自治体の財政難をマルチワークで克服する アイデア広場 その1680

 神奈川県の相模原市は、人口が72.5万人の政令指定都市になります。この相模原市は、財政の急速な悪化に見舞われて、既存の公共施設を徹底的に見直をしました。市の27施設について、廃止や民間移管を検討したのです。さらに、各種団体への補助金も66件を見直してきました。敬老祝金の廃止など、助成の縮小や見直しなども行いました。見直しだけでなく、相模原市は、2020年度当初予算で新規事業を原則「凍結」しました。2021年度もほとんど新規事業を実施しない徹底した歳出の見直しを進めました。この改革プランを実行する中で、2022年度末には急回復をしています。また、長野県下條村は、51人いた村の職員を34人減らし、資金を作りだしました。その資金をいち早く子どもの医療費や高校生の授業料まで無料にしたのです。保育や医療の充実策が受けて、近隣から転居する人達が増えてきました。さらに、子育て対策を評価した企業が、村に工場を建設するプラスの効果が現れました。

 行政を簡素化することで、住民が豊かになるケースが世界中で見られます。スイスのある村は、村長を含めて職員がパートタイムで働いています。この村役場の施設には、学校のほか企業の入るテナントや広場に面したカフェもあります。テナントとして入っているコンビニは、午前中のみの営業なのです。この村役場は、多くの機能を兼ねています。図書館は、週に一度オープンするだけです。多目的室では、村議会が開かれ9人の議員が集まって議論が行われます。役場で働く公務員も、基本的に4年任期の自由契約制で、賞与や昇給はないのです。彼らも、農業や観光業の副業を持ち、農道や林道の改修や除雪の作業を行うことで、市民は世界一の収入を得ているのです。

 税金の少ない自治体は、各種の文化施設の経費が削られていきます。2018年10月1日現在、全国の図書館数(同種施設を含む)は3360施設でした。国民の文化水準を維持するためには、これらの人材の存在が必要ですが、これらの人材を確保する財政的余裕は、日本にはなくなりつつあります。余裕がなければ、マルチワークの人材を採用するという発想が出てきます。1人の村の職員が、図書館を火曜日に8時間、博物館を水曜日に8時間、役場の仕事(地域の農業への副業(お手伝い)やコンビニパートも含む)を8時間×3日の労働と週休2日という発想も出てきます。文化施設の維持と住民サービスの充実、そして公的施設を使用した利益追求という観点から、行政の柔軟な対応が求められる時代が近くまで来ているようです。

 神奈川県小田原市に、尊徳神社があります。二宮尊徳が、祀られた神社です。彼が行った桜町嶺における成功例は、今日でも復興のモデルになります。荒廃した桜町嶺でも、潜在的生産能力を持つ田畑があり、村人が力を発揮することにより、生産力を高める潜在力が秘められていました。でも、分限(現在では市町村の財政力となるでしょうか)を超える消費をすれば、徐々に貧しくなります。分限を理解し、その範囲内での生活を心がけることが、生産能力を発揮し、利潤を獲得することが繁栄に繋がるのかもしれません。

タイトルとURLをコピーしました