人手不足が、いろいろなところで話題になっています。たとえば、青森県弘前市は、日本一を誇るリンゴの生産地域でもあります。このリンゴ栽培では、摘果や収穫期など短期間に多数の労働力が必要となります。でも、この労働力が、不足しているのです。もっとも、不足を嘆いているだけは、美味しいリンゴは作れません。その解決策として、弘前市は、市職員がリンゴ農家で収穫などのアルバイトをできるようにしたのです。弘前市では、市内の農協と連携し、農家が求人情報を掲載できるアプリも導入しています。必要な農家に、市の職員がアルバイトとしてお助けに行くわけです。このような事例は、北海道にもあります。北海道の十勝地方は、高齢化などで人手不足が深刻になるなか、臨時の労働力確保が急務になっています。この北海道で、農家が1日単位でアルバイトを雇う専用マッチングアプリが広がっているのです。このバイトの対象者は、主に学生や専業主婦、副業が可能なサラリーマンになります。道内では、9月のタマネギの収穫、9~11月には特産のジャガイモや長芋、長ネギの収穫期を迎えます。農家が募集する仕事は、「ジヤガイモ収穫」「ネギ箱詰め」など機械を操作しない単純作業になります。人手不足や高齢化が常態化しているこの地方では、繁忙期に当たる収穫の強力なお助けマンorウーマンになります。スキルが未熟でも、必要な時期や機会に支援できる人材が求められる環境が生まれています。今回は、この少しのスキルで仕事を行う人材の確保を考えてみました。
今、求人サイトで「微経験」を求むという用語が目につくようになりました。この微経験には、明確な定義はないようです。だいたいは、各求人サイトを見てみると実務経験が6カ月から1年以上とする求人欄に多くみられるようです。一方、経験者は実務経験3年以上の人材を指す場合が多いようです。この微経験を含む正社員の求人件数は、2022年の合計を100とした場合、2025年には200と2倍に増えているのです。労働市場では、わずかな経験を持つ微経験の人材を受け入れる求人が増えています。普通であれば、経験者を採用することが合理的です。「微経験歓迎」とする求人が多く出ているサイトは、IT業界になります。特定のプログラミング言語を用いた開発経験者や写真編集ソフトの使用経験など、IT企業の業務に携わった経験者を求める例が多いようです。初歩的なシステム開発経験を待つ人材でも即戦力として積極採用に動いているのです。DX(デジタルトランスフォーメーション)が進み、デジタル人材の需要が急増する中、供給が追いついていない現実があります。経験者の獲得競争は厳しく確保しにくい一方、未経験者は育成に時間とコストがかかります。その意味で、微経験者であれば現場への適応も比較的早く、育成負担のコストも抑えられるという現実的な判断があります。
微経験(IT経験者を含めて)を求める求人サイトの数の増加は、採用企業の即戦力志向の強まりを表しています。こうした人材需要の強さは、賃金水準にも反映しています。月の平均派遣時給は、未経験者が1490円だったのに対して、微経験者は2304円になっていました。微経験求人は母数が少ない上に、時給相場の高いIT系が多ために、平均時給が高くなる傾向があるようです。人件費の上昇などの背景を見ると、採用企業の即戦力志向がかなり強まっているようです。採用ニーズの変化の背景には、業務内容そのものの変質もあります。AIの普及が進み、これまで人間が担ってきた業務の分担を見直す動きが強まってきています。たとえば、事務作業にも変化が起きています。事務系の仕事に集約されてデータクレンジングの作業などが、高度化し複雑化しています。データクレンジングは、データベース等にある不正確・重複・不要なデータを修正・削除し、データの品質と信頼性を高めるプロセスになります。これは、分析やシステム運用の際、誤った結果やトラブルを防ぐために行われるものです。このような作業は、従来の事務作業において、あまり扱わないものでした。でも、高度化したデータクレンジングが、ITエンジニアの仕事として新たに加わるようになりつつあります。微経験求人数の増加は、必要なスキルを持つ人材を柔軟に取り込もうとする流れでもあるようです。直接的な経験でなくとも、それに関するスキルが少しでもあれば、社内教育で育てられるという側面もあるようです。
蛇足になりますが、IT人材の豊富さで、注目を集めている国はインドです。インドの理系の最高峰とされるインド工科大学の優秀さは、世界が注目しているところです。インド工科大学は、インドに23校あります。ITに特化した高度な外国人材の採用は、全世界的な広がりをみせています。 IT技術者不足の中、インドの優秀な人材獲得に活躍している日本企業があります。その企業は、Zenken株式会社になります。この会社は、採用支援を行うWEBマーケティング事業や、「IT」事業、そして「介護」や教育の領域におけるサービスを幅広く行っている企業になります。Zenkenは2018年からインドの工科系の大学と提携し、「ジャパンキャリアセンター」を設置しました。提携する大学数は40校で、その大学内に「ジャパンキヤリアセンター」を設置しています。「ジャパンキヤリアセンター」では、日本での就職支援や日本語教育に注力してきました。ここに来て、神風が吹いてきています。インドの工科系の大学生が多くなり、IT企業が求める技術者よりも増えて、学生の供給過剰になってしまったのです。このために、優秀な工科大生でも望まぬ職種に就かざるを得ない状況が生まれつつあるのです。地道な活動をしていたZenkenに、インドの大学生が親近感を持つようになったようです。インドの大学では、日本での就職を志す優秀な学生は年々増加しています。日本国内の微経験者の採用も選択肢になりますが、優秀なインドのIT技術者の獲得も選択肢になるようです。
より深く考えれば、優れた人材を多数輩出する高等教育を充実させることも、より重要な選択肢になります。このことに、文部科学省(文科省)も着手し始めました。文科省は、大学などの新たな評価制度案を中央教育審議会の作業部会に示しました。大学が養成する学生が、適切なカリキュラムを身に付け、社会に貢献できているかとかなどの観点から判断するものです。学生の成長を促し成果につなげているかどうかの観点では、4段階で評価することが柱になっています。大学挙育の質を、学部ごとに4段階で評価することが文科省の新制度案になります。具体的には、学部ごとに「三つ星」「二つ星」「一つ星」「要改善」の4段階で評価します。この新制度では、従来の大学全体の評価から学部ごとへ細分化する評価になります。最低の「要改善」」となった大学には、文科省が罰則を含めて対応するなどの案も出ているようです。大学の評価制度は、2004年度にすでに始まっていました。今の評価制度では、国公私立全ての大学が文科相認証の第三者機関から定期的に評価を受けなければならないとなっています。評価機関は、16あります。問題は、評価機関の基準にばらつきがあることでした。現行制度は、「適合」か「不適合」の 2段階の評価になります。「適合」か「不適合」の2段階評価なのですが、16ある評価機関のほとんどが適合判定をだしていたのです。新制度では、評価結果を簡単に検索できるインターネット上の公表方法を検討する方針です。大学教育の内容が、質的に高められるように期待したいものです。
余談は、教育格差の解消に関することになります。高学歴の女性を母親に持つ子供と低学歴の女性を母親に持つ子供との間には、教育の環境に格差が生まれます。高学歴な母親ほど仕事を持ち、安定した結婚生活を営み、わが子の教育に熱心です。大卒の母親は低学歴な母親よりも育児に多くの時間を割き、とくに情操教育に力をいれるようです。教育格差が一度つくと、なかなかその差を取り戻すことができないと、メリトクラシー理論の信奉者は主張しています。その真偽は置いておいて、教育格差を解消するという説に反対する人はいないでしょう。教育格差を解消の解消する方法として奨学資金の増額を考えてみました。日本で奨学金を利用している若者は、130万人です。年間1兆1千億円使っています。奨学金の額は、年間一人100万円弱になるようです。これでは少ないでしょう。充実した大学生活を送るためにも、経済面の援助仕組みを作りたいものです。
最後は、安心して大学生活を送る仕組みの構築になります。奨学金を充実させるためには、積極的な募金活動や的確な基金運用が重要になります。奨学金の基金を小中高生が、在学中に働いて作り出す仕組みを提案します。自分たちの将来の教育資金を、自分たちで稼いで準備しておく仕組みを作るわけです。日本の小学生は640万人、中学生と高校生の合計は660万人になります。計1300万人児童生徒がいるわけです。そのうち、小学校1~3年生は除外して、1000万人の児童生徒が奨学資金を作るために働くことにします。1000万人が年間30日、1日4時間、時給500円で働くと、年間6000億円の収入が得られます。これを現在の奨学資金の制度に組み込むのです。子ども達が労働で稼いだ6000億円を、現在の奨学資金1兆1000億円に加えて、1兆7000億円として奨学金を増額するわけです。奨学金には、返還制度があります。もし毎年6000億円が奨学基金に加えられれば、次の年は2.3兆円、次は2.9兆円、次は3.5兆円と莫大な基金が蓄積されることになります。教育の目的は、社会が幸福であり、全ての人を幸福にすることです。奨学金制度を充実させ、教育の目的を達成させる仕組みを作っていきたいものです。一定の学力やスキルを身に付けて社会人になり、微経験労働者でも、一般労働者でも、その時の社会的課題に挑戦できる人材を国家として輩出していきたいものです。
