先日、町内会の人たちが集まり、いくつかの話題についてなんとなく語り合いました。防災の話では、警戒レベルが上がり、避難の指示が出た時には、速めの移動が大切だなどの話がでました。避難場所は、小学校などの公共施設が、指定場所になっています。聞いているとなるほどと思うのですが、小学校の体育館に何人の人が収容できるのだろうかと、ふと疑問がでてきます。子ども達と老若男女が避難して、大丈夫なのだろうかと思ってしまうわけです。さらに、自助の精神で、自分のことは自分で守ることも必要だという人もいます。要は、日ごろから、自分や家族の進退を考え、準備してくことに落ち着くわけです。もう一つの話題は、カラスの被害です。町内の方が網の中に出したゴミを、カラスは巧妙に食い散らかします。それをゴミ収集車の方が来るまでに、何度か片付ける作業が町内会の役員の仕事になっています。ある班の方は、7度も食い荒らされて、7度の後片付けをする有様です。ある意味で、カラスとの戦争という状況です。
町内では、このカラスとの戦争に終止符を打ちたいわけです。カラスの被害が、至る所で起きています。その被害を防ぐために、カラスの撃退方法が数多く開発されてきました。でも、一時的に効果があっても、その効果が続いているというのは少ないようです。効果が続かかない理由は、カラスの汎化能力にあります。般化とは、初めに条件づけされた刺激や条件以外の類似した別の刺激や条件においても、反応や学習効果を生じることです。要するに、似たような刺激に対しては慣れて、最初の効果が薄れることになります。般化を起こさせないために、カラスの反応や群れの動きを観察し、別の刺激に変える必要があるわけです。もちろん、手っ取り早く銃で、追い払うことも考えられます。また、網の中に入られないようにすれば、良いわけです。観察の結果、網の左右に90㍑のビニール袋に、草を入れてブロックすると、カラスの侵入が阻止され、被害が起きないことが分かりました。問題は、この草を入れたビニール袋をいつも調達できるかということになりました。
話題は、次々に出てきます。民生委員の方からは、町内に高齢者の方が増えていることが話題として出てきました。長生きできることは、嬉しいことです。でも、身体の老化やメンタル面の衰えが、問題になると言うわけです。できるだけ、近所の方とコミュニケーションを取り、歩く時間を増やしてほしいものだという要望も出てきました。確かに、ウオーキングは、軽い有酸素運動になります。このウオーキングは、末梢で循環する血液の量が増加し、疾患予防の効果があります。血液には、各器官に酸素や各種栄養素を運び供給する働きがあります。ウオーキングでは、1日7000~8000歩の歩行が有効とされています。真面目な方は、1日7000~8000歩を毎日、確実に歩かなければならないと考えがちです。でも、この1日7000~8000歩は、1週間単位で目標を達成すればよいのです。暑い日や雨天は歩数が少なくても、別の日で調整すれば支障はありません。時間がある時に、家庭の階段を上り下りするなど、歩ける場所や時間時を利用して、歩数を稼いでおくという発想も必要になります。要は、シニアの運動量が減っていること、近所のお付き合いが減っていることに、民生委員のかたの心配があるようです。
次は、子どもやシニアの安全の問題になります。地域での犯罪が起きないように、防犯意識を持つことなども話されました。犯罪の起きる場所は、見えないところで多く発生しています。窃盗などは、見えないところで起きています。犯罪を減らすためには、地域の防止能力を高めることが求められます。自転車に2重ロックが習慣化している地域では、自転車盗難が少ないことが分かっています。2重ロックにすると、カギを外す時間が延びます。この延びる時間を犯人は嫌うのです。盗む行為を見られる時間が増えることを避けるわけです。彼らは、監視カメラや人の目に付く場所での犯行は避ける傾向があります。「子ども見守り隊」活動の盛んな地域では、子どもを巻き込んだ犯罪が少ないことが分かっています。これも、見られる機会が増えるという理由からです。また、汚い街は犯罪が多く、きれいな街は犯罪が少ないとされています。手入れをされた花壇を見た方は、人の手がかかっていることが分かります。人の目が、花壇にいつも注がれていると考えるわけです。人の目が、犯罪を抑止する効果をもたらします。草が刈れている道路には、人手がかかっています。人が常にいる可能性があるところでは、犯罪が抑止されるとも言えます。
話は、まだまだ出てきます。「○○さんは元気だけど、何か秘訣があるのかな?」などは、興味を引きます。この関心事は、健康寿命につながります。シニアの求めるものに、健康寿命を伸ばすことがあります。この健康寿命を伸ばす方法も、明らかになってきています。シニアの社会参加が、健康寿命を延ばすことを明らかにする研究が増えてきているのです。健康寿命には、食事・運動・社会参加の3つの要素が重要になります。この3つを考慮しない場合、その高齢者の死亡率を100とします。食事・運動に気をつけて、よい習慣を持っている高齢者の死亡率は、68に減ります。この食事と運動に社会参加を加えると、死亡率は49にまで低下するのです。この死亡率低下の数字は、社会参加の意義がいかに高いかを示す数字になります。社会参加という行為は、人から認められているという強い肯定感をもたらすことが分かってきました。町内会の行事に出て、みんなとワイワイすることで、健康寿命が延びると言うわけです。
余談ですが、カラス対策 認知症対策 治安対策 健康寿命対策を総合的に解決すにはどうすれば良いのでしょうか。このヒントが、デュアルタスクに見られます。デュアルタスクは、同時に、2つのことをしながら能力を維持増進する手法です。一つの事例では、水泳をしながら計算をすると、脳と身体の老化が防止できたというものがあります。学習にしても運動にしても、思考を働かせたから向上したということになるのです。デュアルタスクは、子ども達の身体と脳の発育にも有効のようです。ある企業は、これを仕事とアイデアの生産の仕組みにまで進化させた事例もあります。1日中椅子に座り続けなくても、仕事ができるような工夫をする企業が生まれています。電話をしているときも、椅子にじっと座っていることが最善ではないと考えました。電話をしているときも、立ち上がったり、歩いたりしながら、話をしても良いとしたのです。電話をよくする人は、ワイヤレスのヘッドセットを使って歩きながら通話をしている光景があります。また、ミーティングで行き詰まったりしたとき、少しの間ミーティングを離れて、歩きに出ることを許容する企業も出てきました。この企業では、一人でミーティングを離れることを許容する一方、複数人での離脱も奨励しているのです。同僚の話に耳を傾けるのに最適な場と時間は、一緒にウオーキングをしている時だというのです。この企業では、人と交流をする場合、ウオーキングなどの運動と組み合わると良い発想やアイデアの生産が高まるということを経験的に理解しているようです。私たちの町会では、この課題に挑戦したシニアがいました。
シニアの彼は、見守り隊のボランティア活動をしています。月曜日から金曜日まで、朝だけの見守り活動をしています。月曜日は、子ども達が疲れたような顔をしていると、遊びすぎかなどの想像をするそうです。元気な子を見ると、元気をもらえると喜んでいました。金曜日は、多くの子ども達が笑顔で学校に向かうとのことです。彼の見守りの場所の周りには、草が生い茂っています。子ども達が来る前や通過した後に、その草を刈って暇つぶしをしています。2~3日して草が乾いたころ、2つの90㍑のビニール袋に草を入れて、カラス除けのブロックにしていました。子どもとあいさつを交わし、様子を観察することが、彼の認知の低下を防いでいるようです。むしろ、好奇心を旺盛にして、脳の活動を活発にしているようでもあります。治安対策としては、見守り隊そのものがその目的でもあり、実践でもあります。そして、草刈りなどの美化活動も、地域の防犯に貢献していることになります。健康寿命に関しては、これらのことを総合的に行っていれば、伸びていくことは間違いないようです。興味深いことは、カラス対策 認知症対策 治安対策 健康寿命対策の4つを、毎日朝の30分間で行っていることです。このような活動も、ウェルビーイングの一つのモデルになるかもしれません。