生産力を高める個人と企業の知恵  アイデア広場 その1544

 1970年前半頃まで、私たちは心の豊かさより物の豊かさの方に価値をおいてきました。1945年ごろは、食べるものも、着るものも不足していた時代でした。その名残が、今も時折見られます。これまでの家づくりや街づくりは、便利さ、快適さ、安全といった人間の基本的欲求に基づいたものが主流になってきました。でも、ここに来て、少し見方に変化が出てきています。たとえば、自殺者する方は月曜日が一番多く土曜日が一番少ないことが知られています。疲労の蓄積した方が、うつ症状になり、自殺に追い込まれることが多いのです。物質的に恵まれた社会でも、このような不条理が起きています。月曜日は、疲労を押して、働かなければならないという重圧に押しつぶされるという見方があります。不登校をする子ども達も、月曜日に多くなります。便利さや快適さを追求してきた国々には、これらの症状を抑える対策が取られています。たとえば、北欧のバス停は明るくライトアップされています。その理由は、日照時間の短い冬にうつ状態になることを防ぐためです。明るさが、うつ状態を抑制するとも言えます。日光を浴び、栄養を十分にとれば、セロトニンが分泌されます。このストレス抵抗ホルモンが分泌されれば、うつ症状になることが軽減されます。精神的疲労を取り去る方法は、原因を克服するか、その原因を小さくすることになります。幸せである人は、長寿であるのみならず健康寿命を享受しています。今回は、楽しい中で仕事をし、生活する工夫を考えてみました。

 友達が多様な人には幸せな人が多く、友達が均一な人は幸せでない人が多いと言われています。この幸せになる力を身に付けるには、どのようにすれば良いのでしょうか。一つの答えは、多くの知識を持ち、その知識を実社会で使うスキルを持つことになります。このようなスキルは、縦横無尽な知の応酬の中で、本当の知性が築かれているのです。私たちが生きていく中で得た知識や経験は、脳の中の側頭葉に蓄積されます。側頭葉には、さまざまな経験が記憶、集積されています。一方、脳の前頭葉では、意欲や目標意識、やる気がつくられます。ここで、若者とシニアの長所と短所が現れます。経験は年齢を重ねるほど増えるので、シニアのほうが創造力の引き出しは多くなります。でも、歳をとった人は意欲が衰えてしまうことが多いのです。若い人は、意欲はあっても、蓄積されている経験が少ないのです。創造性を高めたければ、意欲と経験を結ぶ回路がうまくつながるようにすれば良いわけです。もっとも、だれでもいつでも経験を増やし意欲高めようと努めれば、創造性は鍛えられます。

 それでは、若者が知識や経験を増やしていくにはどのようにすれば良いのでしょうか。今の世の中、ルールからはみ出したり、ルールを変えたりしてはいけないという考え方が主流です。ふつうは、決められたルールがあって、それに沿って仕事をすれば良いことになります。でも、トヨタの看板方式を見るまでもなく、日々仕事の工程には、改善することが常に現れます。現実に即して、「おかしい」と思うことがあれば、ルールそのものを見直すことも必要になります。つらいとか、やりにくいとか感じたら、どうしたら楽になれるかを考えることです。「やりにくさ」を放置せず、改善のチャンスであるととらえることです。改善する環境には、「OKの精神」という寛容が自他ともにあるようです。「失敗してもOKです。次の失敗を恐れず成功するために」、「ばかげているように見えるリスクを冒しても、独自のこと、人と違ったことをしてもOKです」「何でも知らないことに挑戦してもOKです、間違ってもOKです」、「じっくり時間をかけてもOKです、あなた自身のペースでやってもOKです」。このような多くのOKの中で育った人たちは、子どもを含めて自律心とマイペースを備えた人に育っていくようです。創造性は、どんな人にとっても必要で大切なもので、経験と意欲が合わさって生まれるということです。

 知識獲得には、工夫も必要です。結果の出ない人は、「いつかは使うかもしれない知識」をどんどんと溜め込みます。成功する人は「役に立つこと」を学ぶのではなく「今必要なこと」だけに絞って学ぶ傾向があります。成功の中で大切なことは、まずは結果ではなく、最初の取り掛かりを起こすことになります。この取り掛かりを確実に起こすコツは、とにかくやらざる得ない状況を作ることです。映画の予約、研修セミナーの予約などを済ませれば、確実にそれらの取り掛かりは実現します。ただ頭の中にある状態よりも、書いたほうがアイデアは明確になり、客観的に眺められます。さらに、アイデアを実際にやることにより、より弱点や長所が明確になります。弱点がわかってくれば、弱点を元に早い段階でいくらでも解決策を見つけることができます。降りかかるトラブルを解決すればするほど、あなたの問題解決能力は高くなっていきます。人間は、行動して失敗した後悔より、行動しなかった後悔の方が深く残るようです。「OKの精神」は、こんな後悔を残さない一つの手法になります。ひらめきの裾野を広げていくには、億劫がらずに頭と体を使うことが大切になるようです。

 現実の社会では、利益が重視されます。それは、市場価値の存在です。ある人によると市場というのは、作り出すものではなく、気づくだけで良いと言います。また、アイデアは、移動中に生まれるとも言います。彼は、移動中に市場についてのアイデア10個を即興で考え出しました。目的地に着くまでに、10個のアイデア(断片でもよい) を考えると決めて実行しました。その一つに、「テレビや新聞は見方によっては貴重な情報になるものたくさんある」があります。その情報の中に、お墓というコンセプトがありました。彼はそこから、自分の代わりにお墓参りをする代理業を考えだします。3000万人以上いる高齢者の3割は、約1千万人になります。この人数は、お花にしても線香にしても、大きな市場になります。東京のある旅行会社と札幌の高齢者向け介護付が提携して、新しいサービスを始めたのです。介護施設にいながら、自分の墓参りができるというものです。スタッフが墓参りを代行する際に、専用の機器を使って動画を撮影します。介護施設の入居者を対象に、スタッフが墓参りの様子を撮影しVRで披露するサービスです。スマホをセットしたVR用ゴーグルを装着すれば、里帰りや墓参りの仮想現実が再現されるというものです。

 さらに、ふるさと納税の返礼品に新たに墓参り代行サービスもアイデアとしてでてきました。コロナ過で、帰省をためらっている方も多いのです。墓参りのできない人の悩みを、解決したいとしています。市内の事業者が、墓の掃除、献花、線香を代行することになります。この利用者には、墓掃除の前後の写真を送付し、確認してもらう仕組みです。故郷の墓参りを希望するけど、今のコロナ過を考慮して、移動を控えている人たちには触手を動かす規格のようです。さらに、発展させたサービスも考え出しました。それは、高齢者を対象とした旅のVRのサービスです。高齢者が行きたい場所を指定すると、スタッフが現地まで赴き360度の写真を撮影します。この写真を、スマホを通してVRで見るというサービスです。 VR旅行を初めて体験した68歳の男性は、年をとるほど健康を壊すリスクが高まり、このような楽しみ方も良いものだといっています。依頼者は、施設にいながら専用の機器を使って映像を楽しむというものです。具体的に、個別的に考えていくと、アイデアはどんどん溢れてくると言います。これから、ますます代理業が増えてくるようです。

 最後になりますが、儲かりそうだからやるのではなく、人々に喜ばれることの中にビジネスチャンスがあるようです。以前は、甘口で濃厚な味の酒が好まれていました。農業や工場の肉体労働者が清酒の顧客層であっため、濃厚で甘口な味が好まれていたわけです。近年は、肉体労働から頭脳労働へと仕事の質が変化し、すっきりと飲める酒が好まれるようになりました。お酒の嗜好が、純米酒や大吟醸などに移ってきたようです。そうなると、酒の質はコメの質に左右されると理解する酒造会社が増えてきました。地元の農家と契約を結び、原料米を厳選する酒造会社が増えています。久保田の朝日酒造は、1%戦略を打ち出し100人のうち1人が客になれば、「良い」とする体制を作って成功しているようです。すべての人に売ろうとするから苦労するのであって、無理をして売らなない戦略を立てました。大量生産と大量消費を追求すれば、価格決定権は大手小売業が握ることになります。商品の品質に誇りを持つのであれば、自社で販売価格を決めることが理想です。理想を求める企業は、人に喜んでもらい、社会的にも認めてもらい、そして利益を上げる仕掛けを持っているようです。消費者の要望を把握した上で、柔軟な発想でその要望に応え、柔軟な企業戦略で利益を追求する手法もこれからは求められるようです。もちろん、このような企業を応援する消費者も、基本的欲求の満足だけでなく、自己実現を目指す方向で生活を続けたいものです。

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