日本のジェンダーギャップを少し改善する仕組み  アイデア広場 その1404

 日本は、平和憲法のもと、民主主義国家として成長してきました。自由と平等を大切にしてきた70年の歴史があります。選挙制度も、各国並みに整えてきました。民意を反映させるために、衆議院選挙では小選挙区比例代表並立制を導入もしてきました。この1994年の政治改革から、30年がたちました。ところが、自由と平等を標榜してきた日本の政治が、低い評価を受けています。日本は政治分野の平等度合において、146カ国中138位とワースト10になっているのです。日本の議会の多様性は、他の主要国と比較すると、年齢や性別などの構成において、平等性や多様性が欠落しているという評価になっています。たとえば、1980~94年に生まれた30~40代前半の女子議員の割合は、日本が8.2%で、米国は14.7%になっています。ドイツとフランスは対照的で、ミレニアル世代がそれぞれ29.3%、28.8%と3割ほどを占めています。若い議員が少なければ、高齢者が多くなります。衆院議員は4月日時点で、50歳代が33%と最も多く、議員の平均年齢をみると、G7の下院で最も高いのは米国の57歳、次いで日本の55歳になります。政治のリーダーの首相などの年齢を見ると、英国初のアジア系首相となったスナク氏が現在43歳(就任時42歳) 、フランスのマグロン大統領が46歳(同39歳)です。戦後の日本では、2006年の安倍晋三氏の第1次政権時(52歳)が最も若いということになります。

 議員で見れば、米国の57歳と日本の55歳を比較すると、日本が若いということになります。でも、ここで一安心ということにはならないのです。世界の目は、厳しいものがあります。日本の衆院に占める女性議員の割合は10.3%で、世界の186議会で164位という低位置にあります。高齢者の議員が多い米国でも、女性比率は29.2%になります。日本よりも、20ポイントほど高いのです。女性議員の割合は、オートラリアやフランスが4割に迫ります。さらに、女性首相に選出されたイタリアメローニ氏は47歳です。彼女は、就任時は45歳でした。過去において、日本より女性議員の割合が少なかった韓国においても、改革が進んでいます。日本の内閣府男女共同参画局の資料によると、韓国も1990年代は5%未満で推移していました。その韓国は、2000年にクオータ制を導入して2004年に13%になり、その後も女性議員の数が増えているのです。韓国は国政選挙の比例代表の候補者名簿で、50%以上を女性に割り当てるクオータ制があります。日本も、遅れに甘んじていたわけではありません。2018年に、男女共同参画推進法が施行されました。「政治分野における男女共同参画推進法」は、候補者を男女均等とするよう各政党に求めたものです。でも、この精神がまだまだ、現実の政治に生かされていない状況が続いています。

 世界の流れは、若い世代の政治参加、そして女性の政治参加の流れが加速しています。日本の若いミレニアル世代とZ世代は、国の政策に国民の考えや意見が反映されていると感じていないようです。この世代は、政治への信頼が相対的に低いことがうかがえます。同世代の政治家の少なさは、若年の政治への不満につながる可能性があります。この閉塞感を打破するためにも、現在の政治家が率先して動く必要があります。日本の年齢や性別の偏りの背景には、選挙の候補者選びの仕組みがあります。各政党リーダーの覚悟で、年齢やジェンダーなどの障害が越えられることは他国の事例で分かります。日本は、政治の分野だけでなく、経済分野のジェンダーギャップ指数も低位にあります。その経済分野を担う民間企業で、他国を見習う流れが生まれています。民間企業では多様な人材を生かそうという意識が高まっています。

 民間企業の一つの事例が、住宅メーカーの大手積水ハウスに見られます。大手積水ハウスは、2018年9月から男性社員に育休1カ月取得を義務付けました。育休の対象になった670人全員が、取得したことで話題になりました。昭和モデルでは、男性が稼ぎ手としての働くことが美徳とされました。妻は、家で子育てという美風が残っていました。育休など取っていては、生産性が落ちるというわけです。でも、積水ハウスの場合、育休は休業中の引き継ぎなどの簡素化で、無駄な業務を見直し、生産性は高まったという効果があったのです。育休が、会社にも利益なり、家庭の平和にも寄与したわけです。コロナ禍で図らずも得た柔軟な働き方を軸に、男性が家事や育児を担える環境が整ってきたようです。もっとも、サラリーマンの夫と専業主婦の妻を前提にした仕組みへの意識は、なお根強く残っています。でも現在は、女性が子供を産み育てながら、安心して働ける環境をつくることが求められています。高齢男性に偏ってきた日本の政治においても、民間や他国の例に学ぶ姿勢が欠かせないようです。

 サラリーマンの夫と専業主婦の妻を前提にした仕組みへの意識に関しては、かなり深刻な問題を提起しています。この深刻さは、子どもの調査に見られます。お手伝いに関する調査が、国際都市で小学校5年生を対象に行われました。これは、日本の東京、中国のハルピン、米国のサクラメント、スェーデンのストックホルムの4都市のお手伝い調査になります。調査項目は、洗濯、夕食の買い物、庭や玄関掃除、部屋の掃除、皿洗い、夕食の手伝いの6項目でした。東京の小学生は、この中で手伝いをする割合が最も低い評価でした。その中でも、東京では、どのお手伝いも男子は女子よりもしていないという傾向がはっきりした調査でした。女子も含めて、ほとんどの家事を親(おかあさん)まかせていたのです。脳科学の研究では、手を使うことが積極的に脳を使うことになります。手が器用に動くということは、脳が充分に鍛えられていることになります。手(触覚)だけが、感覚を受とめ、それに合わせた運動を行う器官になります。脳は、手からのインプットと手を使うアウトプトの両方をすることで、豊かな可能性を発揮していくことになります。日本の子ども達は、この過程が他国に比較して遅れています。結果として、母親に家事を全て任せる流れを作っています。この流れに流されている日本の家庭では、母親の仕事が増えて、外部の仕事(仕事、政治、ボランティア活動)に参加しにくい状況を作り出します。

 全体の流れを悪くするボトルネックを探すことは、次の新しいステップに繋がります。たとえば、教育格差を作っているのは、何かというボトルネックを探しますとします。そのヒントの一つに、OECDのジェンダーギャップ指数があります。これは、経済・教育・健康・政治の4指標で男女格差を測ったジェンダーギャップ指数になります。日本は、156カ国中120位になります。非常に低い位置にいることになります。教育分野に限ると92位に上昇するのですが、十分とは言えないようです。その中身は、さらに厳しいものになります。2020年度の学校基本調査によると、副校長や教頭の女性割合は、小学校28.7%、中学校14.8%、高校11.2%となっています。OECDの30カ国平均は、47.3%ですから、かなり離された数字になります。女性校長の割合は、小学校21.8%、中学7.5%、高校8.4%となります。2018年のOECDの報告によると、中学校段階の女性校長の割合が10%以下なのは日本とトルコなみという結果です。特に中高の割合が低く、世界的にみても異例とされています。この異例とされる現象の低位にある事情は、子どもの頃からの家庭教育にあるのかもしれません。家庭の努力だけでは、一気に解決できない要因があるようです。

 最後になりますが、小さな不満が解決されたとき、思いがけない満足感が生まれるものです。幸せになるのはすごく簡単で、ささやかな幸運がやってくるだけで感じることができます。幸せとは、ものすごく大きな塊ではなく、小さな喜びを重ねていくものです。子どもたちが、男女の区別なく選択や食事の手伝いを自然にするようになれば、日本のジェンダーに変化が現れます。着るものは洗濯機が洗うにしても、洗う繊維による選別や干し方など脳にインプットし、それを脳から手でアウトプットする作業が習慣化すれば、日本のジェンダー感は少し変わります。男女の子ども達が家事を普通に行うことができれば、母親の負担は少なくなります。ここに、少し知恵を加えます。掃除も料理も、やりようでは楽しいものです。この小さな楽しさを、数多く経験させることが大人や学校の役割になります。まずは小さな楽しさを、数多く享受します。もう一つは、上段からの対策になります。それは、クオータ制度の導入です。この二つの対策により、日本のジェンダーギャップを少しでも解消していく方向にもっていきたいものです。

タイトルとURLをコピーしました