はじめに
東日本大震災の発生から10年以上もが過ぎて、被災地の復興は進んだように見えます。でも、建物の復興は進んでも、人口減少の進む地域が増えているのです。津波の被害を受けた沿岸部の住民は、安全を求めて新たに作られた高台の住居に集団移転しました。現在、その高台の集落が、限界集落になっている所も増えています。安全な高台に、住居を建てたわけです。でも、将来の存続が危ぶまれる限界集落になりつつあるのです。この高台を整地し、移転するためには多くの税金を投入されました。ちなみに、65歳以上の高齢者が、人口に占める割合が50%を超えた集落を「限界集落」といいます。この限界集落が、日本には2万以上存在しているのです。少し前までの報告書では、8000か所と言われていたものが、現在は2万ヵ所を越しています。一つの事例として、岩手県釜石市の室浜地区は、住民39人のうち24人の6割強を65歳以上が占めています。町内の草刈りや神社の管理も行き届かず、生活を続けていけるか不安だと話す方も多いのです。命は大切です。でも、まったく安全な環境に住むことはできません。安全な環境のみに、税金を投入することに疑問が出てきました。では、どうすればよいのでしょうか。今回は、安全と豊かな生活の確保、そして人々が住み続けられる地域の作り方について考えてみました。
- 自治体の存続
神奈川県小田原市に、尊徳神社があります。二宮尊徳が、祀られた神社です。彼が行った桜町嶺における成功例は、今日でも復興のモデルになります。「荒地を開くに荒地の力をもってし、衰貧を救うに衰貧の力をもってする」という言葉を残しています。荒れ果ててしまっている農村であっても、生産能力と利潤獲得能力は潜在しているという意味があります。荒廃した桜町嶺でも、潜在的生産能力を持つ田畑があり、村人が力を発揮することにより、生産力を高める潜在力が秘められていたというものです。でも、分限を超える消費をすれば、徐々に貧しくなります。その村の持つ分限を超える浪費は、慎むべきものです。分限を理解し、その範囲内での生活を心がけることが、生産能力を発揮し、利潤を獲得することに繋がるわけです。高い防潮堤の建設や高台への集団移転は、分限を超えたものだったようです。
税金の少ない自治体は予算が少なくなり、各種の文化施設の経費が削られていきます。多く公園や運動施設、図書館などの文化施設の経費も削減されています。日本各地には、図書館などの施設の運営費が、縮小されていく自治体の実態もあります。でも、節約だけでは、不満ということで、稼ぐ仕組みを作る市町村もあります。このモデルとして、岩手県紫波町の地域振興が有名です。10年間以上も放置されていた町有地を町の有志が借り受けて、図書館を中心に年間80万人以上の集客力を誇るビジネス地域に成長させています。このプロジェクトの素晴らしさは、使われていない町有地を有料で借り受けて、考えられないようなビジネスの成功をもたらしたことです。紫波町は人口が減少しているにもかかわらず、地方税は増えているのです。町としての生産力が向上していることを示しています。税金が増えれば、行政が市民に行えるサービスの質は向上します。予算の抑制よりも、稼ぐ能力があれば、予算が豊かになり、より良い行政が可能になります。そんな地方創生も、実例として日本にはあります。
2,自治体の改革と繁栄
多くの市町村が財政難に陥る中で、思い切った改革をした村がありました。長野県下條村は、51人いた村の職員を34人減らしました。職員を減らして、資金を作りだしました。その資金をいち早く子どもの医療費や高校生の授業料まで無料にしてしまったのです。補助教員を村単独で配置して、学童保育を充実させるなど、教育環境の整備を行いました。保育や医療の充実策が受けて、近隣から転居する人達が増えてきました。さらに、子育て対策を評価した企業が、村に工場を建設ようになりました。昔は、電気と水道のインフラの存在が進出の条件でした。今は優秀な労働力が揃っていれば、進出の条件になります。若い働く人達が、安心して働ける環境は、企業にとっても魅力ある政策になります。
成功している市町村は、目先の人気取りより、長期的な目標を重視しています。そのためには、住民に負担をしてもらうこともあえて行っているようです。この下條村は、健全な運営を行いながら、人口を増やし、豊かな生活をつくり出しているモデルになります。この村は、200万円以下の道路工事は、村人がやることにしました。村役場は道路工事の資材や工事道具を提供し、村人は労力を無償で提供するという仕組みです。この経費は、公共事業で行う場合に比較して、5分の1で済んでしまいました。節約できた予算は、保育費や医療費の充実に使われました。下條村は、課を総務課・振興課・福祉課・教育委員会の4つに統合し、係長制度を廃止しています。仕事の枠を取り払い、一人の職員が複数の業務を兼務する仕組みを取っています。一人一人の職員が複数の仕事を効率よく行えば、職員数を削減しても業務に支障は生まれないことを証明しているようです
3,自治体の苦労と知恵
税金の少ない自治体は、各種の文化施設の経費が削られていきます。図書館の経費も削減されています。削られれば、それに対応した知恵を出さなければなりません。スイスのある村では、週に1度だけ図書館をオープンします。世界で最も裕福なこの国が、このような節約をしているのです。もっともこの方式を行うことで、図書館運営が少ない予算で可能になるわけです。学芸員のスキルは必要です。図書館司書のスキルも必要です。2018年10月1日現在、全国の図書館数(同種施設を含む)は3360施設でした。国民の文化水準を維持するためには、これらの人材の存在を確保することが求められます。でも、これらの人材を確保する財政的余裕は、日本にはなくなりつつあります。文化水準を維持し、予算の課題をクリアする方法は、学芸員と図書館司書の業務を1人で、行えればよいという発想がでてきます。村の職員が、図書館を火曜日に8時間、博物館を水曜日に8時間、役場の仕事(地域の農業への副業やコンビニパートも含む)を8時間×3日の労働と週休2日という働き方が、村のトレンドになるかもしれません。縦割りの行政では、この仕組みはできないということです。文化施設の維持と住民サービスの充実という観点から、行政の柔軟な対応が求められる時代が近くまで来ているようです。
スイスの村にも、下條村と似たような運営をしているところが数多くあります。ある村は、村長を含めて職員がパートタイムで働いています。この村役場の施設には、学校のほか企業の入るテナントや広場に面したカフェもあります。テナントとして入っているコンビニは、午前中のみの営業なのです。村役場は、多くの機能を兼ねています。図書館は、週に一度オープンするだけです。多目的室では、村議会が開かれ9人の議員が集まって議論が行われます。役場で働く公務員も、基本的に4年任期の自由契約制で、賞与や昇給はないのです。彼らも、農業や観光業の副業を持ち、農道や林道の改修や除雪の作業を行うことで、世界一の収入を得ているのです。消防などの防火対策は、消防署や州警察署の派出所、15歳までの児童生徒を含めた住民による消防団を組織して、災害に備えています。住民全体で、災害に対処する仕組みができているのです。下條村でも、格安の村営の住宅に入る場合、消防団に入ることが義務になっているようです。住民としての権利と義務が、スイス村でも下條村にもあるようです。
4,人材を育てる自治体
子ども時代に、運動を通して様々な人と接することは、成人後のコミュニケーション能力が高まると言われています。また、子ども時代に運動を通して様々な人と接することで、主体性も高まると言われています。そして、現代の企業においても、若者の「自主性の重要性が」叫ばれています。運動ができるとか、学力が高いということは、十分な食事や睡眠、そして運動や学習環境によって保障されています。子どもの運動能力を向上させ、学力を高めているものは、「親の熱心さ」や教員の熱心さ、そして地域の支援などの要素があります。運動能力や学力に影響を与える第3の変数が、存在するわけです。この第3の変数は、交絡因子と呼ばれています。子どもの能力を育成するには、親も学校も、そして地域もそれなりの支援が必要になります。支援が適切であれば、子ども達の能力は向上し、その能力が地域に還元されることにもなります。
コロナ禍の時期は、外出などが制限され、運動不足になる人々が増えました。全国の市町村と教育委員会は、子どもの体力向上に知恵を絞っています。ここで注目されている県が、大分県です。2008年には、運動能力テストが都道府県ランキングの40位にありました。今回は、2位に躍進したのです。40位の結果を重く受け止めた大分県の教育関係者は、子どもが自主的に運動に取り組めるような授業の改善を進めてきました。大分県のキーワードは、「わかる」「できる」「楽しい」でした。子どもたちの自主性を促すために、支援指導する先生方は、知恵と工夫、そして実践を重ねてきたようです。
大分県は、2008年度の結果を踏まえて、体育の授業の改革を進めてきました。その中には、体育専科の教員の採用がありました。体育の授業では、専科の教員とクラス担任が2人であたる授業が行われました。担任と一緒に授業を進めることで、一般の教員の運動に対する理解が深まりました。体育専科教員は、県内各地の小学校でも指導にあたります。当初は6人だった体育専科教員は、2023年度には24人に増えました。大分県は、2009年度からモデルとなる小学校に体育専科教員を配置してきました。新たな体育の指導資料を作り、子どもたちが楽しく取り組める工夫を凝らしています。地域の活力を高めるためにも、気軽に外で遊んだり、運動できる環境の整備が欠かせません。そのような条件整備が、人的にもインフラ的にも整ってきたのかもしれません。大分県の調査では、小学5年生の1週間の平均運動時間は男女子ともに全国平均を上回るとのことでした。「わかる」「できる」「楽しい」運動を経験した子ども達は、生涯にわたって運動を続ける可能性が高くなります。ある意味、将来に対する投資が行われていることになります。食事と運動、そして睡眠は、健康の基本です。これを上手に行える子どもは、将来にわたって健康な生活を享受できると言うわけです。
5,自治体が人材を受け入れる
香港が、揺れています。香港の優秀な人材が、流出する状況が続いています。この優秀な人材を獲得しようと、各国は触手を動かしています。この人材を獲得するためには、どうすれば良いのでしょうか。世界のトップの人材は、家族同伴で移動します。単身赴任のような、家族バラバラの招聘には応じないようです。その家族の一員である子弟の教育が、大切になります。優秀な人材が安心して働ける子息の教育環境は、国際バカロレア級の学校の存在です。国際バカロレア機構が認めた学校を卒業した生徒は、世界の有名大学に入学ができます。高い研究能力を持つ高度人材は、子どもが自分と同じ境遇で学問や研究に挑戦してもらいたいと望んでいます。
神奈川県相模原市の藤野地区には、シュタイナー学園があります。シュタイナー学園には、国際バカロレアに認定されている学園も数多くあります。シュタイナー学園に子どもを通わせる親は、医師や建築家、芸術家の手に職を持つ人が多いことが特徴です。この学園のある地域には、多様な人材が集まるようです。多様な人材が集まれば、アイデアの富んだイベントも出てきます。もちろん、地域の経済や文化も上向きになります。国際バカロレア機構は、柔軟な知性の育成と国際理解を目的としています。国際バカロレアの知性を達成するために共通のカリキュラムや試験、そして資格ある教員を求めます。すでに日本にもいくつかの国際バカロレア認定校があります。バカロレアが認める知性と柔軟な創造力を育成するためには、しっかりした教育機構と教員が必要になります。藤野地区のような教育環境が整っている場合、国内外の優秀な人材が居住する可能性が出てきます。バカロレアの認定をクリアするためには、優れた小学校、中学校、高校の先生の獲得が大切になります。日本の小中高の一貫教育で、成果を上げている学校は筑波大学の付属校と言われています。このレベルの学校と教員を揃えることが必要になるかもしれません。
高度人材を求める国や地域は、低い法人税、そして企業が申請すれば3日程度で進出が認められる制度など、外国企業を誘致しやすい仕組みを作っています。優秀な高度人材が活躍し、研究開発で成果を上げている企業が来やすい環境整備をしているわけです。シンガポールは、優秀な人材が安心して働ける子息の教育環境も用意しています。これらの人材を海外から呼び寄せるためには、お金や研究施設を充実させるだけでは十分ではないのです。高度人材を海外から呼び寄せるためには、子弟の教育環境が大切になります。バカロレアは、学問だけでは評価しません。世界のあらゆる課題に目の行く人材を求めます。バカロレアは、教育だけではなく、政治も経済も、そして文化への広い視野を持たなければならいという思想のようです。感受性と知性の高い教師を集め、世界の子ども達の能力を触発する教育を実践しているようです。地方おいても、世界の教育レベルに匹敵する教育の実践をしてほしいものです。実践の成果が現れてくれば、世界の高度人材が日本の地方にも根を下ろすかもしれません。
6,自治体の努力と反転攻勢
国の借金が1000兆円で、地方自治体の借金が200兆円となっています。その自治体によっては、その借金が返せなくなっている市町村もあります。相模原市は、人口が72.5万人の政令指定都市になります。この相模原市は、財政の急速な悪化に見舞われていました。そのために、持続可能な財政を実現するための改革プランが練られていたのです。まず、既存の公共施設を徹底的に見直をします。27施設について、廃止や民間移管を検討しました。1991年開設で、五輪選手らを輩出した市営アイススケート場も、2027年3月末に廃止する方針を立てました。スケート場の維持費に年間1億5000万円、改修には10億円規模の支出が必要になります。その費用の工面が、できないのです。さらに、相模原市は、各種団体への補助金も66件を見直してきました。敬老祝金の廃止、はり・きゅう・マッサージ施術料の助成の縮小や見直しなども行っています。
経常収支比率は、100%に近いほど独自政策や臨時的な支出に回せる余力がないことを示しています。相模原市は、2019年度では経常収支比率が99.8%になっていました。2019年度以前において、新しい施策に使えるお金がほとんどなく財政が硬直化していたわけです。でも、改革プランを実行する中で、財政調整基金は2022年度末で208億円と急回復し、経常収支比率も96.9%まで改善したのです。この財政調整基金は、借金の反対の貯金にあたるものです。相模原市の財政調整基金の残高は、2019年度末で68億円とピーク時のほぼ半分に減っていました。68億円が、208億円に急回復したということになります。
相模原市は、2020年度当初予算で新規事業を原則「凍結」しました。2021年度もほとんど新規事業を実施しない緊縮型の予算編成をおこなったのです。財政危機を前に、徹底した歳出の見直しを進めてきたわけです。もっとも、歳出の削減だけでは、市民へのサービスは低下します。限られた財政の中で、民間の力を利用しつつ街の魅力を高める施策を打ち出すことも行いました。歳出を見直す一方で、将来の人口増と税源確保として街づくり事業に力を入れています。相模原市は、市民の意見公募を経て、2024年3月の新しいプランの策定を目指しています。その一つに、民間の活力を用いる方法があるようです。市長が「市産業の起爆剤にしたい」と期待を寄せるのが、整備推進事業になるようです。さらに、相談支援窓口の拡充や福祉人材の確保を実施し、給付型から支援環境整備に重点を移す構想もあります。
7,自治体の奇手
現在のデジタル教育環境は、良い人材を育てる土壌をつくりつつあります。たとえば、試験の採点などには、AIの関与がすでに行われるようになりました。さらに進んだ採用のケースが、外国では見られます。ハーバー大学でコンピュターを教えるデビット・マラン教授は、AIを「講師」に採用しています。個々の生徒に応じて問題の難易度を変える生成AIを、「講師」にしているのです。この講師のおかげで、個々のレベルに合わせた学習ができ、学生が積極的になる効果があったと言います。このAIの「講師」を、半年で7万人以上の学生が使いました。そして、AIの「講師」は、数百万件の質問に答えたのです。突出した才能をもつ子どもは、「ギフテッド」と言われています。デビット・マラン教授には、狙いがあったようです。ギフテッドといった集団教育になじめない子どもに、適切な学習の機会を与える狙いがあったのです。初歩的な問いへの回答をAIに任せ、ギフテッドといった学生と教授が、深い思考を要する問題に集中する狙いというわけです。今後は、世界中の教育で生成AIが導入されてきます。その生成AIを目的達成のために、上手に使っていく流れが各国に現れています。
学校の授業にもAIの導入が模索され始めました。子どもの才能を伸ばす仕組みが、多様なデジタル技術の出現により可能になりつつあります。企業の参入も、活発になってきました。その企業の一つに、コニカミノルタがあります。コニカミノルタは、小中学校の児童や生徒の学習を支援する生成AIシステムを開発しました。学習指導要領のデータなどを活用し、生徒一人ひとりのレベルにあわせて支援することが可能になります。コニカは、AIが生徒の学力データから苦手分野を見つける機能などを開発しています。また、自治体ごとに行う学力調査のデータを活用し、生徒一人ひとりのレベルにあわせた支援を考えています。コニカ方式は、学校全体や地域全体の学力調査の結果や日々の学習の取り組み状況を分析することも可能のようです。学習の取り組み状況を分析し、一人ひとりに合ったメッセージをタブレットで表示します。生徒の学習状況を教師にも報告し、学校での授業の改善などに生かしてもらう支援の仕組みです。自治体や学校の要望に応じて、生徒が親しみやすく対話できるような仕組みを模索しています。
デジタル教育の下地は、徐々にできつつあります。このシステムを各市町村に取り入れる場合、いくつかの工夫が求められます。たとえば、下條村は、プールの総事業費1億4千万円でしたが、わずか42万円の負担でプールを作ったのです。政府の補正予算は、年末に急きょ決まることがあります。年度末ギリギリに急に提示されても、即座に対応できる自治体はあまり多くないのです。仕事の早い下條村職員は、この交付税の書類への対応が容易にできました。国からの補助金は、「地域の元気臨時交付金」などで1億円が交付されました。残りの4000万円は、本予算で国が交付税で補填する条件になったわけです。結果として、村の持ち出したお金が42万円のみだったのです。この発想を、飛躍させます。いずれ政府も、デジタル教育に本格的に乗り出します。その場合、先行モデル校を作ることが一般的です。このモデル校には、補助や支援が優遇されるものです。ITのスキルを持つ人材がいれば、この制度を優先的に獲得することができます。自主財源のある市町村であれば、ITの専門家を教師として確保し、事前に備えることも選択肢になります。この補助の目的だけでなく、日本のデジタル教育は遅れています。その理由は、教員にITの専門家が少ないことです。この弱点を補っておくことは、非常に大切なことになります。
おわりに
下條村は、200万円以下の道路工事などは、村人がやることにしました。村は道路工事の資材を提供し、村人は労力を無償で提供するという仕組みです。節約できた予算は、保育費や医療費の充実にまわされました。保育所にいつでも安く入所できて、医療費が安いという環境は、若い人々を呼び寄せました。結果として、過疎の村に若い住民が、やってくるという現象を生み出したわけです。次の課題は、やってきた若い家族を、より高みに育てることになります。教育の充実が、居住者からの要望になります。市町村は、その要望に応える体制も整えなければなりません。一方で、地方自治体は人件費を節約するために、臨時職員を採用することが多くなりました。この弊害が、出てきています。非正規雇用を増やすと、行政の運営の中で得た経験やノウハウが役所に蓄積しにくくなります。町民との対話ややり取りで獲得した経験やノウハウは、見えない大切な財産です。非正規雇用の増員によって、人件費はカットされました。でも、サービスが悪化し、運営のノウハウの蓄積が粗雑になれば、住民の損失が増えることになります。住民は、利益に応じた税負担をすることが原則です。税金の使い道は、地域社会に還元する仕組みが求められます。地域の病院や学校などへ、資金協力をする社会貢献も時には必要になります。地域が住民の小さな力で、豊かになればハッピーです。それには、リーダーの指導力も必要になるようです。