日本の誇るPTA活動を再考する アイデア広場 その1429

 高度資本主義社会において、無駄は必要悪ということになっています。この無駄を、できるだけ出さない配慮が求められています。市場では、原料から最終製品を作り上げるまでの時間(リードタイム)を短くする必要があります。全体を見渡して、どこに無駄があるかを知ることは大切です。無駄には作りすぎ、手待ち、運搬、加工、在庫、動作、不良品をつくるなどがあるようです。この無駄を軽減する手法として、整理、整頓、清掃、清潔、しつけの行き届いた職場の実現があります。年1回の大掃除よりも、定期的にこまめに掃除する方がコストは下がり、無駄が生じないことが経験的に理解されています。ある意味で、品質は工程の中で作り込むことになるわけです。昨今、日本各地のPTA活動において、組織を脱退し、独自の活動をする保護者も出てきています。この既存の組織に、無駄を見出す人々も出てきています。このような視点から、日本の誇るPTA活動を再考してみました。

 この問題の根源には、国の教育行政にあるようです。国は教材費を算出して、交付金として地方自治体に渡します。例えば、体育の武道では柔道着や畳、そして剣道の防具も、地方交付税交付金の算出基礎として予算がつきます。問題は、この交付金がそのまま柔道着や剣道の防具に使われないこともあることなのです。地方自治体は、教材費として受けとった交付金を他の公共事業に流用することもできるのです。各自治体は自治体の判断で、教材費として交付された交付金を別の用途に使っても良いわけです。政府から自治体に渡された交付金が学校に渡される過程で、教材費という名目の公費はさらに減っていく流れになっていくケースもあるわけです。もちろん、教育に理解のある自治体は、国の交付金に上乗せして、教材費を多く支出ところもあります。結果として、公的教育費が非常に少ない日本は、末端に行くにしたがって、さらに少ない教育費になっているのです。これを補うお金が、各学校から保護者に求められる補助教材費やPTA会費を保護者が負担するという形になっています。日本はOECDの先進国の中で、公的教育費が非常に少ない国になっています。政府や市町村の教育予算は少ないのですが、それを各家庭が補っている実態があります。日本の家庭は、少ない公的教育費を補うために、他国より多くの私的教育費を支出しているのです。日本では、家計に占める教育費が非常に多いのです。総額では、もちろん日本の子供一人当たりの教育費は世界の上位に入ります。

 PTA会費は、本来公費で賄うべきものでしょう。でも、建前ばかり言っていても、学校にも、子ども達にも良いことはないようです。PTAの活動内容は、学校によってさまざまです。ある小学校では、廃品回収を行っています。子どもたちも参加して、資源のリサイクルを学習しているわけです。その事例では、春と秋に行い、ビール瓶を4000本集め、アルミ缶を2トン強を集め、酒便を4000本集め、計20万円の利益を上げています。この活動を行うためにはPTAの役員の方は、かなりのご苦労をしています。 廃品回収などによって、PTA予算を確保していたわけです。もう一つの流れは、ベルマークになります。商品に付いたマークを集めて1点1円で換算し、学校の備品を購入する仕組みです。ベルマークを、P TAが集めます。そのマークを整理して、計算して財団に送ると1点が1円に換算されものです。自分たちの学校のために、マークを集める作業をするわけです。でも、このベルマークの収集や集計のためのPTA活動が、父兄の大きな負担になっている現実もあります。集計のために仕事を休んだり、休日を返上したりして,作業を行うケースも出てくるのです。最低賃金が、1時間1000円近い金額になっています。10人の父兄が、集まって慣れない収集や集計作業をしても、4000~5000円という事例もあります。むしろ、10人×4時間×1000円という計算ならば、4万円になります。ある意味で、無駄な作業になりかねません。さらに工夫を加えれば、ベル―マークを収集し、集計しやすくする仕組みを作ることが考えられます。小さなベルマークを箱などから切り取る作業は、マンパワーが有り余っている時代の仕組みです。今なら、シール形式にて、集めやすくすることも可能です。もしくは、スマホをかざせば、加算される仕組みにもできるでしょう。ベルマークに協賛している企業が、PTA活動の実情を理解し、ベルマーク活動を円滑にできる仕組みを開発していただきたいものです。

 現在のところ、段ボールの需要が減る要素がありません。PTAの古紙回収は、環境に優しい活動になります。PTAでは、廃品回収をして学校に寄与しています。この廃品回収の中に、銅を含めていただきたいのです。この銅を古紙やアルミ缶と一緒に上手に集めれば、今までよりも多くのお金を得ることができます。銅が一定程度の量になれば、業者の方も喜びます。子ども達に、ちょっと良い備品が提供できるかもしれません。お金以上に、廃品回収(古紙や銅の流れ)を教材として利用してはどうでしょうか。「古紙や銅の消費と再利用」について考える良い機会になります。同時に、回収と販売という体験をするわけです。学校教育では、「生きる力を育てる」ということがとても重要になってきています。現代社会には、多くの情報が流れています。その中から、子ども達がいろいろな情報を見て、その情報を取捨選択する能力を高めることが、これからの社会の課題になるわけです。残念ながら、日本はこの情報リテラシーの能力が、低下してきていいます。経済協力開発機構(OECD)のテストにおいて、日本の子どもは知識活用型の能力が低いと判定されています。情報の取捨選択やそのツールを操るスキルも低下しているという評価なのです。子どもをPTAの廃品回収に参加させることは、頭だけで考えるよりエコについてより実践的教材になるかもしれません。

 余談ですが、鉱物資源のリサイクルの優等生は、アルミニウムです。アルミニウム缶からのアルミニウムのリサイクルは、非常に効率的です。鉱石からアルミ缶作る場合と回収アルミ缶から作る場合、エネルギーは4%で済む計算です。アルミニウムのリサイクルは、アルミニウム缶の分別収集から始まりますが、回収率は高く90%を超えています。回収の仕組みと意識のレベルアップッは、リサイクルの有用性を高めます。リサイクルは、毎年一定の割合で必ず排出されます。量を問題にしなければ、枯渇の心配のない優良都市鉱山に変身するのです。日本の銅の消費量は、約100万トンです。日本の人口は、いずれ現在の半分の6000万人になります。すると50万トンで、間に合うことになります。自動車などの台数も減っていけば、消費量を25万トンまで減らすことができそうです。あとの15万トンは、日本人が1人13㎏使っている銅から、回収することになるでしょう。このような想定からすると、PTAの資源回収活動は、将来の日本の資源確保の重要な手段になるかもしれません。

 一方で、現在の資源回収には問題もあります。日本の各地区で、小学校PTA主催の廃品回収が行われています。趣旨に賛同する家庭は、朝玄関先に新聞や缶・瓶類などを出しておくと、PTAの係りの方が各家庭から学校に集めて、廃品業者に売り渡すという手順になっているようです。売上金をPTA会費に入れて、子ども達に還元するという仕組みです。この仕組みを利用すれば、現在の課題になっている電力の節約や資源の節約、そして温暖化の抑止に、ほんの少し貢献することになります。問題は、この活動には保護者の多大な労力を必要とすることなのです。そして、回収した資源を、業者の方にスムーズに引き取ってもらう仕組みに齟齬をきたす場合が出てくることです。福島のPTAの廃品回収に話を戻すと、PATの役員の方も、業者の方も集中的に作業する時間が増えます。65の小学校と中学校が、同じ日に一斉に行うと、スムーズな回収はできなくなります。継続的に資源を回収するには、収集車の配車や人員の配置などに最適解が求められます。業者の方が、最小の人数で、効率よく回収し、利益を最大にするような仕組みです。そして、保護者の負担を最小限にし、子ども達の情操教育が最大になるような仕組みを作り出せればハッピーです。

 最後になりますが、廃品回収も年に1回とするのではなく、子ども達が毎日(約200日)、少量ずつ学校に運んでおくという発想がでてきます。年1回の大掃除よりも、定期的にこまめに掃除する方が効率的です。子ども達が運んだものが一定量たまったら、業者の方が定期的に回収する方式にするわけです。たとえば、福島県福島市の小学校と中学校の数は合計65校になります。学校に通う子ども達が、毎日新聞や空き缶を持って通学すれば、廃品回収と同じ効果が得られます。業者の方は、65校を定期的に効率的に回るシステムができます。このシステムの優れた点は、回る時期を業者の方が決められるという点になります。このようなシステムは四国のスーパーと業者の方が開発しています。これは、四国から始まった古紙回収の取り組みになります。古紙回収事業者が、古紙回収ボックスにセンサーと無線通信モジユールを付けました。いま古紙回収ボックスに、どれだけの古紙かたまっているかを遠隔からわかるようにしたわけです。遠隔からわかるようにしたことにより、適切なタイミングで回収しに行くことができるようになりました。適切なタイミングで回収しに行くことができたために、回収コストを3分の1に抑えることができるようになったのです。PTA活動では、廃品回収をして学校に寄与しています。このような活動に、子どもを参加させることにより、徳育の充実をはかることができます。業者の方は利益を上げ、保護者は負担を減らし、子ども達は将来の都市鉱山技師の見習いの練習をするなど、「三方良し」の流れができるかもしれません。

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