笑いやユーモアが生活を豊かにする  アイデア広場 その1764

 近年、ユーモアが健康を促進するということは、さまざまなデータから実証されてきました。たとえば、精神神経免疫学の立場から、笑いと免疫能力の関係を確かめる実験が行われました。50名の学生を、人気のある若者に受けるコメディをビデオで60分ほど観てもらうグループと椅子に座り雑誌を読むグループに分けました。実験の前に学生の血液採取をし、実験後にも血液採取をしてナチュラルキラー細胞の活性を調べたのです。2つのグループに分け、ナチュラルキラー細胞の活性の変化を測定したわけです。結果は、椅子に座り雑誌を読むグループの対照群のナチュラルキラー細胞の活性は下がりました。コメディを観た学生のナチュラルキラー細胞の活性は、非常に上がったという結果でした。笑った後、免疫グロブリンが高まり、ナチュラルキラー細胞が活性化されたわけです。笑いが免疫機能を高めるということは、科学的に証明されるようになってきました。このように、笑いや「ユーモアそのもの」を学問的に研究しようという動きが活発になってきました。

 哲学者、社会学者、文化人類学者、法律学者、文学者などの専門家が、笑いやユーモアについての研究を発表する事例が増えています。彼らは、笑いについて、さまざまな角度から自分たちの研究を発表しているのです。笑いそのものが、日常生活の中で非常に重要な位置を占めていることが、学問的にも徐々に分かってきました。笑いによって「痛みを感じにくくなる」とか、「痛みが軽滅する」というようなことが日常的におきています。この経験事例を、科学的に調べることも行われています。笑いと泣くことや喜びと悲しみも、人びとのストレス軽減することも明瞭になってきました。悲しみの中に、喜びが同居する現象もあるようです。笑いやユーモアが健康に与える影響は、身体的な側面と精神的な側面とに分かれます。ユーモアは、つらさや悲しさから生まれる可能性を強く持っているようです。つらい状況をいくつも乗り越えてきた人ほど、ユーモアのセンスがあります。うつ病の患者さんは、笑えません。でも、うつから解放されて、症状がよくなってくると、必ず笑いが出てきます。不都合なことをそれなりに克服しながら、生きてきた人々には笑いがあります。人間はユーモアのセンスをもっており、とてもつらい状況にあっても笑うことができる不思議な動物とみられていました。でも、そのセンスは、小さな障害を乗り越えてくる中で、ユーモアのセンスが鍛えられてきたものなのです。また、近年は、笑いの構造には、相反するものが仕込まれていることが明らかになってきています。たとえば、喜びと悲しみの複合的コンテンツが、笑いの効果を高め、ストレス拡散に非常に効果があることが分かってきました。

  笑いの反対に位置する状況に、「うつ」の症状があります。不安や心配などのストレスが、「うつ」の症状を悪化させていきます。これを防ぐ処方箋として、マインドフルネスが流行したことがあります。マインドフルネスは、東洋思想のヨガや禅とアメリカの医療や科学が融合されたものでした。この効用は、呼吸や自己暗示を効果的に使い短時間でストレスを緩和するものです。この元になっているのは、インドのヨガということになります。ヨガが目指す人生の目的(プルシヤ・アルタ)には、4段階があります。その4段階は、アルタを経て、カーマを感じ、ダルマを守り、最後はモクシャを手に入れるというものです。要約すると、生活の安定を経て、生きる喜びを感じ、社会秩序を守り、究極の自由(悟りの境地)へとたどるという4つの段階です。ヨガの基盤は、自己肯定のために実践するものです。その実践を通じて、自然治癒能力や潜在能力を高めることが3000年の歴史の中で証明されています。この点で、笑いが自然治癒力を高めることと相通じるものがあるようです。蛇足になりますが、最近インドの映画がハリウッドを超える勢いになってきました。インド映画は、分かりやすいストーリーが特徴です。このインド映画は、華やかな衣装、独特な音楽に乗せた歌と切れ味の良いダンスが特徴になります。インド映画は、基本的に恋愛要素が欠かせません。この映画は見ているうちに一気に喜びや笑いの世界に引き込まれる方が多いようです。

 うつから抜け出し、笑いの環境に浸るには、一定のスキルが必要のようです。うつに導く強いストレスは、感情に影響を与えます。感情には、喜びなどの単体で存在するだけでなく、複合して現れることも多いのです。悲しみの中に、喜びが同居することもあるということです。喜びと悲しみの複合は、ストレス拡散に非常に効果があるといわれるようになりました。人間の感情には、喜び、高揚、幸感、快感、悲しみ、落胆、恐怖、不安、怒りなどがあります。負の感情が多くなれば、「うつ」の状態になりやすくなります。適度に発散する機制がなければ、より悪い状態に落ち込みます。最悪のケースは、うつ病までになる場合もあります。一方で、幸せな生活を過ごしたいのであれば、若いうちから訓練の積み重ねが必要です。脳は、楽しいことが大好きです。面白いと思えることには、手を出してみることです。面白いことを感じるには、ドーパミンの分泌が多ければ良いことになります。ドーパミンを効率的に増やす方法は、小さな達成感を数多く味わうことです。この具体例として、落語の視聴があります。笑いあり涙ありの落語を聞くことは、ストレスの発散には効果的です。テレビやラジオで落語や漫才を、自動録画をしておけば、一年間で1000題ほどたまります。これだけあれば、笑う環境が整います。家庭用の自転車マシンをこぎながら、1000題の落語や漫才を聞くのも面白い生活になります。自転車で有酸素運動を行い、その合間に落語を聞くわけです。運動と落語を同時に浸りながら、30分程度でストレスを効果的に発散します。

 笑い効用を、個人のレベルだけにとどめておくことはもったいないことです。企業や自治体のレベルでも、利用する環境が整ってきています。それは、健康テックの技術を進歩になります。たとえば、住民の顔の表情や脈拍、血圧、体温の生体情報をこの技術で収集が可能です。カメラやウェアラブル機器を通して、社員の生体情報を収集している企業もあります。いわゆる、健康テックというものです。IoTと連動していれば、常に、社員の健康状態を把握できる体制ができるわけです。社員の人のまばたきや視線移動から、集中力やリラックス、疲労状況を分析することもできます。健康情報に基づき、社員が医師からの健康改善の提案を受けることもできます。この仕組みを職場単位とか学校単位などで行うことができれば、楽しいことになります。IoTと連動していれば、常に、社員の健康状態を把握できる体制ができる環境が整ってきました。社員の人のまばたきや視線移動から、集中力やリラックス、疲労状況を分析することも可能のようです。笑いやユーモアのある職場は、生産性が高いと言われています。健康で笑いがあれば、より良い職場ということになります。関西大学のある教授は、笑いの測定器を開発し、これを「横隔膜式笑い測定器」と名づけました。笑いを測るのは世界で初めての試みで、外国にも広く報道されたものです。笑うと横隔膜が振動し、その電位の変化を測定し、コンピユータ上にグラフ化して表示するものです。この笑い測定器が小型化され歩数計のようになれば、毎日の笑いの量を把握できる可能性あります。住民の顔の表情や脈拍、血圧、体温の生体情報を収集する技術は可能になっています。そこに、スマホに組み込んだこのお笑い測定器を取り付ければ、面白い健康テックの測定器になることでしょう。笑っている状態がリアルタイムで視覚的に確認でき、さらにその時の作業状況や生産性が把握できるわけで。笑いが足りない時には、笑いを起こす装置を起動すれば良いことになります。

 最後は、明るい職場や町を実現する処方箋になります。日本国内の引きこもり(15〜64歳)は増加傾向にあり、2022年調査では約146万人(約50人に1人)と推計されています。40〜50代の「中高年ひきこもり」の割合が半数を超えており、長期化・高齢化が深刻な社会問題となっています。さらに、文部科学省の2025年10月公表資料では、小中学校の不登校児童生徒数は約35万4,000人で過去最多を更新し、12年連続で増加しています。いじめの認知件数も73万件を超え、こちらも過去最多となっています。もし、これらの人々が元気になり、笑いを取り戻せば、職場や地域は活力を取り戻します。これを実現するのは、かなり難しいことです。でも、ひねりだすとすれば、ヒントはアメリカのレーガン元大統領になります。レーガン元大統領は、演説冒頭のユーモアを考える人を有給で雇っていました。重要な一般教書の内容を伝え、それに繋がるようなユーモア話をつくらせていたのです。政治の世界にユーモアがあれば、自治体にあっても良いわけです。町や村が、日常生活の中に笑いやユーモアの溢れる仕掛けを作るわけです。町で生活をしているうちに、いつの間にか笑いのスキルを身に付け、免疫力が高まります。アメリカの病院には、ユーモアルームがあるところもあるようです。このユーモアルームに行けば、ユーモアの本やビデオがあって、患者さんが楽しめ、免疫力が高まる仕掛けになっているわけです。日本の自治体にも、このような仕掛けを作る未来志向のリーダーが現れることを期待しています。

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