投票所の減少から行政の効率化を考える  アイデア広場 その1497

 10月27日(日)の衆議院選挙は、いくつかの問題提起をしました。その一つが、投票所の減少でした。この減少には、日本のこれから直面する課題が多々含まれています。そこで、この課題を眺めてみました。総務省によると、27日投開票の衆院選で使う全国の投票所数は4万5429カ所になります。最多だった24年前の2000年には投票所が5万3434カ所あり、それに比べ15%も減ったことになります。同じ場所に設けていた投票所がなくなると、投票の習慣が途絶えて投票率の低下が加速することが知られています。住んでいる地域によって投票のしやすさの違いが大きくなれば、民主主義の根幹に関わる事態になります。人口減少が続く地方を中心に、投票所の減少に歯止めがかかりません。このことは、民主主義の根幹にかかわる問題とされるのです。投票所の減少は、市町村合併や人口減を受けて公共施設の統廃合が進んだことと連動しています。統廃合が進み、自治体職員や住民の減少で投票所を運営する人員の確保も難しくなっています。投票率向上と投票機会の平等を確保するためのためにも、社会の変化に応じて選挙の仕組みを更新する必要がでてきています。

 2024年に、民間有識者でつくる「人口戦略会議」が地域の持続可能性を分析し、その結果を発表しました。自治体の消滅可能性の試算は、この民間団体が2014年に公表して以来、2回目となります。「人口戦略会議」の報告書では、自治体の消滅危機が続く現状が浮き彫りになってきました。東北地方は、市町村全体のうち77%が消滅可能性自治体に挙がり、地域別では割合が最も高い地域になります。この消滅可能性自治体の定義は、2050年までに子どもを産む中心の世代となる20歳から39歳の女性が”半数以下”となる自治体のことになります。ある意味、子どもが増えない市町村ということになります。日本の大部分の自治体は、借金をしながら行政を行っている現実があります。借金をしながら行政を行っている不合理をいずれ解決することが求められています。雪国の市町村において、立派な道を作り、除雪のすべてを行政が負担することができない時代になっています。地方は、人口減少に対応した適正なインフラの維持が求められているのです。選挙における投票所の問題も、適正な行政の運営に内包するもののようです。

 今回の投票所の問題に限れば、工夫の余地は出てくるようです。そのヒントは、公職選挙法に投票所の設置数を定める基準はなく、各自治体の判断に委ねられていることになります。千葉県銚子市の選挙管理委員会は、2021年、投票所を28カ所から16カ所に統廃合しました。16カ所に統廃合する代わりに、投票所から遠くなる地区を中心に投票箱を載せた車が回る仕組みを取り入れました。JR銚子駅(千葉県銚子市) から、車で約10分の距離にある青年会館前にワゴンが到着しました。車が到着し、市選挙管理委員会の職員は積み荷を降ろす作業を行います。積み荷を降ろすと、テントを組み立て、2時間限定の「移動期日前投票所」を立ち上げたのです。公民館前に設けられたテントには、選挙に必要な立会人もいます。この青年会館がある名洗町地区で、移動式の投票所を利用したのは住民200人のうち約40人になります。杖をつきながら訪れた女性(85)は、病院に行く交通費がかさみ頻繁にタクシーは使えない状態にあります。本来の投票所までは、自宅から徒歩で30分以上かかります。杖をつきながら訪れた女性は「移動式がなければ、投票を諦めたかもしれない」と話していました。移動投票所は、一つの工夫になります。

 自治体の予算が減少すれば、事業を縮小することが求められます。縮小の中に、投票所の削減をいう事例も出てきます。税金の少ない自治体は、予算は少なくなり、各種の文化施設の経費が削られていきます。図書館の経費も削減されています。日本でも、議会がなくなるという村の話が出てくる時代です。図書館などの施設の運営も、縮小されていくことが予想されます。そんな中で、工夫を重ねる自治体もあります。たとえば、スイスのある村では、週に1度だけ図書館をオープンするそうです。世界で最も裕福なこの国が、このような節約をしているのです。もっともこの方式を行うことで、図書館運営が少ない予算で可能になるわけです。節約で浮いた予算は、観光資源の開発に回しています。日本各市町村では、消防団のなり手も不足しています。この件でも、スイスが参考になります。この国では、15歳までの児童生徒が消防団活動を行っています。スイスでは、消防署や州警察署の派出所、そして15歳までの子ども達を含めた住民による消防団が組織されているのです。日本の消防団が、青年が中心に組織されていることと比較すると、より広範な組織形態になっています。火災の際、集落の至る所に設置された消火栓にホースを取り付け、消火活動を行うのです。この消防団の訓練は、毎月、防災訓練を含めて実施しています。日本の消防活動と比較しても、実践的に見えます。使える人材を有効利用し、節約した予算を地域住民が本当に望む事業につぎ込むことが求められるわけです。

 投票所の統廃合を進めた市町への調査では立会人の確保の難しさを指摘する意見が目立ちます。でも、工夫を凝らしている自治体も少なくありません。公職選挙法は、投票所ごとに2人以上の立会人を置くことを定められています。これを守るには、投票所の減少とともに、選挙の立会人の確保が難しいのです。そんな中で、鳥取県南部町は、期日前投票で立会人の業務を遠隔地から担うオンライン立ち会いを実施しています。1人の立会人に加え、12キロほど離れた町役場の会議室からもう1人の立会人がいるのです。もう1人の立会人が、パソコンを通じて投票の様子を確認するわけです。「オンライン立ち会い」で、衆院選の期日前投票所をモニター越しに監視しています。また、移動投票所の発展モデルも出てきました。立会投票箱を載せた車が、移動式する期日前投票を始めた町があります。北海道大樹町は、一日限定で、投票箱を載せた車を希望する有権者の自宅まで運ぶのです。これには、高齢の有権者を中心に約10人から、一日限定で投票箱を事前の申請がありました。移動式の期日前投票所は、2016年に島根県浜田市が導入したのを皮切りに各地に広がりました。このやり方は、今回の衆院選で131自治体が利用し、2019年参院選(33自治体)から約4倍に増えたのです。

 余談ですが、アメリカを始め45の国々で、ゴミ収集作業に効率を上げているシステムがあります。個々のゴミボックスのたまり具合が、スマホで確認できるのです。ゴミの集積状況は、スマホの通信網を使って把握できるゴミボックスを使用しています。ゴミボックスに仕組まれたセンサーを通じて、ゴミの蓄積情報を集計して、最適な収集ルートで回収してシステムが実現しています。このゴミボックスで、作業時間の短縮、燃料代の削減、収集人員の配置の予算の節約を行っているのです。人が介在しなくても、モノが自動でサービスを提供してくれるシステムがIoTになります。「デバイス」「センサー」「インターネット」の3つで、あらゆるモノ・コトへの応用が可能になっています。ゴミボックスに使用されているのは、スマートマットです。このスマートマットは、重量計にWi-Fi機能を追加しただけの板状のデバイスに過ぎません。このシステムは、定期的に重量を計測してクラウドに送信するだけです。重量ベースで自動的かつリアルタイムにゴミの量や商品の在庫量を把握できるようになります。オプションの発信システムと組み合わせれば、ゴミの収集や商品の発注業務の無人化を実現できることになります。これをゴミに特化すれば、「ゴミの管理一ゴミの収集一最適収集コース」という一連のサイクルを完全に自動化できるわけです。この仕組みを、自治体の住民ニーズを満たす仕組みに応用できれば、面白いことになります。

 最後になりますが、人口の減少、予算の縮小、そして働き方改革の推進など、従来の仕組みで仕事が出来ない環境が生じています。これを乗り切るには、クロス横断的なデジタル化が必要になるようです。先進的なデジタル化を進めている自治体もあります。そのモデルは、北海道の北見市になります。北見市は、デジタル化による窓口機能の改善を進めてきました。北見市は、2014年に「ワンストップサービス推進計画」を定めました。普通の市町村の窓口では、住民登録の手続きを住民が記載台で申請書類の欄を書き込むのが一般的です。北見市は2014年に、1つの窓口で複数の手続きを完結できるよう改良を重ねてきたのです。窓口の職員と住民の方が相談しながら、申請書類を作成する仕組みを取り入れました。窓口の職員と相談しながら申請書類を作成し、原則として住民自ら書き込む手間を省いたわけです。手書き申請書不要にして、さらに複数の手続きを1カ所で行う改善をしたのです。結婚や出産、転居など生活,上の届け出を含め現在は150ほどの手続きの申請を網羅するまでになっています。デジタル化で住民の利便性を高め、自治体職員の負担も減らす改善を行っています。北見市を参考に浜松市、埼玉県深谷市、三重県松阪市なども同様のシステムをとり入れています。効率的行政や職員の負担軽減、そして民意の反映などの視点から、マイナンバーカードを利用した制度設計の改革を推し進めていきたいものです。マイナンバーカードをかざすだけで、選挙の投票が済めば、選挙の効率化は格段に進みます。

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