兵庫県姫路市の教育長さんが、「ある小学校で支援員や外国語指導助手(ALT)の役割をしながら1日過ごしました。そこで、感じたことがあったそうです。その一つは、授業が分からない子もいれば、ずっと先まで終わっている子もいることでした。二つ目は、理解できる子どものペースが、いろいろだということでした。今回は、このいろいろなペースについて、考えてみました。
一般に、勉強につまずいた子どもには、簡単なことから始めて、成功体験を:積むことが大切になります。親や先生が、子どもに勉強させたいのであれば、勉強しかできない環境を用意することも必要です。学習環境には制約がありますが、その中で無駄な要素を削ぎ落としていくことになります。「この1問だけやってみようか」、「5分で終わりね」などと数や時間を制限するのが一つの工夫になります。子どもを集中させるには、ひとつの勉強を5分や10分、そして15分に収める必要があります。この手法は、テレビなどで使われています。テレビのバラエティ番組は、3分から5分のユニットで構成されています。そこに、笑いが生じるわけです。もっとも、笑いが出なければ、その番組は終了していくことでしょう。また、勉強ができない子やスピードの遅い子どもは、頭と手の間に回路ができていないことが多いのです。この回路をスムーズにするには、繰り返しが有効になります。脳科学の研究では、手が器用に動くということは脳が充分に鍛えられていることになるようです。
子どもの勉強は、親の関わり方でよくもなり、悪くもなります。理解の良い子どもの特徴は、親のはたらきかけのうまさです。親が子どもに勉強させたいと思うのなら、親が勉強している姿を子どもに見せることです。親が楽しんで一緒に勉強する以上に、子どもの勉強に対する効果的をあげることができないものです。良い親は、「できていること」に目を向けています。ここでは、成績の結果だけを評価する姿勢は悪いことになります。良い親は、良い成績にいたる努力を評価する姿勢があるようです。子どもにかける言葉として最悪のものは、「勉強しなさい」になります。「宿題はやったの?」、これも同様に子どものやる気を著しく下げます。「宿題、やる気になれそう?」と質問をすれば良いのです。親が子どもに目標を与えるのではなく、子どもの立てる目標を親が聞くという姿勢が大切になります。目標を子ども自身が決めるように後押しをすること、楽しく前向きな親子関係の中に、子どものやる気、そして理解力が培われていきます。
一般に、子どもをやる気にさせるには、親の支援が必要です。子どもには言えば分かるとか、子どもは「見て覚える」とは言っても、なかなかできるものではありません。「見る」のと「する」のとでは、違いがあります。実際にやってみて、うまくできないときには、どうしたら良いのでしょうか。
1つに、まず親が正しいやり方を見せることです。
2つに、子どもに一人でやらせてみることです。
3つに、できないところがあったら、またやって見せるか、手を添えて一緒にすることです。
4つに、子どもが一人で正しくできるようになったらOK
1つと3つを飛ばしたりすると、子どもはいつまでたってもできるようになりません。「できる」という実感を得られることは、とてつもなく大切な体験になります。親が代わりにやってばかりいては、子どもはいつまでたってもできるようになりません。
一方、小さな子どもには基礎学力が大切になります。低学年レベルの簡単な勉強を繰り返すことでしか、基礎学力は身に付きません。たとえば、100冊くらいの絵本を読破したら、一つの基礎学力が付きます。絵本でも、1冊の中で物語の起承転結ができてきます。起承転結にたくさん触れることで、文章構造が自然と頭に入り、基礎学力が付いてきます。基礎ができてないところに、積み上げても無駄な行為になります。読み書きができて語彙が増えれば、人の言葉も理解できるようになります。勉強は曼荼羅的に広がっていくもので、何がきっかけになるか、わかりません。知らないことを知る楽しさ、できなかったことができるようになる楽しさが、子どもをポジティブにしていきます。それまで積み上げてきたことがつながったり、理解できたりして、突然わかるようになります。理解できて、突然わかるようになることをパラダイムチェンジといいます。たいていの場合、パラダイムチェンジを境に「次元が変わって」、ぐんぐん理解力が向上していきます。パラダイムチェンジは一生のうちに何度も訪れて人を成長させます。こんなことを何度も経験させることができれば、子どもは確実に成長していきます。
それでは、より具体的には、どのように基礎学力をつけていけば良いのでしょうか。継続的に達成感を獲得する工夫も必要です。そのためには、今よりも、30分早寝早起きをすることです。やる気があるからできるのではなく、やり始めるとやる気が出てくるものです。寝る前に覚えた漢字、英単語、そして解き間違えた計算問題をそれぞれ十分ずつ復習します。朝の30分を利用して、漢字、英単語、そして解き間違えた計算問題を十分間ずつ復習するわけです。できたら、カレンダーの日付にできたマークを付けていきます。努力を、可視化して自分を褒めていくのです。「できた」や「できる」という体験を昧あうことで、今までできなったこともできるようになります。多くの感覚を使った学習も、効果的です音読は、目しか使わない黙読より内容の吸収効果が格段に優れています。音読は、「目」「耳」「口」三つの器官を同時に使います。音読はまた、読めない漢字、意味のわからない言葉を子ども自身が自覚することもできます。
個人の努力による学習の工夫も大切ですが、子どもの周りの人間関係も大きな要素になります。学んだことを誰かに伝えることは、効果てきな勉強法でもあります。学んだことや教わったことについて、時間をおかずに誰かに教えると知識が整理されます。教わったこと(インプット) を誰かに教える(アウトプット)により、記憶は確かなものになります。起承転結などの組み立てが分かるようになれば、「主張」「データ」「論拠」を結びつけることで、ロジカルな考えが確かなものなっていきます。覚えることも大切ですが、その覚えた知識を使って問題を解くための訓練も必要になります。安心して話せる仲間とかコミュニケーションの仲間いることは、このインプットとアウトプットのやり取りがいるでもできる良好な学習環境を作っていることになります。グループ活動を協調的にすすめるためには、コミュニケーションが大切な役割を果たします。
最後になりますが、大人や教師の役割は、子どもに勉強を強いるのではなく、子ども自身が勉強する目的を理解するよう手助けすることになります。子どもが明確な目標をもてれば、同じ時間をかけても、より効率的に学習できるようになります。明確な目標をもてれば、同じ時間をかけても、良い結果を得ることができることになります。この目標設定のコツは、2つのポイントになります。1つのコツは、目標を絞ることです。一日の中で、短期目標を設定することです。コツの2つ目は、ちょっとがんばれは達成できる目標レベルにすることです。目標を可視化したら、次は努力の経過も見えるように記録していく工夫も必要です。目標のある子どもと目標がない子どもでは、勉強に違いが出てきます。自分の明るい将来像を思い描き、目的意識を持てた子は、勉強の姿勢が違ってきます。日々努力し、その成果が出てくるような学習環境を用意したいものです。