子どもにとって、算数の成績は、将来にわたって成功するかどうかの大きな要素になります。学校で算数の問題を行う場合、学習指導要領に基づいて行うことになります。いわゆる目標、内容、方法、評価という流れの中で算数の問題の成就度が把握されることになります。一般的に、授業が理解できたかどうかを調べるには、3段階の評価過程があります。最初は、診断的評価のテストで、単元前の学力を調べることになります。次に、授業や宿題などの学習活動の後で、子ども達一人一人の習得の度合を形成評価する段階になります。この授業における形成評価には、遅れている子どもには補習的指導を繰り返すような支援する側面もあります。最後が、総括評価が子ども達の学習進度や学力を把握するテストになります。診断、形成、総括の流れが随時把握できれば、学習目標との関連で、子ども達の学力形成が逐一把握されるわけです。ここで、成績の良い子も悪い子も、もっと成績を上げてくださいと言われたら、どうすれば良いのでしょうか。
「算数の成績を上げください」だけでは、「次に何をすべきか」ということが分からないものです。「算数の成績を上げる」を達成するために、2つの要素が必要になります。この2つは、「具体的な問題を設定すること」「効果的な問題を設定すること」になります。さらに、この設定には、取り組む子ども自身の考えで決めることが大切です。算数の現状を、診断的評価のレベルで取られることが求められます。たとえば、1、計算ミスが多い、2、割合の理解不足による問違いが多い、3,一度解いたことのある問題でも、復習がおろそかなので定着していない、4、文章題を数式にすることができていない、などがあるとします。この場合、1~4の対策は以下の4つになります。1,毎日計算ドリルに10分間取り組む、2、割合の説明を、再度、先生や親に教えてもらう、3,復習を毎週決まった時間に行なうようにスケジュールを立て直す、4,文章題の得意な友達に教えてもらう、などの対策を練ることになります。
一般に、子どもをやる気にさせるには、親の支援が必要です。子どもには言えば分かるとか、子どもは「見て覚える」とは言っても、なかなかできるものではありません。「見る」のと「する」のとでは、違いがあります。実際にやってみて、うまくできないときには、どうしたら良いのでしょうか。
1つに、まず親が正しいやり方を見せることです。
2つに、子どもに一人でやらせてみることです。
3つに、できないところがあったら、またやって見せるか、手を添えて一緒にすることです。
4つに、子どもが一人で正しくできるようになったらOKとなります
1つと3つを飛ばしたりすると、子どもはいつまでたってもできるようになりません。「できる」という実感を得られることは、とてつもなく大切な体験になります。もっとも、これらの対策ができる理想的な子どもや家庭ばかりではありません。現実には、1,授業中の居眠りが多く授業をほとんど聞いていない、2、家でテレビやゲームの時間が増えている、3,各科目への興味を失っている、などの状況が生まれるケースもあります。この1~3の対策は、以下の3つになります。1,授業中に眠くならないように睡眠時間を確保すること、2,テレビとゲームの時間を制限すること、3,テスト対策ではなく、じっくり楽しめる学習方法を模索すること、などになります。
継続的に達成感を獲得する工夫も必要です。そのためには、今よりも、30分早寝早起きをすることです。やる気があるからできるのではなく、やり始めるとやる気が出てくるものです。寝る前に覚えた漢字、英単語、そして解き間違えた計算問題をそれぞれ10分ずつ復習します。朝の30分を利用して、漢字、英単語、そして解き間違えた計算問題を十分間ずつ復習するわけです。できたら、カレンダーの日付にできたマークを付けていきます。努力を、可視化して自分を褒めていくのです。「できた」や「できる」という体験を昧あうことで、今までできなったこともできるようになります。多くの感覚を使った学習も、効果的です音読は、目しか使わない黙読より内容の吸収効果が格段に優れています。音読は、「目」「耳」「口」三つの器官を同時に使います。音読はまた、読めない漢字、意味のわからない言葉を子ども自身が自覚することもできます。勉強ができない子やスピードの遅い子どもは、頭と手の間に回路ができていないことが多いのです。この回路をスムーズにするには、繰り返しが有効になります。脳科学の研究では、手が器用に動くということは脳が充分に鍛えられていることになるようです。
算数の成績を上げるためには、計算練習が有効だと子どもが考えるとします。すると、その練習にはドリルを使うことになります。このドリルには、いろいろな種類があります。どれが有効かを、速く確認する作業が重要になります。「どの計算ドリルの計算練習」が「とりあえず有効そうだ」という情報を実際に行って確認するわけです。まずドリルの計算問題をやってみて、早く確認テストを受け、この結果から次の行動を考えるのです。次に、この実行の結果を見て「うまくいかなかった」とか「うまくいった」で終わらせないことが大切になります。「この結果からわかったことは何か」を読み取って、次に生かす姿勢が必要になります。大切なことは、「失敗」や「不正解」をひとつの重要なデータとして利用することになります。このデータは、実際に行動した上での結果すから、非常に有益な情報となります。有益な情報は、次のアクションの質を高くしてくれます。素早い検証と改善により、失敗を成功への足がかりにできるという前向きな気持ちが大事になるわけです。
余談ですが、小さな子どもには基礎学力が大切になります。低学年レベルの簡単な勉強を繰り返すことでしか、基礎学力は身に付きません。たとえば、100冊くらいの絵本を読破したら、一つの基礎学力が付きます。絵本でも、1冊の中で物語の起承転結ができてきます。起承転結にたくさん触れることで、文章構造が自然と頭に入り、基礎学力が付いてきます。基礎ができてないところに、積み上げても無駄な行為になります。読み書きができて語彙が増えれば、人の言葉も理解できるようになります。勉強は曼荼羅的に広がっていくもので、何がきっかけになるか、わかりません。知らないことを知る楽しさ、できなかったことができるようになる楽しさが、子どもをポジティブにしていきます。それまで積み上げてきたことがつながったり、理解できたりして、突然わかるようになります。理解できて、突然わかるようになることをパラダイムチェンジといいます。たいていの場合、パラダイムチェンジを境に「次元が変わって」、ぐんぐん理解力が向上していきます。パラダイムチェンジは一生のうちに何度も訪れて人を成長させます。こんなことを何度も経験させることができれば、子どもは確実に成長していきます。
最後になりますが、子どもの勉強は、親の関わり方でよくもなり、悪くもなります。理解の良い子どもの特徴は、親のはたらきかけのうまさです。親が子どもに勉強させたいと思うのなら、親が勉強している姿を子どもに見せることです。親が楽しんで一緒に勉強する以上に、子どもの勉強に対する効果的をあげることができないものです。良い親は、「できていること」に目を向けています。ここでは、成績の結果だけを評価する姿勢は悪いことになります。良い親は、良い成績にいたる努力を評価する姿勢があるようです。子どもにかける言葉として最悪のものは、「勉強しなさい」になります。「宿題はやったの?」、これも同様に子どものやる気を著しく下げます。「宿題、やる気になれそう?」と質問をすれば良いのです。親が子どもに目標を与えるのではなく、子どもの立てる目標を親が聞くという姿勢が大切になります。ある進路のベテランは、「合格体験記」が大好きな子どもや大人よりよりも、「不合格体験記」を重視する子どもや大人が合格を獲得していると述べています。
