き、犬と共に半年問、岡山県玉野市に移り住みました。ここで弁当、「たまのたまべん」を手掛け、多い日は1日130個を作ったのです。結果は、大赤字でした。でも、量産の仕組みや仕入れ計算など,ビジネスとしての食を学びました。学びは、他にもありました。地元の瀬戸内を外から見るようになり、食材のポテンシャルの高さに改めて気づいたのです。店頭にはゴーヤーがたくさん並んでいるのに、その料理の仕方を知らない地元民が多かったのです。そこで、弁当にはゴーヤーをフリッターにして弁当に入れました。鯛(たい)はよく食べられますが、もっぱら塩焼きと聞いて、ブイヤベースも提案しました。ここでの収穫は、食材の魅力を地元の人に伝えられたことでした。さらに、季節に合わせて食材を使い、600種類以上のメニューを開発したことも収穫になります。ただ、日替わり弁当を作り始めたのですが、忙しいばかりでほとんどもうからないという不満もありました。彼女は、失敗や経験を成功の種に変える才能があるようです。このような経験を通して、冷凍離乳食育児食ブランドmom’s (マムズ)の製造・販売を実現させています。
余談ですが、食べたものは、胃腸で消化・吸収され、食べ物に含まれる栄養素が代謝されていきます。食べたものはエネルギーに変えられたり、細胞や血液,ホルモンの材料になったりします人間の体は、栄養素や体脂肪を熱に変え、呼吸や体温の維持という基本的な生命維持活動を行ないます。この体に必要な食材にたいして、消費者のニーズが多様になってきています。消費者の求める食材に対して、それに応じようと企業は努力をしています。現在の健康観は、一定の筋肉が機能的に働くことを前提にしています。健康志向の商品の中でも、特にタンパク質に注目が集まっています。そんな中で、面白い商品が開発されました。豆腐を作るときにできる「生のおから」は、栄養価が高いことが知られていました。欠点は、腐敗の早いことだったのです。キッコーマンでは、この生おからを乾燥させるノウハウを確立して、パウダー状に仕上げることに成功しました。このおからは賞味期限が約1年間と、筋肉愛好家には重宝な食材になります。ご飯やヨーグルトにかけて食べれば、いつでもたんぱく質の供給が可能になったわけです。なお心配性の方のために、少し付言します。栄養素はおおよそ2週間かけて体の一部分に変わっていきます。2週間から1カ月くらいのスパンの中で、必要な栄養素をだいたいまんべんなく摂取すれば良いことのようです。冷凍弁当をレンジでチンして、必要なたんぱく質をふりかけで摂取すれば、健康を手に入れられる時代になるかもしれません。
最後になりますが、人々は、1年間の総時間が、24時間×365日の計算で8760時間を平等に持っています。その中で、労働時間が8時間、生理的時間が8時間、余暇が8時間という3区分があります。その区分法によると、1年間で働く労働時間は、週休2日で2080時間になります。フランスには、ここに5週間の有給休暇(40時間)、20日以上の時短代休、そして年間2920時間の余暇時間が生まれます。この時間を、幸せの中で過せれば、ハッピーです。幸福には、面白い性質があります。親が変な顔をしてみせると、赤ちゃんが自然にまねをする光景はほほえましいものです。親がほほ笑むと、赤ちゃんも微笑み返します。微笑みは、お互いに伝染するものです。幸福には、このように広がる性質もあるのです。食事が楽しくなれば、食事をする仲間に幸せが伝染するケースも出てきます。子どもが、食事を楽しく食べれば、親も楽しくなるケースが増えます。あるファミリーレストランは、子どもを第一に考えるそうです。子どもが喜べば、親も喜ぶことを経験的に知っているからです。食事を楽しい雰囲気でたべることができれば、楽しい家庭になり、楽しい地域になり、楽しい国になるかもしれません。