女性管理職が楽しい職場を開拓する  アイデア広場 その1432

 働く女性にとって、楽しい仕事をして子どもと至福の時を過ごすことが、幸せということになるかもしれません。近年は、働いて子どもを育てるだけでは、十分でないという声も出てきました。グローバル化が進む中で、海外との女性との競争もしなくてはならない時代に入っています。フランスのキャリア女性は、仕事に集中する時間と子どもと至福の時間過ごすという二つのことを同時に享受しているようです。フランスのキャリア女性は、可能な限り家事や育児をアウトソーシングしています。日本の管理職や専門職の女性は、家事や育児を今までの様に、がんばりながら両立をして方が多いようです。一方、日本では管理職になると幸福度は下がるという研究もあります。管理職になる能力を持ちながらも、管理職にならない人材もあるようです。管理職になりたくない理由としては、男女とも「ストレスが増えるため」ということのようです。特に、女性は昇進に消極的と言われています。

 日本の女性は、家庭内で無償労働が求められてきました。その家庭内労働の質は、海外に比べ水準が高いことが明らかになってきました。掃除や洗濯、そして育児に対して、要求水準が高かったのです。この家事労働と会社の仕事の両方を、こなしていたわけです。日本の女性キャリアだけが、重い荷物を背負って、用意ドンとスタートをしていたことになります。これでは、海外の女性キャリアに勝てません。せめて、同じ土俵で仕事をせめぎ合う環境を整えることが望まれます。グーグルは、社員に無償で炊事や洗濯代行のサービスをオフィスで提供しました。グーグルは、最大の価値を発揮する資源は、優秀な社員だと見極めていたのです。優秀な社員の時間は、無駄にしてはいけないという哲学があるようです。日本は長らく、男性優位の職場環境を形成してきました。でも、最近は女性の購買力も急速に向上してきています。女性のことは、女性がよく分かります。女性の提案から男性上司を経て、女性の求める製品の開発・製造、そして販売という流れが多いようです。これを、女性の提案から女性上司を経て、女性の求める製品の開発・製造・販売という流れを構築した方が合理的です。キャリア女性の能力が生かされる分野は、拡大しています。この流れに、日本のキャリア女性の能力を生かしていきたいものです。今回は、女性の管理職のやりがいや幸せについての知見を深めてみました。

 大手積水ハウスは、2018年9月から男性社員に育休1カ月取得を義務付けました。育休の対象になった670人全員が、取得したことで話題になった企業でもあります。この積水ハウスが、2023年、「幸せ度」調査を、全社員を対象に実施したのです。この調査は、日本の幸福学の第一人者もある、慶応義塾大学大学の前野隆司教授の監修で実施されました。設問は、「私は自分の人生に満足している」など114問になります。その設問には、「全くそう思わない」から「とてもそう思う」までの7段階で答える形式になっていました。2023年11月6日から27日にかけて、グループ関連会社も含めて 2万3117人から回答を得ました。この中身が、一般的日本の企業の常識から良い意味で逸脱していたのです。「幸せ度」調査では、女性管理職のスコアが、男性の管理職、男性のー般社員、そして一般の女性社員を上回っていたのです。女性管理職が、職場で最も「幸せ度」が高いという結果になったわけです。ジェンダーギャップの大きい日本の企業で、女性が優位に位置する企業経営に関心が集まることになります。そして、女性管理職の「幸せ度」が高い理由を、知りたくなります。

 積水ハウスは、育児休業の制度を拡充するなど子育てと仕事の両立支援にも力を入てきた企業になります。2018年9月から男性社員に育休1カ月取得を義務付けました。育休の対象になった670人全員が、取得したことで話題になりました。昭和モデルでは、男性が稼ぎ手としての働くことが美徳とされました。妻は、家で子育てという美風が残っていました。育休など取っていては、生産性が落ちるというわけです。でも、積水ハウスの場合、育休は休業中の引き継ぎなどの簡素化で、無駄な業務を見直しました。その結果、生産性が向上するという効果がありました。育休の完全実施が、会社の利益なり、家庭の平和にも寄与したわけです。コロナ禍で図らずも得た柔軟な働き方を軸に、男性が家事や育児を担える環境が整ってきたようです。残念なことですが、日本の多くの企業では、サラリーマンの夫と専業主婦の妻を前提にした仕組みへの意識は、なお根強く残っています。現在は、女性が子どもを産み育てながら、安心して働ける環境をつくることが求められています。少子化を打破し、多産を求める環境整備が、社会の要請になりつつあります。

 積水ハウスでは、昇進を目指す女性社員が多く存在します。その多い背景には、実践的な育成プログラムの存在があります。それは、「ウイメンズカレッジ」になります。これは、2014年から始まった女性管理職育成プログラムになります。ウイメンズカレッジには、毎年20人近くの女性が参加しています。このプログラムでは、業務時間を活用して2年間かけてマネジメントのスキルや考え方を学びます。初年度は様々な企業の女性管理職が、どのように課題を解決したかなど、事例研究を学ぶことになります。2年目からは、各自が業務内容に応じた課題をテーマに設定します。設定したテーマの解決状況を、プレゼンしながら研修を深めていきます。時間をかけて実力をつける研修が、自己肯定感や意欲につながっているようです。実力をつける研修が、自己肯定感や意欲につながり、高い「幸せ度」にも寄与していると理解されているようです。

 積水ハウス単体の女性管理職は、2023年度で158人になります。2022年4月に初めて管理職に登用された、デザイン企画グループの女性リーダーの方はやりがいについて話しています。彼女は、「ありがとう」という機会が増えたと言います。部下に仕事を任せると、予想以上の成果物が出てくると喜んでいました。また、彼女に感謝されることが多い部下の男性も、やりがいを感じているようです。幸福は、幸福の輪を広げていくと言いますが、ここの職場では「幸せ」の好循環が起きているようです。もちろん、リーダーとして、部下の支援には心を配ります。困っている部下を放置していると、状況は悪化するばかりになります。「絶対に放置してはいけない」と、「ウイメンズカレッジ」で学んだことを振り返ります。新入社員に対して、週に1度は面談をします。面談する部下とは、きめ細かなコミュニケーションも欠かさないようです。積水ハウスでは、時間をかけて管理職のスキルを教え、意欲を引き出しています。管理職になった女性は、就任以前は仕事が増えると「大変だろうと思っていた」そうです。でも、なって見たら、「こんなに幸せな気持ちになるとは思っていなかった」と感想を述べていました。蛇足ですが、アメリカのギャラップ調査によると、上司との間に強い粋をもっている社員は、毎月平均588ドル多くの収益を上げます。また、上司との関係がよくない部下は、冠状動脈疾患を発症する割合が30%高いということです。この調査では、米国企業で部下と上司との不具合による損失が、年間3,600億ドルと算定していました。部下を肯定的に励ますマネジャーのチームは、褒めないチームと比べ業績が31%も上回っていました。チームを育てる女性リーダーが、積水ハウスでは育っているようです。

 最後になりますが、幸福には、面白い性質があります。親が変な顔をしてみせると、赤ちゃんが自然にまねをする光景はほほえましいものです。親がほほ笑むと、赤ちゃんも微笑み返します。微笑みは、お互いに伝染するものです。幸福には、このように広がる性質もあるようです。感謝を常に忘れない人たちは、抑うつ的になりにくく、不安や孤独も感じにくいといいます。感謝を忘れない彼らは、よりポジティブで、EQ (心の知能指数)が高く、寛容です。幸福の要素に、ポジティブや感謝の要素も含まれているようです。人間というのは、理性的に判断をするものだと信じられてきました。でも、一人の人間の理性だけでは、幸福を捕まえることをできないようです。幸福だと感じている人たちは、友人、同僚、家族との人間関係を大事にしており、それを推進力としているようです。幸せを目指すことは、人類共通の権利といえます。最近は、幸福の中で働くことがトレンドになっているようです。幸福は、昔から人々の関心の高いテーマでした。学術的には、幸福の研究が心理学の分野で盛んに行われていました。現在は、幸福の研究に、行動経済学、医学、脳神経科学など、様々な分野が関わるようになりました。幸福が感情的な快や不快の面だけでなく、多面的に捉えるようになってきたとも言えます。商品開発の視点に、この幸福という要素を加味すると面白いかもしれません。

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