日本人の出生数が、この5年で2割以上も減り、2024年は過去最少の68万6千人になりました。この傾向は、さらに危機的になりつつあります。少子化に危機感を持つ人たちは、その原因をいろいろ考えてきました。その一つに、出生率の低下はこれまで、晩婚化や結婚しない人の増加が主な原因という説があります。1990年代からは、結婚後の出生ペースの低下もみられるようになりました。その中で特徴的な事は、結婚しているカップルの子どもの数も減っていることです。晩婚化や結婚しないことに、少子化の原因があると言う説に疑問符が付くようになりました。最近は、若者が結婚や子育てをためらう大きな理由は、経済的な不安定さにあるという説が有力です。政治も、このことに真剣に向き合うようになっています。家庭との両立を難しくする長時間労働を見直す施策としては、働き方改革があります。女性に偏る家事や育児負担の軽減などをはかることは、これから徐々に解決に向かうことを願っています。一方で、政府の政策も必要ですが、個々人の楽しみの延長線上に、婚姻や子育てがあるという対策も必要になるようです。今回は、個々人の対策について考えてみました。
生活に余裕がなければ、子どもを多く育てるのは難しいという当たり前のことが分かります。所得の問題だけではなく、生活時間に余裕がなければ子どもを多く育てるのは難しいわけです。OECDのデータベースで、①有償労働②無償労働③個人のケア④余暇の比較があります。日本人は、子どものケアや余暇などに充てる時間が主要7カ国で最も少ない結果になっています。ちなみに、有償労働は、仕事や学校、通勤通学になり、無償労働は、家事や子どものケアになります。さらに、個人のケアは睡眠や食事、そして休息に、余暇は遊びやスポーツに費やすことになります。人々は、1年間の総時間が、24時間×365日の計算で8760時間を平等に持っています。その中で、労働時間が8時間、生理的時間が8時間、余暇が8時間という3区分があります。その区分法によると、1年間で働く労働時間は、週休2日で2080時間になります。フランスには、ここに5週間の有給休暇(40時間)、20日以上の時短代休、そして年間2920時間の余暇時間が生まれます。この時間を考え、そして工夫して使っている女性が、フランスの出生率を上げている姿があります。日本も、休暇制度が整い、子どもが安心して成長できる環境が整い、女性自身がそのキャリアを高めることのできる仕組みを整えていきたいものです。男性も女性も生産性を上げることができれば、所得は向上します。所得が向上し豊かになれば、消費税の減税や2万円の給付金問題は、自然と解消していくことになります。
子どもを増やすには、結婚する男女を増やし、子育てが楽しいという状況を作れば良いことになります。そのためにまず必要なことは、婚活の相手を知ることになります。相手を知るアプリも、いくつかできているようです。2012年にできたデートアプリのティンダー(Tinder)は、世界の多くの人々が利用しています。ティンダーは24カ国語に対応し、1日に2,600万以上のユーザーが使用しているのです。ティンダーのアプリは、スマホにダウンロードできます。スマホにダウンロードされると、加速度センサーやジャイロセンサー、照度センサー、GPSなど作動し、逐次発信してデータが集められます。集めた情報を、AIが分析します。この分析から、婚活をしている人達の行動パターンが分かるようになります。登録した婚活対象者の場所、移動、照明などをビックデータとして蓄積し、A1が分析するわけです。GPSから自宅にいるのか、会社にいるのか、ナイトクラブにいたのかがわかります。これらの行動パターンと事前に登録した履歴を比較しながら、より正確な人物評価が可能になるというわけです。婚活の対象者を、より詳しく知るアプリでもあるわけです。もっとも、アプリだけでは、お互いの相性などは分からない面もあります。
男女の出会いを円滑にいく仕組みをつくることが、アプリの限界を超えた対策の1つになります。身近に、男女が接近することで、この相性を確認することができることもあるようです。アジア象のオスとメスは、通常は別々に暮らしています。メスが妊娠可能な時期になると、フェロモンを含んだ尿をまき散らします。オスはその臭いを慕って、やってきます。匂いが空気中に漂って、オスの鼻の粘膜を刺激するのです。匂いに対して、非常に敏感なので、生殖活動が活発になるわけです。このような動物の仕組みが、人間の男女にも見られるようです。この仕組みのヒントが、ある若い男女の匂いに関する実験にあります。この実験は、若い男女をグループ別にレクレーション活動してもらうことでした。このレクレーション活動後に、着ていたTシャツの匂いを嗅いでもらったのです。女子学生の中には人によって、好ましい匂いと好ましくない匂いがあることが分かりました。彼女たちは、自分と異なる遺伝子をもつ男子学生の匂いを好ましいと答えたのです。異なる遺伝子とは、臓器移植をするときに免疫拒否反応が起こる程度のものです。これは、遺伝的に遠い遺伝子ということもできます。彼女達は、自分と同じような遺伝子をもつ男子学生の匂いを好まなかったわけです。男女の出会いには、良いとか悪いとかの感情、好きとか嫌いの感情、引き付けるとか離れるという行動が起きることがあるわけです。引き付けあう男女を近くに集めることも、一つの工夫になります。
所得が向上すれば、豊かな生活が可能になります。それでは、所得の低い人は、不幸なのでしょうか。低い所得のひとでも、楽しく暮らしている人は多いのです。その人たちの特徴は、お金や時間、そして状況に応じた生活をしていることです。たとえば、ベースオブピラミッド(BOP)の人々は、58億人といわれています。中間層が20億人、富裕層が2.5億人という構成です。BOPの人々に、10円のモノを買ってもらえれば、580億円の販売が可能になります。蛇足ですが、味の素では、アフリカのBOPを対象に10円に小分けした味の素を販売しています。所得が低い地域には、市場が存在しないという考えは間違っています。人々は毎日生きていくために、食べ続けていかなければなりません。そして、その人たちにも楽しみはあるのです。むしろ、このベースオブピラミッドの人々の人口増加は、中間層や富裕層の人口増を凌駕しています。この人口増加を考慮すれば、ここに日本の人口増加のヒントがあるのかもしれません。また、中間層は、最も購買量が多い層でもあります。先進国でのこの層は、飽和状態にあるといわれています。でも、消費の主体を細分化することで、より多くの種類の商品を販売することが可能な層でもあります。消費のニーズに応えることで、より多くの購買量を増やすことができるターゲットになります。旅行に対するニーズは、非常に高いものがあります。2024年度の日本の旅行人口は、5億4千万人になります。また、一人当たりの国内旅行平均費用は、46,000円程度になるようです。この46000円以下で、楽しく旅行をする人たちもいるわけです。国内のホテル価格が上昇するホテル代の高騰を受け、ミニバンや軽自動車による車中泊をしながら、旅行をしている人たちもいるのです。
余談ですが、旅行のニーズがあれば、それをビジネスチャンスにする企業がでてきます。ローソンは、駐車場を使った車中泊サービスを始めると発表した。24時間いつでも飲食物買えるコンビニの特性を生かし、駐車場を新たな収益源にする計画です。サービスの利用には、事前決済が必要になります。この予約は、RVパークの専用サイトで予約を受け付けることになります。ちなみに、RVパークは、日本RV協会が『快適に安心して車中泊が出来る場所』を提供するために定めた条件を満たす車中泊の施設になります。ローソンは、車1台につき駐車場2台分を開放し、キャンピングカーなどの大型車でも止めやすくなるようです。料金は、1泊2500~3000円とし、電源やトイレゴミ袋を提供することになります。それ以外の生ゴミは、チェックイン時に渡すレジ袋1枚分のみ捨てられるようにします。チェックインは午後6時以降、チェックアウトは翌日の午前9時までとすることにようです。まずは、千葉県の6店舗で始め、利用状況を踏まえながら対応店舗を広げていきます。2026年6月末まで検証的に実施し、国内各地のローソン店舗に順次広げることを目指すようです。
最後になりますが、男女5億人が日本国内を旅行しています。旅行での出会いは、アプリの出会いより、より身近なものになります。外国映画を見ていた時です。ストリップ劇場で、男性客の膝の上でラップダンスをする踊り子の映像がありました。ラップダンスの行為をするダンサーは、男性客からチップを貰う習慣があるそうです。チップは、少ないより多い方が嬉しいものです。このダンスをする女性が排卵日になると、男性客からより多くのチップをもらえという経験則があったそうです。女性と男性の間には、お互いを惹きつけたり、離れたりするサイクルがあります。排卵日には、女性特有のフェロモンがでます。この匂いに、男性は引き付けられるようです。ローソンでの車中泊サービス出会いが、男女の仲を接近させることができれば、楽しい婚活の場になるかもしれません。もちろん、アプリが出会いの条件を整え、face to faceの出会いが、より具体化するようになれば、人口増加につながるかもしれません。