太陽光パネルのある生活も面白い アイデア広場 その1633

 近年、地球温暖化が進み、気候の変化が激しくなっています。熱中症で倒れる方も、増えています。暑さへの耐性を高めることを、暑熱順化といいます。この順化機能を高めておけば、熱中症にかかりにくい身体になるわけです。そんな暑さに強い人たちが、熱帯地方にはいます。彼らは、手足が長く、細身の体型をしています。この体型は、熱放散に有利なのです。つまり、熱中症にかかりにくい体型をしているわけです。最近の日本の若者は、四肢が細長く、体幹全体が細身になりつつあります。日本にもやってきた温暖化により、日本の若者の体型は、熱帯の住民に近づきつつあるのかもしれません。変化は、暑熱順化や体型だけでなく、経済や会社の規模においてもみられるようになってきました。世界の自然災害による損失額は、異常気象の影響もあって1980年以降も増えてきました。この損失額は、2024年には3200億ドル(約50兆円)にのぼっています。損失は困ったことですが、その中でもより困った国や企業があります。豊かな国は、インフラの強靭化で自然災害などの被害を減らせます。でも、貧しい国では財政的な余力がないため、被害を受けると長期間立ち直ることができない状況になります。また、同じ国のなかでも裕福な市民と貧しい市民、大企業と中小企業では、復旧費用や復旧時間に違いが出てきます。たとえば、大企業は浸水対策や拠点の分散で災害に備えられますが、中小企業はその対策が難しくなります。経済的な弱者ほど、大きな損失を被る傾向があり、格差がますます広がることになります。今回は、この格差を少なくする案を考えてみました。

 熱中症に関して、興味深い統計があります。それは、猛暑日の日数に応じた高齢者10万人あたりの死亡率を比べた統計になります。太陽光パネルの設置数が多い地域は、少ない地域に比べ、死亡率が低いという結果です。これは、名古屋市立大学の内田真間教授とアジア成長研究所の阿宜均上級研究員が調べものです。住宅向けソーラーパネルの設置数が増えると、熱中症で亡くなる高齢者が減るというものです。この理由は、簡単に解明できました。部屋にエアコンがあるのに、電気料金を節約しようと稼働させず、暑さを我慢する人たちがいるのです。とくに高齢世代は、電気代の節約意識から冷房を控えがちとの調査結果があります。調査の答えは、エアコンを使わない高齢者の死亡が高くなるというものです。一方、電気代を気にせずにエアコンを稼働できるので、高齢者の死亡が減るというものです。私の知人にも、3k wの太陽光パネルを持っている方がいます。彼によると、「太陽光パネルを置くと、日照があれば自家発電で電力をまかなえます。3k wの太陽光パネルならば、2台のエアコンを全開にしても無料という安心感がある」と笑いながら話していました。

 内田教授らの研究の動機は、熱中症対策を探ることではないようです。その目的は、「適応格差」の是正策を探ることにありました。熱中症の増加は、温暖化による悪影響のひとつになります。猛暑により、熱中症になる人が相次いでいます。その一方で、熱中症に無縁の人も多いのです。熱中症になる人とならない人の差はどこにあるのか、この「適応格差」に研究課題があったわけです。エアコンを稼働させずに熱中症になるのは、所得の違いに要因があります。所得が低い経済的弱者は、「適応」技術を使えず「適応格差」が生じます。悪影響を軽滅する「適応」技術(エアコンなど)が登場しても、誰もが使えるわけではありません。電気代の負担感に差が生じる事例も、適応格差の現れになります。太陽光パネルは、その差を埋める1つのツールになります。でも、電気を産む太陽光パネル自体も高価です。適応格差はいろいろな局面で 温暖化対策を進めるうえで障害になっています。

 障害があれば、それを取り除く人たちが山形におりました。山形県南部の置賜地方では、発電した再生エネを地元で消費することを目指す「おきたま新電力」を設立しました。この新電力は、初期投資ゼロで、太陽光パネルを設置できる仕組みを導入しています。おきたま新電力が費用を負担して、企業や個人宅にパネルを設置するのです。そして、契約期間終了後はパネルが無償譲渡される特典があります。太陽光パネルを設置した企業や個人は、持続的に電力を発電し、それを享受できることになります。また、東京周辺でも、このようなサービスを行う企業が現れています。オムロン傘下のオムロンソーシアルソリューションズ(東京・港)は、戸建て住宅向けに初期費用ゼロで太陽光発電システムを導入できるサービスを始めました。太陽光発電システムの設備費や工事費はかからず、設備に不具合があった場合もオムロンソーシアルソリューションズが修理費を負担することになります。15年の契約満了後は、設備は無償で譲渡する条件のようです。地域で作った電力は、地域で使うことが最も効率的です。再エネの地産地消を進めることは、循環型脱炭素社会の構築につなげることにもなります。そして、電気がいつもリーズナブルに使えれば、寒さ暑さに適応できるエアコンを自由に使うことができるようになります。

 日本の電力事情は、原子力発電の稼働がほぼ止まり、ぎりぎりの状況でやりくりしています。現在の日本では、電力需要の電力設備容量が2億5000万キロワット程度になるようです。この電力設備で、日本の1年間の発電電力量約1兆キロワット時を作り出しています。中身は、火力発電の設備容量が1億6000万キロワットです。東日本大震災前は, 54基の原子力発電が約5,000万キロワットで、日本全体の26%をまかなっていました。残りを、水力発電、太陽光発電 、バイオマス発電、地熱発電、小水力発電、潮流発電、波力発電などで賄っていたわけです。でも、原子力発電の事故が起きてからは、火力発電や再生可能エネルギーによる負担が増えていることになります。いろいろな電源を組み合せながら、現在の日本の電力事情は成立しているわけです。その一方で、日本政府は、2050年に温暖化ガス排出ゼロの目標を掲げています。そのために、環境価値を希望する企業は増えています。環境価値は、排出を減らした企業や組織を優遇するものといえます。再生エネルギーを生産すれば、利益が得られる仕組みです。この仕組みでは、新設の太陽光は高い環境価値を得やすくなっています。東京都は、不動産大手などの施工物件で、新築住宅に太陽光の設置を義務化する方針です。都では2030年までに、新築住宅で70万kwの太陽光エネルギーが新たに導入されると見込んでいます。東京都だけでなく、川崎市は2025年から不動産大手などの施工物件で、太陽光の設置を義務化する方針です。このような取り組みが、電力を作り出すだけでなく、死亡率低下に貢献することも分かってきたのです。

 おさらいになりますが、電気が行う仕事はワット時 (ワットアワー)で表されます。電気料金などの場合,あるパワーを1時間使った場合の仕事量はキロワット時(kWh)で表すことになります。エアコンなど消費電力の大きい1,000 W級の家電製品を1時間使うと1kWhとなるわけです。より具体的にいうと、10時間使うと1kWh(東北電力では1kWhが約33円 2025年8月現在)となり、電気料金は10kWh ×33円=330円となります。私の知人は、オール電化の家を建てるときに、3kW太陽光発電を屋根に設置しました。一時は、この太陽光発電だけで、東北電力に払う光熱費が無料という月もあったそうです。でも、原子力発電の停止が相次ぎ、夜間電力の特典がなくなり、売電の買い取り制度がなくなったころから、事情は悪化しました。彼の家は、オール電化ですから都市ガスや灯油を使いません。電気の使用量を減らせば、良いわけでした。売電は1kWh当たり約10円です。電気を買うと1kWh当たり33円です。彼は太陽光発電が働いている時に、調理を行ったのです。IH機器は、電気使用量を多くします。太陽の日差しが強い9時から14時ごろに、1~2日分の料理を作ってしまうのです。彼は、お天道様を見ながら、優雅に生活をしているようです。

 最後になりますが、日本の進歩的自治体以外にも、太陽光発電装置を推奨している国があります。その海外に目を向けると、ニューヨーク市やカリフォルニア州も、新築住宅などへの太陽光発電設置を義務化していることがわかります。さらに、ドイツのベルリン市も、新築する家庭や屋根の改修などの際には太陽光パネルの設置を義務化しています。この世界における太陽光発電設置を義務化は、温暖化対策の二酸化炭素の排出削減だけでなく、安全保障の観点から進められている政策なのです。ロシアのプーチン大統領は、天然ガスに依存する欧州を人質にするエネルギー貿易政策を強行しています。このロシアの圧力を抑止する対策が、自前で電気を作る太陽光発電みなります。ウクライナに対するロシアの攻撃を見ると、大規模発電所や変電所の攻撃が顕著でした。国民の士気を一気に気弱化させる戦術を行っています。でも、各家庭に自家発電施設があれば、分散効果がでてきます。少ないエネルギーでも、ないよりはあったほうが、人々は生きていくことができます。これからは、「各家庭に3kwの太陽パネル」が合言葉になるかもしれません。

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