地球温暖化の問題が出て来てから、温室効果ガスは悪者になっています。もし、この悪者の温室効果ガスを全て無くしてしまったら、どうなるのでしょうか。現在の地球の平均的な表面温度は、プラス15℃程度です。この気温は、人間にとって過ごしやすい気候になります。でも、温室効果がなくなったら、地球はマイナス18℃程度に下がります。私たちを取り巻く住みやすい環境は、適度な温室効果があるからなのです。問題は、温室効果が「過剰に働く」ことになります。今後、北極は気温の上昇に伴い雪氷面積が減り、太陽光を吸収することで気温上昇が加速されていきます。中国の揚子江と黄河の水源は、ヒマラヤにあります。温暖化の加速により、現在ヒマラヤの氷河がどんどん溶け出しています。氷河の減少は、中国とインドの二大国の水源がなくなりつつあることを意味しています。中国には、これ以上発展するための水は残っていないのではないといわれています。一方、インドが現在のように水を多く必要とする農業で行えば、確実に危機がくると言われています。多くの国は、化石燃料の排出抑制という手法で、温暖化を阻止しようとしています。でも、化石燃料の消費は増え続えています。この方法で阻止できなければ、別の方法を考える人たちが現れます。今回は、この別な方法(太陽光の遮断)について考えてみました。
インドネシアのクラカタウ火山は、1883年の爆発で史上最大とされる大音響を発しました。この噴火の翌夏、北半球の気温は1.2℃も下がったのです。この種の大火山噴火では、成層圏にエーロゾルが放出されます。硫酸の液滴を含んだがエーロゾルが、入射する太陽光の何パーセントかをそのまま宇宙空間へはね返します。大火山噴火のエーロゾルが、太陽光を反射し、地上の気温を下げることになるわけです。クラカタウの爆発では、気温の低下に加えて、アメリカの西海岸は記録的な豪雨に見舞われました。また、異例の場所で雪が降り、春の種まきが霜の影響を受け、夏の収穫が遅れゼロになるという事態を引き起こしています。火山の噴火による地球規模の被害は、100年に数度起きています。温暖化温暖化という声は高まりますが、一瞬で地球の寒冷化が訪れる事態は、人々が生きているうちに1度か2度は訪れるようです。
蛇足ですが、マツやブナは寒いときと乾燥しているときの両方の条件下で、幅の狭い年輪が形成されます。これらの年輪の記録から、気候への影響の分析に使えることが明らかになりました。これらの年輪を調べる学問領域が、年輪年代学として認知されるようになりました。連続した年輪記録であるドイツのブナとマツ年輪年代は、過去1万2650年までさかのぼることができます。また、年縞と呼ばれる特殊な堆積物が脚光を浴びています。年縞とは、1年に1枚ずつ形成される薄い地層のことです。この薄い地層の気候の推移を、1年ごとに詳細に復元することができるようになってきました。その地層にスギ花粉が多ければ、その年の気温や湿度などの環境条件が分かるわけです。1991年の春、福井県の若狭湾岸にある水月湖で、良質の年縞堆積物の存在が確認されました。水月湖の年縞は45メートルもの厚さを持ち、7万年以上もの年代をカバーしていたのです。ドイツの年輪が1万年をカバーし、日本の水月湖が7万年の気候をカバーしていることになります。水月湖では、地質時代に「何が」「いつ」起きたかを世界最高の精度で知ることができるわけです。
世界気象機関(WMO)は2025年の北極圏の海氷面積が観測史上最小だったと報告した。第 30回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP30)ででは、化石燃料の使用を減らす温暖化ガスの排出削減こそが温暖化を抑制する根本的な解決策との合意を得ています。ガスの排出削減が、最優先されるべきだとの認識を多くの研究者や政策決定者が共有したわけです。でも、この合意に、同意できない科学者もいたのです。反対者は、温暖化ガス削減の具体的な方策に異議を唱えたのです。彼らは、温暖化ガス削減の「奇策」とも言える技術に活路を見いだしています。一つは、米国・イスラエルの会社が2026年にも太陽光を遮る粒子をまく屋外実験を試みることでした。これは、北極圏の氷を人工的に増やす試みに繋がるものです。英国の新興リアルアイスは、ケンブリッジ大学と共同で北極海の海氷を回復させる技術を磨いています。気候を人工的に操って、温暖化を抑えようとする技術の実用化の動きが出てきています。でも、実験がなかなか進まない情況もあります。実験が進まない理由は、環境影響への副作用の検証が十分に行われていないためです。
リアルアイスは、新しい試みを始めました。ポンプで海水をくみ上げて氷の上にまいて、氷を厚くする試験を2025年までに実施しました。その結果、東京ドーム5個分に相当する面積の氷を最大30cm厚くすることに成功しました。リアルアイスのCEOは、海氷の再生に手応えを感じています。北極海の海氷を回復させる技術を目指す背景は、地球温暖化への危機感ありました。地球を覆う氷は太陽エネルーの大半を宇宙に反射することで地球の冷却源として働くことになります。さらに、氷の層の上に雪を降らせて夏に溶けることを抑える考えもあります。今後は、自動で海水を組み上げる水中ドローンの開発を進める計画です。最終的には、約50万台の水中ドローンを活用し、北極海の100万平方キロメートル以上の氷を毎年厚くする計画になるようです。地球を冷却する手法には、国際的な関心が集まりつつあります。
余談ですが、地球は1 ㎡あたり340wのエネルギーを受けて、100wを反射し、240wを吸収しています。理論的には、340Wをすべて反射してしまえば、地球はスノーボールアースになります。オゾン層に、細かなエーロゾルを滞留させれば、200W程度反射させることができるという試算もあります。人為的に北極圏の成層圏に、エーロゾルを長期間滞留させれば、北極圏の氷の融解は防ぐ可能性がでてきます。北極圏の氷だけでも守ることができれば、温暖化の防波堤になるかもしれません。この反射の原理を使って、小さな鏡をつけた人工衛星を飛ばし、太陽光を上層の大気に届く前にはね返すアイデアも出されました。でも、この周回反射鏡の構想は、まだ人工衛星が高価な時代であったために、棚上げされてきました。最近、この案が現実味を帯びてきています。イーロンマスク氏などが、提唱する宇宙空間における太陽光発電です。AIの性能は、電力の消費量に比例するとまで言われるように、AIは電力の大量消費者になっています。この大量の電力を太陽光が途切れることのない宇宙空間でつくればよいという発想です。すでに安価な人工衛星は、実用化されています。北極圏や南極圏の宇宙空間で、太陽光を遮り、遮った太陽光で発電する発想も楽しいかもしれません。
最後になりますが、温暖化ガス削減の「奇策」とも言える技術には、環境への影響が分からず反対論はやむことはなく続きます。一方で、温暖化の急激な進行で、各国の政策にも変化も出てきています。その変化は、海氷の減少を遅らせなければ温暖化はさらに加速するという危機感です。特に北極圏は、温暖化の最前線とも呼ばれ、海氷の減少が心配されています。英国の高等研究発明局は(ARIA)は2025年、地球を冷却する技術を研究するプロジエクトに総額100億円規模の支援を行いました。この支援は、リアルアイスが取り組む海氷再生の研究などが対象になります。だARIAの事務局は、「実現可能性やリスクを科学的に検討する必要がある」と説明しています。提案された冷却手法の安全性や影響を検証し、有効な手段として実用できるか否かを確認するというわけです。今後は生態系への影響の調査や生成した氷の性質の評価を進めることになります。人類の英知で、地球の適切な温度を保ちたいものです。
