人手不足が年々深刻になる産業界では、大卒でも高卒でも、バブルの時期以来の売り手市場になっています。でも、問題も起きています。離職の高さが問題になっているのです。就職して3年以内の高卒者の離職率は、4割前後で推移しています。大卒でも、3年後には、3割の方が離職しているのです。今回は、働く個人と企業の側から、離職をできるだけ少なくし、働きながら能力を高めていく仕組みを考えてみました。以前は、新入社員が使いものになるかの判断は、入社してから5年から10年のスパンの余裕があったようです。現在は、そのスパンが、かなり短くなり2~3年になっているようです。新入社員は、会社の仕事を覚え、その期待に応える姿勢を持っています。具体的には、仕事の知識やスキルを増やし、その分野での生産性を上げる人材になることになります。ここでの問題は、スムーズに知識やスキルが身に付かないことのようです。知識やスキルが身につかないということは、才能の問題ではなく自分の能力特性の分析不足によることが一つの原因になります。出来るとか、出来ないとかの差は才能や生まれではなく、そのノウハウを見つけ実行するかの差になります。コミュニケーション能力を培っていれば、自分のまわりにいるもの知りや物覚えのいい人にやり方を教えてもらうこととも可能です。自分で知識やスキル覚え、周りから知識やスキルを獲得することは、いわゆる引き出しの多い人材と評価されます。これからの時代は、知識やスキルを様々な形で加工した引き出しの多い人間が評価されます。
労働の種類は、ブルーカラーとホワイトカラーの2つに大別されるのが一般的でした。ブルーカラーは、労働の現場で主に体力が求められる「肉体労働」ともいえます。一方、ホワイトカラーは、「知識労働」や「頭脳労働」とも呼ばれており、肉体労動とは異なる労働価値がるとされてきました。ホワイトカラーは、高度な知識や思考、判断力が求められるものとされ、高度経済成長期を支えてきとも言われています。ある見方らかすると、この2つの労働とは異なる価値を持つ第三の労働があります。それは、「感情労働」というものです。感情労働は、サービス業をはじめ、顧客と直に接する仕事を担い、笑顔で応対することが求められます。感情労働は、不快感を押し殺したりするなど、感情をコントロールすることを求められるわけです。改めて、就職後3年以内の高卒の離職率を産業別にみると、「宿泊業・飲食サービス業」が63.2%と突出しています。ここからわかることは、感情労働における離職率が高いのです。この職種において、3年後の大学生の内離職率は、49.7%と多い実情があります。この感情労働における離職率を低下させる仕組みができれば、日本の高卒や大卒の離職率の問題を、少し解決できるかもしれません。
1970~80年代には、多くの経済学者や教育学者が日本を訪れました。多くの専門家が日本の教育を視察したのは、日本の暗記やテスト教育の姿でした。一定の素質しかない人たちの能力を、一定の水準に上げる点では日本の教育が優れていることが評価されていたのです。戦後の日本の強みは、義務教育を終えていれば、オートメ化でもロボット化でも適応できた点でした。当時の教育内容やそれを成就しようとする人々には、一定のパターンがありました。それは、受験や試験で100点を取る必要はなく、60~70%の合格ラインを狙うというものでした。多くの資格試験や大学の試験問題は、60~70%で合格ラインに達します。速さを褒められる時代は、速さが要求される仕事が大部分で、満点より合格点を狙う流れがありました。教材は、なるべくやさしいわかりやすい入門書を選ぶことが良い。やさしい問題に難問を解く鍵が隠されており、やさしい問題をする中で難問に対処できるという考えです。難問を飛ばして、やさしい問題で自信をつけた方が良いという風潮です。この学習パターンにより、日本の教育水準は一定のレベル確保し、近代産業にキャッチアップできたわけです。良い業績は、学生なら試験結果で、会社員なら生産性や営業実績などになるかもしれません。
時代は進み多様な働き方が、多様な姿になってきました。たとえば、多くの企業でテレワークやワケーション等の柔軟な雇用形態を導入するようになってきました。このような雇用形態の場合には、メリットとデメリットが出てきます。このような仕事は、自ら選択した環境で仕事し取り組み、いつもより仕事に集中できます。上司や同僚の目というプレッシャーから解放されます。一方、多様な働き方の変化に共通するのは自由度とともに「成果への責任」の高まりがあります。成果を上げ、仕事を遂行するには、知識やスキルなどの能力が必要になります。テレワークやワケーションなどは、気楽な仕事と思われますが、一定レベルの以上の知識とスキル、そして問題解決能力がなければ、なかなか成果を上げることはできないものです。あるレベル以上の知識がなければ、問題解決のために知識の組み合わせを生み出すことはできません。温泉につかっていれば、アイデアが出てくるわけではないのです。問題解決の情報をできるだけ収集し、徹底的に考えます。考えて、試行錯誤して、葛藤している時にたまたま温泉に入っている時に、アルキメデスのように解決策が出てくることもあるのです。私たちは、温泉の楽しみの以前に、葛藤の経験を積んでおくことを理解しておくべきです。蛇足ですが、新入社員は、仕事の知識を増やし業界の知識を増やすことです。たとえば、日経ビジネス、エコノミスト、ダイヤモンド、東洋経済をあわせて100万部が、発行されています。これらの経済週刊誌には、一定の情報があります。日本のサラリーマン5000万人のうちこれらのビジネス雑誌を読む人は100万人になります。日常的にこれらの雑誌を読んでいれば、一定の知識の蓄積は可能です。でも、4900万人のサラリーマンは、この情報収集の蓄積がありません。やる新入社員とやらない新入社員の中には、知識の差が出てきます。
おさらいになりますが、効率的な知識獲得のお話しになります。情報をインプットする時、脳の状態だけでなく精神や身体の状態が大切な要素になります。ストレスが過剰にあれば、注意力も低下し、脳の働きも悪くなり記憶力が落ちます。情報の入力が、難しくなるわけです。1日のうちで、自分が一番疲れる時間と一番さえる時間を知りそれに合わせて、学習や仕事を行うことが効率的です。もっとも、いつでも、良い状態を維持することは難しいものです。予防接種で免疫を作り、状態の悪化を軽減することは可能です。ストレス状態がある時の学習方法や仕事のやり方を工夫することが必要になります。要は、悪い状態の時の勉強法、仕事の取組み方をシミュレーションすることも必要ということのようです。一般に、勉強するためには頭を働かせるのではなく、身体が動いてしまうようになればしめたものです。多くの本を乱読し、広い知識を得ながら状況を把握する能力が身につきます。雑多な知識を、特定の目的のために関連性のある文脈に当てはめて応用することが脳の役目になります。蓄積した知識を活かして、幅広い推論ができて多様な分野の問題解決ができることが望ましいわけです。人は脳の素質は同じでも、育ったときの環境や人間関係で能力差や仕事の差は生まれます。
余談ですが、ある面で、モチベーションの高い方は、もしくは維持できる方は、生産性を上げることができます。モチベーションは、目標に向けて行動を方向づけ、活性化、そしてそれらを維持する心理的プロセスになります。さらに、このモチベーションという状態は、「方向性」、「強度」、「持続性」という3つの要素から構成されるといわれています。方向性は、目標を、なぜ、どのように成し遂げるのかを明確にしたものです。強度は、目標の実現に向けた努力や意識の高さを指します。持続性は、目標を達成するまでの粘り強さや継続性を意味します。人は自律的に仕事に取り組むことで、多くのことを学習し、成長が促されるわけです。ただ、人間は複雑な動物です。人には、欲があるのです。自らの能力を高めたい欲求です。この有能さへの欲求は、他者から認められたい、周囲に効果的に影響を及ぼしたいという欲求になります。有能さのために必要な知識やスキルを学び、成長するための原動力を求めます。一方で、自分一人では不安なのです。人は人付き合いを通してさまざまなことを学び能力を高めていきます。すべての知識や勉強法は孤独から生まれるのではなく対人関係の中から成立してくることも事実なのです。テレワークやワケーションが、新しい働き方と認知されてきました。でも、この働き方だけでは、モチベーションが維持できないという人も多いのです。他者との良好な関係がモチベーションにも大きく影響することが分かっています。通勤して上司や同僚と同じ場所で働くこと自体が、モチベーションを高めることも分かっています。人々は強く意識しなくても、職場に行くことで気持ちを家庭から仕事に切り替えているのです。働く個人は、組織や職場という関係性のなかで存在するというわけです。
最後になりますが、学校や職場では、生徒や新入社員には変化の激しい社会で学ぶ力とか学び続ける力を付けることが求められます。その上で、企業の社員教育や技術伝達などをよく観察し、生徒の能力が生かせる会社を推薦していくことも必要になります。企業も高卒の従業員を優秀な人材に育てる育成方法を開発していくことになります。社員個々人の能力をいかに伸ばしていくかを試行錯誤することになります。もちろん、新入社員自身も就職した企業風土に早く慣れ、企業の生産性向上のために知識増やしとスキルを高めていくことが望まれます。この2つが適度に融合した時、離職率は少し減るかもしれません。