食料確保とフードロス対策を同時に行う知恵  アイデア広場 その1703

 温暖化と人口増加の影響で、2030年には世界需要に対し水資源は40%が不足するという予測があります。アメリカの大穀倉地帯でも、危機が追っています。この大穀倉地帯は、その大地の下にあるオガララ帯水層という化石水を使って農作物の栽培を行っています。このオガララ帯水層の水位が、近年急速に低下しているのです。このまま水位の低下が続けば、穀倉地帯が砂漠化し、穀物の収穫は低下していきます。世界最大の大豆とトウモロコシの産地が、なくなれば世界の穀物状況は一気に悪化します。また、14億人の人口を支える中国の揚子江と黄河の水源は、ヒマラヤにあります。今現在、ヒマラヤの氷河がどんどん溶け出しています。中国にはこれ以上発展するための水は残っておらず、水の限度が中国農業の限度になるかもしれないのです。このような状況の中で、「食の歴史」の作者であるジャック・アタリというフランス人が、面白いことを書いていました。現在の農業を行えば、70億人程度の人口を支えることができるというのです。もし、フランス人と同じやや上質な食生活をする場合は、41億人の人々の生活を保障するだけになります。現在の世界の人口は、78億人です。これからも、世界の人口は増えていきます。食料不足の問題を、「どのように解決すればよいのか」、これが今回のテーマになります。

 食糧問題の解決策は、マクロとミクロの視点があるようです。まず、ミクロの視点から、この課題に入ってみます。まだ食べられるのに、捨てられてしまう食品を「「フードロス」と言います。環境省の調査では、2023年の日本でのフードロスが約464万トンと推定されています。この約464万トンと推定されうち、家庭でのフードロスが約半分を占めています。コメの高騰が話題になる中、他の食品価格の高騰でも食費の出費が増えている家庭も多いようです。フードロスの削減を心がければ、食費負担も軽減できるという方もいます。フードロスの原因は「過剰除去」「食べ残し」「直接廃棄」の3つが挙げられる。過剰除去とは、野菜の皮のむきすぎなどで食べられる部分まで廃棄してしまうことです。ダイコンやニンジン、カブなどの野菜の皮は基本的に食べられる食材になります。少し工夫すれば、食べられるものです。つい習慣で、皮をむいてしまいがちですが、料理ごとに判断すれば、廃棄量を減らせます。食べ残しの対策も、工夫次第でできるようになります。「レシピ記載の人数と分量を守り、食べ切れる量を作れば減らすことが可能いなります。最後の直接廃棄は、使い切れず賞味期限が切れた食材や食べ残した料理を捨ててしまうことが多いです。この直接廃棄の対策は、賞味期限の確認になります。

 フードロス削減は、身近なことから始められます。料理の工夫やデジタル機器を利用することで、フードロスを削減することが可能になってきています。ニンジンや大根の皮は、カレーの具材にすることができます。捨てていた食材をカレーや鍋物で、具沢山の汁物などの料理に使うことも可能です。また、金曜日に残っている食材を食べ切り、冷蔵庫内をリセトするという取り組みも楽しいものです。食材を使い切り、おいしく無駄なく食べ切ることができ、それが節約にもつながる一石二鳥の効果が出ます。フードロス対策には、食材の買いすぎにも気をつけたいものです。冷蔵庫内を確認してから買い物をする習慣をつけると良いのです。でも、これが、なかなかできないのが普通の人間になります。最近では、こうした凡人を人工知能(AI)がサポートしてくれる冷蔵庫も登易してきています。冷蔵庫内各室の画像を撮影でき、野菜室の画像からは在庫食材のリストが自動で作成される優れものです。パナソニックのAI搭載冷蔵庫は、外出先からでもスマホアプリで冷蔵庫内を確認できます。さらに、冷蔵庫に残った食材を、優先的に使うレシピや献立の提案もしてくれるのです。家庭でのフードロス削減に、進化した冷蔵庫を活用してみるのも一つの対策になります。食べ物を大切にし、家計にも環境にもやさしい食生活を行っていきたいものです。

 あるシニアは、フードロス削減のスキルを身に付けました。食材は冷凍しても、栄養価の変化は少ないのです。一番調理に手間がかかるのは、野菜になります。ひと手間加えてフリーザーバッグに入れた冷凍野菜を、10種類ほど常備しておきます。常時、10種類程度の野菜を冷凍保存しておき、調理に1人分だけ使う料理法です。安売りの時に、まとめて買い物をして、小分けして冷凍保存しておくのです。自分の健康のため、未来のために、そして社会のために、食材に向き合い、ムダなく使い切る料理を心がけるわけです。シニアが余った食材で、その食材の長所と短所うまく組み合わせることによって、美味しい料理を作ることは、さらに多くのメリットをもたらします。臨機応変に食材を組み合わせて、上手に段取りすることは、シニア世代にとって、格好の脳のトレーニングになります。脳の活性化は、加齢を抑制します。蛇足ですが、近年、食物繊維、腸内細菌、そして短鎖脂肪酸の関連が注目されるようになりました。短鎖脂肪酸は脂肪の蓄積を抑え、消費を増やすという両面から、肥満を防ぐ働きをします。この頼もしい短鎖脂肪酸は、食べ物をバクテロイデスなどの腸内細菌が分解して作られます。バクテロイデスなどの短鎖脂肪酸を作る細菌たちは、食物繊維をエサとして生きています。この細菌に好まれる食材は、海藻、キノコ、野菜、豆類、こんにゃく、雑穀、玄米などになります。野菜の残渣をカレーなどで食べることは、節約という面だけでなく、健康の向上という面からも評価されるようになってきています。

 もう少し、シニアの知恵を探ってみます。彼女は、冷蔵庫内をゾーニングして見やすくしています。ゾーニングして食材を見つけやすくして、賞味期限切れや食べ忘れを防ぐ工夫になります。冷蔵室には、下段には作り置きの料理など頻繁に出し入れするものを置いています。上段には、ストック品や賞味期限が長いものを置いて分かりやすくもしています。冷凍庫の使い方にも、工夫が必要です。冷凍庫内は縦置きで食品を並べると、下に潜り込んで見失うことが減ります。作りすぎた料理は冷凍保存することが、セオリーになります。でも、このホームフリージングには冷凍焼けに注意が必要です。冷凍焼けとは、食品から水分が抜けて乾燥すること、劣化すること。おいしくなくなることなどがでてきます。また、保存袋が霜で曇って中身が分かりづらくなり、使い忘れの原因にもなります。これに対する工夫は、空気を抜き、ラップや保存袋で食品をきっちりと包んで冷凍することになりなります。常温の食材を袋に入れてから冷凍すると、温度差で結露結して霜がついてしまうことがあります。これを防ぐには、冷凍したいおかずはトレーなどに並べ冷凍庫で凍らせてからジッパー付き保存袋に入れると良いのです。ジッパー付き保存袋に入れると、食品同士もくっつかず、使いやすくなります。ミクロの視点からは、いろいろな工夫が次から次と出てくるようです。

 余談ですが、経済的に恵まれないケースでも、バランスの取れた食事ができるスキルを国民全体が身に付けたいものです。バランスの良い食事ができれば、加齢が抑制され、健康寿命が延びていきます。そうすれば、40兆円から50兆円にもなろうとする医療費や介護費が抑制されます。国も地方自治体も、ハッピーになれます。住民の健康は、政府と自治体だけでなく、民間企業の力も利用する発想がでてきます。家電製品の利用が、その候補の一つになります。人工知能(AI)とIoTを掛け合わせた「AIoT家電」が、2016年にシャープから発売されました。この電気調理鍋「ホットクック」は、400以上のレシピを用意するユニークなものです。このホットクックの利用者は、好みのレシピを本体にダウンロードしてから、自動調理する仕組みになります。調理データの分析から、その家庭の消費トレンドが分かる優れものです。利用者の年齢や性別に加え、料理の内容や頻度などの使用履歴がクラウドに蓄積されます。従来のウェブマーケティングでは、家庭内の消費の姿までは捕捉できなかったのです。個々の家庭内の料理傾向や嗜好が分かれば、新しい視界が開けてきます。「スーパーの特売情報があります。キャベツを使ってメンチカツはどうですか」。という問いかけも可能になります。AIが、利用者の好みの食材や家族構成などに合わせてメニューを提案する光景が浮かびます。美味しさだけではなく、健康を維持増進することに繋がるかもしれません。

 最後は、タンパク質の確保になります。今日、西側諸国ではタンパク質の摂取量の比率は、動物性が3分の2、植物性が3分の1になります。100億の人口を支えることを想定した場合には、動物性を5分の1にして、植物性が5分の4になるよう変えていくようになります。とはいえ、動物性たんぱく質も必要です。そこで登場する候補が、昆虫食になります。タイでは、すでにコオロギの養殖が進んでいます。昆虫類は、高タンパクで低脂肪です。現代人の肥満対策には、格好の食物になります。昆虫の飼育は、牛や豚などと比較して、二酸化炭素の排出量が非常に少ないのです。近年、注目を集めている植物工場の技術は、昆虫大量飼育に応用できると期待されています。昆虫は、これまで食用として品種改良されたことがありませんでした。でも、100億の人口を支え、なおかつ美味しさを要求される食材となれば、品種改良の必要を迫られることになります。昆虫食の栄養、生産性、未利用資源の活用といった研究分野は、発展途上の段階にあります。ある意味で、研究次第では、可能性が数多くあるということでもあります。もっとも、すでにコオロギのタンパク質は、アメリカやヨーロッパなどのお菓子にはわからないうちに使われているという事実もあります。植物由来の人工肉や昆虫のタンパク質、そしてその調理方法などが進化すれば、地球の人口増加に対して、マクロとミクロの視点から対処できるかもしれません。

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