読書の量と質がAI社会を上手に乗り切るスキルになる アイデア広場 その1785

 生活力の重要性が理解される一方で、読書の必要性が、改めて評価されるようになりました。高い学力を持つ子は、例外なく小さい頃からたくさんの本を読んでいます。彼らは、子どものころから読書を楽しんでいます。子どもの頭脳を順調に発達させるには、幼い頃から本に親しませたほうが良いことを世界の知性は理解しているようです。読書量の貯金をたっぷりもらった子は、底力が格段に違います。学習に抵抗がなく、勉強が楽しければ、机に向かう集中力が生まれます。進学校と評価される小中高でも、読書習慣のある子ども達を率先的に入学させようとしています。今回は、学習能力、できれば仕事の生産性という面から読書を考えてみました。よく知られていることですが、麻布、開成、武蔵、白鵬など有名私立は入試問題で読書する子かどうかでふるいにかけています。進学校は、読書する習慣がある子をほしかっているのです。国語力のない子は、理科の授業や総合的な学習で自分の考えをまとめて発表できません。たとえば、ある進学校には、本を読んでいるかどうかの試験問題があります。それは、「アリとキリギリス」の物語がー部掲載されており、それを読んでの質問に答える記述問題した。受験する子どもは、「アリとキリギリス」のように、生き物が登場する好きな日本のお話を上げます。その上で、そのお話について、600字程度で書きなさいという出題になります。さらに、条件が加わります。まず、その生き物が日本人の社会や暮らしの中で親しまれてきたことを書きます。さらに、別のお話や歌の「題名」または「ことわざ」・「俳句」などを書くことになります。記述の条件を満たすには、幅広い読書量と知識を問われるのです。

よく知られている所では、全米の上位高校の多くはユダヤ系の子が占めていいます。彼らは、本との対話によって自分自身の知識の幅を拡げ、思考力を深めています。ユダヤ人でなくとも、子ども頭が順調に発達するようにするには幼い頃から本に親しませることは大切です。家庭環境の段階で、うまく本に触れさせる工夫も必要になります。その一つに、音読に関することがあります。幼児の場合、できるだけ音読する期間を長くすることが望ましいのです。黙読では本人も周りも気づかないことが、音読によって明確になります。音読は、理解が深まります。本を読んで理解することができるから、勉強ができる子になります。話し言葉と書き言葉の違い、書き言葉を正確に扱えることは学力に比例しています。家庭に本がー杯ある環境で育つことで、子どもの知的好奇心が刺激され読書の世界に入ることができます。

 2000冊以上の本を読んだ人は、情報量、視野の広さ、思考判断の速さで力を発揮する人材のようです。小学校から大学までの学生時代に1000冊以上、社会人になって2000冊以上の本を読むわけです。「日本昔ばなし」でも「ファーブル昆虫記」でも、夢中で本を読む子ども達もいます。子ども用の本であれば、1冊を短時間で読み切ってしまいます。親は子どもが読書に慣れてきたら、「質」を高めることを意識します。量をこなせるようになれば、それを質に転化させることはむずかしくありません。少しずつ、読書のジャンルを広げていく工夫も求められます。知識が豊富な子どもは、「自分が知らないこと」を調べたくなります「調べ方」を知っていて、「自分で調べた経験」があれば、その興味と好奇心は広がります。話は飛びますが、米国で「リアル書籍の人気が復活しています。書店には、週末には書店巡りを楽しむ若者の姿が目立ようになりました。ひところ、急激に伸びてきた電子書籍に異変が起きています。書籍販売全体に占める電子書籍のシェアは、2013年(28%)のピークを境に下落傾向が続いています。アマゾンを利用してきた若者世代が、書店巡りを楽しむ新たな光景を生み出しています。高度情報化社会は、玉石混交の情報を浴び続けいます。その情報をそのまま受け入れ続ければ、能力は低下します。高度情報化社会では、触れる情報を厳選する必要があります。目の前の情報は、独立した点として捉えずに、流れや構成の中の要素であると捉えることが肝要です。2000冊以上の読書で武装した知識で考える力は、生きていく力に直結します。このような当たり前のことを、若者が感じ始めたようです。

 新しいイノベーションが起きた時には、過激な反応が起きるものです。ChatGPTに対して後ろ向きの人と前向きな人達もいます。新しいテクノロジーが出てきた時、安全な使い方を子どもたちに教えるのも教師の役目だと考える人たちもいます。米国では、実際にChatGPTを活用する教師も出てきています。南部ケンタッキー州の小学5年生に対して、2022年12月、これを使った英語の授業を行っています。彼は、生徒が考えた物語のあらすじをChatGPTに打ち込み、演劇用の台本を生成するように指示します。子どもたちで編集を重ね、最後に発表するという授業形式です。普段は作文が苦手な生徒も、積極的に参加していた姿が印象的だと彼は述べています。一方で、人の指示に応じて自然な文章で質問に答えるChatGPTが、米国の教育現場に波紋を広げています。米国の教育関係者は、GPTが子どもの思考力や学習意欲に悪影響を及ぼしかねない心配している教師も多いのです。便利なチャットボットに子どもたちが依存し思考力を奪うとして、規制する動きが出始めてもいます。特に、懸念を強めるニューヨーク市は、公立学校のChatGPTの使用を禁止しています。この対話AIを使うと、大学の授業レベルのレポートは、合格になるようです。以前まではオンラインで実施してきた中間テストを、紙とペンを使う教室での様式に変更する変化も出てきています。ChatGPTを初等・中等教育に今すぐ導入することは、時期尚早だとする意見も多いようです。

 余談になりますが、子ども達に高校入試や大学入試があるように、社会人になるためには、入社試験があります。この入社試験に「対話型のAI面接」が使われるようになり始めました。対話型のAI面接は、「その経験から学んだことは」とか、「困難な出来事にどのように対処したか」など質問を重ねていきます。学生の性格をチェックする質問を行いながら、学生の答えや言葉づかいを分析していきます。論理性や一貫性、粘り強さなどを評価し、数値や偏差値の形で提示するのが一般的パターンです。Al面接が、ネット空間から性別や大学、国籍、年齢に関して偏見の情報を機械学習した場合、そのAIにはどのようなバイアスがかかるかわからない点に課題があります。有名な事例が、アマゾンの人材採用に見られました。優秀な人材は、どの会社でも採用したいものです。この採用を人間に任せるより、AIの行わせようとしたわけです。この新しい試みを、アマゾンが行いました。自慢のクラウドコンピューティングを使ったわけです。アマゾンは、過去の入社採用履歴書データをAIに学習させました。AIは、膨大なデータから合否を判定していったのです。結果は、男性希望者に高い評価を与える結果になりました。今までのデータが、男性中心だったことに問題がありました。応募者の多くが男性だったため、女性に対して差別的な評価を下すようになったのです。AIが採用に当たってどの情報を重視したのかは不明です。でも、データに偏りがあると、偏った解答しか帰ってこない事例もあるのです。AIがネット空間から、ゆがんだ評価を出す社会バイアスの問題が指摘されています。現に、米国では、AI面接の公正さを問う訴訟が続発しています。このような問題は、いずれ収束していくと見られます。AIのより良い利用方法や工夫が、試行錯誤を通じて形成されていくことになるようです。

 最後は、AIを制御し利用できる人材の育成のお話しになります。Al面接は、スマホやパソコン経由で、経済産業省が提唱する「社会人基礎力」に基づいて分析していきます。一定の基礎力を持つ人材は、入社式を無事通過し、会社で成長することを通して、社会に貢献することになります。もちろん、入社する側も、AIを利用するスキルを高めていくことになります。その先進的モデルは、SF小説の中に見られます。SF小説に関わる審査員の中には、時代を先取りする方もいるようです。ある審査員は、AIの躍進に驚きながらも文学への活用に前向きです。執筆活動に活躍している作家には、創作に関するアイデアやモチーフがいくつもあるものです。書けば書くほど、アイデアが次々出てくる状況が生まれます。その時、問題になることが「手が追い付かない」状況なのです。手が追いつかない人を助けるツールが、AIの賢い使い方だというわけです。産業界では、このパターンをすでに取り入れています。生成AIは、労働補完型の技術として多くの社員に利用されています。生成AIを上手に使うことにより、既存の労働をより生産的に、より快適で質が高いものにできる生産現場が増えているようです。仕事が一定以上複雑な場合、生成AIを投入して効率を上げるのがスキルを持った人間ということです。このスキルの下地が、豊富な読書ということになるかもしれません。

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