若者のメンタルヘルスを向上させる知恵 アイデア広場 その1702

 2024年の日本の平均寿命は、男性が81.09歳、女性が87.13歳です。女性は40年連続で世界1位、男性は世界5位になります。また、2022(令和4)年の健康寿命をみると男性で72.57歳、女性で75.45歳になります。このデータから見ると、女性は男性より健康のようです。でも、若者の男性と女性には変化がみられるようです。この傾向は、日本だけでなく、世界的に見られています。120万人以上の調査で、この20年でメンタルヘルスの男女差が広がっていることが分かってきました。この43か国を対象にした世界規模の研究でも、男子もやや悪化していましたが、女子の悪化は男子を大きく上回る結果となっています。また、オーストラリアの縦断(パネル)調査でも、男女ともに思春期を通じて抑うつや不安の症状が増えていることが明らかになりました。このオーストラリアの縦断調査では、特に女子でこの傾向が顕著でした。さらに東京とロンドンで行われた縦断調査でも、女子の抑うつ症状が悪化していたのです。このパネル調査では、12~16歳にかけて女子の抑うつ症状が男子と比べて大きく悪化していました。このように異なる文化圏でも思春期を通じて抑うつや不安の症状が増えたことが同様に起きていました。

 各種の調査は、女子のメンタルへルスの問題が世界共通の課題であることを示しています。思春期の若者の心の健康が世界的に悪化し、特に女子で深刻であることが研究で分かりました。女子のメンタルヘルスの悪化は、世界規模の研究で確認されたわけです。思春期は、誰もが心の揺らぎを経験する時期になります。思春期のこの揺らぎが、かつてないほど大きくなっているようです。特に、女子の心に静かな危機が広がっているようです。その一つの現われが、日本で2024年、20歳未満の女子の自殺者数(430人) が男子(310人)と初めて上回ったことです。10年前は、女子が165人、男子が373人でした。男子が多く、女子が少ない傾向は長く続いたのですが、これが逆転したのです。男子の自殺者数が横ばいである一方、女子の自殺者妾だけが2.6倍に増えました。女子の自殺者数だけ増える実情は我が国では初めてであり、世界的に見ても異例と言われています。なぜ女子がより深刻に影響を受けるのか。いくつかの要因が指摘されています。今回は、この要因を探り、解決策を模索してみました。

 現代社会はストレスがたまりやすい環境にあります。ストレスの過剰な蓄積により、ホメオスタシスが崩れることもあります。ホメオスタシスの乱れにより、引き起こされる反応は、身体面・心理面・行動面に見られます。身体面での反応は、息切れ、食欲低下、胃痛、便秘、下痢、不眠などの症状が現れます。心理面では、やる気が出ない、興味が湧かない、体が重く動かない(精神運動制止)などの症状がでてきます。さらに、進むと、自分を責めたくなる(罪責感)、生きていたくない、死にたいと思うなどの症状に至ることもあります。行動面での反応は、ネガティブな行動、ひきこもり(登校拒否・出社拒否) になるなどとして現れることもあります。ストレスが過剰になり、その人の許容範囲を超えたとき心身などにさまざまな悪影響を及ぼすことになります。自衛の策としては、ストレスが慢性化することを避けて、健康を損なうことがないように工夫することになるわけです。ストレスに支配されるのではなく、ストレスをコントロールするスキルを身に津つけることになります。対処する方法が身についている人は、ストレッサーを病気にならないように対処していきます。このようなスキルを身に付けている人は、現代社会を優雅に過ごすことができるようです。この工夫の1つに、セルフコンパッションがあります。自分に優しく思いやりを向けることは、セルフコンパッションと言います。このセルフコンパッションが、逆境を乗り越える力になることがわかっています。さらに、ストレスを減少させるだけでなく幸福感を高めることことにできます。その高める方法は、シンプルです。セルフコンパッションの1つに、自分の肩にトントンと優しく手を添えたりすることや両手で自分をぎゅっと抱きししめることがあります。自分なりに落ち着くジェスチャーや自分に優しさを向けられるジェスチャーを、いくつか持ことも選択肢になります。

 フロイト的な対処法を試みた時代もありましたが、現在をそれよりポジティブな思考が推奨されているようです。フロイトは、心に負った傷(トラウマ)が、現在の不幸を引き起こしていると考えました。幼いころに虐待を受けたといった出来事が、現在の不幸を引き起こしていると考えます。また、戦争におけるトラウマが、人生の不幸をするとします。でも、幼いころに虐待を受けた人たちが、全て不幸になったわけではありません。虐待を受けたといった出来事が、人格形成に及ぼす影響は強くあります。でも、この影響を良い方向に変える人たちもいます。現代の対処法の基本は、人は変わることができるし、幸福になることができると言うものです。たとえば、対人関係のなかで傷つかないなど、基本的にありえないことです。対人関係に踏み出せば、大なり小なり傷つくものです。もちろん、当事者であるあなたも、他の誰かを傷つけています。大切なことは傷ついた場合、どのように対処するかです。人生とは、自ら選択するものであり、自分がどう生きるかを選ぶのは自分ということです。トラウマやストレスは、人の成長につながるというプラス面も持っています。ストレスを乗り越えた経験が、達成感をもたらす喜びとなり、その人の自信となるケースもあるのです。ストレスを乗り越えた経験が達成感の喜びとなり、次に出合うピンチをチャンスに変える力になります。

 国際的な調査を詳しく見ていくと、女性に負担のかかる要因が増えていることが分かりました。学業関連のプレッシャーの増加が、女子で特に急激であることが示されています。ここに、伝統的な女性の役割が重なります。現代の女性は、学業や職業上の成功と伝統的女性の役割(子育てや家事など)も求められ、二重の心理的負担を負っています。さらに、若い女性は、ネットの影響を強く受ける立場になっています。東京都の10~16歳を対象の縦断調査では、不適切なネット利用が抑うつと関連していました。ネットが急速に思春期の生活に浸透したことで、ひと昔前と比べてリスクが大きくなっています。以前は、セクシュアルハラスメントや性暴力の被害が対面でのみ発生していました。近年では、オンライン上での被害が多くなっているのです。世界の子どもの8.1%が、何らかのオンラインにおける性的搾取や性被害を経験しているとの報告があります。また、ネットが流す影響に、女性の行動を制約するものがあります。その結果、女子だけに摂食障害の診断が急増しているのです。「細くてかわいい」のアルゴリズムが、女子のメンタルへルスに影響を及ぼしているのです。女子のやせ願望は近年特に強まっており、摂食行動への影響が表れています。

 余談ですが、美しくなりたいという欲求は、動物にも人間にあるようです。クジャクの美しさを見れば、動物にも進化の過程で美を高めることが備わってきたものになります。その美しくなるためのオシャレに、変化が起きているようです。最近、がんばりすぎないオシャレをする傾向がでてきました。オシャレには、美的要素が含まれています。モデルは、美を表現する人達です。モデルの条件は、細身ということでした。それが、変化してきたのです。痩せすぎたモデルへの警鐘が、発せられるようになったのです。2015年のフランスでは、「痩せすぎモデル」禁止法案が可決されました。モデルが細いだけでは、健康的ではないという考え方です。

 最後になりますが、若者にとっては、SNSのグループから外れることが孤独として体験されるようです。SNSが、コミュニケーションの主要なツールになっています。このツールには、デメリットがあることを理解しておくべきです。このデメリットを教える親や教師、そして友人が求められます。人は会話しているときには、目の動きや表情しぐさなどで、言語外のメッセージを伝えることがあります。言語外のメッセージを、ノンバーバル(非言語)なメッセージといいます。人は、声の抑揚や姿勢、その場の雰囲気など、言語外の情報を重視することあります。相手のノンバーバルなメジセージを読み取ることで、誤解を少なくすることができます。ノンバーバルなメッセージを読み取り、コミュニケーションにおける誤解を少なくすることが可能になります。でも、SNSによるコミュニケーションでは、このノンバーバルを読みとることができません。

 復習になりますが、コミュニケーションには、複雑な要素が含んでいます。私たちにとって、他人と自分は違う人間ですから、意見が合わないケースが起きてきます。このことを前提に、コミュニケーションは、話し手と聞き手の間でのやり取りが基本になります。①、AさんとBさんの会話で、お互い意思疎通がうまくいき、お互いが納得すれば、ハッピーになります。でも、②、AさんとBさんの会話で、Aさんの話す内容をBさんが間違って理解すると問題が起きます。次の事例は、③、意図的なウソが入る場合です。Aさんが詐欺師で、Bさんを言葉巧みに騙します。Bさんは、Aさんの言葉をそのまま素直に信じてしまう場合になります。④は、「本音」と「建て前」を前提に話し合いをするケースです。Aさんは、本音と違うメッセージをBさんに発信します。Bさんも心得ていますとAさんの本音を見抜いて、笑顔で応対しているケースです。いわゆる、「狐と狸の化かし合い」を見抜いた応対になります。言葉のやり取りの中には、いくつかの理解するレベルがあります。レベルに応じた対応が、コミュニケーション能力ということになります。

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