食品の高騰を上手に切り抜ける知恵  アイデア広場 その1723

 日本の食品は、価格が高騰を続けています。その高騰に、人々は工夫しながら食生活を営んでいます。一方、食品関係の企業は、全方位の販売戦略や富裕層対象の販売戦略、そして、菜食主義の方や肥満に悩む方を対象にした販売戦略といろいろ工夫しています。人々は、毎日生きていくために、食べ続けていかなければなりません。ある企業は、販売を想定した人口構成を考えました。それは、ベースオブピラミッド(BOP)の人々が40億人、中間層が14億人、富裕層が1.75億人としています。BOPの人々に、10円のモノを買ってもらえれば、400億円の販売が可能という計算です。たとえば、味の素の企業では、アフリカのBOPを対象に10円に小分けした味の素を販売しています。成長著しいアフリカの諸国のでは、これから中間層が増加します。味の素の「味」に親しんだ人たちは、この味をインプリンティングされて、長く使い続ける続けことになります。それは、購買力の増した中間層を獲得できる下地ができること意味します。

 2025年は、食品関連の値上げが続きました。特に、コメ不足から起きたコメの高騰は、多くの食品の値上げを誘発しました。それに関連し、原材料費や物流費、人件費の高騰などを招き、2025年の飲食料品の値上げは2万品目を超えました。一方、実質賃金の低迷が続くなか、消費者の節約志向は財布の紐を硬くしました。節約志向が強まると、商品の売れ行きが鈍くなります。食品の中にも、売れるものと売れにくくなるものが出てきました。売れにくくなったものの1つに、家庭用冷凍食品があります。家庭用冷凍食品は、2025年3月の値上げ以降、販売不振に陥りました。コメ高騰の影響も受け、冷凍チャーハンは値上げせざるを得なくなりました。これは、企業にとって誤算であり、打撃となりました。また、合わせ調味料もご飯と一緒に食べる商品が多く、マイナスの影響がでました。「合わせ調味料」は、肉や野菜を加えて簡単におかずを調埋できる利便性が特徴でした。コメの高騰は、この利便性を封じてしまったようです。

 一方で、「ほんだし」などの基礎調味料は大きな影響を受けませんでした。ほんだしなどは、みそ汁などの料理の昧を大きく左右するので、これの愛用者は数十円の値上げを受け入れました。調味料は、みそ汁などの料理の昧を大きく左右するので、スイッチングコストが高い商品になります。みそ汁などは、家庭の味になります。家庭の味は、一定の価値があり、簡単に変えることができない料理になります。家庭が認めた味(料理)には、一定のコスト高は許容されるようです。一方、スイッチングコストが低い食品は、競争が厳しくなりました。たとえば、ある企業の冷凍ギョーザは、値上げ後PBを中心に客が他社の商品に流れ、シェアが下がりました。冷凍ギョーザは、他社の商品に乗り換える際の負担や障壁のスイッチングコストが低い特徴があります。家庭の味の地位を獲得していない場合、簡単に他者の冷凍ギョーザに変えられるようです。飲食料品の値上げは2万品目を超えましたが、その中で受け入れられた商品と排除された商品があったようです。企業としては、受け入れられた理由、排除された理由を分析して次の商品開発に生かしていくことになります。

 ある企業の失敗談から、解決策を探ってみました。この企業は、3つの価格帯の商品をそろえる「松・竹・梅」(高級・日常・節約)戦略を展開していました。価格に見合った価値を受け入れる環境下では、「松・竹・梅」にメリハリを利かせることに意味がありました。値上げをする時に、「竹」にあたる商品に高級な「松」のような値段をつけました。この値上げの値札つけが、価格戦略のミスになりました。「竹」になんの付加価値も加えることなく値上げをしてしまったのです。値段を上げる場合、いろいろな工夫をする必要があります。一つのモデルが、ディズニーランドの値上げになります。米国のディズニーランドでは入場料が、開業後69年間の歴史で初めて 200ドルを超えました。そのような中で、449ドルで、待ち時間なくアトラクションに乗れるプレミアパスを導入したのです。速さのサービスを付加価値に加えて、値上げをしたわけです。プレミアパスの運営コストはかからないので、プレミアパスの収益はほぼパークの純利益につながりました。従来の「竹」の商品に、何か一つ(味付けや利便性)を加えて値上げをすれば、消費者も受け入れることができたのかもしれません。蛇足になりますが、値上げとプレミアパスの導入は、夢を求めてディズニーを訪れていた子ども達の入場者数を確実に減少させています。でも、収益を上げているようです。

 冷凍食品などが値上がりすれば、消費者はお得感のある食品に注意を向けます。ニチレイフーズは、家庭用冷凍食品の新商品18品を発売することになりました。そのうち5品目は、節約志向対応型の新商品になります。定番商品と高付加価値・高単価商品に、節約志向に対応する商品を加える全方位戦略になるようです。たとえば、「半チャーハン」内容量が通常に比べ約3分の1の 150グラムになります。これでは足りないので、消費者は「半チャーハン」と麺商品との「ついで買い」の衝動に駆られることを狙っているようです。「ついで買い」については、米国でも面白い事例があります。米国では、食事制限をする肥満の方が増えています。米国のレストランでは、食事制限をする人向けのメニューを導入する動きが広がっているようです。大手外食チェーンにも、スモールサイズメニューを拡充する動きが出てきています。イタリアンチェーン「オリープ・ガーデン」は、「軽めの食事」を低価格で提供するようになりました。6~8月期に、7つの主菜を小さくした「軽めの食事」にしたのです。このスペシャルメニューは19ドルと、通常サイズより約10ドル安く設定しました。少量で安いため、他の料理を楽しめるメリットもあり人気商品となったそうです。この工夫で、来店客数を3%伸ばし、顧客の満足度も15%上がったのです。米国おいて、外食産業には長引くインフレの影響で、消費者が財布のひもを固くしていることに対応する狙いもあるようです。日本の食品関連企業には、参考になるかもしれません。

 最後になりますが、食事はバランス栄養と美味しさを求めます。この2つの要素を満足させる仕組みが実現できれば、楽しい食生活を送れます。その実現に向けて、各企業は知恵を絞っています。一つの方向として、食事、睡眠、運動などの複合的視点から調理を工夫することもあるようです。炊飯器や調理器具に取り付けられたセンサーで、好みの料理や材料はクラウドを通して蓄積されます。寝具に取り付けたセンサーやカメラで睡眠状況をクラウドに集約されていくわけです。スマホを持って動いた運動量も、すべてクラウドに集約される仕組みが可能になります。摂取したカロリー、摂取した栄養素、睡眠の質、そして運動量がデータとして蓄積されるのです。クラウド上にあるデータを、ビックデータとAIが食事や睡眠、そして運動から最適な食事のメニューを毎日出してもらうことも可能になります。運動量が少なく、睡眠が少ない時には、脳はやや不活発になります。そのときの状態を改善するためには、良質の炭水化物や新鮮な野菜が求められます。もちろん、良質なタンパク質も必要です。状況に応じて、有機野菜、抗生物質を使わない飼料で育てた家畜の肉、及び魚介類を小分けにして宅配で時間をかけないで提供できる仕組みも夢ではないようです。この仕組みを低価格で提供できれば、勝ち組になれるかもしれません。

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