読書には知識欲と快感をもたらす効能があります。 アイデア広場 その1553

 読書の必要性が、改めて理解されるようになりました。高い学力を持つ子は、例外なく小さい頃からたくさんの本を読んでいます。彼らは、子どものころから読書を楽しんでいます。子どもの頭脳を順調に発達させるには、幼い頃から本に親しませたほうが良いことを世界の知性は理解しているようです。親から読書量の貯金をたっぷりもらった子は、底力が格段に違います。学習に抵抗がなく、勉強が楽しければ、机に向かう集中力が生まれます。子どもには無理やり行動させるよりも、選択権を渡し、好きなほうを選んでもらうほうが良いようです。そんな利点が、明らかななった事例が出てきました。文部科学省が学力テストのさい、「家庭の蔵書数」を子どもたちに尋ねた項目がありました。その結果、家にある本の数が多いほどテストの正答率が高い傾向が出たのです。本がたくさんある家庭には、子ども選択権があるということのようです。子どもの読書は、脳神経回路を,増やすために「豊かな疑似体験」になっているようです。家庭の蔵書は、疑似体験を増やす効果があるのかもしれません。今回は、読書の効果について探ってみました。

 子どもの成功を親は、望むものです。その成功の一つは、力強い脳を持つ子に育てることになります。小さい時にどれくらい熱中体験をしているかが、力強い子に育てる最大の条件になります。力強い脳を作るためには、複雑で柔軟な脳神経回路を育てることが不可欠です。脳神経回路を覗き見ることはできませんから、「運動や体力面」、「創造や芸術面」、そして「知育面」の3つ観点から見ていくことになります。読書は、脳神経回路を増やすために「豊かな疑似体験」になります。その意味でも、童話や物語の読み聞かせは、感情や創造性の豊かな子供の成長に良い効果をもたらすと言います。親などによる読み聞かせをスタートとして、本の世界に入っていくことが理想的です。日本語を理解してもらうには、「音の良い」文章で書かれた本であることが大切になります。音の良い絵本というのは、美しい日本語で書かれた絵本ということになるようです。この読み聞かせや心地よい聞き取りにより子どもは、本好きに成長していきます。子どもが、文字を読めるようになっても、音読は大切な要素になります。黙読では本人も周りも気づかないことが、音読によってはっきりするからです。本を「選ばせる」ということは、とても良い演出であり、良い環境づくりになります。子どもは、自分が好きなものを選んだ満足感が読書のモチベーションを高めます。家庭のリビングに、いっぱいの本棚があることは本を「選ばせる」素晴らしい環境になります。

 本の世界に入ることで、語彙力から文章理解力、思考力、集中力、表現力など、学力向上に欠かせない力が養われます。いわゆる、地頭が強い子になります。都市部の私立の一貫校や大学の附属校などの入試では、読書する子かどうかをふるいにかける問題もあるようです。本を読んで理解することができるから、勉強ができるという流れになります。自由に力強く育ってほしいと願うことは、どの親にも共通した自然な感情になります。子どもを良くしようとする家庭には、工夫も必要です。本棚がある環境で育つことは、子どもの知的好奇心を刺激する要素が増えます。そして、自然に読書の世界へと入ることに導きます。この時、子どもの頭を良くする本は、物語本(文学)と知識本の2つを用意しておくことも工夫になります。また、お母さんの中には、読み聞かせなければという強迫心理が働く場合の対策もあります。近年は、CDなどの名作があり、デジタル機器にお任せすることも一つの工夫になります。「本を読む」十「寝る」という習慣が当たり前になると、子どもが自然に本好きになるものです。1日の中で、隙間時間をうまく見つけて継続していけば、読書量は確かなものになります。これは頭で考えてやることではなく、身体が当たり前のように行うようにしておくことが力強い脳を作る秘訣になるようです。

 学校時代に、いったん本を読み始めれば、好奇心はどんどん旺盛になっていきます。本は「なぜ?」「どうして?」と考えながら読めば、それだけ考える力が磨かれるようです。さらに社会人になると、学生時代に工夫を加えた読書になります。アウトプットを意識すると、より上質な読書ができます。アウトプットしながら、誰かに情報を発信することは、自分の中で知識を整理することにもなります。本の選択にも、工夫や知恵が求められるようになります。読書をするならば、できるだけ、一次情報に近いものが良いようです。最近のソーシャルメディアの情報は、玉石混交です。このような中で、新聞は一定の人々の目を通して情報が吟味されているので、信頼ができると考える人も多いのです。翻訳書についても、翻訳された時点で出版社によって厳選されており、良い本の可能性が高いという見方をする人もいます。確かに、世界の最前線でビジネスをする人々は、新聞の二次情報よりは、現場の一次情報が貴重な情報になります。ビジネスの世界では、他者と差別化できる情報を手に入れることが大切です。厳選した知識で考える力は、生きていく力に直結します。

 読書だけをしているだけでは、成長はないようです。仕事を通して人は、さまざまな経験を積み、人間への理解を深めていけるというわけです。たとえば、子どもが生きる力強い脳を作るためには、複雑で柔軟な脳神経回路を育てることが求められます。子どもの場合、脳を発達させるには、何といっても外遊びが良いようです。複雑な脳神経回路を手に入れるためには、多様な経験をすると得られることになります。そして、この脳神経回路を手に入れるためには、心が動くことにふれあうことがより重要になります。遊びの中には、読書にはないものもあるようです。蛇足ですが、子どもが興味を示して行っていることをすぐに制止すると、せっかく脳が伸びようすることを阻止してしまいます。子どもが、興味を持って行動を起こすとき、脳のどこか1つの部位が単独で働いていることはありません。こどもの脳は、たえず新しい行動で得た情報をすでに持っている情報とつなげる活動をしているのです。大人の読書も、新しい行動を得るためのものにしたいものです。

 余談ですが、米国で「リアル書籍の人気が復活しています。2021年に米国市場での紙の書籍販売は、8億2800万冊と、2004年の調査開始以来で過去最高を記録しているのです。ひところ、急激に伸びてきた電子書籍に異変が起きています。書籍販売全体に占める電子書籍のシェアは、2013年(28%)をピークに下落傾向が続いています。また、本をネットで買う人が、非常に増えて、書店にはほとんど行かず、アマゾンで本を購入するという人も増えました。米国では、書籍を一般の書店よりも安く郵送して販売する米アマゾンが台頭しました。街から本屋が消える「書店砂漠」の拡大は、社会問題として取り上げられることもありました。でも現在、アマゾンを利用してきた若者世代が、書店巡りを楽しむ新たな光景を生み出しています。「デジタル世代」は、パソコンやスマホと常にデジタルデバイス漬けの生活を送っています。この「デジタル世代」と呼ばれる若年層ほど、紙を好む傾向があるというのです。高度情報化社会は、玉石混交の情報を浴び続けていると能力が低下します。高度情報化社会では、触れる情報を厳選する必要があります。目の前の情報は、独立した点として捉えずに、流れや構成の中の要素であると捉えることが知恵になります。厳選した知識で考える力は、生きていく力に直結します。このような当たり前のことを、若者が感じ始めたようです。

 最後になりますが、人間の創造力は、高度な言語運用能力から生まれます。新たな解釈を生み出す力は、異なる社会や文化的立場に、自分自身を置くことによって得られます。読書は、異なる立場に人々を容易に導く道具です。そこにおいて、否定的な感情を持つこともありますし、肯定的な感情を持つこともあります。これらの葛藤の中から、肯定的な方向に進めることが生産的な生き方になるようです。言語運用能力を高めながら、知識欲を満たしていくわけです。読書により、自分の知識欲を満たしていきます。そこには、快感が生まれます。知識欲を満たし、快感を覚えることが、世界観を広げることにつながります。知識欲の充足と快感、そして世界観の広がりが螺旋階段のように継続していくことが、読書のだいご味なのでしょう。この螺旋階段が上がるごとに、知識欲と快感の欲求が満たされていきます。

 補足になりますが、先日、マキャベリの君主論の冒頭を眺めてみました。そこには「君主の恩顧をこうむりたいと思うものは、君主がもっとも重宝がるものを持参し、謁見を乞うのがつねであります。それが駿馬や武器、宝玉など・・・・」という文章がありました。トランプ大統領と同じ考えの人達が、1500年代から存在していたのだと分かった次第です。現在は、アメリカにひれ伏して、「アメリカに工場を建て、アメリカの人が働く場所を確保せよ」と言っているようです。本を読むと、人間の心が意外と変わらないことも理解できるようになるようです。

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