テストで失敗したとき、自分に厳しい言葉をかけたほうが良いと思うのは間違になります。実は、自分に思いやりや励ましを向けるほうがやる気につながることもわかっています。失敗すれば、ネガティブ感情が生じるものです。この感情が、ストレスとなって、身体や精神に良くない影響を与えることもあります。一方、テストで良い成績を取ることができれば、ポジティブ感情を感じることで次の行動のエネルギーになることもあります。それでは、ネガティブ感情を軽減するには、どうすれば良いのでしょうか。経験的には、1つのネガティブなことを感じたら、その3倍ポジティブなことを感じられれば良いとされています。3倍ポジティブなことを感じられれば、ネガティブ感情を乗り越えられるというわけです。今回は、ネガティブ感情に対処する方法や過度なストレスを乗り越える仕組みを考えてみました。蛇足ですが、ネガティブ感情とストレスの用語を説明します。心理学におけるネガティブ感情とストレスは、密接に関連していますが、異なる概念になります。ネガティブ感情は、悲しみ、怒り、不安などの特定の感情を指し、ストレスは、個人がプレッシャーや緊張を感じる状態を指します。ストレスは、ネガティブ感情を引き起こす原因の一つとなり得ますが、ストレスは必ずしもネガティブ感情を伴うとは限りません。
ストレスをなくす研究は、長年にわたって行われてきました。残念なことですが、生活からまったくストレスをなくすことはできません。そのような中で、自然にストレスに対して、上手に対処する方法が身についている人達がいます。ストレスに強い人の特徴は、自尊感情が高いことです。この自尊感情は、自己に対して肯定的な評価を抱いている状態を意味します。自分を肯定的にとらえ、自分の気持ちや考えを大事にする人達ということになります。大切なことは自分を大事にして、ストレスに対処する方法やストレスを減らす方法を知ることになります。ストレスに支配されるのではなく、ストレスをコントロールするスキルを身に津つけることになります。対処する方法が身についている人は、ストレッサーを病気にならないように対処していきます。一般に、ストレスにそのつど対処していける人は、ストレス耐性が高いといわれています。このようなスキルを身に付けている人は、現代社会を優雅に過ごすことができるようです。
怒り、落ち込み、不安,ライラ、挫折感、恐慌などネガティブを気持ちになることがあります。このような状態に陥った時に、この状態を乗り切る力が人間にはあることが分かっています。それは、「レジリエンス」になります。「レジリエンス」とは、困難に負けない力、立ち直る力、逆境に耐える力になります。このレジリエンスは、身につけることができるスキルになります。このスキルには、ストレス管理能力、柔軟な思考、自己効力感、楽観性、良好な人間関係、目標設定能力、問題解決能力、感情のコントロールなどがあります。たとえば、ストレス管理能力は、予期せぬ問題が発生しても、冷静に状況を把握し、適切な対処法を考え、実行できる能力になります。締め切りに間に合わない状況でも、パニックにならず、タスクを細分化して優先順位をつけ、計画的に進めることができる能力ということになります。レジリエンスは、先天的なものではなく、トレーニングによって高めることができます。日常生活で意識的に実践することで、より困難な状況にも対応できるようになります。これらの能力を継続的に高めて、怒り、落ち込み、不安などの状況を適切に乗り切るわけです。
ストレスは、人の成長につながるというプラス面も持っています。ストレスを乗り越えた経験が、達成感をもたらす喜びとなり、その人の自信となるケースもあるのです。ストレスを乗り越えた経験が達成感の喜びとなり、次に出合うピンチをチャンスに変える力になります。ストレスがあることが、必ずしも心や身体に悪影響を及ぼすわけではありません。ストレスとその許容範囲を自分で自覚できれば、ストレスは良い作用をもたらすことも分かってきました。「最大の名誉は決して倒れないことではなく、倒れるたびに起き上がることである」などと言う方もいます。これも、あながち間違いではないようです。失敗や達成感を経験することは、私たちの生活にとってとても大切なものになります。ストレス原因には、いろいろな欲求の種類があり、それを体験し理解しておくことが、ストレス社会を乗り切り、より高みに引き上げることになります。どの欲求が自分にとって強いストレスになっているかに気づけば、生活に大切なことを得やすくなります。大切なことを得れば、それは快や幸福につながっていくことになります。
実は、人が幸せになるための研究が継続的に行われてきました。幸せになるための研究でわかったことは、ただ単に楽しいというだけではないのです。これらの研究でわかったことは、「夢中になったり没頭すること」も幸せには欠かせない要素であり、「目標を達成すること」も幸せには欠かせない要素であり、「だれかと良いつながりがあること」も幸せには欠かせない要素であるなどということです。この幸せの要素には、6つあります。1つは、ポジティブ感情です。2つは、エンゲージメントです。3つは、関係性です。4つは、意味・意義です。5つは、達成です。6つは、健康です。幸せは、いくつかの要素の複合体のようなものともいえるかもしれません。例を挙げると、ポジティブな気持ちは、気分が良いだけでなはありません。これは、身心のエネルギーアップにつながり視野を広げ成長させてくれる要素になります。一方、幸せと離れたところに位置するネガティブは、最悪な状態に引きずり込み、悪循環を起こすことがあります。ネガティブな気持ちとそれに伴う体の変化が、人間のエネルレギーを奪うことが多いのです。ネガティブなときには、まず自分ができることに力を注いでみることです。この状態のときには、夢中になって没頭できる活動がお勧めになるようです。
余談ですが、現代社会はストレスがたまりやすい環境にあります。ストレスの過剰な蓄積により、ホメオスタシスが崩れることもあります。ホメオスタシスの乱れにより、引き起こされる反応は、身体面・心理面・行動面に見られます。身体面での反応は、息切れ、食欲低下、胃痛、便秘、下痢、不眠などの症状が現れます。心理面では、やる気が出ない、興味が湧かない、体が重く動かない(精神運動制止)などの症状がでてきます。さらに、進むと、自分を責めたくなる(罪責感)、生きていたくない、死にたいと思うなどの症状に至ることもあります。行動面での反応は、ネガティブな行動、ひきこもり(登校拒否・出社拒否) になるなどとして現れることもあります。ストレスが過剰になり、その人の許容範囲を超えたとき心身などにさまざまな悪影響を及ぼすことになります。自衛の策としては、ストレスが慢性化することを避けて、健康を損なうことがないように工夫することになるわけです。この工夫の1つに、セルフコンパッションがあります。自分に優しく思いやりを向けることは、セルフコンパッションと言います。このセルフコンパッションが、逆境を乗り越える力になることがわかっています。さらに、ストレスを減少させるだけでなく幸福感を高めることことにできます。その高める方法は、シンプルです。セルフコンパッションの1つに、自分の肩にトントンと優しく手を添えたりすることや両手で自分をぎゅっと抱きししめることがあります。自分なりに落ち着くジェスチャーや自分に優しさを向けられるジェスチャーを、いくつか持ことも選択肢になります。
最後になりますが、ストレスに対処する工夫にも、進化が見られます。今までは、リラックスすることが、ストレスを軽減する効果的な方法のひとつでした。リラックスを上手することを、リラクセーション反応と呼びます。自然なリラクセーション反応で、ストレスの症状に対処することできるわけです。たとえば、呼吸を意識することよってストレスの状態をコントロールすることができます。この呼吸によるリラックスを上手に行うと、脈も安定し、血圧も下がります。呼吸を意識してゆっくり深くすることによって、心を落ち着いた状態に切り替えられるわけです。呼吸と感情は、密接につながっています。不安やストレスを感じる場面では、呼吸を意識してゆっくり深くすることがお薦めです。このリラックス方法は、お金もかからず、少し時間がかかるだけです。このようなシンプルな方法に加えて、セルフコンパッションの領域から、5つの対処法が加わってきています。それは、1. マインドフルネスの実践、2. ジャーナリング、3. 慈悲の瞑想、4. 優しい言葉を自分にかける、5. スージングタッチになります。マインドフルネスの実践は、呼吸に意識を向け、今この瞬間に意識を集中することで、感情や思考を客観的に観察し、判断せずに、ありのままの感情を受け入れる練習をすることになります。ジャーナリングは、日記を書くように、自分の感情や思考を言葉で表現します。特に、ネガティブな感情や経験について書くことで、感情を整理し、客観的に見つめ直すことができます。慈悲の瞑想は、自分自身や他人に対して、愛情や思いやりの気持ちを育む瞑想です。瞑想中に「私が幸せでありますように」といった言葉を心の中で唱えることで、自己肯定感を高め、他者への思いやりを深めることができます。優しい言葉を自分にかけるは、失敗や困難に直面した時、自分を責めるのではなく、「よく頑張ったね」「次につながる経験だよ」といった優しい言葉を自分にかけます。5スージングタッチは、自分の体に優しく触れることで、安心感や落ち着きを得ることができます。これらの具体的な処方を実践することで、心の健康を促進していきたいものです。