脳の活動を飛躍させる読書 アイデア広場 その1693

 現在、多様な行動様式を持つ人材が評価されるようになりました。ある意味、脳の活動が、課題に対して柔軟に行われる人材が求められているようです。「脳」の発達は、考え、体を動かし、さまざまな刺激を受け止めることを通してつくられていきます。体を使い、感覚器官を使うことにより、神経が発達し、脳も高度化していきます。その「脳」が、想像力や思考、そして活力を生みます。そんな具体例が、小学低学年生に見られます。小学校へ入学すると、生活派の子どもと学習派の子ども比較がされます。生活派は、家事の手伝いや遊びを夢中にやってきた子ども達です。学習派の子ども達は、小学校生活で遅れを取らないように読み書きを就学前から完成しています。ある面で、万全の態勢で小学校に入学してきます。最初は、学習派の子ども達が優勢です。でも、この優勢はしばらく経つと並ばれ、いつしか学習においても優位性がなくなる現象が見られます。生活派の強みは、間違いや失敗を多く経験していることです。間違いや失敗から重要な教訓を学び、活動力を増幅させていきます。これらの子ども達が、才能を伸ばしていくようです。大事なことは、子ども達の両親が、間違いや失敗を肯定的に見守る姿勢を持っているかどうかになります。

 生活力の重要性が理解される一方で、読書の必要性が、改めて評価されるようになりました。高い学力を持つ子は、例外なく小さい頃からたくさんの本を読んでいます。彼らは、子どものころから読書を楽しんでいます。子どもの頭脳を順調に発達させるには、幼い頃から本に親しませたほうが良いことを世界の知性は理解しているようです。親から読書量の貯金をたっぷりもらった子は、底力が格段に違います。学習に抵抗がなく、勉強が楽しければ、机に向かう集中力が生まれます。子どもには無理やり行動させるよりも、選択権を渡し、好きなほうを選んでもらう方が良いようです。そんな利点が、明らかななった事例が出てきました。文部科学省が学力テストのさい、「家庭の蔵書数」を子どもたちに尋ねた項目がありました。その結果、家にある本の数が多いほどテストの正答率が高い傾向が出たのです。本がたくさんある家庭には、子ども選択権があるということのようです。子どもの読書は、脳神経回路を,増やすために「豊かな疑似体験」になっているようです。

 2000冊以上の本を読んだ人は、情報量、視野の広さ、思考判断の速さで力を発揮する人材のようです。小学校から大学までの学生時代に1000冊以上、社会人になって2000冊以上の本を読むわけです。「日本昔ばなし」でも「ファーブル昆虫記」でも、夢中で本を読む子ども達もいます。子ども用の本であれば、1冊を短時間で読み切ってしまいます。親は子どもが読書に慣れてきたら、「質」を高めることを意識します。量をこなせるようになれば、それを質に転化させることはむずかしくありません。少しずつ、読書のジャンルを広げていく工夫も求められます。知識が豊富な子どもは、「自分が知らないこと」を調べたくなります「調べ方」を知っていて、「自分で調べた経験」があれば、その興味と好奇心は広がります。蛇足ですが、知るという行為には、好奇心が働きます。知的好奇心には、特殊的好奇心と拡散的好奇心に分類されています。特殊的好奇心は知識を深めるためにあり、広散的好奇心は興味の範囲を広げることにあります。特殊的好奇心はある特定の新しく、暖昧さのある対象について情報を集めたいという傾向を持っています。目の前のわからないものを理解するために、情報を集めることに務めるわけです。このような読書経験を積み重ねることで、脳の柔軟性を養っていくことになります。

 子ども達が知識をインプット、それをアウトプットする場所は、第一に学校ということになります。ここでは、主体的、能動的な学びが大切になります。先生の話を聞きながら、ポイントを整理しつつ、自分なりに整理し、メモする力をつけます。興味をもって聴き、自分なりに整理をし、コメントをつけたりしながらメモをとります。自分なりに整理することで、授業で聴いた話や、本や教科書で読んだ話が、記憶に残ります。この記憶と読書で得た知識が干渉しあえば、より高次の知識になっていきます。この知識を自分の意見や感想として、アウトプットする作業を積み重ねます。このアウトプットは、課題を解いたり、感想を書いたりすることも含まれます。課題を「発表して終わり」にするだけでは、不十分です。「理解したかどうか」、自分の言葉で説明しようとしてはじめて気がつきます。アウトプットの場は、インプットの知識を確認するうえでも、大切な場になります。

 小学校時代は、自由に読書をし、知識をインプットし、気楽にアウトプットできました。でも、中学時代になると、一定の記憶量が求められます。英単語であれば、1200語程度を自由に出し入れできる記憶量が求められます。中学年以降になれば、「思い出す工夫(仕掛け)」がなければ、効果的なできない状況が生まれます。記憶が優れているのは、インドの学生と言われています。インドの初等と中等教育の段階では、基本的に丸暗記を含む詰め込み主義で教育がなされています。この暗記重視の教育は、大学入学後のカレッジでも保たれています。インド人は書くことより覚えることを重んじ、さまざまな分野で驚異的な記憶力を発揮しています。もっともインドの場合、詰め込み型教育とはいえ、授業での質疑応答も活発に展開されています。インドの学生は、教員との応答により、詰め込んだ情報を岨瞬し、応用力を高めていくことができるのです。教えられた内容を鵜のみにするのではなく、教員との応答を十二分に行いながら咀嚼していく過程があります。インドの学校では、質疑応答を通して、記憶された知識の洗練化(インプットとアウトプットの良好な関係)が行われているようです。日本の学校に見られる単なる知識伝達型の授業ではないようです。

 余談になりますが、親は子どもの成功を望むものです。その成功の一つは、力強い脳を持つ子に育てることになります。小さい時にどれくらい熱中体験をしているかが、力強い脳を持つ子に育てる最大の要素になります。力強い脳を作るためには、複雑で柔軟な脳の神経回路を育てることが不可欠です。脳神経回路を覗き見ることはできませんから、「運動や体力面」、「創造や芸術面」、そして「知育面」の3つ観点から見ていくことになります。読書は、脳神経回路を増やすために「豊かな疑似体験」になります。もっとも、読書だけをしているだけでは、健全な成長はないようです。いろいろな活動を通して人は、さまざまな経験を積み、人間への理解を深めていけるというわけです。たとえば、子どもが生きる力強い脳を作るためには、複雑で柔軟な脳神経回路を育てることが求められます。子どもの場合、脳を発達させるには、何といっても外遊びが良いようです。複雑な脳神経回路を手に入れるためには、多様な経験をすると得られることになります。そして、この脳神経回路を手に入れるためには、心を動かす「コトやモノ」にふれあうことがより重要になります。遊びの中には、読書にないものもあるようです。子どもが、興味を持って行動を起こすとき、脳のどこか1つの部位が単独で働いていることはありません。こどもの脳は、たえず新しい行動で得た情報をすでに持っている情報とつなげる活動をしているのです。

 最後になりますが、文部科学省が学力テストの際に、「家庭の蔵書数」を子どもたちに尋ねた項目がありました。その結果、家にある本の数が多いほどテストの正答率が高い傾向が出ました。本がたくさんある家庭は、何らかの良さがあることが分かります。子どもの頃に、いったん本を読み始めれば、好奇心はどんどん旺盛になっていきます。本は「なぜ?」「どうして?」と考えながら読めば、それだけ考える力が磨かれるようです。さらに社会人になると、学生時代の読書にさらに工夫を加えた読書になります。アウトプットを意識するようになり、より上質な読書ができるようになります。誰かに情報を発信することは、自分の中で知識を整理することにもなります。本の選択にも、工夫や知恵が求められるようになります。読書をするならば、できるだけ、一次情報に近いものが良いようです。また、翻訳書は、翻訳された時点で出版社によって厳選されており、良い本の可能性が高いという見方をする人もいます。世界の最前線でビジネスをする人々は、新聞の二次情報よりは、現場の一次情報が貴重な情報になります。ビジネスの世界では、他者と差別化できる情報を手に入れること、そして作り出すことが大切です。厳選した知識で考える力は、生きていく力に直結します。生きていく力は、小さい時から育まれてきているようです。

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