現代社会は、日進月歩でイノベーションが進んでいます。学生時代に習得した知識や技能だけでは、変化の激しい産業社会を生き抜くことができなくなりました。知識やスキルのブラッシングは、常に求められる時代に入ったともいえます。企業としては、大学の知識や活動状況に加えて、知識やスキルのブラッシングのできる人材を求めています。この新卒の人材を値踏みする方法として、エントリーシート(ES)による書類選考を行ってきました。ここには、志望動機や熱意、そして大学における活動状況の自己ピーアールが書かれています。このエントリーシートを、生成AIを使って作成する学生が増えているのです。ある調査では、エントリーシート作成にAIを利用している学生は約6割にも上るようです。学生たちは、AIと会話をしながら志望動機や原体験を整理しています。学生の中で、AIで作ったエントリーシートが選考を「100%通過した」と回答したのは約2割にも及んでいます。このような流れの中で、新卒採用でエントリーシートによる書類選考を廃止する動きが出てきています。ロート製薬は、2027年卒の新卒採用からエントリーシートによる書類選考を廃止すると発表した。応募書類の内容から、熱意などを評価することが難しくなっていることが理由です。エントリーシートを採用している企業では、AIからコピー&ペーストをしていないかを見極めるAIサービスを採用するところもあるようです。就職活動においても、AIが盾と矛となる状況が生まれています。今回は、AIの普及する環境の中で、良い人材を選択する方法を考えてみました。
エントリーシートの作成に、AIを利用する状況を受け、選考方法の見直しを進める企業が増えています。中古車販売店「ガリバー」は、「学生がAIでESを作っているという前提で選考している」います。その代わりに、人事担当者による15分間の対話選考を導入しています。ESなどの書類自体を評価対象にせず、面接でのプンゼンで判断する手法になります。過去の大学の活動よりも、入社後に取り組みたいことなどを発表する「プレゼン選考」を重視する姿勢です。また、ソフトバンクは、2025年から 自己PRや志望動機を書き込むESを廃止しています。興味深いことは、その代わりに学生に動画を提出してもらう形式にしたことです。一般的な履歴書項目の自己紹介と、1分前後で経験や成果を伝える自己PR動画を提出するのです。動画は、本人の思いがより伝わりやすいとしています。そのツールは、神戸大学などと共同開発したAIになります。このAIが、動画を解析して合否を決めているようです。企業は直接の対話や動画などを駆使して学生の思考や志望動機を把握しようとしている光景が浮かび上がります。
企業は、困難に対して粘り強く取り組み続けることができるといった人材を売り手市場の中でも探しています。企業は、シビアに人材を見極めていきます。自発的で勤労意欲が高く、コミュニケーション能力が高く、チームで働くことができる人材を見極めていきます。問題の共有、問題を分析、仮説で挑戦、失敗をして、次に活かす人材の姿勢などを見極めながら、採用になります。一方、運よく入社した有能な新人は、会社を客観的に把握することになります。その把握の一つは、バリューチェーン分析などになります。自社の強みや弱みを把握するのがバリューチェーン分析と呼ばれるものになります。売り上げの増加があれば、その把握をします。たとえば、売り上げの増加を国内既存、国外既存、国内新規、国外新規に分けて考えることができます。売り上げの場合、ここ数ケ月から5年の間でどのように推移したのかを、データを点ではなく推移で考えることも必要です。8月の売り上げの場合、同じ時期の売り上げをこの5年間を比較するとどうかなどのデータは点ではなく推移で考えるというわけです。たとえば、2010年代の金の国際価格は、1トロイオンス(31.1グラム)500ドルでした。それが、2026年には5000ドルに高騰しています。この過程を知ることにより、これからの方向が具体化していきます。見る視点を「結果」よりも「過程」に絞ることが重要になるわけです。問題設定と解決能力、利点と欠点を分析し、時間とコストなどリスクを管理することもいずれ必要な資質になります。このような資質の一端が見えれば、採用の可能性が高くなるかもしれません。
日立製作所は、2024年卒の新卒採用で、エントリーシート(ES)の「学生時代に力を入れたこと」の質問を廃止しました。横浜銀行は、ガクチカ「学生時代に力を入れたこと」の記載を不要にしました。ガクチカなど書類選考では評価が難しいとの判断で、これまでもESの項目を減らす動きはありあました。それに代わって台頭してきたものが、「採用直結型インターンシップ(就業体験)」になります。現在、「採用直結型インターンシップ」を重要視する動きが加速しているようです。日経の採用状況調査では、2025年夏に約半数の企業が採用直結型インターンを実施しています。新卒採用は、実際の働きぶりを見て判断できる「採用直結結型インターンシップ」動きが進んでいるようです。この方式は、資質の可能性よりも、間近で学生の素質を見ることができるメリットがあります。このインターンシップ学生の能力や人柄を見極める手法として普及しつつあります。インターン参加者には、書類選考免除などの優遇措置を設ける企業も少なくないようです。就職する学生にとっても、実際の仕事や作業を通して、自分の能力が生かせるかどうかの体験にもなります。
今まで、日本でインターンシップ制が定着しなかった理由があります。欧米でのインターンシップは、企業が優秀な学生を確保しようと長期でのプログラムを組むことが普通になっています。一方、人材養成や労働政策を行う文部省や厚生労働省、そして経済産業省などは、インターンシップ制を学生に対する教育活動と位置づけてきました。日本の行政は、インターンシップを採用活動に結びつけないよう求めてきたわけです。企業サイドとすれば、採用に結びつかないインターンは労が多く、利点が少ないとの声も多かったのです。企業側には、儲からないビジネスを継続的に行うモチベーションがなくなります。でも、ここに来て、行政も民間も、インターンからの直接採用を解禁しようとする流れもできつつあります。経済同友会は2016年度から、授業として単位を認定する原則4週間の長期のインターンの支援を始めました。北海道大学は、この経済同友会が進める企業と大学とをマッチングさせる仕組みを活用しています。この大学は従来のインターンに加え、1~2年生を対象にした産学連携のプログラムを導入したのです。学生には、多くの労力を要するプログラムのようです。でも、受け入れ枠の4~5倍の学生が希望するほどの人気のあるプログラムになっています。参加者からは、「何を勉強すべきか明確になった」などの肯定的な意見が相次いでいるようです。
余談ですが、学生のAI活用は、現代社会では合理的な行為になります。むしろ、活用できない学生には将来性はないとも言えます。大学教養育においても、チャットGPTなどの生成AIの存在は無視できません。膨大な文書データを学習して、文章の作成や要約、対話、校正など幅広い作業に応用できます。大学にでも、テクノロジーの発展に合わせて教育のあり方を変えていくことも当然の流れになります。生成AIなどがあることを前提として、大学に限らず企業でも仕事のあり方を再検討していくことが不可欠になります。生成AIの学習データには、間違ったものも含まれています。その間違いを見つけることが、人間には難しいことになります。その難しさを解決するAIも開発されつつあります。最近は、X AI (説明できるAI、Explainable AI)という手法が開発されています。いわゆる機械学習には、ブラックボックスがあります。なぜその結論が導き出されたかが、検証不能というブラックボックスです。X AIを使うと、どこに注目して判断を下していたかをヒートマップとして色の濃淡で示すことができるようになります。このX AIを使うと、機械が画像のどこに注目して判断をしたかを色の濃淡で示すことができるというわけです。生成AIの回答をそのまま受け入れるのではなく、ひと手間を掛けて、人間の目で、頭で確認する過程を設けることも必要になります。ひと手間かけることのできる人材を見抜くことも、人事部の仕事になるかもしれません。
インターンシップ関しては、お隣の韓国が良い意味でも悪い意味でも先行しています。韓国は、企業と大学がより密接に結びついているのです。韓国の企業が大学のカリキュラム作成に参加し、教育内容に独自の要求をしています。ある企業は、独自にカリキユラムを作り、入社した時に役立つ学習を求めるケースもあります。入社時点で最低限の知識とスキル身に付けておくべきことを、大学の在学中に学ぶという仕組みです。入社後には、すぐに戦力になる人材を、大学に育成してもらうカリキュラム構成です。協力企業に合った人材を、入社前から育成するという仕組みでもあります。カリキュラムに係わる大学の教授と指導に当たる教授には、産学協力プロジェクトにも参加してもらうことになります。このような仕組みには、メリットとデメリットがあります。メリットは、即効性です。人材が、入社後にすぐに戦力として活躍できる点です。一方、デメリットは、促成栽培で養成された人材は、応用が利かない点です。新しい技術に対応する支援がなければ、第二の研究生活に窮してしまします。デメリットがあれば、それに対する用意を賢い企業は準備するでしょう。現代社会は、日進月歩でイノベーションが進んでいます。一時的に習得した知識や技能だけでは、変化の激しい産業社会を生き抜くことができなくなりました。知識やスキルのブラッシングは、常に求められる時代に入ったともいえます。このブラッシングが、個人や社内の仲間だけでは難しい状況も出てきています。いま、個人が成長し、企業の成長につながるリカレント教育というツールが注目されるようになりました。リカレント教育は、就職後でも必要に応じて学び直せる教育システムになります。個人の成長と企業の成長を可能にするリカレント教育の整備を希望したいものです。
