学ぶ権利を保障するためには、不安や悩みに対応できる体制を整えることも大切です。学ぶ権利が十分に受けることのできない子ども達には、不登校になった子ども達がいます。2024年度の文部科学省の調査によると、小・中学校における不登校の児童生徒数は、前年度から7,488人(2.2%)増の35万3970人となり、12年連続で過去最多を更新しています小学生の約100人に2人、中学生の約100人に7人が不登校という状況になります。不登校になった子どもの3割が、「学校生活に対してやる気が出ない」と述べているようです。他にも、「不安・抑うつ」や「生活リズムの不調」などに関する悩みを2割の子ども達が述べています。最近の調査では、不登校になっている人たちのなかには、かなりの割合で発達障害の子どももいることが分かっています。これらに対しては、心理や福祉、そして医療の専門機関などと連携し、チームで解決する体制づくりが求められます。今回は、不登校の子ども達を減らし、発達障害の子ども達が学校や社会で活躍できる支援について考えてみました。
日本的な文化のなかには、場の雰囲気や空気を読めることが良いとされてきました。年齢相応にできていることを、取り立ててほめることはない文化でもありました。日本的な子育てのスタイルは、できることが当たり前で、できないときだけ叱るというものでした。日本の文化は、社会性を発揮する場面で苦手が多い発達障害の人にとって、対応しにくいものになっていたのです。発達障害には、自閉症スペクトラム、ADHD(注意欠如・多動性障害)、学習障害などがあります。「自閉症スペクトラム」は、他者の意図や場面が読みにくく、トラブルを起こしやすい特徴があります。場面が読みにくく、状況がわかりにくいためにトラブルを起こすことが多くなるわけです。自閉症スペクトラムの人は、神経伝達物質にかかわる脳内の神径ネットワークに違いがあります。脳機能の活性のしかたに違いがありますが、やり方次第では能力を発揮できます。ADHDは、注意集中を維持することが苦手でトラブルを起こしやすい特徴があります。自己コントロールが苦手で、トラブルを起こしやすくなるわけです。また、学習障害(LD)は、知的能力に問題はないのに、読み書きや計算などの学習においてつまずきが特徴になります。これらの特徴は、教え方ややり方の工夫次第で、克服できることが最近の知見では明らかになっています。
発達障害の人と定型発達の人とでは、神径ネットワークに明確な違いがあります。日本的な子育てのスタイルは、年齢相応にできていることを当たり前と捉えます。このスタイルでは、発達障害児の持つ良さをなくすことになります。定型発達の人と同じように扱われると、地域社会や学校で日常生活を送っていくうえで、うまくいかないことが起こります。上手くいかなかった行動をやみくもに叱っても、行動は改善しません。子どもの個性(体質)や発達障害の特性を叱ったり、否定的にとらえてしまうと、虐待的になってしまいます。どういう行動をとればよいのかを教えてあげなければ、彼らの行動は改善しません。発達障害の特性を否定的にとらえてしまうと、工夫次第では伸びる能力も低下してしまいます。この特性を肯定的に捉え、スキルトレーニングを行うことにより能力を向上させることができます。発達障害の子どもを持つ親には、子どもが何かに困難さがあることを認めたくない心理が働く傾向があります。このような場合、親も子どもを客観的に見ることが求められます。
近年、発達障害についての研究は日進月歩で進んでいます。これらの子どもたちは、脳の基盤の違いにもとづく特性があります脳機能の活性のしかたに違いがあることも、脳画像を用いた実験的研究により明らかになりつつあります。発達障害の子どもたちには、生まれつき脳機能の違いがあることが明らかになってきました。脳機能において、多くの定型発達の人とは異なるバイバスを活性化させて処理しています。AIの教師なし学習では、優れた答えをアウトプットしています。でも、そのアウトプットがどのような経過でつくられているのかが分からないケースがあります。発達障害のある方の中には、優れた能力を発揮する方がいます。その経過は、定型発達の方とは違う流れのようです。神経伝達物質にかかわる脳内の神径ネットワークに、明確な違いがあるようです。ちなみに、神経伝達物質には、セロトニンやノルアドレナリン、アセチルコリンなどがあります。発達障害児は、注意集中や社会性や学習能力において不利な部分を持っています。でも、生まれつき脳の機能に障害があるといっても、それは「できない」ということではありません発達障害児は、自分なりにわかりやすい方法でコツをつかめばできるようになるのです。発達障害は、環境や対応によって、良くも悪くもなるのです。
2024年度の文部科学省の調査によると、小・中学校における不登校の児童生徒数は、前年度から7,488人(2.2%)増の35万3970人となり、12年連続で過去最多を更新しています。2023年度は、コロナ禍前の2019年度が18万1272人でしたので、約2倍の増加になりました。不登校の小中学生の数は、過去5年で約2倍に膨らんだことになります。不登校は、病気や経済的理由などを除き、年間30日以上登校していない状態と定義されています。厳しい状況は、年間の欠席日数が90日以上の児童生徒が不登校全体の55%を占める19万人だったことにも現れています。不登校の子ども達には、支援がなかったわけではありません。彼らに休養の必要性を認め、不登校の支援を進める教育機会確保法が2017年に施行されました。不登校の子ども達を、無理に通学させる必要はないとする支援策でした。でも、現状は学校に無理して来なくてよいといいながら、学びの継続は自己責任になっていました。先進的な学校や教育委員会、そして自治体は、いろいろな対策を取っています。学校の空き教室などを居場所として利用する「校内教育支援センター」」の設置を促進したところもあります。自治体の中には、民間のフリースクールを財政的に支援する形で、子どもの学びの場を用意するところも出てきています。学校内外で安心して過ごせる場所のほかに、学校以外でも学べる選択肢を用意する動きもあります。心理的ケアの強化や学校,内外の「居場所」つくりにも取り掛かっている所もあります。不登校は、学校の内外に多様な居場所がないと今後も増加傾向が続くと考えられています。
余談になりますが、中学生になると不登校の子どもが増えます。その子ども達の針路は、どうなっているのでしょうか。一般的には、全日高校に進学する子どもが多くなります。その中で、通信制高校に注目が集まっています。通信制高校は、全日制に通えない勤労青少年が高校教育を受けられるようにする目的で設置されたものです。高校進学率が9割を超え、勤労青少年が消滅すると、通信制高校の役割も変わりました。中学校に適応できなかった不登校の生徒さんが、入学する学校になりつつあるのです。さらに学業成績が低い生徒が、全日制に進めない場合の進学先になってきたのです。現在のもう一つの傾向は、全日制から転入生や編入生が一定数の割合で入ってくるのです。つまり、通信制には、教育を十分に受けることができなかった子ども達が、集まっているということです。通信制高校は、1989年度には、全国で84校でした。30年後の2019年度には3倍の253校に増加しているのです。この間に、生徒数は16万人から20万人へ4万人増えました。高校生の総数が580万9千人から336万6千人へと244万人余りも減る中で、通信制の生徒だけは増えたのです。ここで、注目すべきは、通信制に入学してくる子ども達の3分の1以上が、不登校経験者ということなのです。この通信制高校で、不登校の子どもや発達障害を持つ子が、学校や社会に適応できる能力を身に付ければハッピーです。
発達障害が、母子関係や養育の問題といわれた時代がありました。脳機能の違いを目で見られるようになり、母子関係や養育説は誤りであったことが明らかになりました。「みんなと同じで当たり前」という前提のもとでは、「できないこと」ばかりが注目されがちでした。でも、現在では「できない」のではなく、情報処理のしかた違うだけで、覚え方が違うと考えられるようになりました。苦手なところは、支援することよってうまくいくようにすれば良いのです。注意が続きにくい特性は、仕事の取りかかりが早いという面に置き換えることができます。こだわりや狭い興味は、一つのことをやり続ける持続力に置き換えることがでます。集中力を必要とする高度な仕事や研究で、成果をあげる発達障害の方も数多く現れています。発達障害児は、定型発達の人たちと同じ方法ではできないことが多いのです。発達障害児への支援は、日常的に多様にあったほうが才能を伸ばすことができます。発達障害や不登校にかかわらず、すべての子どもは、それぞれにいいところ、苦手なところを持ったかけがえのなない存在です。これからの教育は、1人ひとり異なる子どもに合わせた支援を行なっていくことが大切になります。発達障害は、一義的な医療や療育を受ければ解決するという問題ではありません。すべての子育ては、長期にわたるもので、その長い道のりを支援し続けることが求められます。
