受験でほんのちょっと合格点に近づける知恵  アイデア広場 その1440

 中国、韓国、そして日本などの東アジア地域では、受験が重要な位置を占めています。中国では、科挙の伝統があります。中国の大学受験は「高考(ガオカオ)」と呼ばれています。現代版の科挙のような様相を呈しています。韓国でも、この流れを受け入れているようです。受験の日には、受験会場の上空を飛行機が飛べなくなるなど、騒音対策が取られます。もちろん、日本にも受験はあります。しかも、年々その難易度が上がっているようです。受験には、戦略と戦術があるようです。大局的立場の戦略は、受験の大枠を俯瞰することになります。ここでは、家族の協力(食事や睡眠の確保など)や受験者へのストレスを高めない環境の用意をすることになります。戦術的には、記憶力向上や学習の仕方などの工夫があります。ともあれ、無事、合格の栄冠を獲得して、次のステップに挑戦することになります。高校合格や大学合格、そして会社への入社試験に合格した後は、各職場の課題解決に挑むことになります。おそらく、100歳までの学習を続けることになるようです。そんな訓練の場として、高校入試、大学入試、そして、入社試験などを活用することも、人生の選択肢になるかもしれません。そこで、今回は受験で、少しだけ得点を上げる仕組みを考えてみました。

 受験では、問題の出題傾向を把握することから始まります。全体像を理解していることのほうが、記憶がスムーズにいきます。全体が俯瞰できる優しい教材を選び、この問題を行えば、学習がはかどります。大局的な見地から、試験範囲に目を通し、まずイメージとしてとらえることになります。大学入試などの勉強を始める場合、できるだけ早い段階で大学入試過去問題集(過去問)を実際に解いてみることが、最も効果が高いと言われています。これは、最終的にどういう問題を解ければ良いか知ることになります。出題される問題のレベルが分かれば、日々の問題を解くモチベーションが高くなります。過去問は基本の反復が多く、その基本問題に習熟しておけば、本番での高得点が約束されるわけです。最終的にどういう問題を解ければ良いか知ることで、努力の方向性が決まります。無駄な努力をする必要がなくなります。一般に、やさしい問題の中に難問を解く鍵が隠されており、やさしい問題をする中で難問に対処できる力がついていくようになります。ここでは、出題の傾向を記憶することが重要な能力になります。記憶したもの(インプットしたもの)を試験において、上手に書き出す(アウトプットする)ことを、スムーズに行うことが大切になるわけです。

 学習した記憶には、明確ものと曖昧ものがあります。一般に、この記憶のレベルを4つに分類できるようです。それは、「親近感」、「見分ける」、「再生する」、「自動的習熟」になります。「親近感」というのは、一番弱い記憶になります。曖昧で、「ほとんど覚えていない」状態の記憶ともいえます。「見分ける」は、五択のような選択肢があれば正解がわかるレベルになります。自力では思い出せないけれど、選択肢を与えられればどの言葉が入るか思い出せるレベルです。受験生のなかには選択肢の多い問題は良くできるが、記述式の問題はできないないというレベルの子どもがいます。このような子どもが、「見分けるレベル」になるわけです。「再生する」は、単語を聞いたら、すぐに意味もスペルも発音も正確に答えられるレベルになります。受験生の目標は、この「再生する」のレベルになります。最後の「自動的習熟」は、思い出そうとしなくても、すぐに浮かんでくるレベルになります。いつも使っている言葉とか知識というものが、「自動的習熟」の記憶になるわけです。受験では、「親近感」のレベルを、「見分ける」や「再生する」、そしてできれば「自動的習熟」のレベルまで高めることになります。この高める過程に達成感や楽しみが見いだせれば、充実した受験生活がおくれることになります。

 受験において、自分の持つ能力以上の成績は獲れません。でも、質の高い睡眠ができれば、自分の能力を出し切ることができるのです。良質な睡眠の三大要素は、個々人に必要な睡眠の長さ、眠る時間帯、睡眠の深さになります。脳は小さい組織ですが、人間が使うエネルギーの20%以上も使う発熱器官でもあるのです。睡眠をとることによって、脳を冷やしているのです。この冷やし方に、特徴があります。一般に、入眠の前には手足の指先が温かくなることが知られています。手足の指先が温かくなるのは、末梢から熱を逃がすために毛細血管が拡張しているからです。手足の指先の毛細血管が拡張したとき、体温と脳の温度が下がり、眠りが訪れます。脳の機能が、休める時間になるわけです。もし、この休める時間を持たないと、脳は十分な働きをしない状態になります。蓄積した記憶を効率良くアウトプットできない状況になります。受験には、不利な状態になるわけです。もちろん、覚えるインプットの効率も悪くなります。眠ろうとしても、手足が冷えている場合、睡眠に入る状態になっていないので、睡眠が十分に獲れない可能性が出てきます。眠りに入ることの上手下手により、記憶の能力が左右されることもあるようです。上手に眠りに入りたいものです。

 勉強を考える時、自分の身体や精神の状態だけでなく、友達関係などの要素が大切になります。精神の状態が、大切な要素になります。勉強は、孤独な作業から生まれるのではなく対人関係の中から育ってくるものです。自己の習慣と対人関係は、学習の成就において大切なものになります。勉強などで頭を使ったときは、脳の表面にある大脳新皮質が疲労します。この疲労は、意外と早く回復します。大脳新皮質の疲労は、5分程度の睡眠でも回復すると言われています。難しい疲労は、別にあります。人間関係などのストレスによる脳の疲労は、脳の奥のほうの古い皮質にたまっています。この古い脳の疲労は、じっくり眠らないととれないのです。強いストレスがあれば注意力も低下し、脳の働きも悪くなり記憶が落ちるものです。テスト期間中とその前後は、人間関係のストレスと軽減しておくことが求められます。もっと良い方法は、ストレス耐性を高めておくことです。これは、サルの集団がヒントになります。サルは、集団で生活をしています。集団には、上下関係が厳密に秩序づけられています。ボス猿とランクの低い猿で比べると、脳内の機能が違うことが知られています。ボス猿はセロトニンの神経伝達物質の受容体が豊富で、セロトニンの働きが活発なのです。ランクの低い猿ほど、セロトニンの働きが低下しています。セロトニンは、不安をコントロールするうえで不可欠な役割を果たしています。セロトニンの働きが悪いと不安が強く、おどおどびくびくして小さくなってしまうのです。セロトニンの働きが活発なことは、ストレスや不安を撥ねのけ敵と対決しても怖気づかないのです。このセロトニンの分泌は、深い睡眠と密接に関係しているのです。記憶の面からも、耐性の面からも、睡眠の重要性が浮かび上がります。

 受験勉強において、自分の目指すレベルに至るまでには、必ず「退屈で単純なプロセス」が存在します。たとえば、中学の教科書にある英単語は、1200語程度です。これを覚える作業は、単調で反復の多いものになります。「力を伸ばすこと」と「力を維持する」のバランスをとることが難しいと言われます。要は、1200の単語力を維持しながら、英語力を伸ばす勉強をすることが求められるわけです。この単純な勉強をする過程には、スランプやモチベーションの低下が必ずやってきます。単純な学習で大切なことは、スランプをなくすことではなく、その期間をできるだけ短くすることになります。調子のいいときと悪いときに訪れる大きなスランプの波を、できるだけ少なくすることになります。面白いことですが、高い目標を持っていない人は、スランプに陥りません。学習をしない人には、スランプが訪れないのです。スランプは努力している人が、目標に到達する経過における停滞といえるものです。努力を続けていけば、いずれスランプを乗り越えていくものと、楽観的にとらえても良いものかもしれません。

 最後になりますが、脳はものすごい発熱器官なので、睡眠をとることによって脳を冷やしていることが話されました。脳を冷やす行動は、脳の大きくなった動物に必ず見られるものなのです。脳が大きくなった動物は、どんな動物でも、かならず眠るのです。そこで、疑問に思った動物科学者いました。ずっと泳ぎつづけるクジラやイルカは、どうやって眠ってしいるのかということです。そして、興味をもたれているのは、飛びつづける渡り鳥はどうやって眠っているのかでした。最近、その疑問が解明されてきました。イルカで証明されたことは、大脳半球が半分ずつ眠っていたのです。右半分が眠って、左半分が起きていることを交互に眠ることで、うまく呼吸をしながら水中を泳いでいたのです。イルカやクジラの場合、有利なのは水の中ですから、もともと水冷式の機能を備えていたようです。渡り鳥の場合は、空冷式になるかもしれません。そこで、このように脳を左右交互に使うことができれば、受験に有利になるかもしれないという発想がでてきます。受験勉強を休まずに、24時間続けることが可能になるかもしれないのです。常識として、人間の場合、これからの数万年の進化を待たなければ、難しいことでしょう。でも、脳を冷やす便利なツールが開発には、可能性が残されているようです。脳を効率的に冷やして、脳の機能を高める発想は面白いかもしれません。もし、このようなツールが開発されれば、受験生には福音になります。もっとも、受験生以上に、研究者の研究成果を向上させるツールになるかもしれません。そんなツールを開発してほしいものです。ヒントは、手足から熱を効果的に発散させる仕組みなります。

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