住居から健康を考える  アイデア広場 その1705

 今年の夏は、猛暑が続きました。熱中症に関する注意が、多方面から出されていました。熱中症が原因と考えられる死亡者数は、1千人を超えたようです。この熱中症が、外出先よりも、身近な家のなかで多く起きていました。熱中症が、身近にあるリスクであることを改めて認識した次第です。家での予防対策としては、空調設備や扇風機を上手に使うことや室内に温湿度計を置いてこまめにチェックすることなどがあるようです。一方で、冬を迎えると、ヒートショックの話題がでてきます。このヒートショックは、特に冬の入浴時に起きやすいことが知られています。驚くことですが、ヒートショック関連で入浴中に急死したとぎれる推定死亡者数は年間約1万7千人になります。熱中症の20倍近い方が、家の中で亡くなっているのです。ヒートショックとは、急激な温度変化に伴う血圧の変化が、身体に大きな負担を与えることにより起きます。驚くことは、もっとあります。ヒートショックは、寒冷地よりも温暖地のほうが多という事実です。寒いとされる北海道で少なく、暖かいとされる本州で多いのです。北海道では、室温が20℃を超える家が少なくありません。。今回は、適正な室内温度が健康や作業効率に及ぼす良い影響に考えてみました。

 長らく、インフルエンザやコロナの流行が続いています。我々は、どのような行動を取れば良いのでしょうか。疫学的に見れば、細菌やウイルスの感染経路を断つこと、細菌などの毒性を弱めること、そして主体の耐性(免疫力)を高めることになります。一つの選択肢は、免疫力を高めれば良いということになります。免疫力を高めるには、良い睡眠が効果的と言われています。では、良い睡眠を取るには、どうすれば良いのでしょうか。睡眠の良し悪しは、温度や湿度にも大きく影響を受けるのです。冷えきった廊下やトイレ、寝室などでは、ヒートショックのリスクが高まります。日本の一般的な住宅の冬季室温は、10℃前後と言われています。イギリスでは、健康的な室温が21℃とされています。日本の10℃の室温は、イギリスでは血圧上昇や心臓血管疾患のリスクが懸念される数値になるそうです。睡眠時の温熱環境が、快適になるような配慮を寝室には求められています。温度差がある部屋にいた人の歩数は、1日当たり約1400歩少なくなるといいます。逆にいうと、温度差のない部屋では、運動量が増えるということです。運動量が増えると、セロトニンの分泌が促されます。セロトニンは、夜になると睡眠を促すメラトニンになります。運動がセロトニンの分泌を促し、そのた結果として良い睡眠をもたらすわけです。

 近年、睡眠の質に関する研究や情報発信が、活発に行われるようになりました。睡眠関する話題は、スポーツ界からも聞こえてきます。ドジャースの大谷選手が、睡眠を大事にしていることや睡眠グッズにこだわっていることもニュースになっています。睡眠の質に関する研究や情報発信で、睡眠グッズにこだわりをもつ人が増えているのです。でも本当は、睡眠グッズよりも先に、室の温熱環境に目を向ける必要があります。最高の眠りを手に入れるためには寝室の温熱環境に目を向ける必要があるのです。家の優れた温熱性能が、健康や生活においてポジティブな価値創造に繋がっていきます。北海道のように室温を20℃にしなくとも、室温を最低16℃以上とすることが求められます。この16℃を維持するには、熱が外に逃げないように断熱性能を高めることが大切になります。最近の新築住宅は、この断熱性能が向上し、室温を高めに維持できるようになりました。問題は、築年数が古い建物ほど、不利な状況を持つことになります。蛇足になりますが、温度が適度に保たれた保育園の園児は、歩数が1.3~1.6倍多かったのです。運動量の多い園児は、欠席率が低く、インフルエンザの罹患率も低かったということです。

 住居が、適正な温度や湿度の維持できる構造が健康に良いということは理解できました。できれば、もう少し、プラスアルファも欲しいものです。家で暮らすことに楽しさが多ければ、脳も活発に機能します。最近の傾向として、「便利」と「楽」を追求するあまり、身体が弱る方にばかりベクトルが向いている状況もあります。便利さを求めるあまり、脳への刺激が低下させるケースが増え始めているわけです。古来、家屋敷には、脳を刺激する仕掛けがありました。たとえば、数寄屋造りという建築様式があります。数寄屋とは、格式にとらわれず自由な発想でつくった「茶室」や「三書院」などを指します。数寄屋の手法を取り入れた数寄屋造りは簡素な住まいの中にも「奇をてらった」趣向があります。茶室はその典型でしょう。入り口は小さく、身をかがめて茶室に入ります。便利とか楽とは違うパターンになります。でも、頭を活性化する建築様式になっています。そこでの作法や会話などから、新しい知識の融合が起きたことは、茶道の世界ではよく知られたことです。住居の中に、室温、健康、運動、睡眠、楽しさなどの複合の要素を内包した発想も、これからは必要なのかもしれません。

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