相思相愛のカップルを増やす仕組みと知恵 アイデア広場 その1649

 住民基本台帳に基づく人口動態調査を見ると、日本の悲しい現実が見て取れます。1947年に生まれた人は、268万人でした。いわゆる団塊の世代の人達です。この生まれてくる子ども達が、2000年には、120万人になり、2010年には107万人になりました。さらに、厳しい数字が続きます。2020年には、100万人を割り込み、2024年には、68万人になってしました。出生数の減少は、日本の将来に大きな悪影響をもたらすことも浮き彫りになってきました。 2024年に、民間有識者でつくる「人口戦略会議」が地域の持続可能性を分析し、その結果を発表しました。「人口戦略会議」の報告書では、自治体の消滅危機が続く現状が浮き彫りになってきました。東北地方は、市町村全体のうち77%が消滅可能性自治体に挙がり、地域別では割合が最も高い地域になります。この消滅可能性自治体の定義は、2050年までに子どもを産む中心の世代となる20歳から39歳の女性が”半数以下”となる自治体のことになります。ある意味、子どもが増えない市町村ということになります。特に秋田県では、秋田市を除く24市町村の96%が、子どもが減る一方で、増えない地域になるということです。私たちは、人口を増やす仕組みを早急に工夫しなければならない状況にあります。そこで、いくつかの対策を考えてみました。

  長い人類の歴史を見ると、女性が結婚し出産することは、人類の発展に大きく寄与してきた面があります。女性の場合、出産することで脳が重くなり、知能が高まるごとがわかっています。これは、他の動物に対して優位性を持つことになりました。男性は結婚することで、多くの場合、攻撃性も下がり、温和になります。温和になる努力がないと、子孫(自分の遺伝子)を残すことができなくなるケースが増えます。男性は、結婚することで、自ずと良好な社会関係を形成するように努力します。女性の知能が高まり、男性が温和になることで、人類は他の動物に対して優位な地位を築いてきたとも言えます。家族をつくって社会の中でうまく生きて、子孫を残してきた女性と男性だけが、現在の成功者と言えるのかもしれません。結婚することは、社会関係力を向上させる「基本」になります。逆に、社会関係がうまくない人は、自分の言動が他人からどうみられるのかの意識視点が欠けるケースが多くなります。蛇足になりますが、メタ認知というのは、自分の言動に関する意識になります。メタ認知を働かすことができる人は、自分の言動を意識するようになります。この認知を働かすことができる人は、他人からどう見られているか意識でき、それに対応する能力も高めていけます。メタ認知を働かすことができる人は、社会関係力が優れているというわけです。

 それでは、現代社会で活躍できる人はどのような特性を持っているのでしょうか。現在求められる人材は画一的な優等生ではなく、優秀で、個性的で、かつ独創的な人物になります。箇条書きにすれば、下記のようになります。

望ましい人物

*目的をもち、未来志向的で計画的。

*「頭(地頭)が良く、問題解決能力が高い

*個性的で、独創的。

*理性的で、協調的、利他主義。

*説得や交渉がうまい。

*優しくて、思いやりがある。

*人間性が豊かで、社会的に成功している。

*良好な恋愛や結婚ができている。

*病気にかかりにくく、長生きする。

望ましくない人物

*無計画で、剰那的。最悪の場合「引きこもり」の可能性も高い。

*勉強はできても「頭」が悪い。

*状況依存的で、指示待ち人間。人の真似ばかりする。

*衝動的で、自分勝手。利己主義。

*他人の心や痛みがよくわからない。

*人間性が希薄で、社会的に失敗している。最悪、凶悪犯罪者にも。

*恋愛がうまくいかず、結婚できても失敗する。

*統合失調症、各種人格障害(ASPDがその典型)になりやすい。

*うつ病、各種不安神経症になりやすい。

 この望ましい人物と結婚すれば、結婚生活は充実し、子どもを産んで、幸せな家庭を築き、それが社会に貢献するというサイクルができます。でも、箇条書きの特性だけでは、具体的な人物像はなかなかわからないものです。一つのモデルをあげるとすれば、男女とも次のような人物になるかもしれません。ピアノで一方の手でメロディと別の手で弾くメロディが異なるのは、非常に高度な行為になります。このような高度な行為は、「マルチタスク(多重課題)」といいますます。物事を柔軟に行うにあたって、マルチタスクを行う能力は重要になります。このマルチタスクを、調理に応用できる人材は有能です。レシピを覚えて、記憶に基づいて料理を作り、料理の品目を最低3品目以上にして、ときどき品目を変え、時には調理法などに自分なりの工夫をするマルチタスクな人が一つのモデルになります。さらに、インプットやアウトプットのスキルも大切にあります。新聞などの話題に関して、批判的意見を述べることが重要です。社説やコメントには、今の時代で重要な知識がそれなりに入っています。社説を理解しようとするだけで、現代社会に生きるうえで重要な知識が増えます。この批判的知識を発信することで、さらに知識が整理され、次の飛躍に繋がります。知識(経験)のインプットとアウトプットを繰り返す中で、成長する人物ということになります。こんな人物のとの出会いが増えれば、男女の結婚の機会が増えるかもしれません。

 良い男女の出会いは、人柄も大事ですが、関係を深める内的要素も大切になるようです。男女が出会いで、お互いにコミュニケーションがスムーズに行けるようになれば、関係を近づける環境が整います。脳内ホルモンの中で、社会関係に最も深く関係するホルモンがオキシトンンです。このホルモンは、幸福ホルモンとも言われ、この分泌量が高いほど、良好な社会関係を保てるようになります。恋愛期間中、オキシトシンの分泌が増えれば、恋愛もうまくいき結婚できる可能性が高いのです。オキシトシンは、親しい人と触れ合うことでも分泌されます。付き合い始めて親しみを感じた時に、このオキシトシンの分泌量は一気に増えて、ゴールに向かうことが1つのパターンになります。ゴールへの成功率を高める方法は、オキシトシンの分泌を高めておくことになります。オキシトシンの分泌を促す方法はいくつかあります。その中の1つに、犬と触れ合うことがあります。犬と触れ合うことは、認知症の患者さんにプラスであること以前からわかっていました。犬と触れ合うことでオキシトシンの分泌量が増えることが主な要因であることがわかっています。犬と触れ合うことが、認知症の患者さんや一部の精神疾患患者さんにプラスになったのです。このプラス要因が、オキシトシンの分泌だったわけです。犬を飼って触れ合うことは、社会関係力を向上させるうえで大きな意味があるようです。結婚する前の恋愛期間中に、犬を飼うということも一つの選択肢になるのかもしれません。

 子どもを増やすためには、結婚の数を増やすことになります。男女の出会いを円滑にいく仕組みをつくることが、一つの対策になります。その対策のヒントは、出会いとフェロモンにあるようです。アジア象のオスとメスは、通常は別々に暮らしています。メスが妊娠可能な時期になると、フェロモンを含んだ尿をまき散らします。オスはその臭いを慕って、やってきます。匂いが空気中に漂って、オスの鼻の粘膜を刺激するのです。匂いに対して、非常に敏感なので、生殖活動が活発になるわけです。人間の場合においても、女性と男性の間には、お互いを惹きつけたり、離れたりするサイクルがあります。排卵日には、女性特有のフェロモンがでます。この匂いに、男性は引き付けられるようです。人間は、動物的なセックスと社会的なジェンダーという側面を持っています。男女が醸し出すフェロモンが、感情の高揚と仕事の効率を上げることは経験的にはよく知られていることです。この経験的な事象を、会社側が用意することできれば、楽しい職場になります。会社が、男女の憩いの場を作るわけです。積極的に男女の接触をする仕掛けを働く制度の中に作ることが、一つの工夫になります。この工夫により、婚姻関係がスムーズに進み、企業の業績が上がれば、社員も企業もハッピーになります。

 余談になりますが、個人の努力で結婚のゴールに至る場合もあれば、社会の支援でゴールに至る場合もあります。日本の少子化は、危機的状況です。この危機を乗り越えるためには、最初の壁である結婚の数を増やすことが求められます。そこで、社会的支援を考えてみました。JR東日本には、スイカによる多くの個人データが蓄積されつつあります。たとえば、旅行を数多くする人がいます。この人たちの指定席を近づければ、会話が弾む状況を作ることが可能になります。もちろん、好みの席を指定する人もいるでしょうが、その好みが合えば、指定席を近くにすることができます。総務省傘下の情報通信研究機構では、SNSから知能や精神状態、生活習慣を見抜く実験に成功しています。この実験では、AIが短文投稿サイトの情報から、人々の内面を表す23種類の特徴を推定しました。この実験は、数百の少ないデータでも、AIを賢く用いることで、新たな手法の開発したことに高い評価を得ているのです。X(旧ツイッター)の投稿内容とアンケートの内容を、AIに学ばせます。学習を終えたAIは、Xから人々の内面をあぶり出す規則性を次々と発見したわけです。スイカのビッグデータは、おそらく情報通信研究機構より整備されているようです。指定席が演出する男女の出会は、彼女や彼らに「良いとか悪いとかの感情」、「好きとか嫌いの感情」、「引き付けるとか離れるという行動」を引き起こすかもしれません。その感情や行動を把握し、より良い組み合わせを作ることも可能になります。指定席を近づければ、匂いの効果も出るかもしれません。量子コンピュータのD-Waveは、「組み合わせ最適化問題」を解くことが得意なツールです。このようなツールを使って、引き付けあう男女を職場に配置することも面白い工夫になるかもしれません。子どもが生まれる人数が少しでも増える対策を、あらゆる場を通じて行っていきたいものです。

 最後になりますが、3重苦の障害を乗り越えたヘレン・ケラーは、合った人がどの場所から来たかを言い当てることができたそうです。台所にいたのか、庭にいたのか、病室にいたのかが分かったのです。人が場所から別の場所に移動したときに、その人がいた場所を特定できたわけです。人の場合、500万個の匂いを感じる細胞を持っています。臭いの感覚は、味の感覚に比べ、はるかに敏感です。動物の例ですが、マウスのメスが妊娠一週間以内に、交尾相手とは違うオスの尿のにおいをかぐと流産するそうです。でも、どんなオスの尿のにおいでも流産するわけではありません。流産するのは、メスと遺伝子が大きく違う匂いほど流産させる作用が強いのです。遺伝子が遠いほど、種の繁栄をもたらすということを本能的に知っているのでしょう。もっとも、人の場合はにおいをかいで流産することはありません。でも、男女の匂いが、好き嫌いの状況を作り出すことはあるようです。ある若い男女を、グループ別に活動してもらう実験をしました。活動後に、着ていたTシャツの匂いを嗅いでもらったのです。女子学生の中には、好ましい匂いと好ましくない匂いがあることが分かりました。彼女たちは、自分と異なる遺伝子をもつ男子学生の匂いを好ましいと答えたのです。遺伝的に遠い遺伝子ということもできます。若い女性の男性にたいする匂いの好みには、遺伝的に遠い関係にある男性でした。彼女達は、自分と同じような遺伝子をもつ男子学生の匂いを好まなかったわけです。匂いから、男女の出会いを演出することも可能のようです。少子化を多子化へ方向転換するには、数だけではなく、身体的にも、精神的にも、社会的にも健全な成長ができる資質の確保と望ましい環境を用意することが大切なようです。

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