地方創生の立役者はデータセンターです  アイデア広場 その1505

はじめに

 近年の明るいニュースに、台湾の企業が九州に進出したことがあります。この半導体工場のおかげで、地域経済が活気を取り戻している状況があります。このように活気のある状況を、日本各地に作り出したいものです。いわゆる地方創生を、日本各地に実現させたいという希望です。

  1. トレードオフとしてのデータセンター

 地方創生の先兵になると思われるものが、データセンターになります。データセンターの建設は、北の大地に移動を始めているようです。データセンターのコンピュータを作動させる場合は、多くの電力を消費します。と同時に、コンピュータを冷却させるために同量の電力を消費します。データの量が、加速度的に増えています。北への移動は、データセンターを冷やすために、自然冷却を使用し、電力の消費量を抑えたいという狙いがあります。コンピュータが50℃になるとサーバーはダウンします。そこで、20℃程度に保つことが必要になります。冷たい外気を求めて、北の大地に移動しているわけです。

 一方、逆の動きもあります。日本に先立って、欧州では、昆虫が食用のほかに、豚や鳥などの畜産用の飼料やエビの養殖用飼料としての市場が広がりつつあります。その中でも、オランダのプロディックスやフランスのイノーバフィードは、生産量で先行しています。これらの企業には、弱点もあります。イノーバフィードは気温の低い欧州に工場があるため、暖房設備に電力を使っているのです。気温の低い欧州に工場があるため、暖房設備に電力を使っています。温暖化に、逆行する工場になります。住友商事は、昆虫事業に出資するシンガポールのスタートアップから日本での独占販売権を取得しました。気候が温暖なアジア地域に工場を持っているため、昆虫育成時に暖房設備を必要としないという特徴があります。世の中には、寒さを求めるデータセンターと暑さを求める昆虫の飼育業があります。このトレードオフの状況を解決することができれば、そこに新しいビジネスが生まれる可能性があります。今回は、このトレードオフの課題に挑戦してみました。

2、データセンターは北へ向かう

 近年のクラウド化などで、高効率的な大規模データセンターへの集約が進んでいます。これからの情報化社会の拡大を見越して、この施設建設には投資マネーが入る環境ができています。デジタル経済を支えるデータセンターでは、環境対応に向けた取り組みも加速しています。IT大手が、相次いで脱炭素化の目標を掲げる流れになってきました。効率化と合わせて、データセンターでの再生可能エネルギーの活用が、求められる時代になってきたのです。日本では、この受け皿になっている地域が、北海道になります。北海道には、まだまだ開発されていない再生可能エネルギー(再生エネ)の資源があります。そんな資源を求めて、風力発電国内最大手のユーラスエナジーホールデングス(ユーラス・東京港区)は、北海道北部で国内最大級の陸上風力発電事業に乗り出すことになりました。

 ユーラスは、豊田通商の子会社になります。北海道北部では広い土地を確保しやすい上、風車などの発電設備もスムーズに輸送できる利点があります。この事業では、稚内市などの宗谷地域と、天塩町などの留萌地域に、最大で計260基の風車を建設します。その総出力は165万キロワットになり、早ければ2031年ごろから稼働させることになっています。ユーラスは、大量に電力を消費するデータセンター(DC)を誘致し、再生エネ電力を供給することを狙っています。生成AIの普及で、DC増設が喫緊の課題になっています。マイクロソフトなどの企業は、日本でDC増設を表明しています。北海道の市町村に、お金を投資する機運が高まってきているともいえます。

3,深層水の利用

 再生可能エネルギーで電気を作り、その電気で冷却する方式がある一方で、冷却水を使ってデータセンターのコンピュータを冷やす方式をもあります。しかもこの方式は、電気を作りながら行うことも可能になる優れものです。コンピュータを冷やしながら、電気を作り出す仕掛けのお話しになります。沖縄県の久米島では、海洋温度差発電(OTEC)が行われています。この温度差発電は,アンモニアのような沸点の低い物質と深層水を用いた循環型装置になっています。久米島の海水温は,表層で冬期22℃,夏期28℃と変動します。でも、600m地点では、8~9℃と安定した水温になっています。海洋温度差発電は,海水の温度分布特性を利用してエネルギーを取得する方式です。

 久米島は、沖縄本島から西に約100 km、沖縄諸島に属する島になります。久米島の海洋温度差発電能力は、数百kW以下の規模になります。この発電能力のみでは、経済性を成立させることが困難です。でも、海洋深層水は、電力のみでなく他の広い用途が期待されているのです。久米島の海洋深層水の取水量は日量13000トンと国内最大規模です。この8~9℃の深層水が沸点の低い媒体を冷やし、21~30℃となる表層水の熱で蒸発させて、タービンを回転させて電気を発電させているわけです。結論から述べると、実用化の点では,海洋温度差発電より海洋深層水利用が先行しています。海洋深層水の主な特徴は,低温安定性,富栄養性,清浄性です。発想は、海洋深層水を利用し、世界のデータセンターが求める冷却のシステムの構築です。8~9℃の深層水が常にくみ上げられる仕組みがあれば、環境に優しいデータセンターが建設できます。海洋深層水の再循環を利用すれば、年間を通して休むことなく、サーバーを冷却できるのです。この仕組みは、海水の温度差を利用した発電とサーバーの冷却を両立させるものになります。

4,昆虫食のビジネス化と温暖化の抑止効果

 欧州では、昆虫が食用のほかに、豚や鳥などの畜産用の飼料やエビの養殖用飼料としての市場が広がりつつあります。その中でも、オランダのプロディックスやフランスのイノーバフィードは、生産量で先行しています。これらの企業には、弱点もあるようです。イノーバフィードは気温の低い欧州に工場があるため、暖房設備に電力を使っているのです。同じように、プロディックスは気温の低い欧州に工場があるため。暖房設備に電力を使っています。温暖化に、逆行する工場になります。これらの先行企業に追いつくべく、住友商事は、出資するシンガポールのスタートアップから日本での独占販売権を取得しました。気候が温暖なアジア地域に工場を持っているため、昆虫育成時に暖房設備を必要としないという特徴があります。住商は日本での販売でノウハウを蓄積し、将来はアジア市場などへの展開につなげたいとしているようです。

 昆虫食や昆虫飼料は、地球温暖化の軽減にも貢献する可能性があります。二酸化炭素(CO2)は、地球を暖かくするという理由で、嫌われる気体になっています。脱炭素の流れの中、CO2を排出するタンパク源には逆風も吹き始めています。地球温暖化を促進しているのは、工場や自動車から排出される二酸化酸素だけではないのです。メタンガスはCO2の約25倍の温室効果があり、近年その影響の大きさが指摘されるようになりました。牛がゲップする光景は、愛嬌があるものです。この牛のゲップに、メタンが多く含まれることは畜産を学ぶ学生なら誰でも知っていました。驚くことに、世界の温暖化ガス排出量の3割を農業分野が占め、うち8割近くが牛のゲップに由来するといわれるようになったのです。このような情況の中で、昆虫タンパクは生産段階でのCO2排出量を抑えられるため、持続可能な飼料として注目されるようになりました。昆虫からタンパク質1キログラムを得る場合、排出される二酸化炭素量はほぼゼロとされています。牛を育てる場合、メタンを排出します。温暖化を阻止するタンパク源として、昆虫の活用が進んでいるのです。昆虫の活用には、食用と飼料があります。EUでは、ミールワームやトノサマバッタ、コオロギが食品としての域内販売が認可されています。デンマークでは、バッファロービートルという昆虫の幼虫の粉末を活用した菓子などを販売しています。もっとも、主力は養殖などの飼料に利用されることが多いようです。

6,昆虫が肥料や飼料になる

 昆虫は、ミールワームだけでなく、ハエの種類にまで及んでいます。福岡市で2016年創業したムスカが、ハエの一種である「イエバエ」を使った魚の飼料を開発しました。これは、植物工場と同じように工場で育てられます。ムスカは、畜産農家から出る家畜の糞や食品工場から出る残りカスを利用して、飼料や肥料を作る仕組みを開発しました。ムスカのイエバエを活用すれば、家畜の糞などが1週間程度で飼料や肥料になります。有機廃棄物1トンに対して、300gのイエバエの卵で、飼料や肥料を生産することができるのです。イエバエの卵で作った飼料や肥料は、畜産農家や魚の養殖業者に供給されています。この幼虫を乾燥させた商品を養殖飼料に5%を混ぜると、養殖魚のサイズが大きくなるということです。一般的にマイワシやカタクチイワシの餌魚の価格は、変動が激しいのです。変動の激しい飼料は、養殖経営にはマイナス要因になります。イエバエの飼料は、安定供給できる強みがあります。

 イエバエの排せつ物は、有機肥料として利用できるのです。家畜の排せつ物は、全国で大量に発生し、その量は毎年8000万トンに上ります。養魚場で使う飼料の材料は、ほぼ無限にあると考えても良いのです。もちろん、畑に必要な肥料も、ムスカを媒介とすることで無限に供給が可能になります。このことから、面白いクローズドシステムが考え出されます。養殖場と植物工場、そしてイエバエの繁殖施設を隣接に作り、養殖場の汚染水とイエバエの排泄物を植物工場で使用します。排出される汚染物質は、植物工場の肥料として利用するわけです。養殖漁は大きく育ち、農作物は豊富に収穫され、外部には汚染物質を出すことのないクローズとシステムが、完成することになります。ムスカのイエバエは、夢のある昆虫になるかもしれません。

おわりに

 データセンターの候補地に合わせて、トマトやメロンの植物工場、サケやアマエビを陸上養殖場、そして昆虫の養殖場を作ります。たとえば、北海道で20℃の温水を自由に使うことができれば、かなりの作物が作ることができます。鉄道やフェリーを使い首都圏にメロンやトマト、そしてイチゴなどの作物を、供給出来れば良いビジネスになります。特に、本州の主要産地と時期をずらせば、かなりの市場競争力を持つ作物になるでしょう。もちろん、アマエビなどの魚介類も育てるわけです。エビを育てた温水を植物工場で利用することになります。エビの汚物が肥料になる仕組みにしておくわけです。さらに、昆虫工場では、植物工場用の肥料や養殖場の飼料が生産されます。生態系を乱さないクローズとシステムが完成です。

 さらに、企業を呼び寄せる仕掛けを考えておきます。自治体が、データセンターを作る企業に土地を無料で提供します。10年間は使用料や税金を免除します。代わりに、廃熱を植物工場や養魚場などに供給するという条件になります。北海道の厳しい寒さや久米島の冷たい深層水が、IT企業と農業、そして漁業などの産業活発にします。産業が活発になれば、自治体に多くの税金が入ることになります。このような発想を持つ市町村が、地方創生の先兵になり裕福な地域を築くことになるかもしれません。

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