癒しの効果を高める工夫  アイデア広場 その1643 

 癒しを求める人々が、増えているようです。特に、デジタル社会の最前線にいる若者には、この傾向が強いようです。求める人が多ければ、そこにビジネスチャンスが生まれます。究極のリラックスを掲げるある銀座店では、60分で8200円という値段にも関わらず、盛況な状態が続いていようです。欧米などでも、マインドフルネスが流行し、現在は仕事や生活の中に溶け込んでいるようです。マインドフルネスは、東洋思想のヨガや禅とアメリカの医療や科学が融合されたものでした。蛇足ですが、ヨガ目的を要約すると、生活の安定を経て、生きる喜びを感じ、社会秩序を守り、究極の自由(悟りの境地)へとたどる4つの段階になります。でも、無理をしてヨガをするという考えは、インド人の中にはないのです。以前は、瞑想だけを行い、健康を害していく僧侶がインドには多かったようです。かの有名な修行中のブッダも、断食で瞑想を続け挫折する事態になりました。そんなときに、女性に乳粥をもらって回復したのちに悟りを開いたという逸話があります。ヨガの基盤は、自己肯定のために実践するもので、自然治癒能力や潜在能力を高めるところにあるようです。現在日本で盛んになっている癒しのお店は、結果的に自然治癒能力や潜在能力を高めることに貢献しているようです。

 癒やしのリラクセーション施設が、デジタル社会のスレス対策として人気になっています。癒やしのリラクセーション施設は、昔から旅行先や温浴施設などでなじみ深いものがありあした。江戸時代の按摩さんに代表されるように、日本人のこの種の癒しには需要がありました。現在では、10分程度で気持ちよく一気に「「寝落ち」する絶頂の睡眠を掲げる癒しや60分で究極のリラックスを掲げる癒しなどいろいろなサービスが出てきています。人には、「衣食住」に加え、癒やしは次かせないようです。スマホやパソコンの長時間利用が、肩こりやストレスなどの症状をもたらしています。その回復と癒しを求める人が増えているわけです。以前は、アルコールでストレスを発散することが多かった。でも、健康志向やアルコール離れが、この種の癒しに若者をいざなっているようです。気になる金額ですが、1回の利用金額は2025年調査では、女性が5196円、男性は4792円となっています。この金額は、男女とも前年に比べて4%ほど高くなっています。この癒しを担うお店は、マッサージ師による店や柔道整復師による「整骨院」「接骨院」になります。癒しを求める人は増えていますが、癒しを行っているお店の倒産が生まれる状況も進んでいるようです。整骨院などでは、一部のけがなどでは健康保険も適用されるなどの点で、他なるリラクセーション店とは一線を画しています。マッサージやハリ治療などで、自然治癒力を高める効果が認められています。

 競争が激しくなれば、各店舗も工夫を施すことになります。マッサージの時に、眠りに誘う独特の香水を開発するなど工夫を行っているお店もあるようです。米国では「ヨガ」や「マインドフルネス」と並んで、「森林浴」が注目を集めています。森林浴では、樹木が発散する揮発性物質である「フィトンチッド」が注目されています。この森の香りが、人びとを心地良い状態に導くようです。この香りは、植物の葉などから植物独特の揮発物質を発散しているものです。森の香りを私たち人間は、総じて心地良いものとして受け取っています。この他にも、フェロモンの香りなどの利用もあります。フィトンチッドやフェロモンの香りを捕らえる脳は、人間では原始的な本能に近いものがあります。嗅覚は視覚や味覚と違い、シナプスを介さず直接脳に情報を伝える構造になっています。嗅覚は、人間の生存にとって最重要といえるものです。嗅覚は、食べ物を見つけ、フィトンチッド、そしてフェロモンを感知する生きるために不可欠な感覚になります。私達は良い香りを嗅いだ時に、気分が晴れやかになり、不安感やうつ状態が改善されることを経験しています。グレープフルーツの匂いを嗅ぐと、多くの人は新鮮で活動的な気分なります。この香りを嗅ぐと交感神経は活性化し、胃の副交感神経は抑制されるのです。グレープフルーツの香りは、グリセロールの濃度と体温が上昇させ、食欲が低下させる働きがあります。一方、ラベンダーの匂いを嗅ぐと、たいていの人は穏やかでリラックスした気分になります。ラベンダーの香りは、交感神経の活動を抑え、胃の副交感神経の活動を活発化させる働きがあります。香りを上手に活用すれば、私達生活のリズムを改善する上で役に立つことになります。これらの知見を、マッサージなどの場に併用する工夫も出てきているようです。

 お話は少し跳びますが、ファミリーレストランなどでは、お子さまをお待たせしないことがとても大事なことになります。お金を支払う大人を大切にすることが、当たり前のように思ってしまいます。でも、お子さまが笑っていれば、大人たちも食事を楽しむことができるのです。食事は、栄養を取るだけの場ではありません。話し合い、笑顔で交流することが、家族の活力を高めます。乳児の無邪気な笑いは、大人たちを和ませます。幸福にまつわる調査では、収入の増加ではなく、心の健康やパートナーとの良好な関係が幸福を高めることが分かっています。ビジネスの分野では、ランチェスターの法則が有名です。この法則は、もともとは軍事戦略の中で研究されてきたものです。敵をすべてまとめて狙うのではなく、うまく部分に分割し、一つの部分だけ狙う戦略です。ランチェスターの法則は、一つの部分を集中して狙う方が、有利に戦えるというものです。この理論を、家族連れのお客様に利用するわけです。家族連れの場合、お子さんに狙いを絞ったほうが、お客様の満足度が上がり、お店の評価も高くなるというわけです。お子さんの満足が、家族全体の満足になります。カップルの場合は、当然エスコートされる女性の満足度を優先することになるでしょう。

 このような仕組みを、癒しに取り入れた企業があります。親子遊びと体の疲れをテーマに、全国の小学生以下の子どもを持つ母親、約1万1300人に調査を行いました。「子どもと遊ぶことは楽しいと感じるか」という質問に対する答えには、興味深いものがありました。特に5歳までの子どもとの遊びで、母親に負担を感じやすい傾向がみられました。子どもと遊ぶのが「全く楽しくない」と答えた親の93%は、疲れと回答しました。一方で、子どもと遊ぶのが「とても楽しい親のうち「遊ぶのが疲れる」と回答したのは62%になりました。子どもと遊ぶのが楽しい感じる親ほど、疲れを感じにくいことがわかったのです。イオンファンタジーは、この点に注目しました。イオンファンタジーは、日本や東南アジアなど9カ国で、約1280店舗運営しています。この企業は、商業施設内で室内遊園地を手がけています。癒しの軽減を目指して、イオンファンタジーは、磁気治療器「「ピップエレキバン」のピップ(大阪市) と連携しました。イオンファンタジーが展開するのは、「ホグシーランド」と呼ぶ期間限定のキッズパークになります。ホグシ一ランドの目玉は、子どもが遊ぶ姿を眺めながら無料で受けられる整体の施術です。育児疲れに焦点を当て、親子が一緒に楽しめる空間を打ち出したわけです。整体師が、母親の肩や首、背中など、育児疲れを感じやすい体の部位を中心にもみほぐすのです。その間、母親の近くで、子ども達は遊んでいるのです。母親は、子どもが遊んでいる姿を見ながら整体の施術を受けられるといものです。

 余談になりますが、箱根駅伝に出場するようなランナーの体調管理は、常に求められています。選手の体調は、毎日起床前に心拍数を計ることによって知ることができると考えられてきました。心拍数が多いと疲労気味であり、少ないと逆に体調がいいと判断してきた傾向があったのです。でも、選手の心身の体調は、複雑なものでした。オーバートレーニング症候群には、交感神経緊張型と副交感神経緊張型のタイプがあるのです。交感神経緊張型の場合、確かに心拍数や呼吸数が多くなります。でも、副交感神経緊張型の場合、心拍数が少なくなるとことが、体調を崩している兆候になるのです。さらに、風邪気味や貧血症の場合も、オーバートレーニング症候群に陥りやすくなります。これは選手だけでなく、仕事や勉学で多忙な人達も、睡眠不足が続くとオーバートレーニング症候群に陥りやすくなるのです。母親が、育児で疲れている場合も、交感神経緊張型と副交感神経緊張型のどちらかの症状を起こしているかもしれません。その症状にあった処方をすることが求められます。一定の治療スキルを持った整体師などに任せることも選択肢になるのかもしれません。

 最後に、もう一度キッズパークを覗いていてみましょう。視覚と動きのコラボが、癒しの効果を高めています。キッズパークの中には、腕のコリなどコリの名前が書かれたブロックが積み上げられています。ここに、コリの名前が書かれているブロックの遊具を設置したのです。この積み上げられたブロックを、子どもが引き抜きながら崩していきます。母親は、整体の施術を受けながら、子どもが体のコリを撃退している様子を見ています。撃退している様子を見ることで、母親は「視覚からも体中のコリ」をほぐしてもらっている気持ちになるようです。また、動きの事例では、「ゴリゴリ・アスレチックサーキット」は、階段や坂道などを組み合わせた遊具です。「ゴリゴリ・アスレチックサーキット」は一見すると普通のアスレチック遊具になります。このサーキットには、足元に凹凸のある足つぼが敷き詰められています。ここでは、母親が子どもと遊びながら足つぼを刺激できます。子どもと一緒に遊びながら、親がゴリゴリと足つぼを刺激できるようにしたわけです。イオンファンタジーでは、子どもが遊ぶ遊具もコリ解消をテーマに統一したのです。現代の癒しは、インドのヨガから中国の太極拳、日本の指圧(按摩)、マッサージ、香りなどの組み合わせで、より効果的なものに昇華しているようです。

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