生成AIを利用した効果的学習方法 アイデア広場 その1746

 近年、日本の子ども達の学力低下が心配されています。2025年度の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)が、小学6年生と中学3年生を対象に4月実施されました。その結果が、あまり芳しいものではなかったのです。国語と算数・数学の成績が、平均正答率の低下傾向を示していました。特に中学3年生の数学は、2024年度の53.0%から低下し48.8%にまで低下していたのです。小中学校の子ども達は、年間35週で授業(1015こま)や学校行事を行うことになります。年1015こまの授業をやる場合、学校行事などのぞくと週29で、この1015こまを行うことが普通の子ども達の授業時間になります。週29こまを消化すには、平日5日間で6こまの授業が4日、5こま授業が1日の計算になります。日本の教育現場は、この1015こまの授業で、世界最高の水準を確保していたことになります。その高い水準に、危機が迫っているかもしれません。今回は、この危機の打開策を考えてみました。

 学校で行う授業は、全て大切です。その中でも、国語と算数や数学には、時間をかけて理解を深めていくことが行われてきました。たとえば、小学生が算数でつまずく分数(5-6年)と比例(5-6年)を分からないままにしておくと、中学や高校に進んでも、分からない授業を受けることになります。ある意味、子どもにとって、算数の成績は、将来にわたって成功するかどうかの大きな要素になります。学校で算数の問題を行う場合、学習指導要領に基づいて行うことになります。いわゆる目標、内容、方法、評価という流れの中で算数の問題の成就度が把握されることになります。一般的に、授業が理解できたかどうかを調べるには、3段階の評価過程があります。最初は、診断的評価のテストで、単元前の学力を調べることになります。次に、授業や宿題などの学習活動の後で、子ども達一人一人の習得の度合を形成評価する段階になります。この授業における形成評価には、遅れている子どもには補習的指導を繰り返すような支援する側面もあります。最後が、総括評価が子ども達の学習進度や学力を把握するテストになります。診断、形成、総括の流れが随時把握できれば、学習目標との関連で、子ども達の学力形成が逐一把握されるわけです。日本の教育は、このような目標、内容、方法、評価の流れをスムーズに行ってきたシステムと人材(教師)があったと言えます。

 ここで、成績の良い子も悪い子も、もっと成績を上げるようにと言われたら、どうすれば良いのでしょうか。「算数の成績を上げください」だけでは、「次に何をすべきか」ということが分からないものです。「算数の成績を上げる」ことを達成するために、2つの要素が必要になります。この2つは、「具体的な問題を設定すること」「効果的な問題を設定すること」になります。さらに、この設定には、取り組む子ども自身の考えで決めることが大切です。算数の現状を、診断的評価のレベルで取られることが求められます。たとえば、1、計算ミスが多い、2、割合の理解不足による問違いが多い、3,一度解いたことのある問題でも、復習がおろそかなので定着していない、4、文章題を数式にすることができていない、などがあるとします。この場合、1~4の対策は以下の4つになります。1,毎日計算ドリルに10分間取り組む、2、割合の説明を、再度、先生や親に教えてもらう、3,復習を毎週決まった時間に行なうようにスケジュールを立て直す、4,文章題の得意な友達に教えてもらう、などの対策を練ることになります。

 また、一般に、子どもをやる気にさせるには、先生や親の支援が必要です。子どもには言えば分かるとか、子どもは「見て覚える」とは言っても、なかなかできるものではありません。「見る」のと「する」のとでは、違いがあります。実際にやってみて、うまくできないときには、どうしたら良いのでしょうか。

1つに、まず親が正しいやり方を見せることです。

2つに、子どもに一人でやらせてみることです。

3つに、できないところがあったら、またやって見せるか、手を添えて一緒にすることです。

4つに、子どもが一人で正しくできるようになったらOKとなります

 1つと3つを飛ばしたりすると、子どもはいつまでたってもできるようになりません。「できる」という実感を得られることは、とてつもなく大切な体験になります。大切な体験を支援する先生や親の存在が、日本の教育レベルを高い位置に保っていたわけです。でも、近年の全国学力テストを見てわかるように、学力低下の状況が生まれています。教育現場の問題点は、2つほどあるようです。1つは、理想的な授業ができる教員は減ったことになります。採用倍率の低下で、小学校高学年を教えるには学力に不安のある教員が増えたとも言われています。全国学力テストで行われたアンケートでは、「授業がよく分かる」と答える子どもの割合が各教科で下がっている実態が明らかになってきました。2つ目は、教えることが多い一方、教員に時間的余裕がない状況があることです。学校現場で徹底して教えることが減っているのです。深い学びといった学び方が重視されて、定着の確認する時間が確保できていない情況が生まれているのです。

 学校現場の疲弊や家庭の教育力の低下が、叫ばれるようになりました。もっとも、低下を嘆くだけでは、解決策は生まれません。この解決策に、登場したツールがAIになります。学習塾や予備校が、人工知能(AI)を使ったカリキュムの導入を急いでいます。学習塾大手の英進館(福岡市)は、数年前に中学生向けのAI教材を導入しました。中学生向けのコースでのAI教材は、数学と英語の授業でタブレットを活用しています。このAI教材は、生徒の習熟度に合わせて提示する問題を柔軟に切り替え、きめ細かく指導できることが特徴になります。子ども達が問題を解いていくと、AIが理解度や苦手分野を把握します。AIが理解度や苦手分野を把握して、自動的にカリキュラムを切り替えていくわけです。A1教材は、自宅でも自分の理解度に合わせた学習ができます。子ども達は、AIが個々人向けに作成した教材を使って自宅学習に取り組むことが可能です。最近のAIは、子ども達の理解度や進度の状況把握に加え、子ども達の集中度を解析することができるようです。塾の講師は、集中度や倦怠感の状況に合わせて、いつ、どんな声かけをすれば効果的かもタブレトを通じて支援することが可能になりつつあります。

 余談ですが、ヤフーの調査では、6割強の親が生成AIの学習の導入に肯定的ですが、AIを使用することに不安を感じる親もいるようです。ニフティキッズの調査では、小中学生の55.1%が対話型AIの「ChatGPT」を利用しています。ベネッセの調査で利用する小学生の56.9%が、「分からないときはまずAIに聞くと答えています。兵庫県に住む小学1年生の女子児童(7)は、図鑑を読んで浮かんだ疑問を入力します。「地球はどうして丸いの?」と聞くと、「地球はね、ぜんぶをまんなかにあつめようとする力があるんだ」と優しく教えてくれるAIがありました。また、関東に住む中学3年生の女子生徒は、定期テストの前、AIに予想問題を作ってもらうことまで行っています。家庭学習での子ども達の活用は進む一方で、生成AIの学習への導入に関して親自身が正しい使い方や教え方が分からないと心配しています。親は、生成AIの学習への導入に「誤情報」や「思考力の低下」の不安があるのです。これの不安を乗り越えて、使用されていきます。子どもたちの学ぶ力や想像力を育みながらAIの効果的な利用を目指す研究や交流の場づくりが始まっています。その先頭をきるのが、東京大学のメタバース工学部になります。メタバース工学部は、すべての人々が最新の工学の実践的スキルを獲得し、夢を実現できる社会の実現を目指す新しい教育の場になります。メタバース工学部は、保護者からの細かな疑問にも答える生成AI講座をオンラインで開いています。講座を聞いた親は、「不安が解消し、使い方を工夫すれば学習効果が高まることも理解できた」と話していました。

 最後になりますが、学校は、理解度に応じた宿題や補習を提供することで授業が分からず取り残される子どもをなくすことに努めています。でも、学校現場は以前とは異なる厳しい環境で、子ども達の支援を行っています。学校だけでは、難しい局面を迎えています。そんな中で、AIの利用は工夫次第で子ども達の才能を伸ばす有力なツールになろうとしています。こんな中学生の事例もあります。1月下旬、英検準2級のライティング問題に取り組んでいた東京都に住む中学3年生がいました。彼の家庭教師は、スマホに搭載した生成AIになります。英検のライティングの勉強で、添削指導をしてくれる生成AIの家庭教師がいるわけです。解いた回答を撮影し、問題文とあわせてAIに送ります。ほどなくして、生成AIの家庭教師から、回答に対する丁寧な添削指導が返されてくるのです。文法の誤りや言い回しの改善点などが細かく示されています。この中学3年生は、自身の興味から利用を始めたと言います。今は、「いつでも開ける先生みたい」と満足そうです。子ども達の利用が増えるにしたがって、勉強以外でもAI家庭教師は活躍しているようです。発熱や発疹の症状を出した時、「水ぼうそうの可能性があります」とアドバイスしてくれたと言います。早目の受診をして、軽い症状で済んだという報告もあります。勉強、健康、睡眠、運動、人間関係などの相談も、随時増えていく様子が予想されます。適切な利用方法を、小さい頃から身に付けていきたいものです。そして、この身に付ける支援を学校が担う時代がくるかもしれません。

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