英才教育と大器晩成のどちらが良いのか? アイデア広場 その1714

 「十で神童 十五で才子 二十過ぎれば只の人」という言葉があります。これと対処的な言葉に、「大器晩成」があります。どちらが好ましいのかとか、どちらが本当なのかなどを知りたいと思っていました。その知見に関する調査結果が、ドイツの大学から発表がありました。ドイツのカイザースラウテルン・ランダウ大学などの研究チームは、世界トップで活躍する人を含む約3万4000人のデー夕べースを作成しました。この研究チームは、スポーツ、学術、音楽など異なる分野で活躍する人のデー夕ベースを作成したわけです。このデータベースから、スポーツや学問、芸術などの分野で、世界で活躍する人の分析結果を発表しました。この分析から分かったことは、複数の分野で、約9割が若い頃には目立つ存在ではなかったという点でした。反対に、若くして優れていると注目された人のうち、成人期以降も第一線で活躍する人は1割程度でした。ノーベル賞受賞者と受賞できない候補者を比較した結果は、若い頃の評価は受賞者の方が劣っていたのです。早期教育や英才教育が、トップクラスでの活躍に必ずしもつながるとは限らないようです。大器晩成の可能性が、高いということにも通じるようです。今回は、大器晩成と早期教育について考えてみました。

 現在、多様な行動様式を持つ人材が評価されるようになりました。ある意味、脳の活動が、課題に対して柔軟に行われる人材が求められているようです。「脳」の発達は、考え、体を動かし、さまざまな刺激を受け止めることを通してつくられていきます。体を使い、感覚器官を使うことにより、神経が発達し、脳も高度化していきます。その「脳」が、想像力や思考、そして活力を生みます。そんな具体例が、小学低学年生に見られます。小学校へ入学すると、生活派の子どもと学習派の子ども比較がされます。生活派は、家事の手伝いや遊びを夢中にやってきた子ども達です。学習派の子ども達は、小学校生活で遅れを取らないように読み書きを就学前から完成しています。ある面で、万全の態勢で小学校に入学してきます。最初は、学習派の子ども達が優勢です。でも、この優勢はしばらく経つと並ばれ、いつしか学習においても優位性がなくなる現象が見られます。生活派の強みは、間違いや失敗を多く経験していることです。間違いや失敗から重要な教訓を学び、活動力を増幅させていきます。これらの子ども達が、才能を伸ばしていくようです。

 一般的に、学びや運動(スポーツ)を志す者は、指導者から与えられた「型」をこなすところから始めることになります。基礎ができてないところに、積み上げても無駄な行為になります。「守・破・離」という言葉があります「守」とは、指導者の教を忠実に守って練習を続け、「型」をしっかり身につける段階です。「守」で学んだ基本に自分のオリジナリティを加えるのが「破」になります。さらに指導者から独立して自分の道を切りひらくのが「離」になります。守・破・触の三つの段階を経て、有能な人材に成長していきます。勉強は曼荼羅的に広がっていくもので、何がきっかけになるか、わかりません。知らないことを知る楽しさ、できなかったことができるようになる楽しさが、子どもをポジティブにしていきます。それまで積み上げてきたことがつながったり、理解できたりして、突然わかるようになります。理解できて、突然わかるようになることをパラダイムチェンジといいます。たいていの場合、パラダイムチェンジを境に「次元が変わって」、ぐんぐん理解力が向上していきます。パラダイムチェンジは一生のうちに何度も訪れて人を成長させます。大器晩成の子ども達は、いろいろな場面で、そして成長の過程で、パラダイムチェンジを多く経験しているようです。

 ドイツの研究は、伸び悩みの実情も報告しています。スポーツでは、14歳時点で国内トップクラスの人は17歳ごろに伸び悩むことが多くなります。若い時期の集中トレーニングによって、技能は高まります。でも、いずれ伸び悩む時期が来るということです。若い頃に能力が高い場合、その人の最終的な能力が比較的高いレベルで落ち着きます。比較的落ち着いたレベルで活躍していると、世界トップクラスに育つ人に、19歳ごろに追い越されるケースが多くなります。トップクラスまで才能を伸ばした人は、早期教育の若者に比較して、上達が遅い傾向がありました。もう一つの特徴は、トップまで才能を伸ばした人は、若い頃の9年間に別の2種類の競技に取り組むことが多かったのです。これは、スポーツ以外の分野でも見られる特徴でした。この特徴は、科学分野や科学以外の専門職や芸術などの活動に従事する人にも見られる傾向でした。伸びる要素として、多様な経験が能力向上に役立つことなどを可能性としてあげています。逆に、伸び悩む理由として別の得意分野に出会う機会を失うことにあるようです。であれば、早期教育においても、多様な経験を準備しておけば、大器晩成の可能性もあるようです。現在、早期教育や大器晩成のメリットを実現する若い才能を発掘し、育てる特別なプログラムは世界的にみられるようになりました。

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