健康は、現代の重要なテーマになっています。健康を維持向上させるためには、「心」「食」「動」「眠」の4つの要素が重要なポイントになります。このポイントを、テレビコマーシャルは執拗に追求します。コマーシャルは、大衆への見せ方に工夫に工夫を重ねてきています。テレビは、地上波とBSから1日数百の番組が流されています。テレビ局は、コマーシャルの効果を調べます。見たというデータと見なかったというデータは、金の卵のように見えます。見られた時の社会状況やSNSの動向は、貴重なデータになります。たとえば、韓流ドラマは、日本の女子高齢者の心を捕えました。そのドラマの流れには、音楽にしても、筋立てにしても、女性を捉える仕掛けが潜んでいました。ドラマにも、お笑いにも、スポーツにも、そしてコマーシャルにも、人々を捉える工夫が潜んでいます。今回は、コマーシャルをより効果的にする工夫について考えてみました。
この工夫のヒントは、健康と輪作や混栽培にあります。蛇足ですが、同じところで、同じ作物をつくると連作障害で、収穫は減っていきます。連作障害を防ぐためには、混栽培や輪作を行うことになります。混栽培では、大豆とミントを一緒に植えると収穫が増えるといわれています。ところで、人間は、栄養素の吸収→エネルギーの産生→消費→また栄養素の吸収というサイクルを繰り返していくことで、健康が維持していきます。栄養の吸収サイクルのときに、必要な栄養素が足りないと、代謝を促すことができなくなります。代謝できないと、エネルギー循環が滞り、体の機能が正常に働かなくなってしまいます。たとえば、人間が必要とするアミノ酸は、2つに分類されます。必須アミノ酸は、体内で合成されないため食物から補給しなければなりません。その内容は、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリブトフアン、バリン、ヒスチジンの10種類です。非必須アミノ酸は、体内で合成できますが、不足する場合は不具合をもたらします。それは、チロシン、システイン、アスパラギン酸、アスパラギン、セリン、グルタミン酸、グルクミン、プロリン、グリシン、アラニン、アルギニンになります。20種類のアミノ酸は、1つでも欠けるとバランスが取れず、たんぱく質を合成できないわけです。例えば、大豆は、豆腐や納豆など日本の食事に欠かせない食材です。でも大豆には、メチオニンというアミノ酸が不足ぎみなのです。これを補う食材が、鰹節になります。動物由来の鰹節などには、メチオニンが豊富に含まれています。私たちが知らずに料理として食べている「湯豆腐に鰹節をかける」という食べ方は、栄養バランスのとれた食べ方になっていたわけです。もし、鰹節の企業と豆腐の企業が、豆腐と鰹節のコマーシャルを協力して、「あなたの健康を高める料理になりますよ」というテーマを流せば、効果的なコマーシャルになる可能性がでてきます。1社ではなく2社が協力して、健康を向上させるショートストーリーを流すわけです。
ある植物工場の主任が、トマトを収穫する労働者に、自分たちの仕事が次のサプライチェーンにどのように反映しているかという短いビデオを見せたのです。次のトマト加工工場の映像を見たトマトを収穫する人たちは、1時間あたりのトマト収穫量が7%も向上したそうです。自分の仕事が誰かに影響を与えていることを実感できれば、幸福度も高まるようです。幸福度が高まれば、楽しく仕事ができ、なおかつ生産性が上がるということです。日々体験する瞬間の価値を高めているのは、人との交流の中で味わう喜怒哀楽になります。感情が良い方向に流れているときは、仕事もコミュニケーションも良い方向に向かいます。コマーシャルの内容が、健康維持や向上に相乗的に役立つものであるならば、効果を上げることができます。豆腐を購入し、かつお節をかけて食べるストーリーを見て、健康に役立つことが分かり、健康になれば楽しいことです。一方、豆腐だけのコマーシャルの視聴では、深い理解に到達しないかもしれません。
組み合わせの利点が、いろいろな分野で認められるようになりました。少し前まで、従業員に対して、副業を禁止する会社が一般的でした。時代の流れが変わり、副業を認めることはもちろん、奨励する会社が増えてきたのです。単純な副業の事例では、ホテルとコンビニでの副業が可能です。ホテルや旅館では、住み込みで働く従業員の方がいます。彼らは、朝の食事や夜の食事に集中的に働きます。午後の一定期間は、自由時間になります。この時間を副業として、コンビニや飲食店での短時間パートを行うことが可能です。副業により、収入が増えることで定着にもつながるメリットが出てきます。西洋に目を向ければ、ルネッサンスの人々は、複数の分野で大きな成果を残しています。代表的なレオナルドダヴィンチは、絵画を描き、建築をおこない、さらには軍事に必要な堅固な城までつくっていました。二足のワラジを恥じることは、歴史を見る限りないようです。異分野の人と人のつながりは、ビジネスを成功に導くものとされています。プロジェクトで組んでいるメンバーも多様になれば、新しい仕事の領域が開けてくるケースが増えてきます。個人が複数の能力を持つこと、もしくは、グループで複数の能力を持つことが、注目されているわけです。人材獲得のコマーシャルを流す場合、今持っている複数の専門スキルが役立つこと、そして次の職場に移る場合でも、ここで培ったスキルが有利に働くことなどを伝えることができれば、安心して就活に応じる人材が出てくるかもしれません。
農薬や肥料を少なく使用して、環境負荷の少ない循環農業が見直される時代になってきました。環境負荷低減に配慮した企業が、世界的に増加しています。地域で作った電力は、地域で使うことが効率的で、環境負荷低減に貢献することになります。再エネの地産地消を進めることは、循環型脱炭素社会の構築につなげることにもなります。おきたま新電力株式会社は、山形県米沢市にあります。企業や個人は、おきたま新電力から比較的割安な料金で電気を購入することができます。ここに参加した企業があります。1597年創業の小嶋酒蔵は、この電力会社に出資しました。この酒造は、米沢市で年間約50万本(720ミリリットル換算)を醸造している老舗です。冷蔵庫やボイラーなどで年間約69万キロワット時の電力を使っています。小嶋酒造は、約20カ国と取引し、売り上げの4分の1を輸出が占めているのです。海外との取引において、地産地消の再生可能エネルギーを使うことが、有利に働いています。世界では、「商談の場で、サスティナビリティー(持続可能性) が問われるようになってきた」と言います。そんな中で、お酒の品質と使っている再エネが、地元産と語れることが強みになっています。環境負荷低減や持続可能性などのストーリーは、国内だけでなく、海外でも共感を呼ぶ要素になる時代のようです。
余談ですが、肥満に対する関心が高まっています。人々は、楽に痩せたいという希望があります。そんな希望をかなえる薬が、「ウゴービ」や「ゼプバウンド」になります。最初は、華々しく登場した薬ですが、やや負の側面も見えてきました。多くの人に使用されてくるといろいろなエビデンスが出てきました。ドイツ銀行は肥満症薬の効果について、米消費者600人が対象の調査結果を公表しました。調査した600人のうち、7割は薬の使用を継続、3割は調査の時点で使用をやめていました。継続的に薬を使用している人のうち、52%に人が薬の使用前に比べ食事量が大幅に減ったという回答と「多少減った」と回答をしています。薬の使用をやめた人の51%が、薬を使い始める以前より「かなり食べる量が増えた」とか「少し食べる量が増えた」と回答しています。服用を中止すると、体重が再び増加するリバウンドにつながる可能性が指摘されたのです。ノボノルディスクの広報担当者は、ウゴービのリバウンドの影響を認めています。面白いことに、この担当者は、肥満症については高血圧や高コレステロールと同様に、長期服用の必要性を強調したのです。年間、148万円の薬を長期服用すれば、リバウンドが少なくなると言うわけです。この薬の使用は、長く投薬を続ければ費用も高額になります。低所得者には、入手困難な薬のようです。なかなか肥満の問題は、解決が難しいようです。
最後になりますが、肥満に対するちょっとした解決策を提示します。最近の知見では、肥満の方の腸内フローラでは、短鎖脂肪酸の生産力が落ちていることがわかってきました。この短鎖脂肪酸とは、腸内細菌が作る酪酸、プロピオン酸、酢酸などの有機酸のことです。短鎖脂肪酸は、他の栄養分とともに腸から吸収され、血液中に入って全身へ運ばれます。短鎖脂肪酸には、腸の細胞を刺激してインクレチンのホルモンを分泌させる力があります。インクレチンにはいすい臓に働きかけてインスリンの分泌を促す効果があります。ある意味で、血糖を調節し、糖尿病にならないということになります。この頼もしい短鎖脂肪酸は、食べ物をバクテロイデスなどの腸内細菌が分解して作られます。バクテロイデスなどの短鎖脂肪酸を作る細菌たちは、食物繊維をエサとして生きています。この細菌に好まれる食材は、海藻、キノコ、野菜、豆類、こんにゃく、雑穀、玄米などになります。バクテロイデスの菌はもともと私たちを肥満から守る働きをしているのです。ある研究グループは、12人の肥満者を対象に1年間にわたって食事療法を行う実験をしました。野菜を多めに食べれば、肥満フローラをやせフローラに変えていけることを明らかにしました。野菜を多く摂取する迂回効果により、徐々に肥満体質を改善することが、弱者の賢い選択になるようです。この知見を理解した上で、海藻、キノコ、野菜、豆類、こんにゃくなどの企業が、単独ではなく、複数の企業がやせフローラを効果的に増やす献立を提供することも面白い試みになります。その提供を、コマーシャルをストーリーとして流すことも一つの選択肢になるのかもしれません。