独身シニアが人生後半戦を有意義に生きる知恵 アイデア広場 その1510

 日本は、世界でも有数の長寿国になりました。2023年に発表された「平均寿命」は、女性87.09歳、男性81.05歳になります。女子は、堂々の世界一になります。男子は、少し落ちて3位というところでしょうか。一方、健康寿命は、女性75.38歳、男性は72.68歳(2019年発表)になります。この健康寿命は、厚労省がいうところの自立した生活を送れる期間になります。「平均寿命」と「健康寿命」の差は、女性で約12年、男性で約8年もあります。この差が、これからの生き方の大きな課題になります。健康な状態から、介護を受ける時期が、女性で約12年、男性で約8年というわけです。多くにシニアは、ピンピンコロリを願っています。願っているけど、この時期の対策を立てているシニアは少ないようです。神仏にピンピンコロリを願う方は多いようですが、実際の対策には至っていないようです。たとえば、昭和の時代は、食事にしても、妻が「作る人」で、夫が「食べる人」でした。そんな生活に慣れた妻に先立たれて男性は、自分じゃごはんも炊けません。独身シニアなった女性も、食べさせる相手がいなくなって気が抜けてしまいます。この「平均寿命」と「健康寿命」の間を、どのように楽しく生きるかを今回は考えてみました。

 平均寿命が短い弘前市と平均寿命が長い京丹後市の調査が行われました。100歳以上の人口が、全国平均3倍以上の京丹後市の65歳以上の人たちと、弘前市の人たちの比較を行いました。この調査では、高齢者約700名の身長や体重、遺伝子、食事内容、生活スタイルなどの項目を調べました。その中でわかったことは、長生きをする人が友人と会話や社会との関わりが多い傾向があるということでした。小家族の京丹後の方は、動脈の壁は柔らかく血液の塩分濃度も低く、その濃度は若者に近い数値でした。大家族で周りが世話してくれるより、一人暮らしで何でも自分でやることが、長生きの秘訣になっているようです。長寿に関連する要素は、「運動」「食事(栄養)」「社会参加」の3つです。中でも、社会参加が重要になります。「運動」と「食事」だけに気を配っている人に比べ死亡率が低いのです。人は社会参加をして、おしゃべりしている時、脳が否応なく鍛えられます。おしゃべりしている時、相手の話を理解してから、自分の考えをまとめるために脳を働かします。会話というキャッチボールを上手に続けられることが、脳を使い続け若さを保っていることにもなっています。独身シニアの後半戦には、「運動」「食事」「社会参加(コミュニケーション)」の活動を自然とできる環境や仕組みが求められるようです。

 食事は食事、運動は運動、社会参加は社会参加と単独で行うよりも、この3つを融合させて行う知恵もシニアには求められます。食事だけでなく、調理をする中に、運動をしなければならないという仕掛けを忍ばせておくことも一つの知恵になります。シニアは、自分の体の衰えを客観的にとらえることが大切になります。その一方で、適度な負荷やストレスも必要なのです。筋肉を使えば、筋肉は肥大します。脳を使えば、脳も肥大します。でも、そこには言葉だけでなく、工夫も求められるというわけです。あるシニアは、牛乳を火にかけて温めるときのスキマ時間に、流し台につかまってスクワットをします。彼女の家の台所は、あえてあちこち動き回りながら作業するように物を配置してあります。 動き回りながら作業するほうが、日々料理をする中で、自然に体を使う機会が増やせるわけです。家の中で楽をするより、ちょっと「バリア」を残しておくのです。バリアフリー化が進む世の中に、逆らっているようです。でも、彼女はなお主張を続けます。段差に気をつけながら歩いたほうが、足腰を甘やかさずに済むのだと。ちょっとした「バリア」が、年齢ともに失われていく自分の能力を少しでも守り続けるというわけです。

 運動と食事の融合もシニアは有意義なものですが、ここに仲間とのコミュニケーションを加えるとより楽しいものになります。福島市では、モモリン体操というものを行っています。ここに参加するシニアの方は、この行事が続いている何年かは健康を維持しています。ここでは、体操をして、その後のお話合いが楽しい場を提供しているようです。楽しさや喜びは、ポジティブな姿勢をもたらします。ポジティブな姿勢を評価する流れは、シニアだけでなく、子ども達にも及んでいます。教室での感情表現に焦点を当て、「喜び、興味、怒り、悲しみ」の観点から評定をする調査があります。喜びなどのポジティブ感情をたくさん表出している子どもは、学習や教室の友達関係において良く適応しているのです。同じように、ポジティブ感情を持つシニアは、仲間から信頼され、受容されています。怒りなどのネガティブな感情の表出が多いシニアは、その適応が低いということになります。ポジティブな感情が多く表出しているグループでは、シニア全体の適応が高まっていることを示していました。シニアをポジティブにしていくことは、集団のパフォーマンスを高める意味でも評価されていることになります。個人のポジティブな姿勢は、集団の視点からも高める工夫が求められます。仲間と行うシニアの趣味の活動やボランティア活動は、その意味でも重要な社会活動になるようです。

 日本のシニアにも、新しい状況が生まれています。日本では、4人に1人が結婚をしないで、生涯を未婚で過す時代になりつつあります。国勢調査(2015年)では、50歳の「生涯未婚率」は男性が23.4%、女性の未婚率が14.1%となっています。将来予測では、さらに悲観的で、男性は約’30%、女性は約20%になるとしています。独身の利点は、確かにあります。正社員の場合、ひとりで暮らすには困らないだけの収入があります。何を買ってもよし、いつ寝てもよし、部屋が散らかっても、誰かに怒られません。独身者は、子育て中の同僚より優雅な消費をすることが可能です。そして、最大の自由は「干渉されないこと」です。自由を満喫する一方で、生活や家計のルールがーズになっていくケースが出てくることがあります。一人になると手抜き料理が続いて栄養不良になってしまう人もいるようです。結婚には、良い意味で自由を制限し、相互けん制し、家族の満足を保つ機能もあります。家族はひとりだけの問題でないからこそ、節約や貯蓄を意識する側面もあるのです。

 独身者には、落とし穴があります。それは、現在ではなく「老後」に顕在化します。現役時代は余裕を持っていた家計が、老後にいきなり苦しい家計の状況がでてきます。夫婦の合計でもらう年金と比べ、独身シニアの国民年金と厚生年金は、大卒初任給より低くなります。楽しい人生を終わらせたいのなら、独身シニアは現役時代にお金の備えをしておくことが必要です。たとえば、優雅な消費生活の一部を、つみたてNISAに投資することも選択肢です。つみたてNISAでは、年間40万円を20年間積み立てると800万円になります。このNISAでは、年利3%で同じ条件で運用する約1083万円まで増えます。

 「老後2000万円」ではなく、独身シニアはもっとためるくらいの意識と行動が求められるようです。病気になったとき、介護を必要としたとき、独身シニアには、特有の悩みがあります。現役時代はそれでも、病気やケガで入院すると親や兄弟姉妹、親戚に頼ることができます。でも、最期は誰でもひとりです。生涯独身だった人には頼れる子どもや孫はいません。お互いに助け合える友人や親戚との関係を保っておくことが、独身シニアには必要です。たくさんの人たちが「独身シニアの老後」を歩む初めての時代がこれからやってきます。最後を、優雅に終えるための備えておきたいものです。

 最後になりますが、金融庁は、老後の資金として2000万円ほど蓄えておくことを推奨しています。2000万円は難しくとも、1000万円の資金は、国民の半分程度が持っているようです。提案は、この資金を優待株の形式で保有することになります。1000万円すべて株で保有するには、リスクが伴います。300万円ほど優待株で保有することになります。株式投資で有目な桐谷さんが推奨する優待株は、300万円程度で20銘柄(100株)ほど購入できます。この20銘柄の優待+配当の平均は、5.1%になりました。さらに配当のみでは、3.4%でした。単純に考えて、年間10万円程度の配当金を得て、6万円ほどの商品やサービス券を受け取れることになります。これはこれで、お小遣いになります。もう一つの工夫は、20銘柄の配当を郵便局で受け取る仕組みにすることです。この仕組みを採用すると、年間40日、郵便局に通うことになります。この時、8000歩以上歩くコースを作っておきます。この郵便局通いは、1週間に1度程度を8000歩以上あるく機会を得ることになります。歩くことは、健康寿命を伸ばすことに繋がります。少ないながらも、株の配当を得ながら、健康寿命と資産寿命を享受できる仕組みができるというわけです。ここに、仲間と株の情報交換などしながら、世界の政治や経済のお話をすることも、老後の楽しい生活にスタイルになるかもしれません。

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